2019.09.07 | DNVB

【DNVBの事例➆】Patternへと生まれ変わったDNVBブランドコンサルGinLaneが成し遂げたいこと

SEEDATAではこれまでもアメリカのDNVB(Digitally Native Vertical Brand)の事例とその成功要因を分析してきましたが、今回はアメリカの大手ブランドコンサルティングエージェンシーであるGinLane(ジンレーン)が、Pattern(パターン)というDNVBの事業会社に転身した事例をご紹介します。

まず、以下の声明文を御覧ください。

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Hello. We’re Gin Lane…and Now We’re Pattern

(※外部サイトにリンクします)

↓以下リンク先要約文↓

Patternはこれまで、GinLaneの活動を通じて15ビリオン近いブランドを作り上げてきた中で、ミレニアルズのインサイトを完全に把握してきました。

それは、彼らの50%が仕事に疲弊し、スマートフォンに生産性を奪われていると感じていること。つまり、「何かをしなきゃ(Do more)って思わされる状況から脱却させてあげることが重要。

そういうストレスの中で、人びとはキャンプやクッキングや絵描きなど、新しい趣味の中に本質的なenjoymentを見出し始めている。それは仕事にもスマートフォンにも提供できない何か。です。

1000を超えるユーザーインタビューの中で、彼らの自己肯定感や健康観、習慣を聞いていくと、これらのニーズを満たすものを自社で作れると考えた。

今なら消費者と直接対話し、自分の時間・注意・エネルギーを取り返し、それを自己の幸せに向かわせる手助けができると考えている。

Patternはマルチブランド消費財会社。1つの傘の下に複数展開し、それぞれが1つの目的「To help our generation find more enjoyment in daily life.」を目指す。

1000を超えるインタビューで出た議論に対するアンサーをこのブランドで構築する。習慣を変えるのは容易ではない。たった1つのブランドではもっと難しい(だからこそマルチブランドで習慣ごと変えていく)。

最初のブランドはEqual Parts(キッチンブランド)。続くブランドは家のメンテナンスや趣味に関するもの。ある種のコミュニティではこういったものはなかなか取り組むことが難しい。そのため、他のパターンブランドの収益の1%を提供し、繁栄に必要なリソースを賄う(?)

また、デジタルエリアでのブランド育成にも興味がある。我々はこれまでD2Cと呼ばれていたが、これからはDWC(Direct with consumer)というモデルになる。

ブランドの立ち上げはこれまでになく簡単になったが、ブランドの成長はますます難しくなっている。参入障壁が低いため、ノイズや模倣品が導入されており、限られた製品での発売は、1つのブランド名で他のカテゴリーに拡大するのが困難。その結果、消費者は圧倒的な数の選択肢と差別化の欠如に苦しむ。これは、デジタルネイティブブランドが当初目指していたことです。

私たちのDWCモデルは、大規模な消費者とのより深い、より個人的な関係を作り上げ、長期にわたって生活のさまざまな側面にわたって顧客にサービスを提供するマルチブランドアプローチを通じて持続可能な経済を実現する。

これは、消費者ブランドが顧客に価値をもたらす方法の次の進化であると考えています。

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記事にもあるように、GinLaneはもともとブランドコンサルのエージェンシーで、Everlane、Hims、Harry’sなど、名だたるDNVBブランドを数多く手がけてきました。

そこで育てたブランド全体の市場価値は約150億ドル(約1兆6000億円)。

そのGinLaneがコンサルをやめ、自らがPatternという事業会社に転身し、自らプロダクトを作ることを宣言しました。今回はこの声明文の中からSEEDATAがとくに興味深いと感じたポイント3つをご紹介していきます。

①1000を超えるミレニアルズインタビューから導出したコアインサイト

GinLaneは、ミレニアルズたちはつねに「Do more」、つまり「何かしなければならない」「もっとこんなことをしなければいけない」というような強迫観念にかられていて、それが彼らを疲弊させているといいます。

たとえば彼らの調査では、20年前は18%だったアメリカの若者の仕事への疲労感は、現在のミレニアルズの実に50%以上にも及ぶことが分かっています。これは単純に仕事量が増えたということではなく、仕事そのものに若者が疲れ始めているということを意味しています。

また、同時にスマホへの依存も増加しており、昨年に比べて1年で40%もスマホ依存に対する不安が増加していることも分かっており、これらがアメリカのミレニアルズの大きな課題となっているのです。

GinLaneは彼らの中にある「Do more」という強迫観念から人々を解放しなければならないと言っています。つねにスマホを見なくてはいけないとか、友人らの週末の過ごし方や、Twitterで話題のニュースを見逃すのではないかという「FOMO(the fear of missing out)=見逃すことの恐怖」と言われるものに非常に近い考え方です。

実際、「スマホは人々の有意義な時間を奪っている」現実は現在のアメリカのテック界の大きな関心ごとのひとつでもあり、元Facebookのトリスタン・ハリスは「Time Well Spent(有意義な時間)」という名前の非営利団体を立ち上げるなどし、これらの概念が数年前から話題となっています。

Patternも「Do more」的なストレス社会において人びとは「enjoyment=喜び、楽しみ」を切に求めており、小さいが日々を大きく変えるようなものとしてクッキング、キャンプ、ペインティング、新しい趣味などに、スマホや仕事などでは提供できない生きている本当の喜びを人びとが求め始めているといいます。

今の若者がキャンプなどの生産的な趣味を始める方向に向かっているのも、ひとつの兆しと捉えています。

このように、強いストレス社会における本質的なenjoymentを仕事やスマホ以外に求めているというのが、Patternがコアにしているミレニアルズのインサイトです。

実際、GinLaneがこれまで手がけてきたサービスやプロダクトも、ミレニアルズがFOMOから脱却できるようなものが数多くみられます。

たとえばハウスは、食事をもっと優雅に楽しむために、オーガニックで混ぜ物のない、アルコール度数の低い食前酒です。

また、Everlaneは、ファストファッションのようにつねに流行が移り変わり、誰が作っているか分からいなものではなく、誰がどう作っていてコストがいくらかかっているかということが分かる透明性を売りにしていました。

GinLaneはこれまではブランドをプロデュースする形でミレニアルズのコアインサイトを満たしてきましたが、「もっと自分たちでも解決できるのではないか」という思いから、Patternを創立したようです。

②ワンミッションマルチブランド戦略

GinLaneはこれまではコンサルティング会社としてさまざまな会社に対して、一緒にミッションを作ってきました。

たとえばEverlaneであれば、Modern Basics. Radical transparency. =「現代的なベーシックでありながら徹底して透明」というミッションのもとブランドを展開し、DNVBとしてバーティカルにミッションを統合した思想で、プロダクトからInstagramの設計までをおこなってきました。

一方Patternは、今後自社でさまざまな消費財を作っていくことを宣言しています。

自らをマルチブランドコンシューマーカンパニーと名乗り、まずはキッチン回りの商品から、次に家のメンテナンス商品、その次に新しい趣味に取り組めるようなものを作ろうとしているのです。

それぞれの商品ごとにブランドミッションを作るのではなく、一番上に

To help our generation find more enjoyment in dailylife=ミレニアルズが日々の生活の中にもっと楽しみを見つけられるお手伝いをする

という傘となる大きなミッションを掲げています。

このワンミッションのもとに、まず、キッチンはどうするか、家はもっとこうあるべきではないか、キャンプはどうするか……という風に、ミレニアルズの生活を再設計していこうとしているのです。

そもそも、ワンミッションマルチブランドとはあまり聞きなれない言葉ですが、これまでにない新しい戦略です。

たとえば、これまでの消費財ブランドでは「歯磨き粉はこのミッション」「洗剤ならこのミッション」とそれぞれの消費財ブランドごとにミッションを設計して達成していくものでしたが、Patternは、大きなミッションの傘にさまざな異なるシーンの商品を紐づけていることが大きなポイントです。

このワンミッションマルチブランド戦略をおこなう理由として「人々の習慣を変えるのは難しい」とPatternは言っています。

Patternが取り組もうとしているミレニアルズのDO MOREへの恐怖を取り除くという課題は、ひとつのシーンだけを変えてもの変えることはできない大きな課題です。生活のあらゆるシーンから多面的にアプローチし、生活習慣を丸ごと変えていく必要があると考えています。

そのためにはまず、キッチンという身近な領域から攻めて、その次は家全体、その次に趣味を変えて、生活全体を習慣ごと変えていこうということで、このマルチブランド戦略を掲げています。

③DWCというブランド育成モデル

GinLaneはこれまでD2C(Direct-to-Consumer)と呼ばれているモデルを多数作り上げてきてD2Cの代表格といわれていましたが、これからはDWC(Direct-with-Consumer)に変わっていくと言います。

この背景として、アメリカではブランドの立ち上げが日本に比べて容易であるということがあげられます。

以前の記事でもご紹介しましたが、アメリカにはD2Cに出資するベンチャーキャピタルやOEM工場が増加し、日本と比べてD2Cスタートアップが乱立しています。

一方で、立ち上げは簡単であるがゆえにブランドがひしめき合い、成長が鈍化しているというのが現在のアメリカのD2Cブランドの現状です。参入障壁が低すぎるため、同じようなコンセプトの模倣品が増え、消費者にとってノイズとなるような商品の中からの選択が難しいという状況になっているのです。

これは、「Choice Overload=選択過負荷」と言われる、商品選択肢の増加による消費者の負担にもつながります。そもそもD2C企業は商品選択肢を減らしているブランドが多く、数は少ないけれども「これがあなたにベストです」という理念を持ったブランドが数多くありましたが、ブランド自体がが増えすぎた結果Choice Overloadになってしまっている、という問題です。これを解決するのがDWCという考え方なのでしょう。

Patternは、「私たちのDWCモデルは、消費者とより深い、より個人的な関係を、長期に渡って作っていくことで、顧客にサービスを提供するマッチブランドアプローチをとっていく」

と宣言しています。

DWCはダイレクトに届けるだけではなく、コンシューマーと一緒に作っていくものです。

たとえばGlossier(グロシエ)は、生活者に「これが私たちのブランドです」と届けるだけでなく、タッチポイントを増やしながらブログを通じて彼らの意見も聞けるような体制を築いています。一緒にEnjoymentを探すことができるブランドという意味で「with consumer」という言葉を掲げているのです。

これを可能にするのが、顧客と直接深くつながり、熱狂的なファンを形成し、一緒に作っていくDWCという新しい形なのです。

SEEDATAでは、Patternの今後の活動に引き続き注目し、最新のDNVB情報をみなさんにお届けしていきます。

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Written by
大川将(Okawa)
アナリスト