新規事業立ち上げ上申時に役に立つ3つのフレームワーク

新規事業の課題や大手企業や中堅老舗企業の新規事業がうまくいかない理由については、以前当ブログで解説しました。

失敗しない新規事業部の立ち上げ方①「アイデアも人材も経験豊富な外部の人間を入れて新規事業を回していくべき」
SEEDATAではこれまでも、新規事業を進めている企業からご相談を受けて参りましたが、近年さらに、新規事業、新価値を創造したいという企業が増え、その際の新規事業部の進め方や制度の設計方法について質問される機会が増えてきました。 当連載...

その中で、新規事業がうまくいかない要因のひとつとして、いきなり「100億のビジネスを作れ」「会社の次の柱となる事業を作れ」と言われるというものがありましたが、その際に「どう答えたり、どのように上申資料を作ればいいのか分からない」というご相談をしばしば現場の方から受けます。

そこで今回は、新規事業立ち上げの際に重要な3つのフレームワークを公開します。

新規事業立ち上げに必要なフレームワーク①新商品、新サービス開発なのか、新事業開発なのか

そもそもフレームワークとは、ものごとを考えたりチェックしたりする際に必要な枠組みであり、曖昧なことをはっきり意識させたり、情報整理のヌケモレを防ぐためのツールです。

まず上層部の人を説得する際の枠組みとして、新規事業担当になった方が役員や社長などに聞いてほしいパワークエスチョンがひとつあります。

それは「今、100億の売上を作れとおっしゃいましたが、それは新商品、新サービス開発を通じてですか?それとも新事業開発を通じてですか?」という質問(フレームワーク)です。では、このフレームワークがなぜパワフルなのかについて解説していきましょう。

 

以前当ブログで新規事業と新商品・新サービス開発の違いについて解説しましたが、役員や社長で「粒の大きい事業を出せ」と言っている人は、新商品・新サービス開発時の成功体験をイメージしていることが多いといえます。

失敗しない新規事業部の立ち上げ方②新規事業と新商品・新サービス開発の違い【前編】
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創業社長であれば会社のことをよく知っていますが、役員の人はある程度会社が大きくなってから入ってきた場合もあります。とくに後から入った役員の方や大手企業でビジネスができてから経営サイドにジョインした方が言う「大きな事業」は、新商品開発時の成功体験をイメージしている場合が多いと感じます。

たとえば、製造業を例に考えると、現在5千億円の売り上げがあり、新しい5百億円の新商品を作る際、流通網はすでにあるため、商談を通じて、新商品が全国の量販店に並ぶというビジネスモデルが既にできあがっている状態です。

では、ビジネスモデルが出来上がっている場合、何が重要になってくるかというと、企画の内容です。作れば並ぶことは分かっているので、並んだ状態でいかに魅力的にするかが重要で、その商品を並べる流通や卸の人を説得できる、しっかりと練られたアイデアでなくてはいけません。

もう一点、作れば並ぶという関係を何年にも渡って築いているからこそ、品質は重要です。万が一にでもすでに作っているビジネスモデルの中で迷惑をかけることはあってはいけないため、品質テストを何度も繰り返すのです。

以上のことから、新商品開発では、アイデアと品質保証に時間をかけ、あとは、顧客層や、どのくらい製造すればどのくらい売れるという単位も分かっているため、おおむね売り上げも予測できる状態です。

だからこそ、大々的にCMをうったり、営業網に思い切りコストをかけるなど、500億円の売り上げをとるために巨額の投資をすることもできるのです。

たしかに、このような環境の中でずっと仕事をしてきた人にとっては、「新商品ひとつで50億円、100億円の売り上げ」という話もあり得ました。そういうものが作りたいのであれば、それをやるべきです。

ただし、それは新商品、新サービスを作ったときに、どこにどう売れていくか、バリューチェーンや仕入れ先もほぼ決まっていて、ビジネスモデルがすでにできているという前提があってこそです。

しかし、目指しているのが「新規事業開発」だとすると、作ったモノやサービスが買ってもらえる場所や、顧客、どこに置かれるかなど、すべて未知数な状況です。その場合、いきなり100億円の売り上げになるはずはありません。どこで売れるか、誰に売るのか、どのようなバリューチェーンで売っていけばよいのか分からない状態を「ビジネスモデルがない」といい、その場合はビジネスモデルを創造しなければならないからです。

ビジネスモデルをゼロから作っていくにはそれ相応の時間が必要になります。

そのため「新商品、新サービス開発なのか、新事業開発なのか」というフレームワークを使うことにより、まず、どのくらいの期間なのか、売り上げ規模はどのくらいを目指すことができるかが分かるわけです。

これがまず、絶対に使わなければいけないパワフルなフレームワークであり、パワフルなクエスチョンです。

新規事業立ち上げに必要なフレームワーク②0→1、1-10、10-100というスタートアップの成長モデル

続いて、①のフレームワークを用いた結果、今回会社が目指しているのは新商品、新サービス開発ではなく、新規事業開発のほうだった場合に必要なフレームワークをご紹介します。

ビジネスモデルを開発しなければならない場合に役立つのが、スタートアップの成長モデルという次のフレームワークです。

スタートアップの成長モデルには、0-1、1-10、10-100という段階があり、以下のように分けられます。

0-1

自分たちのやっていることが、ファーストペンギン(最初の顧客)にとって価値があるかを試すPOC(Proof of Concept)の段階と、最低限のお金を支払ってもらえるかというPOB(Proof of Business)の1周目が終わった状態。

通常のスタートアップの場合、手弁当である程度行ったあと、もう少し本格的に商品を作ったり、もう少し幅広いお客さんにちゃんと営業したいなどの理由で、最初のシードラウンドの資金調達をする段階です。POCそのものの資金が欲しくてエンジェルからお金を出してもらう方もいますが、ある程度POCとPOBの1周目が終わった状態が0-1です。

1-10

POCの初期顧客をしっかりとっていくために、どのくらいの商品コストをとり、品質をどこまで高めるか、また、どのくらいの販売網を築くかで、かかるお金と必要な人数が分かってきます。それに対してシードラウンドで資金調達をしたお金で実行するのが1-10です。

その途中で足りなくなればラウンドAでお金を調達し、1-10を行います。

10-100

ここまでくると、何をどうひろげていいかが分かった状態で、ある程度予測が成り立つレベルで、かなり通常の新商品、新サービス開発に近づいています。局所的には秩序がなりたっています。あとは、「これくらいのお金とリソースをつぎ込めば、これくらいの売り上げが見込める」と分かってくるので、大々的にお金を投資します。速度を高めてバリューチェーンを構築するためには買収なども必要です。

これが私が最近よく使うもうひとつのPOC(Proof of Capital)です。要は、もうスケーラビリティが見えているので、ガツンとお金を入れられる状態で、ラウンドBで事業を拡大したりIPOを行う段階です。

ここまでくると既存のビジネスだけでなく、新しいビジネスモデルや価値を構築したことにより、どの程度の新規ビジネスや新規の顧客が見えてくるかわかる状態で、企業価値を最大化して上場などのイグジットを目指すという段階です。

以上がスタートアップの成長モデルですが、企業の中で新規事業やビジネスモデルを作る場合も、同じようなステップを踏まなければいけません。どんなに短くても1年半から3年、5年とかかるのが通常です。

その場合、今現在のニーズではなく、3~5年後に大きくなってくる価値を狙って初期採用者を見つけていかなければならないため、手前味噌ですがSEEDATAの未来洞察がとても重要になってきます。

新商品、新サービス開発を行う場合は、短期的なニーズに対して1年後くらいの完成を目指します。すぐにみんなに使ってもらえるようにすることが目的のため、既にあるビジネスモデルにのせていかなければいけません。

一方、新規事業開発は、ビジネスモデルを考えるなら、0-1、1-10くらいまでは見据えます。3年くらい先のニーズをすでに体現している初期採用者を狙い、だんだん大きくしていくことをしなければいけないのです。

会社がやらなければならないのは、どこからどこまでを0-1、1-10、10-100とするのか、POC、POB、POC(Proof of Capital)の3つを、どのくらいの規模で、途中でお金と人を入れて回していくのかまでを決める必要があります。

そのため、0-1、1-10、10-100というフレームワークが非常に重要になってくるのです。

新規事業の担当者は、このフレームワークにそって事業開発をし、本社を投資家に見立てて必要な資金などのリソースを獲得していかなくてはならないのです。

新規事業立ち上げに必要なフレームワーク③レジデンスか出島か

3つ目のパワフルなフレームワークは「レジデンスなのか出島なのか」というフレームワークです。

レジデンスというのはその企業の中でやること、出島というのは企業の外に出してやることを意味します。ここはそれぞれの企業の文化にあわせてしっかりと設計していきましょう。

このフレームワークにも2つの考え方が存在します。

まず、レジデンスのフレームワークにも2つあり、ひとつは居住者(社員)が中心となって興し、それを居候(外部の起業家やビジネスデザインアクセラレーターなど)に手伝ってもらう方法。

もうひとつは、レジデンスの中に外部から来た居候などにリーダーとして中心になってもらい、居住者はサポートをして学んでいくというパターンです。

出島のフレームワークも同様で、完全に出島型で外の起業家を立ててそれをサポートするのか、社員が外に出てやるのかという2つのパターンです。

このフレームワークさえ理解していれば、まず体制としてどこで事業を回していくのかということを考えることができます。

SEEDATAではレジデンスでも出島でも、柔軟に対応して一緒に新規事業を回すお手伝いをさていただいています。

3つ目のフレームワークを使うことで、どこでやっていくのか、いつ撤退するのか、誰がどういう役割を持つのかという風にステップバイステップで、新規事業開発に取り組んでいくことができます。

以上の3つが、新規事業立ち上げで役員を説得する際に非常に重要なフレームワークです。

これと以前ご紹介した、新規事業の予算の考え方をうまく組み合わせることで、新規事業の立ち上げ当初は顧問を入れずにプランニングしていけるのではないでしょうか。

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宮井 弘之
Written by
宮井 弘之(Miyai Hiroyuki)
SEEDATA 代表