2019.11.11 | DNVB

【DNVBの事例⑬】縮小市場を狙ったEqual Parts

新規ブランドの立ち上げや既存ブランドのリブランディングをする際、通常、今後大きくなるであろう「成長市場」に注目します。一方で、以前DNVBは無消費層を獲得する力があるということを、こちらの記事で解説しました。

つまりDNVBは拡大している市場に飛び込むのではなく、今ない新市場を創造したり、縮小市場を大きくする力があるということです。

拡大している市場=レッドオーシャンなので、当然競合も多くなります。

たとえば、オンライン決済サービスは、今まさにレッドオーシャンといえるでしょう。無数のサービスが登場し、主にポイント還元率で競い合っている状況は、価格競争に陥り、どのサービスも疲弊していってしまいます。これらのサービスはDNVBのような哲学を持っていないため差別化しづらく、ユーザーからしてみると、よりポイント還元率の高いもの、なるべくお得なものを使いたいだけになってしまいます。価格はどんどん下がっていく一方で、企業側は投資もしていかなければいけないため、これではブランドとしての競争優位性を保つことは容易ではありません。

だからこそDNVBは競合と競わないことが重要であり、競わなくてもいいような縮小市場=ブルーオーシャンに注目することがポイントになるのです。

縮小市場に目をつけたEqual Parts

通常縮小している市場は、起業家からも投資家からも目を背けられがちです。確かに、縮小市場で商品を作って、将来的に売り上げが先細りしてしまっては致命的です。しかしDNVBは、縮小市場の市場規模を取り戻したり、より大きくすることができる哲学を持っています。DNVBの哲学は、失われつつある文化を取り戻す可能性を秘めているのです。

なぜなら市場が縮小していることには、必ず何かしらの理由があります。市場が縮小している=ニーズがなくなっているとは一概に言えません。本当はニーズがあるのに、時間、スキル、モチベーションなど、何かしらのことがハードルや足かせになって、うまくできていないだけかもしれません。

市場が縮小している背景にこそ、潜在的なニーズや課題が隠れている可能性が高いのです。これからの潜在的なニーズや課題は、昔からある文化や慣習にも関わらず、失われつつあるところから、発見できる可能性があります。

ここに注目した米ブランドコンサルティング会社のPattern(元GinLane)は、料理の習慣化を支援するキッチンウエアブランド「Equal Parts」を立ち上げました。豊富な外食の選択肢や、手軽なフードデリバリーサービスなどが増加している現代ではキッチンウエアは縮小市場になりつつあります。

しかし、長く行われてきたことには、それなりの理由、価値があります。料理もそうです。料理をすると、ある種のフロー状態になれます。「人間は決して料理を嫌いになったわけではない。人間は根元的には時間、モチベーション、スキルさえあれば料理をしたいと考えているが、今はその3つのいずれか、または全てがハードルとなって、やりたいのにうまくできていないだけだ」と彼らは考えました。そこでおしゃれな調理器具と8週間の料理コーチングサービスを提供することで、料理をしたくてもできていない人の料理を習慣化をサポートすることにビジネスの勝機があると考えたのです。

課題から考えないで、課題を作る。ニーズがあるにも関わらず、市場が縮小していることを課題化する。そういったアプローチがDNVBの哲学を作る際には重要になります。

またEqual Partsというブランドのポイントは料理の習慣化を促す8週間のオンラインコーチングという点です。これは運営者もユーザーもお互いがWinwinmになれるサービスだからです。運営者もユーザーも身体的にも精神的にも疲弊しない仕組みができています。

そもそもPatternはGinlaneで社員が忙しくて疲弊してしまったからこそ立ち上がった会社なので、なるべくブランドの運営コストを下げたいと考えています。

一方で、生活者はサブスクリプションに対して嫌気がさしているという現状があります。毎月課金されることに対して、ストレスすら感じています。そこで期間限定で、なおかつサブスクリプション費をとらず、完全無償のサービスとして料理コーチング、アドバイスを提供する習慣化サポートをサービスとして提供しているのです。

8週間、つまり2ヶ月間行えば、ある程度料理の腕は上達しますし、料理をする習慣が生まれるという目論見で、考えれば考えるほどうまく作られています。

佐野拓海
Written by
佐野拓海(Sano Takumi)
アナリスト