失敗しない新規事業部の立ち上げ方④新規事業を進める際の予算の立て方【前編】

SEEDATAではこれまでも、新規事業を進めている企業からご相談を受けて参りましたが、近年さらに、新規事業、新価値を創造したいという企業が増え、その際の新規事業部の進め方や制度の設計方法について質問される機会が増えてきました。

 

当連載では、これまで多くの新規事業創出に関わったSEEDATAだからこそ見えてきた、新規事業を立ち上げる際に担当者が陥りがちな失敗や、不安点などから、新規事業立ち上げのポイントを項目ごとにまとめ、イノベーションを進めていきたいみなさんの一助になればと考えています。

これまで、新商品・新サービス進める際に気をつけるべき点、新規事業と新商品・新サービス開発の違いなどについてお伝えしましたが、第四回目の今回は、新規事業を進める際の予算の立て方についてSEEDATA代表の宮井氏にお話をうかがいました。

失敗しない新規事業部の立ち上げ方①「アイデアも人材も経験豊富な外部の人間を入れて新規事業を回していくべき」
SEEDATAではこれまでも、新規事業を進めている企業からご相談を受けて参りましたが、近年さらに、新規事業、新価値を創造したいという企業が増え、その際の新規事業部の進め方や制度の設計方法について質問される機会が増えてきました。 当連載...

新規事業の売り上げ予算は「小さく生んで大きく育てる」という考え方が基本

今回は、新規事業やイノベーション推進部署を立ち上げた際、年間の予算をどのように考えればよいかという点についてお話します。

この予算には2種類あり、ひとつは売り上げや利益、もうひとつは経費です。

 

まず売り上げ予算の考え方についてですが、今回は新商品やサービス開発はのぞいて、前回お話した新規事業開発(ビジネスモデル創造)の予算についてお話します。

よくありがちな失敗例は、既存の自社事業が1000億という会社の場合、すぐその単位で「100億の事業を作ろう」と考えてしまうこと。これはほぼ100%頓挫してしまうんです。

そもそも、自社がこれまで色々とやって残ったビジネスだからこそ、100億の売り上げという数字があるわけで、いきなり同じレベルを狙えるはずがないんです。

新規事業の場合、いきなり大きな数字を目指すのではなく、基本的に小さく生んで大きく育てるといいう予算の考え方が必要になります。

 

具体的にオススメしているやり方は、我々はコレクティブと呼んでいますが、以前お話したように群戦略の形にします。最終目標は100億の売り上げ規模でもいいのですが、まず新規事業のテーマを決めたら、3億から5億くらいに数年で到達するような事業計画を10~20個持つという風に、群=群れで作り上げていって、それぞれの事業が伸びていくことで、最終的に数十億のものが2つ生き残り、100億になるとか、ひとつだけ生き残ったものが大きく成長する場合もあるでしょう。

これは生物の進化と同様で、小さな個体がたくさん生まれて、それが群をなして、最終的に大きな個体が育つというような考え方しています。

ひとつのものをいきなり30億以上にしようと考えないことが売り上げ予算の考え方で押さえておくべき点です。

 

このときにもうひとつ重要になるのが、どんなテーマにするかという点。異なるテーマのものを合わせて群にしても、新しいことばかりやっていてはとりとめがなくなり、学習効果がないんです。「自社の第二の事業の柱はどのテーマでやるのか」ということをしっかり決めて、その範囲ので群をつくることが一番大事です。

そうすることで、自分たちの中でテーマに関する知識や、サポートする仕組みが整って、群がどんどん生みやすくなるんです。

テーマの決め方は、何度もお話しているように今現在のニーズで作らないこと。5年後、10年後の生活者を見据えて、技術はもっと先を見る必要があります。

新規事業で群戦略を作っていく際にいちばん重要なことは、テーマ選定をする際に未来洞察をすることです。

以上が新規事業の売り上げ予算の目標の立て方についてです。

新規事業のコストの考え方①自社の新規事業部員(社員)の人件費

 

売り上げ予算の考え方について理解したら、次はコストです。

新規事業部を運営するためのコストは自社の新規事業部員(社員)の人件費、外注する費用や調査費用などの企画開発費、事業を生み育てていくための投資予算の3つのレイヤーにわかります。

 

人件費に関しては以前もお話しましたが、自社の人間は管理職1人と、実際に手を動かす人1人くらいで、あとは外部の経験者を入れたほうがよいでしょう。

 

まず、管理職にあたる人は40代くらいまでで、できれば会社経営や海外赴任の経験、または自社のメイン以外の事業をたたんだ経験があるなど、イレギュラーな経験や、社外の人と仕事をせざるを得ない状況にあった人のほうが向いています。

「新規事業は自社でエースでやってきた人に任せるべき」という意見もありますが、これは実は間違っていて、エースとしてやってきたような人は自社の人とはうまくやれたり、既にうまくいっていることを大きくすることは可能なんですが、新規事業はそもそもよくわからないところから始まるものなので、イレギュラーな状況に遭遇したことのある人を据えるべきなんです。(一般論ですのでもちろん各社人材の状況はことなることはお含みおきください)

本流で優秀かどうかより、そういった経験があるかどうかを軸に、上司が選んで抜擢すべきです。

次に、実際に手を動かす人(自社社員)ですが、いちばん重要な点はベンチャーや起業、イントレプレナーなどに興味があることで、20代後半〜30代中盤くらいの人がベストです。さらに好奇心旺盛で学習意欲がある人の方が向いています。

何故かというと、新規事業は外の人とどんどん組んで、その知見を社内に還元していかなければいけないんです。本人がイントレプレナーとして起業するわけではありませんが、外の人のナレッジを吸収してまとめて、社内の伝道者になれるような存在が必要です。

こういった条件の2人のコンビでやるのがベストで、ここに人員をプラスするのは自由ですが、この条件のそろった構成をコアにしないとうまく回りません。

ここにいきなり役員クラスの人間などを入れると人件費もかさみますが、若めの人材を活用することで人件費も抑えてスタートすることができます。

新規事業のコストの考え方②外注費用や調査費用などの企画開発費~インプットとアウトプット~

調査や企画を外注する企画開発費ですが、ひとつはオフィスをどうするかという点があります。これは外の人と交流したり、外に出ていかざるを得ない形にしたほうがいいので、オススメは自社だけでなく、コワーキングスペースなど、社外に場所を持つこと。費用は数万円から数十万まで、必要に応じて見積ります。

 

あとは、実際にアクセラレータープログラムの実施や新規事業企画を外注したい場合、2人では回せないので、御社の社員と一緒に新規事業部のほうの運用を手伝ってくれる人。これは業務委託でやってくれる人がいればいいです。SEEDATAの場合は月50万円くらいから新規事業を回す人材を派遣しています。

外注を使うケースですが、これは自分たちでやるよりその人たちが早い時、もしくはその人たちのほうがうまくいく場合、あとはずっとその人を雇う必要がない場合です。

たとえば、企画業務は一度新規事業を回してみて撤退する可能性もあるので、最初は外注のほうがいいんです。

 

企画の外注のフェーズには大きくインプット、アウトプット、コラボレーションの3つがあります。

インプットに関しては、今の世の中がどうなっているか、ニーズがどうなっているのか、データやレポートを買って調査します。これは数万から数十万で買えるもので、調査をオリジナルで行う必要はありません。

インプット費用は高くてもトータルでも100万円くらいまでを見積もって、情報収集するようにしましょう。

 

次にアウトプットは、インプットで買ったデータで世の中を分析してテーマを作ったり、未来洞察をして、具体的な新規事業アイデアを考えるのですが、未来洞察を外注する場合500万前後くらいは予算をみたほうがよいでしょう。

単なるアイデアなら数十万くらいからやってくれるところもありますが、これはフラッシュアイデアなので、インプットとして使うのはいいけれど、そのままアウトプットに使うことはオススメしません。

理由は、そもそもジャストアイデアなので詰めきれておらず実行するリスクがあること、もうひとつはどこの誰からきたのかわからないアイデアなので、すでに他で利用されている可能性があり、鵜呑みにするのは危険だから。フラッシュアイデアは軽く切り口にする程度に留めておきましょう。

上記のような理由から、アイデアを外注する際は、数十万円くらいの価格は危険で、100~300万円くらいでオリジナルのモノを考えてくれるところに依頼します。

 

また、このときに調査に時間をかけるようなところは排除し、SEEDATAのように既にデータベースを持っていたり、新規事業に長けた数人の集団に100~300万円くらいの価格で依頼すること。

逆にそれよりも高い価格レンジの会社はアナリティクスファーストなので、新商品開発のときはいいかもしれませんが、新規事業の場合は結局手戻りが発生する可能性があるので気をつけたほうがいいでしょう。

ここまでが、分析してアウトプットを出すフェーズに必要な経費です。

 

アイデアを作ったら事業計画書作りですが、これも初めての場合はやり方を学んだほうがいいので外注することをオススメします。

1本100~200万くらいでやってくれるところに依頼すれば、十分しっかりとしたものができるので、500万円など高いレンジの場合はなぜその費用がかかるのかよく検討しましょう。

新規事業のコストの考え方③外注費用や調査費用などの企画開発費~コラボレーション~

 

3つ目の経費は、事業を生み育てていくのにかかるお金です。

事業を大きくするためには、外部とどんどんコラボレーションしていくということもしなければいけないので、そのための費用です。いちばんオススメは無料から使用できるエイコンさんです。

具体的なテーマがあって、どうしてもベンチャーと組みたいという人は、「コーポレートアクセラレータープログラム」という、テーマを掲げてベンチャーを呼ぶと方法を行う会社もありますが、これは安くても800万円~高いところだと2000万円程度必要なので、そこまでして組みたいのか、機が熟しているのか真剣に考えたほうがいいでしょう。

まずは自分たちである程度やってみて、ここはできる、ここはできないなとか分かってからベンチャーと組んだほうがいいですね。

そもそも初めての場合は外部からの提案を精査することもできないし、コーポレートアクセラレータープログラムを行う会社のやっていることの背景や意味が理解できず、丸投げになってしまって知識の吸収ができないままイベントを回す形になってしまいます。そのため、コーポレートアクセラレーターは自分たちが新規事業の上級者になってからチャレンジしたほうが良いですね。

 

また、イントラプレナー養成講座や、起業家の心を学ぶ研修というようなものもありますが、研修や道場みたいなものはどれだけ受けても、実際それだけではなにかできるようにはらないので、であれば実際に社内で回してしまったほうが良いでしょう。

例えば、4人の自社社員で研修を受けるより、2人の自社社員と2人外部の経験者に常駐してもらいOJT形式でやってしまったほうが勉強になるということですね。

 

あとは社内の人から事業アイデアを公募する場合は、間接的に関わる人たちや、役員などの時間を使うこともコストの一部と考えましょう。

失敗しない新規事業部の立ち上げ方⑤新規事業を進める際の予算の立て方【後編】
SEEDATAではこれまでも、新規事業を進めている企業からご相談を受けて参りましたが、近年さらに、新規事業、新価値を創造したいという企業が増え、その際の新規事業部の進め方や制度の設計方法について質問される機会が増えてきました。 当連載...

 

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SEEDATAでは、独自に定義した先進的な消費者群(=トライブ)のリサーチを通じて、企業のイノベーション支援を行っています。

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宮井 弘之
Written by
宮井 弘之(Miyai Hiroyuki)
SEEDATA 代表