新規事業のMVPを設計する上で重要なキーパスシナリオの作り方

これまで当ブログの記事内では、たびたび”キーパースシナリオ”という言葉が登場していますが、SEEDATAの定義するキーパスシナリオは一般的に広く知られているキーパスシナリオとは異なります。

そこで今回はキーパスシナリオの持つもともとの意味と、SEEDATAの定義するキーパスシナリオの違いについてご紹介します。

顧客価値を明確にするためのキーとなるパスのシナリオ=キーパスシナリオ

キーパスシナリオとは、アラン・クーパーが「ゴールディレクティッドデザイン」で提唱しているインタラクションデザインの方法論です。

新商品やサービスなどを始める際、どんな課題を持った、どんなユーザーに、どのようなシーンで訴求するかなどを細かく設定した”ペルソナ”を立てるということは、マーケティングをされている方ならご存知のことでしょう。

ペルソナという何らかのゴールを持っている人格が、そのゴールを満たすために何を必要としているか、どういうインタラクションが適しているか、どんな経験をすることが重要かを手法としてまとめたのが「ゴールディレクティッドデザイン」なのです。

ここでいうゴールというのはSEEDATAでいうジョブの概念に近いものです。PCやスマートフォンの発達により、モノの購入や会員登録など、画面上で顧客の目的を達成させなければいけないシーンが増えた昨今、今一度そのゴールまでの道のりを明確にしようという考えから生まれました。

具体的には、パソコンの画面上でどんなインタラクションをして、どういう画面遷移をして、どういう風に顧客体験がなされていくか、そのためにどこにどういった機能が必要かといった要件定義をするUXデザインの文脈において用いられる言葉です。

そのため、「キーパスシナリオ」と調べると、たとえば「ここにはユーザー登録ボタンが必要です」などといった、どこにどういった機能が必要かという要件定義のシーンに用いられていることが一般的です。

デジタルのサービスを作るうえでは、ユーザーがどこで何をするかを細かく定義しないと一連の流れはできないので、「キーとなるパスを示していくシナリオ」が手法として作られたという背景があります。

キーパスシナリオに対して、コンテクストシナリオという手法もあり、これがSEEDATAの考えるキーパスシナリオに近い概念です。顧客がどういうストーリーを送るか、どこで嬉しいと感じるかを示しているのがコンテクストシナリオです。

一般的なキーパスシナリオでは、このコンテクスト(文脈)の部分が若干軽視されていますが、SEEDATAは一連の体験の中で、どのシーンでどんなジョブやどんな価値が満たされているかを今一度明確にしなければいけないと考え、あえて今まで要件定義に使われていたキーパスシナリオの原義とは違う意味で、顧客価値を明確にするためにこの用語を用いています。

では、このSEEDATAの定義するキーパスシナリオを実際にどういう風に使用しているかというと、エンドユーザーだけでなく、関連してくるステークホルダーすべてがどういう風なシナリオ遷移をしていいて、その場面でどういった価値やジョブが達成されているかをわかりやすい四コマ的なストーリーで示しています。

キーパスシナリオの例

最近、ビジネスモデル以外にビジネスエコシステム、サービスエコシステムというようなワードが使われ始めています。エンドカスタマーだけに価値が提供されていても、そのサービスや事業に関連しているほかの立場の人たち全員にとって、なんらかの価値が提供できていなければ、実はその商品やサービスは崩壊してしまうのです。

例えば、Airbnbなどを例に考えてみましょう。ユーザーにとっては安く泊まれるというメリットがありますが、貸してる側にもうまみがなければ当然成り立たちません。Airbnbでは、わかりやすく貸した側のユーザーに金銭が入る仕組みになっています。

一方、Airbnbがサービスを開始する前からあったサービスの一つにカウチサーフィンというものがあります。旅行をする人に対して無償でベッド(カウチ)を提供するという、Airbnbに非常に似ているサービスですが、今ではもうAirbnbの影に隠れてほとんど聞かなくなってしまっています。

これは、エンドカスタマーに対しての価値が明確だったにもかかわらず、部屋を貸す側の人に対して価値が提供されていなかったため、サービスとして十分に成立しておらず、一定以上のスケールをしなかった例になっています。ほかにも、新しい店舗などを考えるときも、買う人売る人にとって価値があったとしても、物流の人が損を被るようなものになっていたら機能しない事は容易に想像ができます。

このように、、すべてのステークホルダーに対してきちんとジョブが解決されていたり、価値が提供できていたりするかというのをシナリオの形式でチェックしているのです。

また、箇条書きにせずシナリオにしていることには大きな意味があります。

人間は箇条書きにしてしまうと、なんとなく「いいな」と思ってしまうのですが、シナリオにしてみるとその中の破綻している部分などがわかってくるのです。シナリオにしてみてひっかかったり変だなと感じる部分は、サービスのエコシステムが綻んでいるところであったり、成立しないところだったりするものです。また、ひとつのコマに入れる価値は基本的に1価値か、2価値にし、どんな価値があるかを明確にしています。

このキーパスシナリオは、その後のMVPの設計に密接に関わっているのですが、10コマ以上になると余分なものが多くついてしまっている可能性が高く、MVPの目的である最小限の価値の検証にはなっていません。長くても6コマ、7コマくらいの必要最小限のシナリオにすることも重要です。

キーパスシナリオで価値が実現できるかをチェックしたら、この体験をかなえるためのサービスやモノを最小限で作って当ててみるという流れをとります。

以上をまとめると、世の中で広く使われてるキーパスシナリオとは、UIおよびUXデザインの総称であり、その中でも画面遷移をUXとして呼んでいる場合が多いということ。

一方、SEEDATAではUXの中でも、ユーザーのエクスペリエンス(体験)がいかに価値を叶えるかという点にフォーカスしています。

SEEDATAのようなキーパスシナリオを作りたい場合は、まずはシナリオを書いてみて、シーンごとに区切って絵を書き、下にどんな体験と価値があるかを書いてみましょう。その際にコマの中で価値が叶えられているか、何の価値も叶えられていないコマがないかをチェックします。もし価値が入っていないコマがあるときは、本当にそのシーンはいるのかを再度確認します。

サービスや商品のいちばん重要な価値を確認するのがMVPであり、キーパスシナリオはMVPを叶えるための設計図なので、無駄なものをそぎ落とすことが重要なのです。

多くの企業の企画書には、ビジネスモデルと何ができるかは書いてありますが、このキーパスシナリオを考えず、どんな体験ができるかがおざなりになっている場合が多いように感じます。結果、その製品のいちばん重要な価値がわからないまま製品化されてしまい、当初実現したかった価値が変わっている場合もあるのです。

顧客が気にしているのはこの商品、サービスを使うと自分自身にどういう喜びがあるかという点だけであり、どんなビジネスモデルかということはほとんど気にしていません。

顧客の「嬉しい」が先にあり、それを叶えるための方法がビジネスモデルなのです。

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