【新規事業に必要な調査①】定性調査と定量調査の違い

SEEDATAではこれまで独自の定性調査を用いて、数多くの企業の新規事業や新商品・新サービス開発の支援に携わってきました。

ありがたいことに最近では「質的調査」とGoogleで検索するとSEEDATAの記事が1位に表示されるほどで、ある種、質的調査=定性調査のご意見番として認めていただいていると自負していますが、中でも企業の方々からよく聞かれるのが「定性調査と定量調査はどのように使い分ければよいのか」という質問です。

定性調査と定量調査の違いについては今後出版される本でも詳しくお話ししていますが、紙面は限られているため、当記事であらためて補足しておきます。

調査には探索発見と検証・最適化の2つの方向性がある

まず、定性調査か定量調査かということは置いておき、調査ということに関して、誤解を恐れず「調査をすると何が良いのか?」という根本的な点について解説します。

調査の方向性には以下の2パターンがあります。

① 探索・発見

新しい気付き、新しい視点、新しいチャンスが見つかるなどの目的やメリットを追求する方向性です。

② 検証・最適化

仮説の検証、既知の考え方の最適化や、改善を追求する方向性です。

この発見・探索と検証・最適化というのはどちらも調査の持つ機能だと考えています。

一般的には、定性調査は探索や仮説構築に活用され、一方、定量調査は検証やビッグデータを用いた最適化に活用されると言われます。

しかし、近年はとくに定量調査側のデータの質が変化してきています。加えて、デザイン思考やリーンスタートアップなどの考え方が、定性調査データの活用にも貢献してきたことなどから、結論としては定性も定量もそれぞれどちらの方向性にも活用できるということがいえるのです。

これまでのマーケティングにおける定量調査では、「10,00人に聞きました」という程度のアンケート回答データセット群があり、「統計的に優位な差が得られました」というような文脈で検証として使用されていました。一方、最近の定量データというのは一つのサンプルにたくさんの変数が付いていたり、時系列データになっていたりします。具体的には行動履歴や購買履歴やセンサーで獲得したデータです。これらのデータからは相関関係を見出すことができます。たとえば「この商品を買った人はこういうものも買っている」または、「このレシピを見た人はこんなレシピも見ている」といったアソシエーションや、ネットワーク構造になっているようなデータが手に入るようになり、ここから十分に発見の可能性があるといえるのです。

例をあげると、「イカが好きな人は意外とインドカレーも好きだった」というようなデータが手に入るようになり、普通人間は直感的にインドカレーとイカは結びつきにくいと思いますが、人間の直感に反する発見が得られるというのは実におもしろい点といえるでしょう。

このように相関関係のあるデータが取れるようになったことで、定量データもチャンス発見に多いに使用されるようになりました。これまで語られていないことに関しては人間はどうしても見落としがちですが、計算機そのものは先入観を持たないので、直感に反する意外な発見を得ることができるのです。

つまり、今後は定量データに関しては検証と最適化だけでなく、発見にも活用できるということがいえます。

ただし、定量データを発見的な目的で活用するには若干の数学的リテラシーを要求するという問題があり、おもに多くの人が理解できるのは検証の部分です。数学的リテラシーが高ければ、言葉を話すように自由自在に扱うことができますが、その点で人を選ぶのが定量調査の難しい部分といえるでしょう。

一方、SEEDATAが定性調査にこだわる理由は、計算機では分析不可能な少ないサンプルサイズのデータやジャンルに入り込んでいき、まだデータとして量的には整理できない部分で発見・探索をしたいと考えているからです。

たとえばコミュニティに入り込んだ観察結果や、ご自宅にお邪魔してからの非構造的なインタビューという自然言語や写真・動画で得られたデータです。そこに人間の解釈を加えることで、計算機では処理不可能な部分まで発見や探索の範囲を広げたいという思いから、トライブリサーチを行っています。ここは質的調査の優れている点といえるでしょう。

また、実は定性調査は検証にも有効という見方もあります。

たとえば、新規事業を何度も成功させている起業家やイントラプレナーたちは、1000人に1問を聞いた定量データよりも、10人に100問を聞いた定性データを信じるという話があります。

10人に100問と1000人に1問ではデータ数でいうと同じですが、定性調査は同じ人に何度も何度も聞くので、質問者の中で確証が高まっている状態になり、本人にとっては十分検証になっているのです。つまり、起業家にとっての検証には定性調査は有効といえるでしょう。

結局、人間の頭を使って解釈するか、計算機を使って解釈するかの違いで、定性も定量もどちらもデータであることには変わりないのです。

ただ、SEEDATAが定性調査を重要視する理由は、チャンスや兆しを見つけただけでは終わらせず、そこからイノベーションを起こしていきたいと考えているからです。発見した兆しを人に説明し、MVPに落として世の中に広めていくためには、多くの人に協力を求めていく必要があるのですが、明確な誰かのストーリーというのは万人に受け入れられやすいという特徴があります。

定性調査を通じて見つけた発見や仮説は、表現形式としてストーリー化しやすく、より多くの人を巻き込みやすいという特徴があり、私はこれをインサイトの可搬性と呼んでいます。要するにインサイトには可搬性、モビリティがあるものとないものがあるのです。

とくに機会領域の発見や探索は企画の初期段階で行われるため、モビリティが重要で、そのときに定性調査で得られたインサイトは概ねどんな人でも理解できる、共感されやすいという特徴があり、事業開発プロセスの後半までチームの共有ビジョンとしやすいといえるでしょう。

以上のような理由から、SEEDATAではイノベーション支援においては質的な調査を最優先に考えています。私も博士号をマーケティングサイエンスの分野で取得しているため、定量調査の重要性は当然理解していますし、マーケティング実務ではクラシカルに統計的な実証や最適化を行います。企画初期の段階ではモビリティを重視して定性的に調査を行いますが、実際にMVPを作ったあとは提供したい価値や枠組みもはっきりとしているため、検証や最適化はすべて数字を使って改善を繰り返します。

定性調査と定量調査はこのように使い分けをすべきもので、本来はどちらが優れているなどというものではないことをご理解いただければ幸いです。

最後に、よく「定性調査は主観が入るから客観的ではないのではないか」という批判がありますが、それは当然のご指摘です。ただし、実務ではモビリティや多くの人の共感のほうが大切であるという見方もあるのではないでしょうか。

一方、「定量調査は客観的だから良いのか」というと、どうでしょう。例えば何かしらの一般化線形モデルを想定した際に、目的変数を説明する側には誤差項eが定式化されますが、目的変数の側には誤差項eはありません。しかし、目的変数もなんらかの測定値なのであれば、その測定値そのものには誤差が含まれている可能性があります。量的なデータには量的なデータなりの問題点や盲点があります。もしくは1000程度のサンプルサイズのアンケート結果があったとします。「購入意向」のような概念が数量化されていたとして、本当にその数字は正しい質問を用いて購入意向という概念を測定していたのでしょうか?量的なデータを過信して最適化してしまうと、間違える可能性もあるということを常に念頭に置いておく必要があります。ここが定量調査の弱点ともいえ、妄信してしまうと結局は客観性を失っているという状態になるので、どちらの調査も一長一短であることを理解したうえで、バランスよく使い分けることをオススメします。

よく分からない方は、まずは探索的に定性調査で仮説を作り、検証と最適化は数字を用いて改善を行うと考えましょう。

SEEDATAへのお問合せはこちらから(コンタクトフォームに移動します)。

【この記事の監修者】

宮井弘之。SEEDATA代表。

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