新規事業立ち上げ企画書に必要な項目

今回は新規事業の企画書の章立てについて解説します。

世の中でよくいわれている順番とは少し違いますが、イントラプレナーが社内で新規事業を進めていく際や、社内ビジネスコンテストや社内の新規事業提案制度などに応募する際にとくに有効な章立てについて、実際に社内事業コンテストで優勝した私が解説します。

新規事業立ち上げ企画書に必要な12の項目

まず、新規事業立ち上げの際の企画書の目次は、以下の12の要素に分かれています。

1.エグゼクティブサマリー

2.事業立ち上げの経緯

3.マネジメントチームの説明

4.サービス、プロダクトの説明

5.ビジネスモデル

6.市場規模の話

7.マーケテイング戦略

8.営業立ち上げ戦略

9.成長戦略

10.オペレーション計画・人事制度

11.財務計画

12.やる意義

順にその内容を解説していきます。

1.エグゼクティブサマリー

エグゼクティブサマリーは基本的に1枚で表現するつもりで書きます。できれば1分くらい、長くても3分くらいで全体の大事なところを伝えられるようにするとよいでしょう。盛り込まなければいけない要素は、今、社会や業界にどんな問題や課題があり、それをどんな人物やスキルや技術で、どのように解決するのかです。

SEEDATAの場合、定性調査が毎回カスタムになっていて価格が高すぎて効率が悪いなどの業界の問題を指摘し、トライブのデータベースとアナリストがスキルにあたります。

余談ですが、私は新規事業を立ち上げる際に重要なキーワードは、価格破壊と品質破壊だと考えています。よいものを高く売るでは職人の方向なので、スタートアップには向いていません。

価格破壊は、何かからくりを見つけてほかより低価格で提供することを常に意識しておきましょう。

品質破壊は、非効率性に注目してものすごく早くしたり、品質は同等なのに値段は1/10にしたり、適切にダウングレードして必要十分な機能にするなど、値段と品質の両方で破壊行動をしなければ、なかなかスタートアップにはなれません。エグゼクティブサマリーはこれらが伝わる内容になっている必要があります。

2.事業立ち上げの経緯

事業立ち上げの経緯は、たとえば私の場合、長年広告会社で新製品や新サービスのコンサルティングを行ってきて、その経験から得た、「消費者の生の声という定性データが隠然とプロジェクトに影響力を与え続ける」という当事者でなければ分からない実感値がありました。

ほかにも海外旅行に行って「こんなすごいものに出会ってしまった」というような場合もあるでしょう。多くの場合、衝撃的な出会い、もしくは普段からずっと問題に思っていることが事業立ち上げの経緯になるので、少なくともその業界のビジネスをやりたいと思った経緯を自分のストーリーとして語れるようにしておくことが大事です。

経緯には、「だからこんな理念を持ちます」というビジョン(orコアバリュー)を少し盛り込んでいれておくとさらによいでしょう。

3.マネジメントチームの説明

3、4、5は前後してよいのですが、私の場合はまず人に注目してほしいのでマネジメントチームの説明をします。

最も重要なのは経営陣で、経営陣にはプロフィールとストーリーの両方が必要です。プロフィールは、スキル、経験、ネットワークが感じられるものでなくてはいけません。どこの大学や会社にいたかは重要ではなく、そこで何を研究していたか、何を担当していたかが、その人の本当のスキルです。

また、社長のストーリーは事業立ち上げの経緯で語られますが、ほかの人たちのストーリーも必要です。何故わざわざベンチャーに来たのか、経営陣のストーリーはここで語ります。ストーリーを語る目的は「この人たちは絶対この事業をやめない」と感じてもらうことです。そういう原体験を持った人たちなのかということを私は重視しています。

もうひとつは外部ネットワークです。システムの会社、仕入先など最初の段階での組み先がいるはずなので、ネットワークについてもきちんと語ることが重要です。

4.サービス、プロダクトの説明

どんなサービスやどんなプロダクトなのかという説明です。

どんなサービス、プロダクトにも仕入先とお客さんがいるように、マッチングならする人とされる人がいるわけで、ここでは関連するそれぞれのステークホルダーに、どんな価値があるかがきちんと分かることが重要です。

また、言葉だけでなく、プロダクトならモックアップがあるはずなのでその写真や、サービスなら画面が必要です。

もっと欲を言えば、私が「漫画の第1話」と読んでいるものがあります。要するにそのモックアップを一番最初に使った人が感動している様子や、「ここから広がっていきそうだ」と最初にそれに出会った人の熱狂が伝わるようなことが書いてあるといいです。第1話に出し惜しみがあってはいけません。なにかとんでもないことが起こらなけば、第2話、第3話と読もうとは思ってもらえません。

また、はプロダクトを使っている人の顏、画面がなるべく具体的に書いてあることも重要です。

ほかにも、そのプロダクトやサービスを利用することで、ユーザーがどう変化するのかという点も入れておきます。今まで別の商品を使っていたのが、どういった理由でこの商品に変わるなど、ユーザーの変化やステークホルダーの変化をきちんと書いておきましょう。

5ビジネスモデル

この商品やサービスをどういう儲けの仕組みで行って、サステイナブルに事業を続けようとしているのかということです。

ピクト図解など、ビジネスモデルを見える化するためのツールはさまざまなものがありますが、簡単にいうと、何を仕入れて何を売るのかということと、人、モノ、お金、情報の行き来が分かるように自分なりに矢印で結ぶ、これがビジネスモデル図です。

SEEDATAではさらに「何故この会社がこれをやるともうかるのか」というもうけの仕組みをプラスします。

1.何故高い値段で売れるのか(売り上げに関する話)

2.何故安く仕入れられるのか(仕入れやコストに関する話)

3.何故顧客維持ができるのか(顧客維持コストに関する話)

という3点のいずれか、もしくはすべてにからくりがあるから会社はもうかるのです。ただ仕入れて売るだけなら誰でもできるので、この儲けの仕組みまでを書いておくことが重要です。ビジネスモデルそのものはその会社なり事業固有の儲けの仕組みまでは表現していないので補足が必要であるということです。

さらに、この儲けの仕組みが反映されたうえで、1プロダクト〇円など、高いバージョン、安いバージョンの価格メニューも入れておきます。

大企業においては価格の根拠も求められるのでその根拠と、「何人にアクセスすると最終的に何人が登録して何人が買います」という最終的にユーザーになってくれるまでの遷移図(ファネル図)や、1年以上続けてくれる人はこの程度いそうという顧客維持に関する説明をつけてあればベターです。

当然、これらは机上の空論で書いているのではなく、多少なりとも自分でユーザーに聞くなど当ててみることをしていなければいけません。

場合によってはビジネスモデルには、3~5年分の売り上げと原価、損益計算書(PL)をつけます。最初のうちは貸借対照表(BS)は気にしなくてOKです。

売上・利益というのはKGIで、たとえば無料アカウントの中のアクティブユーザー数を追いかけるのか、そこにいたるまでのKPIをしっかり書いておきましょう。

ここまでが事業自体の話です。

6.市場規模の話

まずは市場規模の話から入る人が多いのですが、私は最初に「誰が・どんな商品で・どんなビジネスモデルなのか」を説明したほうが通りがよい気がしています。聞く側もここまで聞いておもしろいなと思えば、本当にいけるのか、確かめる作業に入るので、ここで初めて市場や競合の分析などマクロな話をします。

市場規模はどれくらいで、どんな理由で今競合の商品が使われていて、だから競合に対してどんな強みを発揮するのかなどが書いてあるとよいでしょう。

7.マーケテイング戦略

マーケティングというのは売り込みを不要にする仕組みです。

たとえばコンテンツマーケティング、アンバサダー制度など、売り込みを楽にしてお客さんが増えるための取り組みについて書きます。これはすぐには効果が出なくてもOKです。

マーケティング戦略ではSTPを重視し、お客さんをどうセグメントし、その中のどこをターゲットにするのか、競合に対してどうポジショニングをとるのかを整理します。そのうえで、その人たちにどういうことをすれば、売り込まなくてよくなるのかということを考えます。ただし、エフェクチュエーショナル・アントレプレナーシップの観点からは競合よりも協業が大事なのでここで競合を指定するのは上申や投資家への説明のためです。

8.営業立ち上げ戦略

マーケティング戦略と営業立上げ戦略は違います。マーケティングは売り込みを不要にする仕組みと説明しましたが、そうはいっても、最初は売り込みが必要なのです。

SEEDATAではこれをアニマルセールス、アニマルアライアンスと呼んでいます。

アニマルセールスとはすごく簡単にいえば、B2Cの商品であれば「自分の家族、兄弟、親友、会社の同僚など、現在の勤務先の他の部署など一番近い人に売れますか?」ということです。「売れない」という場合はプロダクトがよくない可能性があります。一番近い人におすすめすることもできないプロダクトに関する事業計画を私は受け付けません。

アニマルセールスが「誰にどうやって売り込むか」であるのに対して、アニマルアライアンスは、「どこかと組むこと」を意味します。プロダクトもできていないうちから、がむしゃらに計画を語り、アライアンス先を見つけてきているかということです。

逆に、計画の段階でOKしてくれる人が見つけられないようでは、この先商品やサービスは売れないので、私はこの営業立上げ戦略をいちばん厳しくチェックします。

アニマルセールスとアニマルアライアンスは両方入っていなければいけません。ずっとアニマルセールスをやっていては続きませんが、最初の立ち上げ時はアニマルセールスで顧客基盤やファーストペンギンを見つけなければ、マーケティング戦略のネタはなかなか見つけられないからです。

マーケティング戦略のみをアニマルセールスなしに机上の空論で書いている企画書を見たら私なら落とします。

さらに、立上げ戦略はこれを1週間、2週間ベースの具体的な実行プランまで落としていることも重要です。たとえば、「こういうところと組んで、セミナーを共同で開催することになったので2週間に1回ずつセミナーをやります」というように。立ち上げで重要なのは、具体的なアクションプランであり、そこに落ちていないモノは基本的にダメです。

9.成長戦略

マーケティング戦略でなるべく売り込みをしないですむようにし、顧客基盤ができて一番最初のMVPが売れたあと、どう成長していくかという中長期の戦略の話が成長戦略です。

いちばんダメなパターンは、はじめに健康事業で病院サプリメントを売った後、次は学校向けに給食を売るという風に、まったく違う顧客に向けて事業を行い、売り上げを足していく方法です。

基本的にはサプリを売ったら次はその人たちに向けて野菜を売るとか、よりその人たちの困りごとを拡張して解決していくような形で、まず一人当たり、もしくは一社あたりの消費金額をどう広げていけるかを考えるのが成長戦略のひとつめです。

ふたつめは、たとえば、ライザップがダイエットで成功したから次は英語で行うという風に、自分たちの成功パターンを違うジャンルで横展開するパターンです。

この2パターンできちんと成長シナリオを描けているかどうかが重要です。

それに加え、成長のためのキーサクセスファクター(KSF)が描かれていることも重要です。たとえば、「何故サプリを買っていた人たちが次は野菜を買ってくれるのか。その成長に移るためには何を説得すればいいのか、何ができればその拡張が得られるのか」を分析したものがKSFです。

ライザップはダイエットで成功を収めていますが、何故次は英語なのか、英語にいけるというkeyとなる成功要因は何なのか、何をクリアすればよいのかが、仮説でもよいので分かっているのか、そうでなければただの絵に描いた成長プランになってしまいます。

10.オペレーション計画・人事制度

日々の仕事を、どういうスタッフやどんな組織、また、どう外と組んで回していくのかを書きます。一度に多くの注文が来たらパンクしてしまわないように、自分たちで日々のオペレーションについて考えておきましょう。

11.財務計画/リスク対応

財務計画は、売り上げ、原価がいくらという形でExcelに落とし、損益計算書(PL)の3~5か年計画を作ります。

このときに大事なのはフェアケース、プアケースの2パターンを作ることです。

フェアケースは自分たちの想定どおりになった場合、プアケースは最悪こうなるという場合で、この両方のケースをきちんと数字で示すことが重要です。

ほかにも、たとえば製造販売を行うなら回収のリスク、著作権法、肖像権の問題、薬事法など、法的なリスクをしっかり洗い出し、それに対しての現段階での対策がどれくらい考えられているかも記載します。

12.やる意義

最後に、「何故自分がこれをやる意義があるのか」という熱い思いを1枚で書きます。

コーポレートベンチャーの場合はこの会社でやる意義、何故独立ではなくこの会社でやりたいのかということを書きます。これは会社の歴史やDNAに紐づいていなければ意味がありません。

現在SD/Vでは、コーポレートベンチャーに応募したい人向けのコーチングサービスも行っていますので、詳しくはinfo@seedata.jpまでメールのタイトルを「起業のためのコーチングサービス」としてお気軽にお問合せください。

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SEEDATAでは、独自に定義した先進的な消費者群(=トライブ)のリサーチを通じて、企業のイノベーション支援を行っています。

新商品・新サービス開発、新規事業のご相談はinfo@seedata.jpまで、件名に『イノベーション支援について』、御社名、ご担当者名をご記名いただき、お気軽にお問合せください。

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宮井 弘之
Written by
宮井 弘之(Miyai Hiroyuki)
SEEDATA 代表