2019.08.05 | DNVB

【DNVBの事例②】DNVBはフィルターバブルをうまく活用している

これまでの記事では、DNVB(Digitally Native Vertical Brand)という新たなビジネスの形態が登場した背景DNVBとEC、D2Cとの違い、そして最終的にDNVBが目指すゴールについて解説しました。

このDNVBについてさらに深く理解していただくため、DNVBの持つ特徴を、事例をもとにひとつずつご紹介していきます。前回はDNVBの生みの親ともいえるBonobosの事例についてご紹介しました。

今回はDNVBとフィルターバブルの関係についてです。

DNVBをデザインする際に必要な哲学とストーリーの違い

GoogleやFacebookなどの検索結果のパーソナライズ化により、自分の趣味嗜好に 合わせた情報しか見れない現象をフィルターバブルと呼びます。

たとえば、今まで新聞の一面に何を載せるかを個人が選ぶことはできませんでしたが、WEB上ではそれが可能になり、キュレーションメディアや友だちのコミュニティ、個々のグループなどが自分に最適化されていき、知らず知らずのうちに自分たちに都合のいい情報しかとれない状態になっていると警鐘が鳴らされています。

ところが、ことDNVBを設計する段階においてはむしろ積極的にフィルターバブルを作っていくべきだと私は考えてます。

ブランド育成という意味でも、消費者とブランドの関係という点でも、フィルターバブルは育てていくべきものなのです。

DNVBがフィルターバブルを逆手にとっているからこそ生まれたブランドのひとつに「Draper James(ドレイパー・ジェームス)」があります。

この、モデルがアメリカの国旗を持つという大胆な広告から私がイメージしたのは、アパレル版の「アメリカファースト」という考え方です。

「アメリカファースト」という言葉はみなさんご存知だと思いますが、端的に説明するならば「自国の利益を最優先に考えた結果、国際協調のバランスが崩れてもやむなし」というドナルド・トランプ現アメリカ大統領が語った考えかたのひとつです。

通常アメリカのアパレルブランドのデザイナーといえば、ニューヨーク、シカゴ、ロスなどのデザイナーを起用しがちですが、Draper Jamesが特徴的なのは、アメリカ南部のデザイナーや職人しか使わず、南部の職人や文化を守りながら、製造もアメリカでおこなうことを宣言している点です。

つまり、アメリカが好きで、アメリカファーストという考えかたに感銘を受けている人たちを念頭に、それに類する情報だけが入ってくるような世界(=アメリカファーストのフィルターバブル)を作れば、Draper Jamesのような思い切ったことができるのです。

Draper Jamesはある種のアメリカファースト(この場合さらに南部に限定)的な考えかたを貫き、DNVBとして成功を収めているといえるでしょう。

大きな企業の中のひとつのブランドの場合、必ず隣のブランドとの兼ね合を考える必要があるため、どんどん丸くなっていき、結果誰のためのブランドか分からなくなっていくということが往々にしてあります。

しかし、フィルターバブルを活用すれば、モデルがアメリカの国旗を持っていようが、周囲に何を言われようが耳に入ってくることはないのです。

これが私が言う「哲学」の必要性です。

フィルターバブルと哲学は切っても切れない関係にあります。哲学をどんどん尖らせていくと、必ず反対する人が出てきますが、現代の消費者はひとつひとつの商品の機能には満足しているため、尖った=はっきりとした哲学が必要なのです。

では、哲学とは具体的にどのようなものでしょう。

よくある勘違いとして、哲学=ストーリーやこだわりだと思っている人がいますが、

ストーリー、こだわりは、やったことの積み上げで、それに対して、哲学は「やらないこと」の主張だと定義することができます。

たとえば、豆にこだわる、土にこだわる、製法にこだわる、産地にこだわる、それをどんな思いで実現したか……など、やったことを延々積み上げていくのがストーリー=こだわりです。

ストーリーやこだわりももちろん重要ですが、SEEDATAの考える哲学とは少し異なります。

哲学とはずばり、「何をやるか」ではなく、「何をやらないか」というスタンスであり、「アメリカ南部のデザイナーと職人しか使わない」という部分こそが哲学です。

哲学とは思い切って「やらないこと」を決断できているかどうかであり、これがこれからのブランディングにはもっとも重要であり、難しい部分ともいえるでしょう。

何故ならこのような思い切ったことは信念がなければできないからです。

しかし、今後ますます、熱狂的なファンと一緒にフィルターバブルの中でブランドを育てていこうという信念を持ったブランドこそが消費者に支持されることでしょう。

今回ご紹介した「哲学とストーリーの違い」はDNVBをデザインする際にはとくに意識する必要があります。

これまで世界観、デザインの統一性、ストーリーなどが重要視されてきましたが、これらを多くのブランドがやりつくした結果、現代の消費者は「何をやるか」ではなく「何をやらないか」という引き算を求めているのです。



DNVBについてさらに詳しく知りたい方はSEEDATAまでお問合せください。

info@seedata.jpに、御社名、ご担当部署、担当者名を記載の上、件名に「DNVB開発について」と記入のうえご連絡ください。コンタクトフォームはこちら。折り返し弊社担当がご連絡差し上げます。

【関連記事】

SEEDATAホワイトペーパー無料ダウンロードのご案内

失敗しない新規事業部の立ち上げ方(ホッキョクグマ)

新規事業を立ち上げの際に担当者が陥りがちな失敗を項目ごとに解説(全25ページ・493KB)



宮井 弘之
Written by
宮井 弘之(Miyai Hiroyuki)
SEEDATA 代表