【ビジネスのためのサービスデザイン③】サービスデザインのプロセス「ダブルダイアモンド」とは?

サービスデザインのプロセスの説明でよく用いられるのが、前回サービスデザイン思考の記事でお話したダブルダイアモンドという図です。今回はこのダブルダイアモンドの4つのフェーズについて詳しく解説していきます。



ダブルダイアモンドとは発散と収束が繰り返されること


前回少しだけ触れましたが、ダブルダイアモンドのポイントは、発散と収束を繰り返すことです。発散はアイデアを考えたり、ここが問題なのではないかと、問題を探索したりすること。一方、収束はこの問題を解決する、このアイデアを実現するなど、まとめる作業のことを指します。

このふたつを何度も繰り返すことで、事業アイデアやサービスを磨いていくのがサービスデザインのプロセスであり、これを以下のような図で表したものをダブルダイアモンドと呼びます。


ただし、ここで注意をしなければ図のように発散、収束、発散、収束と2周だけ繰り返せばサービスが勝手に磨かれるというわけではありません。発散、収束をトリプル、それ以上繰り返すことで、サービスの価値が磨かれ、より有効的なサービスになっていくのです。あくまで概念化するために2つのダイアモンドで表しているだけだということを理解しておきましょう。

ここから、ダブルダイアモンドの①発見、②定義、③展開、④実現という4つのフェーズについて一つ一つ詳しく解説していきます。



ダブルダイアモンドのフェーズ①発見(ディスカバー)

解決したい問題やこんな未来になったらいいなというビジョンを作りだすフェーズです。

このフェーズで活用しているのが、SEEDATAの定義するトライブやfuture waveというツールになります。

何故発見にトライブが有効かというと、トライブは先進的な生活者であり、未来の価値観を先取りして持つ人びとだからです。現状に満足してしまっていて声高に課題を叫ぶ人が少ない 現代においては、新しいビジョンは描きづらいため、現状に満足していない、さらによりよい世界を作りたいと考えている(=課題が顕在化している)トライブの価値観を探ることで、ビジョンを発想するうえでのヒントを得ているのです。

実際、サービスデザインの研究でも、ビジョンの作り方や問題の発見の仕方は属人的です。ビジョンというのは、個人の内から出てくる、「こうしたい」という情熱や熱意なので、それらをどう生み出すかという方法論はありません。そのため、SEEDATAでは50以上ある哲学をもったトライブたちからインスピレーションを得て、ビジョンを作り上げていくという方法を採用しています。

よく「エクストリームユーザーから商品開発をしよう」ということはいわれていますが、「エクストリームユーザー (厳密な定義では、特異な価値観や哲学を持った人たち=トライブ) はビジョンを作り出すのに最適」という考え方はSEEDATAオリジナルの発想法になります。



ダブルダイアモンドのフェーズ②定義(ディファイン)

発見で生み出したビジョンや未来への展望から、どういうコンセプトを作っていくべきかということを考えるフェーズが定義です。

よく言われているのがIDEOの「How Might We question (我々が〇〇するためにはどうすればいいか?)」という問題定義の方法が主流ですが、SEEDATAではこれだけではなく「what if」で「もし●●が××だったらどうだろう」形でクエスチョン=問いを作ります。

結局ビジョンというのは「もしこんな理想の世界になったらどうなるだろう?」という「what if」の考え方で、新しいものを生み出していくことなのです。

子どものような遊び心や好奇心は大人になると失われてしまいがちですが、自分なりに工夫を凝らして生活しているトライブたちは「what if」をいつまでも持ち続けている存在だからこそ、ビジョンを作るヒントを得ることができるのです。

その得られたヒントから、「もし●●なサービスがあったら、もっと××な価値が提供できるのではないか」という問いをたてる、それが問題定義です。


この「what if」によって作られた問いをSEEDATAでは機会領域(ビジネスチャンス)と呼び、現在これを問いの形で100個ストックしています。この問いは、今後人びとが求めていくであろう理想の世界、ビジョンを体現するための問いなので、作成段階では実現可能かどうかは考える必要はありません。

この100の問いをもとに、起業家候補生と一緒に事業構築し、大手企業に売却するまでを手掛けているのがSEEDATAの兄弟会社SD/Vになります。SEEDATAは事業アイデアを作り、その事業アイデアを形にするのがSD/Vです。


もちろんこの問いを作るためには相応の技術が必要で、これまで数多くのトライブリサーチや、トライブリサーチの結果をさらに分析し解釈してきたSEEDATAアナリストだからこそ作ることができる問いであるといえるでしょう。



ダブルダイアモンドのフェーズ③展開(デベロップ)

②で定義した問いから実際にサービスアイデアを出すのが展開です。ここは発散のフェーズなので、問いに対して質より量でアイデアを出していくことが必要です。ここのフェーズでは、SEEDATAのアナリストだけではなく、ユーザーも巻き込んで、共創型でアイデアを発想していきます。



ダブルダイアモンドのフェーズ④実現(デリバー)

技術的に可能か、実現までの期間といった実現可能性や、生活者への価値の大きさ、社会的価値などの観点から、一つのサービスアイデアに収束していくのが実現のフェーズです。実際にビジネスとして成り立たせるために、ビジネスモデルを作っていくのもこのフェーズです。ビジネスモデルというのは儲けのしくみを考えて、POC、POBを検証しながら形にしていくというフェーズです。


以上の4つのフェーズが、サービスデザインのプロセスになります。

今までSEEDATAが関わって世の中に出た商品やサービスは、すべてこのステップを繰り返し行って作っています。


この4つのフェーズを経て、ビジネスモデルを作る場合は3年、商品開発の場合でも1年弱はかかります。

現在の市場サイクルは変化が速いため、3年間かかるということは、ビジョン作りの段階でかなり先の未来を見据えなければいけません。しかし、一般の生活者にヒアリングを行って、その生活者が今欲しいと思うものを作り始めても、3年後にはその生活者は過去の人になってしまい、その商品やサービス求められていないという場合が往々にしてあります。

だからこそ、トライブという3~5年後の未来の価値観を持つ生活者からビジョンを得てビジネスモデルを先取りして作る必要があるのです。

今は突飛な考えだと思われるようなビジョンが、サービスや商品が完成するタイミングでは「これこそ今の時代に求められていたものだ」とトライブの先進性が活きてくることでしょう。このように、これからのサービスデザインは、未来を見据え、未来を先取りしながら、早め早めにビジネスを作っていく必要があり、その時に重要な役割を果たしてくれるのがトライブだということがお分かりいただけたのではないでしょうか。


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【この記事の監修者】

佐野拓海。SEEDATAアナリスト。

株式会社SEEDATA(博報堂DYグループ)設立とともにプランナー兼アナリストとして参画。

主に生活者リサーチ、商品開発、新規事業開発、サービスデザインなどの業務に従事。


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