2019.12.20 | DNVB

【DNVBの事例27】DNVBにみられる開封の儀(Unboxing Experience)

SEEDATAではこれまでもDNVBについて解説してきましたが、今回はDNVBの商品が自宅に到着した際に箱を開ける瞬間を写真や動画に撮り、InstagramやTwitterなどのSNSにアップする「開封の儀」について、SEEDATA流に分析し解説します。

 

開封の儀は英語ではUnboxing Experience(アンボクシングエクスペリエンス)といいます。

実際 Instagramで「#Unboxing」とハッシュタグを検索すると、さまざまなブランドの開封動画や写真を見ることができます。

開封の儀は、もともと家電やガジェット好きの間でよく使用されていた言葉ですが、最近では消費財やファッションの分野でも登場しているということが特徴的です。

 

では、具体的にどんなUnboxingがあるのかを見ていきましょう。

最近SEEDATAでは、アメリカのDNVBブランド『Haus(ハウス)』の食前酒を購入しました。

写真を見ていただくと分かりますが、開けた瞬間に「Nice too meet you=(はじめまして)」というメッセージが出てきます。このメッセージによって、商品が初めて到着した際に、ブランドのキャラクターや人格を感じることができ、自然と愛着がわく仕掛けになっています。側面にも「Thank you for inviting us =私たち(ドリンクが2本入っているため複数形)を招待してくれてありがとう」というメッセージがあるなど、人間味を感じることができます。

 

また、外からは中身が分からないような箱に入っているということもDNVBブランドの基本的な特徴です。

単なる商品とブランドの違いを分けるのは「商品を開ける前にワクワクするかどうか」であると言えるのではないでしょうか。

たとえば100円ショップの商品は中身がわかりやすく見えているので、パッケージを開ける瞬間にワクワクするといったことはないでしょう。一方で、時計などの高価なものはあえて中身が見えないような箱に入れられていて、開けた瞬間に「やっと出会えた」という感覚が生まれるはずです。これが実はブランドの正体です。

これまで、中が見えない箱にはiPhoneや時計などの高価な商品入っていることが普通でしたが、DNVBは日用品も含めて、上質感のあるパッケージに入れて届けることで、開封の瞬間の特別さを演出しています。

当然自分で購入しているものなので中身は分かっていますが、それでも開けた瞬間に感動を覚えるような商品というのは、ブランドからの自分宛てのギフトに近い感覚といえるでしょう。

 

このように、箱を開けた瞬間にいかに顧客のエンゲージメント(ブランドへの愛着感)を高められるかが、DNVBにおいて重要だと考えています。これまでもD2CやDNVBは顧客と直接つながって、直接価値を届けるブランドだと解説してきましたが、箱を開けた瞬間こそ初めて顧客と繋がる瞬間であり、その瞬間をとても大事にしているのです。

 

ここからいくつかおもしろい開封の儀をご紹介します。

 

①TRITICUM

スペインのTRITICUMという芳醇な香りを特徴としたベーカリーのパンは、穴の開いた箱に入って届きます。開封前にその穴からパンのにおいをかぐことができるため、味への想像力が掻き立てられ、食べる前からワクワクできるという体験が設計されています。

 

②RITUAL

当blogでも何度かご紹介しているサプリメントのRITUAL (リチュアル)は、サプリの袋に購入者の名前が印字されています。それも日本の処方箋のような単なる印字ではなく、「Made for 〇〇」「Hi 〇〇」など、ちょっとしたメッセージになっていて、人格を感じることができます。

実際、名前を印字するだけで、リピート率が上がることも分かっています。

以前解説したように、DNVBの商品に重要な要素のひとつがパーソナライズ(※記事リンク)です。

パーソナライズというと機能や成分のパーソナライズという文脈で語られがちです。RITUALも体調や症状に合わせて調合してくれるサプリメントのパーソナライズサービスですが、ポイントは、パーソナライズされている”感”を感じられるかどうかです。パッケージに自分の名前が印字されているだけで「自分のために作ってくれた」ということを感じることができるため、これもパーソナライズの一つといえるでしょう。

 

これからの顧客体験では、ルーティンではなく儀式をデザインするべきである

 

開封の儀とは名前の通り、儀式です。これらの「儀式をどう作るのか」という、儀式=リチュアルデザインという研究分野も存在します。

儀式とは特定の状況下で毎回おこなわれるもので象徴性と意味性があるものを指します。たとえば、教会で神様にお祈りを捧げることは意識や自覚を持っておこなうことなので、意味があります。

一方、ルーテティン(お決まりの所作)など、意味がないものは儀式ではありません。たとえば、サブスクリプションサービスで毎月届く商品を意味なく開けていている場合は、儀式ではなくルーティンになってしまっている可能性があります。

 

ルーティンを儀式化するためには、より顧客との仲を深めていく必要があります。最初は「Nice to meet you(はじめまして)」だったメッセージが、2回目は「Hello,Again(また会えてうれしい)」という風に変化し、毎回届くメッセージが変化すると、次は何が書いてあるのだろうと楽しみになるはずです。まさにブランドとユーザーの距離が縮まり、仲良くなるプロセスそのものです。

 

実際、アメリカで数多くのDNVBを支援してきたクリエイティブエージェンシーのGinLane(現在はPattern)のCEOは「ブランドとユーザーは最終的に親友になっていくもので、親友になるのに毎回自己紹介は必要ない。定期配送では毎回同じ商品を送り、毎回同じ説明が入っているが、これは人間関係でいえば毎回自己紹介をしているようなものだ」と語っています。

つまり、一度購入してくれた人が次に購入する際には、一度目とは違うコミュニケーションをするべきなのです。

 

だからこそ、毎月同じものを送り届ける、一般的な定期配送サービスは儀式にはなり得ないのです。

儀式化するためには、毎回異なるコミュニケーションをとることがブランドのサービス体験を向上させる上で重要になります。

これからのサービスやブランドの体験をデザインするためのキーワードは、「いかにルーティンを作って継続購入してもらうかではなく、儀式をデザインしていくか」ということになります。

開封の瞬間にどんな意味性を持たせられるかという体験が、結果としてリピート購入につながり、開封体験に意味が出れば、その内容を発信したくなり、意味性を出せば出すほど、SNSでシェアされやすいというのも特徴的です。

 

現在サブスクリプションサービスを検討している企業の方は、一回きりの購入で終わらせずリピート購入してもらうためには、いかに儀式を作っていくかということを考える必要があります。

そのためには、一般的な流通や小売プラットフォームを介さず、Direct-with-Consumerで顧客と直接つながりながら、意味のある儀式を作り出していくことが重要です。

佐野拓海
Written by
佐野拓海(Sano Takumi)
アナリスト