商社系の新規事業の進め方・アイデア開発のヒント

当ブログではこれまでも業種ごとの新規事業の進め方やSEEDATAの支援の方法について解説してきました。

営業系の会社の新規事業で失敗・成功を分けるポイント

今回は商社系の企業の新規事業で陥りがちなポイントと成功のためのヒントをお伝えいたします。

まず、商社と一言でいっても大きく総合商社と専門商社に分かれ、総合商社はエネルギー、自動車などあらゆるものを手掛け、専門商社は繊維、鉄鋼などある特定の分野の事業を取り扱っています。

今では就職先としても人気の商社ですが、私が就職活動をしていた17、8年前は冬の時代といわれていました。当時は「中抜きビジネスはなくなる」などという言われ方をしていて、就職先としても人気が落ちていた時代です。しかし、その後商社は自社のリスクで投資を行ったり、口利きするだけでなくバリューチェーンに付加価値を与えたり、複数のプレイヤーを統合しパッケージ化してまとめて流通させるなどして見事復活をとげました。

現在の商社は就職人気ランキングでも常に上位に位置し、報酬も高く、優秀な人材が集まっているといえるでしょう。

そして2019年1月現在、商社の新規事業はかつてないほど注目が集まっています。

4大総合商社(三菱商事、三井物産、住友商事、伊藤忠商事)の中では三井物産がもっともはやく新規事業に着手し、2012年4月に新規事業をスタートさせています。

同社が「イノベーション推進委員会」を発足したのは、次世代ビジネスの創造を後押しするためでした。その後「イノベーション推進案件制度」を新設、失敗を恐れない精神で新規事業の創出を支援する制度を整えました。これにより、実際に2019年1月現在までに、海外でのLTEによる高速モバイルデータ通信事業などの、9案件が事業化されています。

さらに、2014年夏には、各営業本部の枠組みを超えた案件や、個人のアイディアを会社組織として考える場としてKarugamoWorks(かるがもワークス)プロジェクトが設立されました。

下は入社2年目の若手から上は50代まで、年齢、役職などの垣根を超え、新規事業開発に意欲的な44名のメンバーが集結し、「農業・水産」「新交通システム」といったテーマごとに分かれ、1年間通常業務の20%の時間を新規事業に取り組んだのです。

第1期に創出された新規事業のひとつは、食品ベンチャー企業であるHC社へ出資、日本・アジアへの展開を図るというものでした。このベンチャーは、自社の持つ植物タンパクのビックデータを活用し、鶏卵と似た植物タンパクを見つけ出し、植物タンパクの卵のような食品原料を開発しました。植物由来であることから、アレルギーフリー、コレステロールフリーであることなどが大きな特徴です。

植物卵は現在スターバックスのクッキー生地に使用されたり、植物卵から作られた「ジャストマヨ」や「ジャストクッキー」は、ウォルマートやターゲットといった米国大手小売店で売られ人気を集めています。

今後30年で世界人口は97億人まで増加し、それにともない肉や卵、乳製品といった動物タンパクの需要は急増していくといわれていますが、飼家畜の増産には限界があるため、この事業には、動物タンパクを植物タンパクで代替するというニーズと、食糧問題を解決するという大きな事業価値がありました。

しかし、従来の企業の枠組みの中ではどこまで受け入れられるか分からないという不確実要因がある製品には簡単に投資できません。そこでKarugamoWorksでイノベーション推進案件として着目し、2015年9月、イノベーション推進案件として約18億の出資をおこなうことになったのです。

(参照記事:https://toyokeizai.net/articles/-/85798 https://www.mitsui.com/jp/ja/innovation/business/karugamo/index.html)

また、三井物産以外の四大商社や専門商社も次々に新規事業部を作り、社内新規事業コンテストをスタートさせており、SEEDATAにも多くの相談が寄せられるようになりました。

私の考えでは、商社というのはある意味常に新しい商材を見つけたり、常に新しい投資先を見つけたりしているわけで、常日頃から新規事業をしているのと同じではないかと感じます。

ただし、実際に商社の方の新規事業アイデアを見ていると、常日頃から新規事業のようなことをしていても、スタートアップ型ビジネスモデルの創造、つまりリソースが無いところからゼロイチを作るということは苦手なようです。

何故なら商社では既に付き合いのあるプレイヤー同士のつなぎだったり、売り先が分かっているうえで仕入れリスクをとったり、膨大なリソースのバックアップを享受しているため、本来の新規事業で重要な0→1で小さく立ち上げるということをしていないからです。

さらに、大手商社の場合、日頃の事業計画もかなり大きな金額単位で書かれています。ついつい新規事業の構想が壮大な話になって意外と前に進まないというパターンに陥りがちです。

では、商社マンが新規事業を立ち上げる場合はどうすべきかというと、ポイントは既存事業の隣くらいで事業を考えることです。

たとえば、現在鉄鋼で大型の取引をしているという場合、そこで拾いきれない特殊な素材、バラバラになって細々とおこなわれているような取引を、人工知能を用いてデータを一元化し、標準的な取引にするというようなアイデアが考えられます。テクノロジーやITやデータを用いて、今まで商社としては見過ごしていたマニアックな部分をとれるような仕組みにするとよいでしょう。

また、基本的には商社はB2Bのマニアックな領域をおこなっているので、マニアックな領域でメインストリームの人がやっていないところは何かという観点を持つことをオススメします。他にも大きな企業同士の合弁でないとできないような座組ありきの新規事業も向いているといえるでしょう。

商社は基本的に新規事業をやる力はありますが、ビジネスの小さな立ち上げのリーンスタートアップをが苦手なので、そこにいきなりいかず、既存の大きな商いで見過ごしているところにフォーカスしてみましょう。たとえば、面倒くさいから、ひとつひとつの金額が小さいからといった理由で見過ごされている部分は、繊維部門、食料部門、鉄鋼部門、医療部門……どこの部門にもたくさんあるので、そこに技術やITやデータで入っていきます。

もうひとつは、メインの事業で昔ながらの方法でずっとおこなっていて効率の悪いものを壊すという考え方でも、よいヒントが出てくるでしょう。

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宮井 弘之
Written by
宮井 弘之(Miyai Hiroyuki)
SEEDATA 代表