2019.12.10 | DNVB

【DNVBの事例23】不動産業でDNVBの考えを活用した事例

これまではアパレル、化粧品、サプリなど消費財のD2C、DNVBをメインでご紹介してきましたが、今回は日本国内の、それも不動産のDNVBをご紹介します。

不動産とブランドは一見かけ離れたイメージがありますが、不動産の中でもDNVBに極めて近い方法でファンを獲得しているブランドがOTOGI不動産です。

https://www.instagram.com/otogihudousan/?hl=ja

公式Instagramに投稿された数々の写真を見ると、一見不動産屋感はゼロで、どちらかというと美容師やクリエイターのような格好をしたスタッフたちが紹介されています。

しかし、これこそ彼らの哲学であり、OTOGI不動産がブランドたる所以なのです。

センスのいい不動産屋という哲学

まず、ある日のInstagramの投稿をご覧ください。

引用

「不動産屋さんはたくさんのお部屋の中から、皆さまに最適なものを選ぶ仕事。

それって、経験や知識も去ることながら、センスや勘も重要。

でもセンスのいい不動産やというのがわからない

たくさんのレコードの中からその日のフロアの雰囲気に合わせて曲を繋ぐDJ。

これまでのヘアスタイルのストックとお客さんの要望、そして髪の癖などを掴み最適な髪型にする美容師。

センスのある不動産屋が必要という哲学。

チョイス、セレクトする仕事なのに、なぜ不動産屋さんのセンスや価値観の相性もお部屋探しで重視しないのだろうと、私たちは考えてます」

このように現在の不動産業界に対する義憤から「自分たちは美容師のように従業員1人1人が個性、そしてセンスを持ち、センスを売りにした不動産屋を作る」という哲学を掲げています。

もちろんセンスがあっても仕事が丁寧でなければ支持されることはありません。見た目の派手さとは裏腹に仕事は丁寧というギャップも彼らの魅力のひとつといえるでしょう。

また、一風変わったOTOGI不動産ですが、ほとんどが口コミと紹介で広がっているという特徴があります。

「DNVBは初期コミュニティが重要」ということはこれまでの記事でも解説してきましたが、OTOGI不動産の代表をやられている方は実は元芸人で、初期のファンコミュニティは芸人コミュニティから始まっています。

芸人は、バイトをしながら劇場に出ている駆け出しの人もいれば、テレビで活躍する有名な人まで、様々な人がいて、ステージによって選ぶ家も変わってきます。だからこそリーズナブルな物件からハイグレードな物件まで、どんな要望でも否定せず聞いてくれ、幅広いニーズにすべて対応してくれることが、多くの芸人たちに支持されているのです。

さらに、取り扱う物件は、2万円から1億3000万円までと幅広く、初めての一人暮らしから家族住まいまで、「お客様を選ぶことをしない」ことをモットーとしています。

不動産選びにおけるさまざまな義憤

店舗は荻窪にありますが、打ち合わせや相談で直接店舗に来てもらうことはほとんどありません。申し込み後、まずはLINE交換をおこない、依頼人の指定のカフェなどに訪れて物件選びの打ち合わせをおこないます。

これまでの不動産選びでは「こんな条件の物件に住みたい」と希望を相談しても「そんな物件は(この値段では)ありません」と、お客様であるにも関わらず、高圧的な態度を取られてしまうという現実がありました。とくに、一人暮らしの物件を探す10代、20代では顕著です。

OTOGI不動産の利用ユーザーも20代がメインですが、実際SEEDATAがインタビューをおこなったユーザーの方は、今まで3回の引っ越しを経験しましたが、過去に不動産屋さんに横柄な態度をとられたことがあったそうです。

しかしOTOGI不動産は「そんな物件はありません」などと否定は絶対にせず、理想に近いものを全力で探してくれたことから、不動産屋に対するイメージが大きく変わったといいます。

「若いから」「女性だから」「お金を持っていないから」「不動産の知識がないから」…さまざまな理由でマウントを取られてしまう不動産屋とお客さんのフラットでない関係に、OTOGI不動産のメンバーも強い憤りを感じていたのではないでしょうか。

たしかに、6万円で駅近で風呂トイレ別、オートロック、1LDKというような無理すぎる条件を出せば、いつまでたっても希望の物件にはたどり着けないかもしれません。しかし、本当は希望に近い物件があるにも関わらず、妥協点を探りながら希望に近い、納得できる物件を親身になって探してくれる不動産屋はなかなかありませんでした。

住む場所を決めるということは、人生で大きなウエイトを占める選択だからこそ、不動産屋の都合で物件の出し渋りがあってはならないとOTOGI不動産は考えているのだと思います。

そのため、依頼人の希望に合いそうな情報はすべて公開し、20軒、ときには30軒でも内見することがあるといいます。

むしろOTOGI不動産の方から「妥協しないように、後悔しないように、もっと物件を見た方がいいのではないでしょうか」と手間を惜しまず、提案してくれるからこそ、依頼人は気兼ねなく家探しできることが、OTOGI不動産の大きな魅力のひとつです。

 

このように、お客さんのすべての条件を聞き、一切否定せず、不動産屋も妥協しないというスタンスでやっているからこそ、満足度が高く、リピーターも多いといいます。

最終的にみんなが自分の満足できる物件に出会えるからこそ、自然と人に紹介したくなり、口コミが広がっていくのです。

当然彼ら自身はDNVBを意識してOTOGI不動産を作ったわけではありませんが、ユーザーからの共感を集める義憤をもったブランドを作ろうとして、結果としてDNVBになったといえるかもしれません。

 

彼らはInstagramで哲学を発信し続けていますが、勘違いしてはいけないのは、哲学はこだわりや意見の押し付けではありません。あくまで物件の選択肢をキュレーションするところまでが彼らの仕事であり、内見に行ってもお客さんの選択をぶらさないために営業トークや、自分の意見は無理に口にしないといいます。

またOTOGI不動産の社員は、もともとお客さんで、OTOGI不動産のスタイルに共感してくれた人をヘッドハンティングしているというのも特徴的です。

 

ある日のInstagramの投稿にはこのような文章があります。

 

引用

「良い部屋!ってその時だけ思わせるなんてことは簡単で、、

そんな、一瞬のごまかしよりも住んでいて後悔をしないようなお部屋を見つけることが私たちの目指すところ。

まぁ住めば都って考えもあるけど、、

そんな結果論の意見なんて私たちには必要ない。

私たちは私たちなりのオリジナルなやり方でいきます。

やっぱり住んでから後悔して欲しくないからね◎

#OTOGI不動産」

 

この正直すぎるメッセージを読むだけで、依頼してみたくなる方も多いのではないでしょうか?

その言葉を聞くだけで購入したくなる(この場合依頼したくなる)のがDNVBで重要なブランド哲学なのです。

 

最後に、OTOGI不動産の哲学に紐づいた5つの特徴をご紹介します。

 

引用

「1.丁寧に、仕事をし強引な営業はしません。お客様が納得するまでお付き合いします。

2.家賃2万円の風呂なしアパートから1億3000万円の一軒家まで。初めての一人暮らしから家族連れまで。エリアの制限は御座いません。

3.相談は出張可能。お部屋案内も現地集合、現地解散可能。お時間もお客様のご都合に最大限合わせます。

4.お部屋案内は駅からお部屋までの距離、街の雰囲気を確かめていただくために徒歩での案内を推奨しております。

5.お客様は芸人、ミュージシャン、モデル、学生、編集者、ニートetc。スタッフは経験豊富なので審査や初期費用の不安など遠慮なく本音でご希望をお伝えください。」

 

LINE(デジタル)上でやりとりし、ブランディングはInstagram(デジタル)上で不動産屋ではなく美容院としてみせている、なぜなら「不動産屋にもセンスが必要」という哲学があるから、といったように、哲学とデザイン、彼らの行動がつながっていることもDNVBでは重要なのです。

これまでも、DNVBはあくまでブランド創造のことであり、必ずしもプロダクトは必要ないとお伝えしてきましたが、今回はサービス業である不動産のDNVB事例(結果としてDNVBになった事例)をご紹介いたしました。

佐野拓海
Written by
佐野拓海(Sano Takumi)
アナリスト