0→1を成功させたあと新規事業により多くの予算をつけてもらう方法

まず、これまでご紹介した新規事業部の立ち上げに必要な考え方を簡単におさらいすると、今日の大企業の何百億、何千億という規模のビジネスは、多産多死のビジネスの中で1つだけ成功し、それが何十年もかけて強固なビジネスモデルとなり、その大きさにまで成長しています。そのため、この既存のビジネスモデルに新しい商品を乗せれば、すぐに数十億規模のビジネスになることもあります。

ところが新規事業の場合、ビジネスモデルを新たに作らなければならないため、まずは大きな額を狙わず3~5億円くらいのビジネスをたくさん作り、その中のいくつかが死んでいき、残っていったものがだんだん伸びていくという群戦略をとることが基本です。

これまでの「群戦略をとりましょう」という記事は、基本的に新規事業部の立ち上げの文脈でお話していました。

では、実際に群戦略をとり、いくつかの事業は淘汰され、0→1ができたあとはどのように1→10を目指して進めていけばよいのでしょうか。

そこで今回は、PoC、PoBをおこなって成功し、2、3億円くらいの売り上げになったときに、そこからどのようにスケールをさせていくのかという点について解説します。

よくいわれるのが、売り上げも社員も5億円くらいまでは社長の人間力でなんとかなるということです。

基本的に1→10を目指す際は、いくらお金をかけるとどれくらいの売り上げが出るかというKPIが分かる状態です。

たとえば、「〇円の費用をかけると、ユーザーが〇人増え、そのうち有料ユーザーが〇人、有料ユーザーは何カ月に1回購入し、そのときの平均客単価が〇円……」というデータがだいたい把握できている必要があります。

この数字が見えてくると、個人の人間力ではなく組織で回していけるようになります。

では、どのようにスケールのためのお金を出してもらうかというと、基本的にベンチャーが資金調達をする場合とまったく同じ方法です。大企業の中の新規事業部の方は、親会社をベンチャーキャピタルや資本家だと思って資金調達をしましょう。

0→1が成功し、親会社から資金調達したい場合、まず、目標としたい売り上げに対してそれ相応の投資がかかるということを説明しなければいけません。

たとえば、ここから50億の売り上げを目指したいのであれば当然、10億、15憶の資金が必要になりますが、出せないと言われた場合、「人間力では5億が限界ですが、PoCAが成功しているので、10億投資すれば、50億、100億のビジネスにすることができます」と説得します。

会社としてどのくらいの売り上げを目指すかにもよりますが、大手企業が50億、100億のビジネスに育てたいのであれば、相応の金額は必要です。

つまり、0→1がうまくいった新規事業部の担当者は、とにかく「お金をこのくらいかければ将来このくらいの売り上げが見込めて、このくらいの利益が出る」というマジックナンバーを見つけることが重要です。

事例ベースでお話すると、たとえばネット系の会社で、最近上場したラクスルやサンサンの決算報告書を見ると、販売管理費の割合がかなり高いことが分かります。何故こんなに広告を打っているのか、それはユーザーを爆発的に増やすためです。当然今は赤字になっていますが、100億、1000億のビジネスを目指すために、今ユーザーを獲得しておけば、将来的に利益につながっていくというマジックナンバーをもっているからです。

ユーザーを競合に取られてからでは意味がないため、今投資してユーザーをためていけばマジックナンバーにしたがって利益は増えていきます。ユーザーが増えたところで販管費をおさえれば、すぐに黒字転換しますと説明すれば資金調達できるわけです。

これと全く同じことを新規事業部の担当者はやっていく必要があるのです。

よく「資金調達ができない」「会社が応援してくれない」という声を聞きますが、まずは会社には「マジックナンバーが何なのか」という話をしなければいけません。これがなければ人間力で5億を目指すのが限界です。

実際、5億円までであれば、あまり仕組みがなくても頑張って営業をすればなんとかなりますが、5億円を超えていきたいのであれば仕組み化する必須です。そのときにお手本にすべき考え方が「マジックナンバーがあるから、今は赤字でもマジックナンバーに沿って広告費をかけて客を増やしていけば黒字転換する」という先ほどの2社の事例なのです。

ほかにも、たとえば植物工場を作りたい場合、いったん植物工場を作って一度回してマジックナンバーが分かれば、数100億を投資して工場を増やします。それにより一時的に赤字にはなりますが、マジックナンバーが見えていて、その後新たに工場を作らなければ黒字になるという見せ方をしていきます。

資金調達に成功している会社は必ず「いくらお金をかけるとどれくらいの期間でどのように利益が出る」というマジックナンバーを持っています。

フランチャイズなどもよい例で、一店舗開けるのに開業資金は〇円、1日〇人の客が来て、〇か月後には黒字になるというマジックナンバーがあるから店舗を広げることができるのです。ほとんどのビジネスはマジックナンバーを見つけることが可能です。

SEEDATAのようなコンサル業でも、何人くらいのコミュニティを抱えていると何人くらい社員になる人がいて、その人たちに何年くらい教育をすると1年目いくら売り上げて……という数字があるため、あとはそこに投資をするだけなのです。逆にマジックナンバーを見つけられない場合はスケールアップできません。

どんなビジネスでもマジックナンバーは見つかりますが、それを見つける形でスケールさせたいかは美意識の問題です。スケールすると本来やりたかったことと内容が変わってしまう場合もあるためです。食品のマスプロダクトであれば、キッチンで作ったときはいいかんじだったが、量産体制にするちょっと違うと感じることがあります。このように自分のやりたいことを崩したくないから、マジックナンバーを見つけて大きくしたくないという場合もあるでしょう。

しかし量産しなければ大きなビジネスにはなりませんから、大企業で新規事業の場合は量産体制を目指す必要があります。

いずれにしてもマジックナンバーは、企画当初から出てくるものではありません。

たとえばslackのようなウェブサービスであれば、最初からマンスリーユーザー、アクティブユーザー、有料会員はこれくらいという数字がありますが、そのひな形に当てはまらないビジネスもあります。

そうでないものは、どんな業種であれ、必ず使ったお金の原因と結果はつながっているので、自分でどこに投資をしたからこの利益が出たのかを常に考える必要があります。

以上が資金調達を成功させる極意です。どんなに可能性を示してもマジックナンバーが書いていなければ意味がないということがご理解いただけたのではないでしょうか。

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宮井 弘之
Written by
宮井 弘之(Miyai Hiroyuki)
SEEDATA代表