2019.10.30 | DNVB

【DNVBの事例➉】GinLaneに続くDNVBのブランドコンサルエージェンシー

以前こちらの記事(【DNVBの事例➆】Patternへと生まれ変わったDNVBブランドコンサルGinLaneが成し遂げたいこと)で、アメリカのブランドコンサルエージェンシーであるGinLaneについて解説しましたが、GinLaneがPatternという自社ブランドを作る事業会社になった今、DNVB(Digitally Native Vertical Brand)を支援するエージェンシーは、大きくRedAntora、Mythologyの2社があげられます。

出典:https://www.mythology.com/

どちらも名だたるDNVBを支援していますが、創業当時からWarbyParker、himsといったDNVBだけでなく、コカコーラ、Googleなどの大企業も支援しているクリエイティブエージェンシーです。

当然この2社のほかにも数多くのエージェンシーがありますが、結果を出していてノウハウもあり、まさにスケ―ルに向けて展開し始めたタイミングといえます。

たとえば、Mythologyが支援したWarbyParkerは、ついにスケールに向けて躍進を遂げており、近年店舗数を増加させ、全米で100店舗以上を展開しています(DNVB全体で全米では600店舗前後といわれている)。

今回はこのRedAntora、Mythologyが、どのようにDNVBを支援しているのかを事例を交えて解説します。

たとえば男性ヘアケア用品ブランドのhimsは、まずは脱毛症に関する相談・診断サービス(アプリ)を作り、そこで先行予約を募りました。その結果、育毛剤の予約が5週間で1億円ほど集まり、その先行予約の実績をもとに大型の資金調達を実施しました。

その後、NYの地下鉄の駅ナカ広告をすべて占拠し、一夜にしてすべてhimsの広告にするという大胆なマーケティング奇襲戦を仕掛けました。これによりhimsは一気に認知度を高め、リリースしてすぐの翌週の売り上げから1億円以上を超え、そこからずっと右肩上がりという実績をもっています。

このように、ブランドをゼロから作るところから、どのような施策で認知を高めるかまでを支援しているのが彼らの特徴です。

RedAntora、Mythologyでは30名くらいのメンバーがプロジェクトごとにブランド哲学の設計から、実際にどんなデザインや戦略でブランドを展開していくかまでを設計していきます。

SEEDATA同様、莫大なデプスインタビューを実施し、老若男女(とくにミレニアル世代)の生活者の声を聞いてメンバーが吸収し、その後ブランド担当者と2~3週間の対話を重ねて、どんな哲学でこのブランドを作っていくべきか、どんな哲学なら今の生活者に共感されるのかを考えます。

しかし当然、こうすれば必ずうまくいくという必勝法があるわけではありません。生活者の価値観も生活者が見ている情報も刻一刻と変化していくため、毎回ブランドごとにどのように顧客を獲得するかはほぼゼロベースで考えていく必要があります。

たとえば、ひと昔前のD2Cであれば、とりあえずInstagramでインフルエンサーを使い、広告を打てば、ある程度の顧客を獲得できましたが、今ではInstagramもFacebookも情報洪水状態で広告を打っても砂漠に水を垂らすようなもので費用対効果は下がってきています。

そこで、あえてチャットでしか購入できないような仕組みにした健康飲料ブランド「DirtyLemon」というブランドも存在します。このブランドは、購入をチャットにすることで、顧客とインタラクティブすることを可能にしたり、メールマガジンの開封率をあげることにも成功しました。SNSを利用するだけでなく、顧客と独自につながるための方法を試行錯誤しながら彼らは作っています。

数多くのDNVBを支援しているため、ブランドの作り方や広め方などノウハウはどんどん溜まっていきますが、一方で思想が偏ってしまうという難しさも存在します。DNVBを作る際は、DNVBを作る人=ブランドアントレプレナーの主観や思想が色濃く反映されるため、ブランドの哲学やデザインが似通ってきてしまうという難点があります。

基本的には大量のミレニアル世代向けのデプスインタビューを行い、エージェンシーの人たちの頭の中にインプットすることで、ブランド哲学やデザインを作っているのですが、十分に体系立ててデータベース化はしていないため、属人的という問題もあります。いつかはインスピレーションが枯渇するという恐れもありえます。

SEEDATAも彼らと同様に日本国内で数多くの新商品開発や新サービス開発支援、ブランディング支援をおこなっていますが、上記の問題を解決するためにトライブのデータベースを随時増やし、新たな商品やサービス、ブランドを作る際は、トライブの哲学を借りて、今後どんなブランド哲学が生活者に共感されるのか、インスピレーションを受けながら開発をしています。

GinLaneが情報洪水の時代に、新しいブランド作って新しい情報を流して、どんどん疲弊していくことに疑問を感じ、直接自分たちでブランドを作り上げようという結論にいたったように、今後RedAntoraもMythologyも、これまでのノウハウを活かし、GinLaneのように事業会社として自社ブランドを立ち上げる可能性も大いに考えられます。

日本でDNVBが登場するかなり前からアメリカではすでにDNVB疲れが起き、Patternは人間らしさによりそったブランドを静かに作っていくことを選択しています。

たとえば、より人間らしいブランドの例として観葉植物のDNVBが注目を集めています。スーツケースのアウェイ、靴のオールバーズに投資していた投資家が今次に投資を始めたカテゴリです。

今アメリカでは観葉植物、陶芸、編み物といった、かつてのシニアがしていた趣味を好む男子が徐々に増加しており、デジタル上ではないアナログ上でストレス解消やマインドフルネスになるような趣味が流行り始めています。このような方向性を目指して、現在Patternもブランドを開発していると考えられます。

佐野拓海
Written by
佐野拓海(Sano Takumi)
アナリスト