【トライブレポート紹介②】マッチング系新規事業のサービスデザインのヒント(ノンラブティンダラー)

はじめに~トライブレポートとは

SEEDATAは今後増えていくであろう考え方や行動を示している先進的な消費者グループ=「トライブ」を独自のリサーチによって発見、定義し、調査した結果をレポートにまとめています。

トライブ・リサーチから得られた知見を通じて、推進される企業のイノベーション活動を「トライブ・ドリブン・イノベーション」または「トライブ・マーケティング」と総称し、コンサルティング、支援を行っています。

トライブレポートの詳細と読み方については、こちらの記事をご一読いただければ幸いです。

トライブレポートの読み方

マッチングアプリ開発のキーワードは「右脳型」になっていく

近年ティンダーやペアーズといった新しいタイプの出会い系(ソーシャルデーティング)アプリが若い男女の間で人気になっていますが、これまでの出合い系サービスとの違いは、異性に出会うまでの課金しなければならない金額が非常に低く、特にティンダーは無課金でも十分に異性と出会えるという点が特徴です。

この手軽さから今まではいわゆる出会い系を敬遠していた層からも支持されるようになり、2012年にアメリカでリリースされてから現在まで、多くのユーザーを獲得しています。

無課金、低課金ゆえにユーザーは比較的ライトな使い方をしており、真剣な恋愛目的というより、軽いデートや友だち作りがメインの目的というユーザーが多い中、一部のユーザーは、その手軽さから自身のビジネスパートナーとなる人や、ペットの里親募集など、恋愛以外を目的として人とつながりを持とうとしています。

これらのサービスのみならず、現在SNSを通じて他者とコミュニケーションをとることが非常に簡単になってきており、こういった人とのつながり方はこれからもより広がっていくのではないかという問題意識と、マッチング系の新規事業や新商品・新サービス開発に関する示唆を得るため、トライブをリサーチしようということになりました。


私たちは単にティンダーを使っているユーザーではなく、ティンダーをいわゆる恋愛目的以外で使っている先進的なユーザーに注目しました。これはSEEDATAがトライブを見つけるときのもうひとつの手口です。本来作り手側が意識していた使い方とは違う使い方を消費者が率先している場合はトライブの可能性が高いといえます。この観点から、「ティンダーを予想外の使い方をしている人はトライブ」ということで、「ノンラブティンダラー」というトライブ名をつけています。


ノンラブティンダラーのおもしろい点は、ティンダーは付き合う相手を探すために人と会うのが一般的ですが、あるユーザーは瞑想ワークショップを探したいときに、紹介してくれそうな人を探していました。ワークショップを検索エンジンなどから探すのではなく、「ワークショップで何をやっているかではなく、誰がオススメしているかで選びたい」という先進的な価値観を持っていたのです。

「何を」ではなく「誰を」という価値観は、ソーシャルネットワーク時代特有のものです。このトライブレポートは3年前に作ったものですが、この価値観はSEEDATAがトライブから洞察して見出し、現在世の中に広がっているもののひとつです。


ノンラブティンダラーを分析するうえで、もうひとつ重要なのは人の選び方の変化です。

「何を」ではなく、「誰を」というのはあらゆるトライブで頻出するメガトレンドですので今回は詳細に説明しません。それよりも、恋愛相手や趣味における人の見極め方が、左脳型ではなく右脳型になっているというのがこのトライブの興味深い点であり、重要な点でもあります。

これまではその人が信頼できるかどうかは卒業大学や出身地などのいわゆる「スペック」に依存した判断が主流でした。ティンダーは相手を好きか嫌いかを、表情や写真の中に写っているもので直感的に指を右か左にスワイプさせて判断します。これが私たちの言っている右脳型の意味です。

つまり、人を信頼するかに足る情報を、画像と家に置いてあるものなど、トータルの世界観で判断しているというのが極めて重要なポイントです。

右、左と画像を根拠に自分と相手の相性を右脳的に判断する行動は、今はティンダーでしかできません。ティンダー以外にもこのような判断行動をサポートする技術やサービスが拡がれば、今後はきっと一般の生活者の中でも現れてくるはずです。


ここから生活社変化行動仮説に焦点を当ててお話をします。この人達がティンダーで消費しているのは、右脳的なマッチング判断です。その楽しさや信頼する人が現れるということの驚きや充実感のようなものを消費していると私であれば解釈します。そうすると、単にお手軽に画像で好き嫌いを判断するデーティングアプリの背後には、「スペックなどの左脳的情報ではなく、右脳で信頼性の判断を行うことで驚きや充実感を感じることができている」という「新しい意味」を見出すことができます。

技術でもニーズでもなく、そこに意味があるから、その意味から、新たなサービスや商品をデザインすることができる訳です。


例えば、この「新しい意味」から思いつく新サービスとして、OB訪問などもあげられます。今までは同じ学校出身ということで行っていましたが、これからは社員の写真の画像を見て、なんとなく世界観が合っていそうな人を訪問をしたいという人が増えてくるかもしれません。

ほかにも、転職サイトや婚活サイトでも、人と人とのマッチングを行う場合には世界観で右脳的に行うという風に応用が可能です。

さらに、右脳型で信頼できる人を発見したいという価値観は、ビジネスにも今後役立つかもしれません。たとえばFPなど、信頼できる人かどうかを相手に伝えなくてはいけないすべての職業で使われるようになっていくのではないでしょうか。


また、トライブの読み方では、トライブは発想のもとであり、ターゲットではないと書きましたが、応用編として、トライブをあえてターゲットとしてマーケティングプランを練る方法をお伝えしましょう。この方法は、トライブ・ドリブン・イノベーションではなく、「トライブ・マーケティング」という別の概念としてSEEDATAでは整理しています。ここでいうターゲットとは、ニッチターゲットではなく、イノベーション普及理論でいうところの「初期採用者」であると捉えてください。

例えば前述したOB訪問サービスを右脳型マッチングをコア機能として、新サービスを開発するとしましょう。今回の場合、ティンダーのユーザーは結構多いので、初期にサービスを開発し、ティンダーのユーザーに受け入れられれば、サービスとして充分なローンチが可能だと判断したとします。

ここで、初期採用者としてはすでに右脳型マッチングを恋愛以外に使っているユーザーなのでノンラブティンダラーがそのまま当てはまります。次に広げていくユーザーとしてはティンダーのユーザーを設定します。ノーマルティンダーユーザーは、右脳型のマッチングには相性の良いターゲットですので、このセグメントは充分恋愛以外に右脳型マッチングを利用する素地があります。これが次の採用者の候補です。

一方、普通のスペック型のマッチングサイトを利用しているユーザーはそもそも右脳型マッチングを経験させてあげなくてはいけないので、ある種の啓蒙が必要になります。そうするとこの人々はさらにその次のターゲットとなります。そうすると、PoC(コンセプトの検証作業)の段階では、まずノンラブティンダラーを探してインタビューを行います。ノーマルなティンダーユーザーにもインタビューを実施し、その差異が把握できればOKです。少なくとも事業計画書にはティンダーを利用しているというわかりやすいセグメント軸でターゲットを設定していけるので、チームも投資家も理解しやすいはずです。事業の成長プランではその外にいるスペック型のマッチングユーザーを設定します。

マーケティング的に考えると、トライブはいちばん最初に火をつけることのできる人々ともいえるでしょう。マーケティング用語ではニーズという言葉がよく使われますが、おそらく通常のOB訪問マッチングサービスの開発では、「相性の良い人とマッチングしたい」という程度のニーズしか出てこないでしょう。これは顕在ニーズで、誰でもわかりますが差別化できません。

しかし、トライブ起点で発想すると、「右脳型で人と人のマッチングをしたい」というニーズに言い換えられます。これは顕在化していない「潜在的なニーズ」です。ただ、一部のトライブには現れているので、妄想ではありません。このくらいのレベル感のニーズがおそら新サービスや新商品を開発する際に一番有効な粒度です。

以上が、トライブ・マーケティングの入り口部分の簡単なデモンストレーションです。

トライブ・マーケティングのトータルの方法論についてはまた別の機会に話します。今回はノンラブティンダラーを使って、トライブの読み方、解釈の仕方を解説いたしました。


記事ではこれ以上はご紹介できませんが、ほかにもトライブレポートにはおもしろい機会領域が数多く掲載されており、マッチング系のビジネスであれば、このトライブレポートひとつで新規事業や新サービスに展開できるはずなので、ぜひSEEDATAへお問い合わせください。

お問い合わせの際は、まずは気になるトライブレポート名と「〇〇ビジネスをやっています」ということをお伝えしていただければ、我々がトライブレポートをもとにビジネスアイデアをいくつかご提案し、コンサルティングいたします。

あとは皆さんの会社がすでに持っているリソースと掛け合わせて、新商品を・新サービスを生み出したり、新規事業の場合はビジネスモデルから変えるなど、それぞれの課題に対応いたします。

たとえば、新商品を作りたいという会社の場合、SEEDATAが提携している会社とこのトライブが世の中に何万人いるかを調査し、その人たちにテストマーケティングしてみて伸ばしていくことも可能です。また、サービス開発の場合もプロトタイプを作ることができますし、ビジネスモデル創造の場合は、ビジネスモデルに関する検証された知識を手に入れるPoB(Proof of Business)のプロセスに入ることも可能です。


SEEDATAへのお問合せはこちらから(コンタクトフォームに移動します)。

【この記事の監修者】

宮井弘之。SEEDATA代表。


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