新規事業・新サービス立ち上げ時に必要なPoCとPoB

前回はPoCを進めるうえでのポイントについて解説しましたが、PoCのあとに待っているのがPoBです。

今回はPoBはどのような考え方をし、どのような方法で行うのか、最終的にPoB終了時点で何が分かるのかということを解説します。

PoBに必要な2つのマインドセット

PoBに入る前に企業経営者・現場担当者の双方が認識をすり合わせなければいけない2つの大切な考え方があります。

 

①リソース ・ベースで立ち上げ時のリソースを把握する

PoBの実験方法や実験はリソース・ベースで考えなくてはいけません。詳細は省きますが、RBV自体は企業内部の経営資源に価値を見出し、競争優位性を獲得する経営戦略のことです。ただ、その中でもサービス立ち上げに投入可能なリソースである人的資源、財務的資本、技術的資源の何が新規事業に活かすことができるのかを把握し、そのリソースを基にして、実験を行なっていく必要があります。サービス立ち上げ時に、果たしてどれくらいの資本と人が投入可能であるかを確認した上で、PoBの実行をする必要があります。

実現不可能な方法で実験をしても、実際のサービス立ち上げ時にそれを実行することができなければ意味がないため、企業が保有するリソース前提でPoBを考えるというスタンスを持つ必要があります。

 

②失敗を称賛する/失敗はサービス立ち上げ時の集中と選択を明確にする

失敗から学ぶという考え方はPoCでも重要ですが、PoBではさらに重要です。特に事業担当者は、様々な施策アイディアが浮かびますがその全てを全うすることは困難です。PoBの段階で失敗をしておくことで、サービス立ち上げ時に不要な施策を枠外に追いやることができます。認知施策や購買施策を行う上では複数の戦術を実行しますが、失敗したことはむしろ喜ぶくらいの気持ちで捉えることが必要なのは、サービス立ち上げ時にこの施策はやる必要がない」ということが分かるからです。

リソース・ベースの考え方とここで合流をするのですが、人数が少なければ少ないほど無駄なことはできません。実際に事業が始まる前にその無駄なことをやる必要がないとPoBの段階で明確にできれば、事業立ち上げ時に限られたリソースの中で、可能性のある施策に集中と選択をすることができるのではないでしょうか。

以上の前提を踏まえて、PoBで設定するゴールや方法をお話しします。

PoBの目指すゴール=認知から購入までの一本道を見つけること

PoBとはProof of Business(プルーフオブビジネス)の略です。

 

PoBを始める前の準備段階として、まず、PoCが終了し、顧客に提供する基本価値が明確になると、ユーザーがそのサービスを知ってから購買にいたるまでのシナリオ=キーパスシナリオ、またはカスタマージャーニーの方向性が修正されます。

PoCで顧客に提供するサービスの中心価値が分かったら、実際にその価値を起点にし、どのようにビジネスとしてお金をとっていくのか、その方法を構築し、実際に顧客に取って金銭を払う価値・体験を探索していくことがPoBの本来の目的です。

例えば、B2Cでビジネスモデルを構築する場合、PoC段階でユーザーの声や実際の反応から、ユーザーがもっとも興奮する体験や金銭を払う価値がある体験シナリオを特定することで、ビジネス仮説を作成します。

 

上記の金銭を払う価値・体験の探索に加えて、つまり消費者にサービスを知ってもらうという認知から支払いまでの一貫した一本道を見つけていくことが、PoB終了後の最終成果物として出すことが可能です。この考え方についてはいずれお話をしますが、ここで重要なのは、「一本道を見つける」ということであり、より少ない工数で、より大きな効果が得られる道をひとつ見つけることになります。通常、ここに時間をかけて立ち上げを進めてしまい、「最適解を販促から購買までの方法を時間をかけて見つける」方向へ行ってしまいますが、「最適解」よりも「最善解」をクイックに探索し、実行していくことがPoBの価値になるのです。

これは、前述したSEEDATAがリソースベースドビューという考え方を大切にしているからです。基本的にクライアントが保有している時間やその事業に携わる人、販促費用といった資産は限られていて、だからこそ、その限られた中で施策を行うことが、サービス立ち上げ時には重要となります。

より少ない工数で、より大きな効果が得られる道をひとつ見つけることができれば、サービス立ち上げ時に、初期採用者を獲得するための施策を無駄うちなく実行することが可能になります。ここでいう初期採用者とは、実際にサービスを使ってくれるユーザー、購入または購入意向を持ってくれるユーザーを意味します。

 

PoBのKPIを設定をする 

PoBの目指すゴールのKPIとして、購入者、または購入意向を設定する必要があります。本来であれば購入がベストですが、まだサービスができていなかったり、お金をとる方法がない場合は購入意向という代替案を使います。

 

KPIは、何人、何個、何円などではなく、何%で設定するイメージです。

例として、A施策、B施策という2つの施策があった場合、Aは100人にアプローチして1人、Bは10人にアプローチして1人が購入してくれたとします。すると、Aは1%、Bは10%の確率でコンバージョンしているので、Bの施策のほうがよいという判断ができるでしょう。

この基本式に加え、販管費も考慮に入れます。

例えば広告費で考える場合、施策Aは1人1円だとすると、コンバージョンまでにかかる価格は100円。一方、施策Bは1人20円だとすると、コンバージョンまでにかかる価格は200円になります。

これはかなり簡易的な例ですが、さらに、Aの施策は人員が2人必要で、Bは1人必要など、人件費も加算して計算すると行ったように、販管費全体で検討することで最善策を探索することができるのです。

リソースを踏まえたうえで、AとBどちらの施策がいいか分からない場合、最終的な基準として設けるのが1→10での拡張性が見込めるかどうかです。その施策を続けていくと最終的にどれくらいまでアプローチが見込めるかを考えて、A、Bの施策の優劣をつける事も行います。

この例はB2Cモデルを前提とした話し方をしていますが、当然B2Bでも同様に考えてビジネスモデルを構築していくことが可能です。

B2Bの場合、たとえば、データ売買、広告などであれば、PoCを完了してサービス設計し終わった時点で、このサービスではどういったデータに価値があるのか、または実際にどういった属性の人たちが集まるのかといったことが分かります。これを企業へ営業をかけることで、必要データ、広告枠のような売買できるモノ・サービスが明確になっていきます。

 

フリーミアムor広告というビジネスモデルの構築

ビジネスモデルの考え方の具体例として、ITサービスを作成したときに想定できるのが、フリーミアム(会員サービス)と広告収入です。フリーミアムの場合はB2Cモデルで、広告収入の場合B2Bモデルになります。

フリーミアムの代表的なサービスはドロップボックス、Evernote、クックパッド、広告モデルの代表的なサービスはYouTube、Instagram、食べログなどがあげられます。

 

COOKPADは、普段は単にレシピ情報が検索できればよいのですが、「もう少し効率的に情報収集したいからランキング表示させたい」といったときに課金をする情報収集効率化へのお金の支払いとなります。

この会員サービスのビジネスモデルはユーザーが感動する瞬間を早く作ることができるため、短期でのキャッシュ獲得を見込めます。ただし、ボリュームとしてはユーザー数の増加に伴い増えていくものなので、広告収入に比べ爆発的な売り上げ増加にはつながりにくいというデメリットがあげられます。

一方広告ビジネスモデルの場合、ある程度のデータとユーザー数が集まらなければ、企業に対する広告価値がないため、まずはユーザーを集めるというフェーズを通らなければいけません。そのため、広告収入の場合、広告が取れ始めれば収入は大きくなりますが、そこにいたるまでの時間はかかるモデルになります。

 

ビジネスモデル構築の時点ではフリーミアムと広告収入のどちらを先に始めるべきかもPoBを踏まえて決定していくことになります。

 

PoBで確かめるサービス認知から購入までの方法

ビジネスモデルができたら、サービスをどのように認知し、どう理解してもらい、どう使ってもらうのかを考えなければいけません。

友人からの獲得という人を介した施策をとるのか、広告などの無人での獲得を目指すのかといった切り口でサービスの認知方法を考える必要があります。

たとえば、このサービスをチラシで知ってもらうのか、またはフリーペーパーから知ってもらうのか、さまざまな方法が浮かぶ中で以下のようなそれぞれのストーリーを考えることが大切になります。

 

1. チラシを配る→チラシを持ち帰る→チラシを読む→興味がわいてDL→サービスを使用

2. チラシを配る→チラシにイベントが書いてある→イベントに参加する→イベントでDL→サービスを使用

3. FBを開く→FBに広告が出る→広告に興味を持つ→DLする→使用する

 

このような認知から使用までのさまざまな方法をだいたい10通りほど考えますが、PoC段階である程度生活者の声を獲得しているため、その中から効果的なものはある程度、仮説を捉え3、4通りくらいに絞り、PoBをスタートさせます。

 

しかし、実際に事前情報をもとにした施策をうっても、予想外のことは起きます。

SEEDATAのシニア向けサービスの事例では、ユーザーから「QRコードをよく使う」と聞いていたので、チラシにQRコードをつけて配ってみましたが、実際はうまくいきませんでした。何故なら、対象となるシニアの方々は、何回も説明しなければサービス自体を理解できない、使い方を理解できない、他サービスとの違いが理解できないから、サービス自体を使用しないということがわかったため、サービスについて説明するステップが必要だったのです。このことはPoB一回目を終えて分かりました、その後、失敗を踏まえたうえで2回目以降は、イベントを開く、説明動画を作ってシニアの方に見てもらうなど、最初に10通り用意した施策から3通り、2通りと絞っていきました。最終的に、初期のPoBは購入意向が出た時点で終了をします。

われわれがPoBで実際にみていたのは購入意向、または購買が発生するかという部分ですが、簡易なアンケートもとることで、何故駄目だったのかを分析していくことができました。ただ、PoBは1度きりで終えるものではなく、複数回回すことで精度を上げたり、他の施策を探索していくため、サービス立ち上げ以降も同様のプロセスを何度も検証していくことになるでしょう。

 

サービスの価格決定について

価格は基本的に、類似サービスや既存サービスを参考にしてその中でもっとも近いサービスと同額に設定します。もしくは、PoCの際に、普段どんなサービスにどれくらい使っているかをヒアリングしているため、その結果をもとに決定します。

たとえば、アプリに毎月3000円かけ、そのうち2000円は情報収集やニュースサイトに定額、残り1000円のうち500円はHulu、あとの500円は毎月違うところに課金しているという内訳であれば、その部分を今回のサービスにあててくれる可能性があるため、500円と設定することができます。価格はPoBの後に変更させることもありますが、初期に関してはいずれにしても実際にあててて反応を見て、修正をしていきます。ただし、これも初期の価格設定のため、サービスを立ち上げ後に価格の変動はあるので、気をつける必要があります。

現状の価格のままでは原価割れすると分かれば、あらためてプライシングをします。価格を上げることになった場合、ユーザーからはこれ以上とれないのであれば、たとえば、B2B向けにもう一度別のPoBをおこなったり、別の付加価値をつけたりし、再度PoBをしてみることもあります。

 

PoBは短くて3か月、長ければ半年くらいで終わります。

PoBを終えると

・認知の施策から購買までの流れ

・サービス立ち上げ時にうつべき施策とうつべきでない施策

・各施策の費用対効果と損益分岐点

が分かります。

 

以上がPoBの簡単なご紹介でした。

次回以降は、PoB後のサービス立ち上げまでにするべきことをご紹介していきます。

Written by
郷間大資(Gouma)
アナリスト