失敗しない新規事業部の立ち上げ方⑥新規事業を進める際の役員説明のポイント

SEEDATAではこれまでも、新規事業を進めている企業からご相談を受けて参りましたが、近年さらに、新規事業、新価値を創造したいという企業が増え、その際の新規事業部の進め方や制度の設計方法について質問される機会が増えてきました。

当連載では、これまで多くの新規事業創出に関わったSEEDATAだからこそ見えてきた、新規事業を立ち上げる際に担当者が陥りがちな失敗や、不安点などから、新規事業立ち上げのポイントを項目ごとにまとめ、イノベーションを進めていきたいみなさんの一助になればと考えています。

 

これまで、新商品・新サービス進める際に気をつけるべき点、新規事業と新商品・新サービス開発の違い、予算の組み方などについてお伝えし、前回は、実際に会社を作るための予算についてお話しました。

第6回目の今回は新規事業を立ち上げる際の役員の心構えについて、SEEDATA代表の宮井氏にお話をうかがいました。

【これまでの記事はコチラ】

失敗しない新規事業部の立ち上げ方①「アイデアも人材も経験豊富な外部の人間を入れて新規事業を回していくべき

失敗しない新規事業部の立ち上げ方②新規事業と新商品・新サービス開発の違い【前編】

失敗しない新規事業部の立ち上げ方③新規事業と新商品・新サービス開発の違い【後編】

失敗しない新規事業部の立ち上げ方④新規事業を進める際の予算の立て方【前編】

失敗しない新規事業部の立ち上げ方⑤新規事業を進める際の予算の立て方【後編】

新規事業は「まずは出島でやる」ことを役員に提案する

最近、大手IT系企業のイノベーション推進室の方から以下のようなご相談を受けました。

社内の新規事業チームは現在立ち上げて半年。専人は2人で残り8人は他部署の人間が20%くらいの稼働率で参画。外部にオフィスも借りている。社内でイノベーション文化を作るためにアイデアソンをしたり、アイデア公募をしたり、外のスタートアップとも組めたらと考えている。

ただ、やりたいテーマがはっきり決まっておらず、とりあえず社内でイントラプレナー的素質を持っている人を発掘していきたいとも思うし、また、外部の大企業のイントラプレナーや、新規事業担当者などとも組んで、化学反応を起こしていきたいとも考えている。

以上をこれまでこの連載でお話してきた話と照らし合わせてみましょう。

人数は上司と若い現場担当者の2人でちょうどいいし、外にオフィスも借りているのですが、肝心の全体の「イノベーション推進テーマ」がないんです。『未来はこうなりそうで、自分たちにはこんなリソースがあるから、未来をこうしたい』というベクトルがないのは一番の問題です。

今回ご相談を受けた部署の場合は、いいところまできているので、あとは未来をみすえてテーマを決めるだけです。ただ、始めてから半年でまたゼロからテーマ決めは現実的ではないかもしれません。その場合はまずは目の前にいるベンチャーと組むなり、外ですでに事業をやっているスタートアップの起業家と組むなどして、その活動の結果を集約してテーマを逆算で見つけていきましょう。いずれにしてもなにかしらテーマを掲げないと求心力が生まれません。

さらにヒアリングしてみると、他部署にいながら20%の稼働関わった社員をどう人事評価するかといった点や、上司同士の役割分担など、大企業の仕組みの中で新規事業をどうするかという制度面から一番最初に議論を開始してしまったため、作る資料が膨大になり具体的案件が進まないという問題もありました。

具体的案件や事例をなしに仕組みや枠組みを話しても、概念論ばかりでなかなか進まないのはよくあるつまずきの例です。こんな状態になってしまうと現場の部長レベルの方がひとりでなんとかするのは難しいため、本来であれば新規事業推進を開始する前段階で、役員レベルの方に上手に説明をしておくことが必要になってきます。

結論から言えば、役員の方には「いったん出島でやりましょう」と提案することが重要です。上記相談例にもあるように、新規事業の具体例がないまま、既存の大企業の経理制度や人事制度の議論を始めても、卵が先か、鶏が先かの議論に陥り、検討事項が多すぎてなかなか話が進みません。

まずは出島で事例をつくってから、その事例をどう評価するか、社内制度の枠組みに当てはめるかの議論に持ち込むとスムーズです。

新規事業の最初の0⇒1の芽を外で作るということも以前もお話しましたが、その原則に則り、社内の制度はいじらず、いったん外で実例を作り『こんないい実例があるのでこれを社内で応援するために社内の制度をどうしますか?』と結果をもったうえで話さないと「じゃあこういう場合はどうする?」という話だけが延々繰り返されてしまうのです。

役員の方に応援してもらうためにも、『まずは外で結果を作ることが大事』と上司に説明してもらうことが大切なんです。人は事例ベースでしか動けないので、結果がでないと営業部やほかの関係ない人はなかなか具体的なイメージできないんです。

新規事業をスムーズに進めるためには、まずは社内の制度などには手をつけず、最初に外で小さな成功事例を作ることから手をつけましょう。

イントラプレナーを発掘するより、外部の経験者と組んで自社の社員を教育する

新規事業を進めていく際、多くの企業が悩むのが、人材を外部から連れてくるか、社内からイントラプレナーを発掘・教育するかという点です。

結論から言うと、社内から探すより社外の経験者と組んだほうが早いです。何度も話していることですが、まずは外で起こして、自社の社員には手伝わせる形にして、教育、感化していくほうがよいでしょう。

外部の人とやる場合、一緒にゼロからアイデアを考える方法もありますが、ゼロから考える楽しさはある一方、ゼロベースなので形になりにくいというデメリットがあります。

ここでオススメする方法は、アイデアを持っている個人、もしくは2人くらいの人を企業として応援してあげるような形でやっていくこと。

すでに0⇒1のうち、0.2くらいができているところと組んだほうが、テーマも早く決まり、テーマが決まれば社内で人材を募っても、その後の事業群もできやすくなります。

前回説明した予算編成を役員に説明して、きちんと予算をとってもらえればいいですが、テーマを作る予算をとり忘れたり、テーマが今一つ決まらない場合、中でどうこうやる前に、外ですでに0.2くらいになってるものをテーマとして当てはめて似たようなテーマで連続的にやってみることをオススメします。

外部と組む場合、SEEDATAではふたつの方法をオススメしています。

ひとつは大企業の新規事業部同士を紹介し、集まってゼロベースでアイデアを出し合うということ。これは実際にそこから事業を創出するというより、新規事業といっても会社ごとに全然やっていることが違うため、オープンイノベーションをやっていくときは企業によってこんなに考え方やリソースが違うんだという、外部と組む時の醍醐味や難しさを、まず担当者に理解していただく啓発が目的です。

もうひとつは、その企業と近い領域で迷っているスタートアップを紹介し、彼らをどう助けるかを一緒にやっていければと思っています。

大企業の方は、ベンチャーはアイデアも行動力もあってすごいと思いがちですが、それは裏を返せば頑なで、実際組もうとしても、なかなか接点が見つからなかったり、スピードがあるということは一方でリスクもともなっていたりして、急にトラブルが発生することもあります。

これは頭では理解していても、実際にやってみなければ実感としてわからないので、まずは実際に組んでみることをオススメしています。

大手企業がベンチャー企業と組むときの3つのポイント

大手企業が新規事業を行うときの強みとして、信頼やブランド、ネットワークがあると以前お話しましたが、ベンチャーと組むときには、まずいきなり技術的な話をするのではなく、自社のブランド力やネットワークが使えるという話をすると、相手も興味を持ってくれやすくなります。最初は営業支援やネットワーク支援、信用を与えられるものをエンドースメント(保証効果)のあるリソースとして提案します。

ベンチャー側からすると、大手企業と組むというのは、自分たちのアイデアなどをそのまま取られるのではないかと不安を感じるものです。一方で、営業支援や品質管理、出資してもらえるのではないかという期待と恐怖がまじりあった状態です。

いきなりコアな内部を見せるのではなく、期待している部分から接点をもったほうがよいということは気をつけたい部分ですね。

次に、実際に大企業とベンチャーではスピード感は全く違うため、一緒にサービスをやろうとしても時間軸が合わないという問題が発生しますが、営業支援であればすでにあるものなので、あまり手間もかからず話が進みます。まずは営業支援として、自社の部署や取引先への紹介などから入ると、営業も意外と動いてくれやすく、信頼も築きやすくなります。

やはり、いきなりサービスを一緒にやりましょうというのは難しいので、まずは紹介ベースで様子を見ながら、徐々に互いのことを理解していくことが重要ですね。

もう1点、ベンチャーと組むときの重要な点は、みんなが知っているような有名なベンチャーは、既にさまざまなところと組んでいるので、大きなピッチイベントなどにいってそこで組む会社を探そうとしないこと。

SEEDATAでは、投資家から支援が得られなかったところや、現在グロースに困っているというところを応援することをオススメします。既にうまくいっているところの勝ち馬に乗っても、向こうの要望ははっきりしていますし、スタートアップの考え方を学ぶというよりも、営業を受けるような形になることも多く、外部とオープンイノベーションを進めていける自社の新規事業部の担当者を育てていくことは難しくなります。

CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)にはストラテジック(戦略的)投資プロフィット(利益重視)投資の2側面があり、プロフィットというのは収益目当てで、ストラテジックというのはこの技術のことを知りたいとか、会社のシナジーを目的に投資していくタイプです。

CVCが自社内にある場合で、投資を実施した先の支援を一緒にやってみるということであれば、ストラテジックに投資した先の中でもまだ世の中に知られていない企業や、これから伸びていきそうだが少し伸び悩んでいるようなところを支援していくほうがよいでしょう。

すでにうまくいっているベンチャーはある程度営業先もあったりするので、メリットを感じてくれない場合も多いため、それよりも、学生のビジコンに顔を出すなどして、顧客が見つかっていなかったり、技術的にブレイクスルーしていなかったりするベンチャーと組んで、お互いに補完関係になれるようなところと組むことをオススメします。

既にうまくいっている人を支援するより、現状うまくいっていないけれど、こうすればうまくいくかもしれないという人を支援していかなければ、担当者の見分ける目も磨かれていきませんしね。そうすることで新規事業推進担当者の眼力も高まっていくでしょう。

オープンイノベーションをしていきたいけれど、どんなベンチャーと組んだらいいかわからない、探す時間がないという場合は、SEEDATAにお気軽にご相談ください。SD/Vから起業家もご紹介できますし、会社の業種にあったベンチャーを紹介いたします。

役員の方というのは、新規事業についての一連のことを知っているようで知らない場合も多いため、現場の担当者は、オープンイノベーションの事例や、この企業とこのベンチャーが組んだなど、どんどんニュースや事例を伝えていきましょう。

結局社内の雰囲気を作るのは上層部の心構え次第なので、どういう情報を上にあげていくかがすごく重要です。役員の心構えを作っていくのは自分たちだということを常に意識してください。

失敗しない新規事業部の立ち上げ方➆新規事業部立ち上げの際の上申ポイント

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宮井 弘之
Written by
宮井 弘之(Miyai Hiroyuki)
SEEDATA代表