未来の買い物行動の兆しから考える新規事業アイデアのヒント

SEEDATAでは2017年から2018年にかけて、フリマアプリでの売買を積極的に行うオンラインフリマー、ECとリアル店舗の購買を巧みに使い分けるフューチャーショッパー、クラウドファンディングサイトを頻度高く利用するクラウドファウンダーという特徴的な買い物行動についての調査を行い、このシリーズを購買三部作と呼んでいます。※それぞれのトライブの詳細については記事をご参照ください。

それぞれの調査から、以下のような新しい価値観を見つけることができました。

機能より「どんな生活シーンが得られるか」を提供する

オンラインフリマー……一般生活者のカジュアルな売買のスタイル

クラウドファウンダー……作り手との新たな関係性

フューチャーショッパー(PREX消費)……動的な購買スタイルの柔軟さ

オンラインフリマーからはセリングファーストと呼んでいる売ることを前提とした購買行動、クラウドファウンダーでは商品そのものよりも商品ができるまでのプロセスを楽しみたいというプロセス消費、フューチャーショッパーでは返品を簡単におこなったり、オフラインで見たものをオンラインで届くように購入するショールーミングのスタイルなど、この三部作から現代の購買スタイルが垣間見えました。

では、この調査結果を企業目線でどう捉えていくかべきかというと、この3つの根底で共通しているのは、モノを買うときに機能を意識して購入することが少なくなっているということです。

企業目線では競合商品と比較して、機能=スペックがどれだけ高いかで考えがちですが、購買三部作からは、消費者がスペックで商品を購入しているケースはあまり発見できませんでした。

例えば、クラウドファウンダーではスペックより生産者の情熱や考え方に共感してモノを買っていたり、フューチャーショッパーでは事前にどんな体験ができるかや、どんな世界観が得られるかという観点を意識して購入(PREX消費)していました。

では、スペックではなく何を提供すべきなのでしょうか。

この三部作の洞察結果から我々が導き出した洞察は、「この商品やサービスを得ることでどんな暮らしを得られるか」という生活体験を訴求することが非常に重要だということです。たとえば、PREX消費では購入前に試着体験をして、リアリティを確認してから購入します。これは単なるフィッティングではなく、手持ちの服やバッグ、靴などとのコーディネイトを確認しています。商品の機能の良さを把握するというより、この商品があることでどんな暮らしが得られるかということを、購入前にいったん疑似的に体験したうえで購入しているのです。

これが仮に飲料だすれば、「体脂肪を燃焼する」という機能を訴求するより、「この商品はラーメンを食べる際に飲めば、罪悪感なく、よりラーメンをおいしく食べることができる」という暮らしの訴求があるかもしれません。

クラウドファウンダーは、生産者の持つ情報から生活体験イメージを読み取っていました。

たとえば、ニュージーランドで収穫された素材を活用している場合、食べる際にニュージーランドの暮らしをイメージしながら楽しむという風に、情報を暮らしに変換して、消費していることが分かります。

この生活者の考え方をビジネスに応用するためには、まずは「この商品、このサービスのビジネスドメインは何か」を考えていく必要があります。

たとえば、地域の水や小麦で作られたストーリーのあるクラフトビールの場合、クラウドファウンダーにとって、この商品はビールとしての消費ではなく、その地域に出かける気持ちを感じられる旅行として消費しているかもしれません。

そう考えるとこのクラフトビールの競合は、他社ビール製品ではなく、旅行の一種と捉えることができます。これは競合でもあり、共創できるパートナーとして見ることもできるでしょう。例えば旅行代理店と共同でプロモーションの可能性があるかもしれません。

このように機能ではなく生活をみていくと、この商品やサービスが生活者にとってどのジャンルとして消費されているかを見てとることができます。ここは生活者が無意識に思い浮かべている場合もありますが、重要なのは企業が意図的にどのジャンルのドメインで生活者に利用されているかを考え、訴求していくことです。

つまり、消費財であれば必ずしも消費財のドメインとして戦うのではなく、どんな体験を提供しているのか、広い視野に立って考える必要があるといえるでしょう。

以上のように、今後は、機能・スペックという詳細な部分を突き詰めるだけではなく、「どんな暮らしを提供するかと」いう生活の中での広い視点を持って分析していくことで、未来の生活者を掴むことができます。

機能ではなく生活を作っていく際には、2つの重要なキーワードがあります。

①生活者とつながり続ける

生活を作っていくうえでのひとつめのキーワードは「生活者とつながり続ける」ことです。生活者の暮らしをより良くし続けるためには、一度の購入で終わらず、定期的に生活者とつながっていく必要があります。

現在出てきているひとつの予兆としてサブスクリプションのような定期的に生活者に商品を提供し続ける仕組みがあります。今後の暮らしを継続的に作っていくことを考えるのであれば、一回きりで売って終わりではなく、生活者とつながり続け、生活者の細かな変化に対し適応して変わり続けることが重要になっていくでしょう。

②生活者と暮らしを作る

必ずしも完成された生活を提供する必要はなく、「生活者と共に暮らしを作る」という考え方を持つこともできます。

つまり、ある種未完成なものを生活者に提供することで、生活者が自分で解釈し、自らの暮らしにアダプトしていくという方法もあり得るわけです。われわれは、この考え方をクラウドファウンダーから読み取ることができました。クラウドファウンダーたちは、完成したものよりも、むしろ未完成なものにお金を投じることで、自らの応援という気持ちを醸成させています。

未完成なものを訴求することは、生活者にとっては、「自分で解釈、自分で作る余力のある商品」と捉えることも可能です。

生活家電を例に考えてみましょう。

例えば冷蔵庫でライフステージの変化を考えます。家事に積極的なDINKSは、野菜室を大きめにとり、生鮮食品を増やすことで料理を充実する事を求めるかもしれません。子どもが生まれ、0~2歳頃になると、子育てが忙しくなり、冷凍室を増やして保存できるものを増やしたいという欲求がますかもしれません。

子どもが4、5歳になると、子供が自分で冷蔵庫を開けられるように冷蔵室を一番下にして、背の低い子供でものどが乾いたときに自由に飲み物が出せるようにしたくなるかもしれません。

このように生活に合わせて冷蔵庫の形をカスタマイズしていくことが生活者と暮らしを作るというイメージです。決まった製品を提供するのではなく、生活者の暮らしにアダプトし、柔軟に変更できるアイデアが求められるでしょう。

SEEDATAでは定期的にエスノグラフィーを実施したり、購買行動をリサーチをすることで、このような暮らしのヒントがストックされ始めています。

2019、2020年は、機能ではなく、「暮らしのある風景」に着目してあらたなトライブリサーチを実施したいと考えています。

藤井陽平
Written by
藤井陽平(Fujii Yohei)
取締役