2019.07.22 | DNVB

【DNVBの事例①】Walmartに買収されたDNVBブランド「bonobos」は何故うまくいかなかったのか

これまでの記事では、DNVB(Digitally Native Vertical Brand)という新たなビジネスの形態が登場した背景DNVBとEC、D2Cとの違い、そして最終的にDNVBが目指すゴールについて解説しました。

今回から、このDNVBの具体的な事例をひとつずつご紹介していきます。

DNVBの先駆者・bonobos

米国のDNVBにおいて、もっとも盛んなジャンルはファッション・アパレルの分野になります。その中でもDNVBの先駆者といわれる存在が、2007年創業のオンラインメンズアパレルブランド「bonobos(ボノボス)」です。

前回の記事でも解説したとおり、「DNVB」という言葉はbonobosを立ち上げたCEOのアンディー・ダンが作りました。そんなbonobosを先駆けとして、原価の透明性をうたった「EVERLANE(エバーレーン)」や、試着室のみで売り場を持たない「Reformation(リフォーメーション)」というプライベート空間を重視したブランドなど、アパレルの分野では様々な特徴を持ったDNVBが次々に登場しています。

bonobosはもともとECショップとして立ち上がったアパレルブランドですが、米国でここまで有名になった理由は、オンラインショップだけでなく、ユニークなリアル店舗も持っていたということです。ただ、このリアル店舗は販売を目的としない店舗であることが特徴です。販売ではなく、試着をしたりブランドの世界観を味わった上で、欲しい場合はオンラインで購入するという顧客体験がデザインされていました。今でこそ一般的になりつつありますが、当時は斬新で注目を集め、bonobosは売り上げを拡大していったのです。

また、bonobosがDNVBとして成功したもうひとつの理由は、配送技術の発達により、商品注文から到着までが、「未だかつてないほどスピーディに行えるようになった」という社会的背景もありました。つまり生活者は店舗に行き、その場で購入できなくとも、お得に購入できるのであれば、オンラインで注文をして家に届くのを待つということも厭わないと、生活者の価値観が変化していたということです。

これらの背景が相まって、この新しい顧客体験が生活者に受け入れられるようになっていきました。

さらに、店舗で在庫を持たないため、従来の店舗型のブランドよりも低価格で提供できるということもポイントです。

つまり、bonobosには、

・事前に試着ができるという品質面でのメリット

・デパートなどにあるブランドと遜色のない商品が安く手に入るという価格面でのメリット

があります。この品質破壊価格破壊という2つを両立しているブランドがDNVBなのです。

さて、店舗では販売を目的とせず試着のみので、購入はすべてオンラインという特徴で一躍有名になったbonobosですが、やはりオンラインで購入するのは基本的にデジタルネイティブ世代の人々になります。

スマホでの購入に慣れているミレニアル世代たちだけでは、10億、20億円規模の売り上げを獲得することはできても、そこから100億単位でスケールすることは困難になります。

そこでbonobosは、これまで店舗で売らないことをブランドの特徴としていたにも関わらず、よりパイを拡大することを目的とし、2017年、米国全土にオフライン店舗を持つWalmart(ウォールマート)に事業売却し、手を組んだのです。

一方、Walmart側の狙いは、大手ECプラットフォームであるAmazonに対抗することでした。日本ではまだあまり有名ではありませんが、AmazonはファッションブランドのPB(プライベートブランド)も展開しており、売り上げも好調です。つまり、Walmart側はAmazonに対抗するためにbonobosの服を販売し、bonobos側はパイ拡大のためにデジタルネイティブ世代以外の人たちに向けてWalmartでの販売を始めたのです。

ところが、これはうまくいきませんでした。

DNVBは「Vertical Brand」という名が表すとおり、ブランドの「世界観」が重要であるにも関わらず、Walmartという一般大衆向けのブランドで販売したことで、bonobosの洗練された世界観が壊れ、ブランドとしての価値が下がってしまったと考えられます。

Walmartは現在、bonobosの売却を検討中で、来年以降はDNVBの買収をストップするそうです。

このように、多くのDNVBの目的は大企業へのイグジット(売却)であるという話は前回からしていますが、イグジットした結果、大手企業とうまくシナジーを生むことができている成功事例は、まだまだ多くありません。

たとえば、P&GもさまざまなDNVBを買収していますが、自社の「P&G」というロゴを、買収したブランドのプロダクトにつけて売る場合と、つけないで売る場合があります。

そもそものブランドの世界観が確立されている場合はつけないほうが良いですし、モノによってはつけたほうが大手メーカーによる信頼感が増し、売れる場合もあるでしょう。ひとついえることは、必ずしも大手企業のブランドロゴをつけたほうがよいというものではないということです。

DNVBを買収するよりも自社でDNVBを作る

bonobosの事例をSEEDATA的に解釈すると、海外の大手企業のように次々にDNVBを買収しても必ずしもシナジーを生めるわけではなく、逆に売り上げが減退するというリスクも孕んでいます。

そこで我々がオススメしていることは、大手メーカーが自社でDNVBを立ち上げるということです。そうすれば買収の移管コストもかかりませんし、何より当初から一貫性を持ってブランドの世界観を構築していくことが可能になります。事実、WalmartはDNVBの買収はストップしようとしていますが、自社のPB(プライベートブランド)は比較的好調で、PBの育成は引き続きやっていくということを表明しています。

現在の日本の市場には、まだDNVBスタートアップも少なければ、それを支えるVCの資金も潤沢ではありません。しかし、ものづくり大国である日本の大手メーカーのモノを作る力は強く、まだまだグローバルで戦っている力があると思っております。今後、日本の大手メーカーがDNVBの考え方や方法を取り入れながら、新たなブランドを作っていくことはできるはずです。

米国のDNVBのように、完全に外(スタートアップ)のものを買収するのではなく、ゼロからSEEDATAと一緒にDNVBを作っていくパートナー企業様を募集しております。

ご興味を持たれた企業の担当者さまは、ぜひinfo@seedata.jpまで、御社名、ご担当部署、担当者名を記載の上、件名に「DNVB開発について」と記入のうえご連絡ください。

折り返し弊社のサービス開発担当がご連絡差し上げます。

佐野拓海
Written by
佐野拓海(Sano Takumi)
アナリスト