失敗しない新規事業部の立ち上げ方③新規事業と新商品・新サービス開発の違い【後編】

SEEDATAではこれまでも、新規事業を進めている企業からご相談を受けて参りましたが、近年さらに、新規事業、新価値を創造したいという企業が増え、その際の新規事業部の進め方や制度の設計方法について質問される機会が増えてきました。

当連載では、これまで多くの新規事業創出に関わったSEEDATAだからこそ見えてきた、新規事業を立ち上げる際に担当者が陥りがちな失敗や、不安点などから、新規事業立ち上げのポイントを項目ごとにまとめ、イノベーションを進めていきたいみなさんの一助になればと考えています。

前回は、新規事業と新商品・新サービス開発の違い、新商品・新サービスを進める際に気をつけるべき点についてお伝えしましたが、第三回の今回は、新規事業を進める際に気を付けるべき点についてSEEDATA代表の宮井氏にお話をうかがいました。

失敗しない新規事業部の立ち上げ方②新規事業と新商品・新サービス開発の違い【前編】
SEEDATAではこれまでも、新規事業を進めている企業からご相談を受けて参りましたが、近年さらに、新規事業、新価値を創造したいという企業が増え、その際の新規事業部の進め方や制度の設計方法について質問される機会が増えてきました。 当連載...

ビジネスモデルを創造するのが新規事業

SEEDATAでは、既存のビジネスモデルに新たなサービスや新たな商品をのせることが新商品開発であるのに対し、新商品や新サービスのアイデアに加え、ビジネスモデルも同時に創造することを新規事業と呼んでいます。

ビジネスモデルを作るということは、永続的にお金をもらう仕組みを開発するということです。

たとえば製造業で卸に出していた企業が直販にする場合、ビジネスモデル創造を伴うので新規事業の範疇です。また、流通企業が仕入れではなく自社で商品を製造するとなれば、それもビジネスモデルの変更となるので新規事業に入ります。

また、マニアックなパターンですが、製造業の人たちが商品にサービスをつけて売るというパターンがあります。

たとえば、これまでコーヒーをECで売っていた企業が、無料で健康診断サービスをつけ、健康状態にあわせてコーヒーを売るというように、サービスがモノに付随する場合も、サービス部分が新規事業と考えられます。

ほかにも、BtoB企業がBtoCをやる場合など、顧客が法人から個人、個人から法人と変わる場合などもお金のもらい方が根本的に変わりますので新規事業の範疇です。

 

このように、お金をもらう仕組みを変えなければいけない場合をSEEDATAでは新規事業と呼びます。

 

新商品、新サービス開発はアイデアを発想して上申すればよかったのに対し、新規事業は、アイデアを作ったら実際にそれが売れ続ける仕組みになるか確かめなければいけません。

消費者に届くまでの道筋をすべて作らなければならず、場合によっては組織を新たに作らなければいけないこともあります。

期間は短くても1年、長ければ3年くらいで考え、目指すところも大きくなってきます。

 

新規事業と、前回お話した新商品・新サービス開発がごっちゃになると、新規事業を半年でやろうとしたり、新商品開発に3年もかけてしまったりするので、まずはこの違いをしっかりと意識しなければいけません。(もちろん、新商品開発でも技術開発に困難を伴い時間がかかる場合があります。)

 

新規事業を進める場合にまず整理すべき3つの点

ビジネスモデル創造をともなう場合、重要なのは発想より実行です。

新商品・サービス開発の場合は、ビジネスモデルがすでにある状態なので、商品やサービスの企画をしっかりとする必要がありました。

一方、新規事業の場合、ビジネスモデルの創造に大きく時間をかけなければいけません。実際にビジネスモデルを作るのには、1年~1年半くらいの期間が必要で、新規事業全体でトータル3年くらいの期間をかけて行います。

ビジネスモデルを固めてから、そこに乗る商品やサービスを提供しなくてはならないので、商品やサービスのアイデアをビジネスモデル創造の前に作り込んでも手戻りが発生します。

これが新規事業系のコンサルタントの方がいう”アイデアは意味がない”という言葉の背景です。ただ、このアイデアに意味がないということを鵜呑みにしてあまり詰めていないアイデアでとにかく実行してもうまくいかないので注意が必要です。

 

以下、新規事業を作っていく場合、整理すべき点をご紹介します。

1.テーマ

最初の半年で整理するのはテーマです。たとえば、シニアをやりたいとか、教育をやりたいとか、カテゴリとターゲット層を決めます。このテーマをまずざっくり決めて、テーマごとにプロジェクト化するなどして進めていきましょう。

2.社内リソース

これは大手企業の場合大きく3つあり、1つ目は営業網ですが、これは使うのがいちばん難しいため詳しくは後述します。

2つ目は技術。最終的にうまくいく大企業の新規事業は技術で優位性を発揮するので、これは最初から使うつもりで考えてよいでしょう。

3.ブランドと品質

これは新規事業プロジェクトの後半に生きてくるものですが、ブランドは、その企業の名前を誰でも知っているというレベルであれば、新規の話を見込み客に聞いてもらいやすく、これは圧倒的強みになります。

自社にどんなブランドがあり、どういった信頼を得ているのか、最初の段階で整理しておいたほうがよいですね。

ほかにも、例えば衛生管理がっかりしているとか、モノ作りならエラーが出にくいなど、品質はベンチャーよりも最終的に絶対に優れている部分なので、使えると意識しておきましょう。

このあたりをいったん洗い出してから、アイデアを作るフェーズに入ります。

新規事業の場合は5年後のニーズを考えて作る必要がある

実際にアイデアを作るフェーズでは、前回の新商品開発や新サービス開発の場合、ビジネスモデルがすでにあるため、1〜2年後くらいに売ることを想定すればよかったのに対し、新規事業の場合、ビジネスモデルを固めるのに3年程度かかってしまうので、先を見据えたものでなくてはいけません。

そのため、現在のニーズではなく、5年後のニーズを見る必要があり、ここでSEEDATAの定義するトライブという考え方がすごく重要になってきます。新商品、新サービス開発よりも、新規事業のほうが長期で未来をとらえたものでなくてはいけません。

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あとは、新商品・サービス開発の際と同じですが、自社の社員だけでやらないこと。実行の際も自社の得意なところに特化して、外のベンチャーや個人と組んだりして、最初からすべて自社でやりきるシステムにしないことが重要です。

SEEDATAではまずfuturewaveを用いて、例えば「シニアの健康をやりたい」という風にテーマ決めをしたら、すでにあるトライブリサーチのデータから、5年後にこのような価値観や行動があるのではないかという点を抑えます。

それをもとにワークショップやディスカッションを行い、10~20の事業アイデアを出します。進めてくと「やはりダメだった」ということもあるので、アイデアの段階ではざっくりでよいので、最低でも20アイデアくらいは持っておきましょう。

ここで重要なのは、例えばテーマがシニアビジネスの場合、「シニアは何万人いるからこういうビジネスをやりたい」というレベルではなく、「どういうシニアのどういう価値観を突いて、どういう行動をさせるか」というミクロレベルまでおさえたものを20案くらい持つということです。

SEEDATAではそれを「キーパスシナリオ」と呼び、消費者の未来の行動を洗い出して、「こういう行動をさせたいからこういうサービスが必要」というアイデアを、消費者経験(UX)基点で20案くらい考えます。

 

アイデアを出したら、新規事業の場合は、市場規模をつけたりと定量データも必要です。

定量データをつけて、新商品・サービス開発の話にあったようにプロトタイプを作って消費者に見せたり、実際に売り込んだりして、サービスをブラッシュアップして、実際にお金ももらえるという実証実験まで行います。

SEEDATAではこの実証実験までを、新規事業の企画フェーズと考え、ここまでで半年から1年くらいはかかります。紙の上で事業計画をつくることは企画ではありません。あくまで受容性を確かめる実証実験の結果まで揃って企画フェーズの終了です。

 

実証実験までいくと、20案あったアイデアが2、3案くらいに絞られ、その2、3案をどうビジネスモデル創造につなげるかが、通常の新商品・新サービス開発と比べると難しい点です。

これを出島形でやるか、新組織を作ってしまうか、一部を外部にやってもらうかとなるわけですが、ここでようやくオープンイノベーションの活動を行うことができます、拙速に自社の軸や企画が固まらないうちからオープンイノベーションと称して外部と接しても何も生まれないので気をつけましょう。

新規事業の0~1の部分は外部の実行支援を活用すべき

新規事業の場合、事業計画は3年くらいで考えます。

最初の1年は赤字でもいいから、このくらいの売り上げや、このくらいのユーザー数というKPIを決めます。このKPIを達成できなかったら撤退するというラインを決めておくことが重要です。

これを自社の部署でやるものと、出島で外部でやるものと、外と組んでやるものに分けていくつか作り、実証実験を走らせ、KPIをクリアできてるものだけ残し、残りの2年は実際に売り上げを出したり、品質を高めていくというフェーズに入ります。

最近「出島」で事業創造を支援するということをプレゼンテーションする支援企業が増えているようですが、実際にやっていない例も多いようですので、実態や細かいノウハウをしっかり聞き出してパートナー選定をしてください。

また、前述した自社のリソース部分ですが、プロジェクトの結果が出てようやく品質管理や顧客といった自社のリソースを使えるようになるので、最初の半年~1年は頼れないと思ったほうがよいでしょう。

最初の0~1は外と組んで自分たちの新規事業部で行い、1を10にする際にやっと会社が使えて、10を100にするところではもっと会社が使えるようになります。

老舗や大手の場合、唯一最初から使えるのは会社のブランドで、この点はベンチャー企業より圧倒的に有利です。ただし、行動力、スピードではベンチャーに劣るので、アドバイスを求めて実行を遅らせるのではなく、手前味噌ではありますがSEEDATAのような実行支援に長けた部隊と組み、一緒に0~1の部分を作れば、その後の10~100は自社のリソースを使って十分に大きくできます。実際にすでに0~1ができているベンチャーと組めば、最初から1~10ができることもあるでしょう。

なので、0~1、1~10、10~100というステップをきちんと理解し、どの段階でベンチャーと組むのか、どこを自分たちでやるのか考えて、3年くらいのプランで実行することが重要です。

 

このように、新規事業やイノベーションというのは、膨大な時間と労力が必要ですが、成功した場合は、新しい仕組みが手に入るので、新商品・新サービス開発よりも得るものは大きいのです。

新規事業の担当になったが、進め方が分からないという方は、SEEDATAにご相談いただければ、3か年の行動計画から一緒に作ることも可能です。外部の人からアドバイスだけをもらっても、自分は何をどこからどのくらい、どうやってやればいいのか具体的には落ちてきません。

一緒に手を動かして実行してくれる仲間が、最初の0~1の段階では重要だということを理解しておきましょう。

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SEEDATAでは、独自に定義した先進的な消費者群(=トライブ)のリサーチを通じて、企業のイノベーション支援を行っています。

新商品・新サービス開発、新規事業のご相談はinfo@seedata.jpまで、件名に『イノベーション支援について』、御社名、ご担当者名をご記名いただき、お気軽にお問合せください。

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宮井 弘之
Written by
宮井 弘之(Miyai Hiroyuki)
SEEDATA 代表