【商品開発のプロセス④】情報インプット編②水平的分析プロセスと垂直的分析プロセス

これまで商品開発のアイデア発想においては着想型リサーチが有効であるということや、着想のヒントとなるトライブやデコンテというツールについて解説してきました。

今回は商品開発アイデアの分析方法についてご紹介します。

これまでの商品開発のプロセスに関する記事はコチラ

水平的分析プロセスと垂直的分析プロセス

SEEDATAのアプローチには、大きく分けて水平的分析プロセスと垂直的分析プロセスがあります。簡単に違いを説明すると、垂直はある情報に対して深堀りをするのに対し、水平は横に拡散していくイメージです。


例として、前回の記事で「冷凍食品に最後に自分で味をつけられることが母親の罪悪感を払拭する」という話がありました。これは、従来の冷凍食品は、味付けまで完成されてしまっていることが「自分の手料理を食べさせていない」というもやもやを生んでいたのに対し、「自分でちゃんと味付けをできることが自分の料理として認識できるのではないか」というアイデアです。これを「ワンポイント自己調理感」とコンセプトを立てて、アイデアを考えていきましょう。


まず、水平的分析プロセスでは「似たような商品や似たような事例は何か」と横に考えていきます。水平的に考えた場合、たとえば似たような商品として「おにぎりの中に入れて握ることができる具材の冷凍食品」があげられます。この商品の具は冷凍食品ですが、おにぎりは自分で握る必要があります。

最後に味つけすることができる冷凍食品と、冷凍おにぎりの具材という2つの点から、「最後のひと手間は母の手を加えたいのではないか」という気づきを得ることができます。そこにたとえば「ラストワン手作り感」という名前をつけ、この分析からアイデアを広げていきます。母親の「ラストワン手作り感」が大事だという視点がひとつ出てくると、そこから「ラストワン手作り感」は食材以外でも、たとえば「母親の作る通学用バッグのワンポイントだけを手作りするのが大事なのではないか」という風に応用可能になります。

また、洗濯も「乾かすまで全自動でしてほしいけれど、シミなどの汚れとりは風呂場で自分でやることに満足感を感じる」など、「ラストワン手作り感」という括りにすることで、衣食住さまざまなジャンルで働く母親向けの商品開発などのヒントにつながっていきます。


このようにSEEDATAでは、ひとつの事例ではなく、似たような事例を出して「ここに共通して見えてくる良さはあらためて見ると何だろう」と考えます。

そうすることで、ひとつの分析にもうひとつの分析を加えられるので、単純に分析の視点を2倍に広げることが可能になります。


水平的思考プロセスのポイントは、2つあります。

まずひとつは「似たような事例は何だろう」と考えて広げていくことです。そのときに近似の事例だと意味がありません。少し違うような事例や、違う業界の事例などを活用することで分析の幅が広がってヒントが見つかりやすくなります。

たとえば、今のように母親とターゲットを決めて考えている場合は、母親関連の別の事例から探しますが、逆にターゲットを規定せず、もっと広く考えたい場合、「まったく違う分野の水平的思考プロセスでもかまいません。


もうひとつのポイントは論理的である必要はなく、感覚的に似ていると思うことを導き出してくることです。

私たちがこのディスカッションを行っていると、よく「これは関係ないかもしれませんが」「まったく話が違うかもしれませんが」と、前置きを置くことがよくあります。

実際はちゃんと近いものを頭の中で探索しているので、感覚的にこれは近いと思ったものをどんどんテーブルの上に出していき、全員で「これらに共通する事項は何だろう」と分析することが大事です。


ただし、このアプローチは企業の中でディスカッションしていると嫌われる場合もあります。「全く関係ないのですが」という発言が議論をそらしているような印象を与え、嫌がる人たちもいるため、はじめに「今回は水平的分析アプローチをする」という約束事を決める必要があります。


では、垂直的分析プロセスはどうでしょうか。

垂直的分析プロセスは、わりとみなさんが普段行っているような、論理的な分析プロセスです。先ほどの水平的分析プロセスを拡散だとすると、垂直的分析プロセスは深耕(しんこう)です。

内容の深掘りで、「何故これをするのだろう」「この人たちのモチベーションはなんだろう」など、論理的に「why」を深掘りしていく作業です。

先ほどの話でいうと、「冷凍食品に自分で味付けできるかどうかが主婦の罪悪感を左右する」という例があったときに、「何故自分で味付けしたいのか」「味付けをすることで何故罪悪感を払拭できるのか」というように考えていく方法です。

たとえば、「自分で味が分からないものを子どもに与えることに対して、どこか心配や不安な気持ちがあるのではないか」というのが深掘りです。

ここから「自分で味が分かるかどうかが主婦の罪悪感を決める要因なのではないか」と考えます。このように分析的に「こういう理由があるからこうなのではないか」と考える方法が垂直的分析プロセスです。


自分で味が分からないことが母親の不安感のひとつだとすると、たとえば、夜食事を作る時間がない母親向けに、「キッチン食のデザイン」というようなアイデアを作り、キッチンで時間のない母親が、子どもの食事を作りながら食べられる総菜という方向でアイデアを考えることができるのではないでしょうか。

たとえば、あえて通常より薄味で食べる前に自分好みの味付けにすることができる冷凍食品の唐揚げという商品を作ります。そこで、半分は自分の食事用に大人好みの味付けにし、半分は子ども用に子ども好みの味付けにできるという風なアイデアが考えられます。


このように、「この理由はなんだろう?」「潜在的な欲求はどこにあるんだろう?」と分析しながら進めていくのが垂直的思考プロセスになります。


以上のように、水平的の方は感覚的な連想ゲームで、垂直的の方は論理的な分析作業という分け方になります。

どちらが優れているというものではありませんが、水平的のほうは考えてもいなかった飛んだユニークな話が出てきがちで、逆に垂直的はわりとまともで「そうだろうな」と思えるような分析内容が出てきます。

水平的は右脳を使い飛んだ内容が出る、一方垂直的は左脳を使い堅実な内容が出るという対極的なものなので、あえてこの2つのアプローチで取り組む場合は同時に行うと混乱してしまいます。

たとえば時間を分けてワークショップを行うなどして、それぞれ行ってみて、筋のよさそうな分析の方で進めていくとよいでしょう。


【この記事の監修者】

藤井陽平。SEEDATA取締役。

2015年に博報堂の社内ベンチャー創出プログラムを通過してSEEDATAを設立。設立以来ティーンからシニアまで幅広く先進生活者(トライブ)をリサーチをし、全方位での潮流・インサイト提案が得意技である。清涼飲料・菓子・食品・ヘアケア・スキンケア・不動産・生活インフラ・電化製品メーカー・自動車会社・B2Bベンチャー等、業界を問わず幅広い業界のプロジェクトを担当。

商品開発領域では、主に消費財を中心にプロジェクトを実施。プロジェクトスタイルは、社員共創型かつ短期間のワークデザインを得意とする。


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