2019.11.11 | DNVB

DNVB流 哲学の作り方

DNVBは哲学を持たなけれはならないという話はこれまで何度もでてきましたが、ブランドを作っている方からすると「既に我々のブランドは哲学がある」と思う方も多いのではないでしょう。しかし、DNVBにおける哲学と従来のブランディングで言われてきた哲学は根本的に意味合いが異なっています。そこで今回は、DNVB流の哲学の作り方を解説したいと思います。

従来のブランディングにおいて重視されていたものは、商品のストーリーやこだわりでした。たとえばサプリメントのRitualは、透明なカプセル容器にすることで、中にどんな原料が入っているかが分かる透明性が表現されています。これはまさに商品のこだわりの部分です。しかしこだわりを訴求するだけでは、購買までつながりません。

とくに現代はありとあらゆる商品が自社商品のこだわり情報について発信しているため、生活者は「こだわり情報疲れ」を起こしています。生産者の想いや開発者のこだわりは、どんな商品やブランドも発信し始めているので、こだわりの差別化が難しくなっているのです。商品のこだわりを聞いても、既視感があるという方は多いのではないでしょうか。

こだわりとは商品の作り方のルールポリシーのことであり、あくまで生産者や開発者視点での言葉なので、生活者の言葉に落ちていない、生活者が自分ごと化しづらいという問題があげられます。

サプリメントのRitualの場合であれば、カプセルを透明にしていることが生活者にとって、どんな嬉しさや意味があるのかが伝わらなければ意味がありません。そういった商品のこだわりを、生活者の共感や購買意欲を高めるような表現に変えていくということが、DNVBの哲学を作るということです。

たとえば、Ritualは「サプリメントに懐疑的な人のためのサプリメント」になっています。RitualのCEO自身がサプリメントの効果に懐疑的だったことから「自分に効果があった商品だけを売る」という哲学を持ち、その哲学に生活者は共感して買いたくなります。

このように哲学はブランドの考え方であり、それを伝えるだけで生活者の購買意欲を高めることができるものです。今後は商品のこだわりとブランド哲学は分けて考えていく必要があります。

商品のこだわりとブランド哲学の違い

では、こだわりと哲学の違いは何なのでしょうか。

簡単にいえば、こだわりは商品に対して紐づくものです。

たとえば「サプリのカプセルを透明にする」というのはこだわりですが、これは商品がなければ説明できません。一方哲学は、商品がなくても説明が可能なものです。

哲学は商品ではなくブランドに紐づくものなので、「懐疑的サプリは一切売らないブランドです」と説明することが可能です。

さらにこだわりと哲学の重要な違いは、こだわりを説明するだけでは生活者の購買意欲を高めることにはつながりませんが、良い哲学は説明をするだけで「買ってみよう」と生活者の購買意欲を高めることができます。

今までの商品開発では、商品に価値があるか、売れるかどうかを受容性を調査する場合、商品を見せたり、商品を体験してもらって、フィードバックをもらっていましたが、今後の受容性調査はまず商品を作る前に、ブランドの哲学を消費者にぶつけて、共感を得られるか、本当に買いたいと思ってもらえるかを検証する必要があります。その上で、購買意欲を高めるブランドの哲学にあった、こだわりを持った商品を開発していくという順番で商品開発をやっていく必要があります。

つまり商品そのものよりブランドの考え方が重要であり、それに紐づいて商品のこだわりがあるかが重要になります。商品のこだわりだけでは生活者の購買意欲を高められないため、ブランドの哲学と商品のこだわりをセットで伝えていくことがマーケティング・プロモーション上も重要になっていきます。

Ritualルは「懐疑的なサプリを売らない」という哲学があるからこそ、カプセルの透明性というこだわりにも意味が出てきます。このように哲学とこだわりが紐づいていることが重要なのです。

では、具体的な哲学の作り方を

・新しくブランドを作る場合

・既存ブランドを作る場合

で、それぞれ簡単にご紹介しましょう。

新しくブランドを作る場合はまず哲学を作り、そこから哲学に紐づくこだわり(商品の仕様)に落とし込んでいきます。

その一方で、売り上げが頭打ちになっているような既存ブランドを作る、DNVB化する場合は、まず今ある商品のこだわりをヒアリングするため、SEEDATAが開発者や生産者の方にデプスインタビューを行います。

そのこだわりは開発者や生産者の方目線の言葉なので、そのこだわりが生活者にとってどんな価値があるのか、「お客様言葉」にわれわれが変換・翻訳し、哲学化します。

哲学を生活者にぶつけて、本当に共感されるか、購買意欲を高められるかどうかを検証して磨いていき、哲学とこだわりがきちんと紐づくようブランドをデザインしていくのが、既存ブランドのDNVB化の方法です。

既存ブランドの場合、商品のこだわり自体は変えず、ブランドの哲学だけを変えるので、商品開発のコストを極力抑えながら、少ないコストでリブランディングが可能です。

最近のDNVB化事例としては、有機食品の定期宅配サービスの事例があげられます。

このサービスのこだわりは「オーガニックで無添加な食品を定期配送することで、健康的な食生活を実現する」というものでしたが、この意味が生活者にはあまり伝わっていませんでした。そこで、なぜこの宅配サービスが今の時代を生きる生活者に意味があるのかということを考え直し、ブランドの哲学を作り直したのです。

そもそも食品の定期宅配サービスがなぜ必要かを考えてみると、共働き世帯が増え、料理をする時間が減ってきたからです。さらに共働き世帯には、子どもの休みが増えると母親の休みが減るというトレードオフの構造がありました。このトレードオフはおかしいのではないか、夏休みだけでもいいから定期配送を使ってもらい母親にも夏休みを届けるべきではないか、という哲学を掲げ、その結果多くの共働き世帯から共感を呼び、売り上げも伸びました。「母親も夏休みを満喫するべきだ」という哲学があり、そのためのこだわりとして「毎日の献立に悩む時間を節約できるサービスを提供する」ということを紐づけた、日本の最近の成功事例です。

これまでの、このサービスは「安心安全な有機食品」というこだわりに寄っていましたが、安心安全や体にいいものはwant to haveであり、must haveにはなり得ず、購買まではつながっていませんでした。そこで新たな哲学を打ち出したことで、食品の定期配送サービスの必要性が伝わり、よりmust haveに近づき、購買まで結びつけることができるのです。

佐野拓海
Written by
佐野拓海(Sano Takumi)
アナリスト