2020.09.30 | DNVB

海外で話題のD2C・DNVBレシピ

これまで当ブログでは、海外のD2C・DNVBの立ち上げ方から、話題のブランドまでさまざまな角度で、ご紹介してきましたが、今回は2020年9月現在、海外で話題を呼んでいるBloomberg.comの記事、「Welcome to Your Bland New World」https://www.bloomberg.com/opinion/articles/2020-09-07/welcome-to-your-bland-new-world-of-consumer-capitalism)について解説いたします。
元記事が気になる方はこちらをご一読ください(外部サイトに飛びます)。

 

まず、この記事タイトルですが「新しい世界」を示す「BRAND NEW WORLD」があえて「B“L”AND NEW WORLD」とタイプミスされていることにお気づきでしょうか。これは「BRAND」と「BLAND」を掛けていますが、実は「BLAND」には「味気ない」「おもしろみがない」「気が抜けた」といった意味があります。
つまり、「BRAND NEW WORLD(新しい世界)」ではなく、実は「BLAND NEW WORLD(おもしろみのない世界)」とDNVBを取り巻く現状を揶揄していることが分かります。
もともとD2C・DNVBは、哲学、サービス、プロダクトに一貫性があり、革新的で大手メーカーのディスラプトを目指していました。しかし、近年数多くのDNVBが生まれていく中で、どのブランドも似たり寄ったりになり、コピペブランドが乱立していることを皮肉った記事といえるでしょう。
一方で、コピペと呼ばれるブランドが乱立するということは、DNVBが研究され、ブランド開発のレシピができつつあることの証明でもあります。レシピがあるからこそ、誰もが再現性を持ってDNVBを作ることができるようになってきたともいえるでしょう。
料理になぞらえると、最初は何もない状態から試行錯誤を繰り返し、レシピができていくのと同様の現象が、ブランド開発にも起きているのです。
記事では、Casper、Warby Parker、AWAY、HARRY’S、QUIPなどを例にあげ、成功しているDNVBのレシピを10個程度、SEEDATAの解釈を加えながら、ご紹介していきます。

①中間マージンを省き、高品質・低価格を実現

そもそもDNVBは、小売りや流通をはさまず、中間マージンを省くことで、公平な価格で商品を提供するために誕生しました。ユーザーにとって圧倒的に高品質なものを低価格で提供するだけでなく、事業者側にもコストをかけずに提供することでwinwinな関係を作り上げます。

②いきなりスケールを目指さない

ブランド設立当初はなるべくベンチャーキャピタルに頼らず、まずは個性的なブランドを作り、熱狂的なファンを作ることを目指します。
ベンチャーキャピタルから資金調達をしてしまうと、そのプレッシャーや圧力から売り上げを伸ばすことが一番の目標となり、既存の成功している人気ブランドのコピーをしてしまいがちです。結果、個性を失ったBLANDなBRANDになってしまうからです。

➂親近感を感じられるDomestic Cozyなデザイン

これまで人気のDNVBのデザインは、モノトーンや、パステルカラーなど、シンプルでクリーンなビジュアル(Premium Mediocre)でまとめられていました。しかし、このブームも一周し、ありきたりでつまらないデザイン=BLENDなBRANDとなってしまいました。そこで最近ではDomestic Cozyと呼ばれる温かみのあるデザインが人気となっています。日本でもCBDブランドのmellow(https://mellow-cbd.jp/)がこのデザインを取り入れたブランディングをしています。

Domestic Cozyとは、プライバシーや家の温かみ、仲間とのプライベートグループを重視したコンセプトを指す。Premium Mediocreのミレニアル世代のカウンターカルチャーとして生まれ、ブランドにも温かみやアットホームさ、遊び心を求めている。
Premium Mediocreのコンセプトが、InstagramやTinder、アーバンアウトフィッターズだとすると、Domestic Cozyは、TikTok、YouTube、マインクラフト、自炊、編み物を表す。Premium Mediocreは営業マンっぽい、外向きのでみんなにイケている感を出すものだとするとDomestic Cozyは逆に内々としてリラックス出来るもの。

引用:Instagram美学に飽きたZ世代が「居心地の良さ」を求める理由
https://note.com/offtopic/n/nc3604f8bb9f6

DNVBはスーパーやコンビニのマス向け商品とは異なり、D2C:ユーザーとの距離感を縮めることを重要視するため、より親近感やフレンドリーさを感じられるデザインが重要となっています。

④創業メンバーが義憤を持っていること

創業者が義憤を持ち、既存の業界や社会のタブーに挑戦していく姿勢が成功するブランドには重要になっています。

DNVB支援
最近、さまざまな会社が「D2C支援ができます」と謳い始めていますが、SEEDATAでは昨年からD2C、ならびにDNVB(Digitally Native Vertical Brand)支援に取り組み、当ブログでさまざまな記事を発信してきまし...

⑤ブランド哲学を持つこと

創業メンバーの人生経験から裏打ちされたブランドの哲学をしっかりと掲げる必要があります。

DNVB流 哲学の作り方
DNVBは哲学を持たなけれはならないという話はこれまで何度もでてきましたが、ブランドを作っている方からすると「既に我々のブランドは哲学がある」と思う方も多いのではないでしょう。しかし、DNVBにおける哲学と従来のブランディングで言われてきた...

⑥謙虚な姿勢

社会に対しては義憤を掲げ、攻めの姿勢を持ちながら、ユーザーに対しては彼らを大切にする謙虚な姿勢を持っています。
たとえば、単なる通販サイトであれば返品や返金はルールにのっとって事務的に行うべきですが、DNVBはユーザーの満足度を最大化するために、煩雑な返品手続きをするくらいなら商品をユーザーの家族や友だちにあげることを提案したりします。このように、DNVBにはユーザー、そしてユーザーの周囲の人たちまでも大切にする謙虚な姿勢が重要です。

➆プレミアムな日用品というコンセプト

DNVBのプロダクトは一回きりで終わるものではなく、定期購入やリピートを前提としています。それを実現するために、ハレとケが融合した「プレミアムな日用品(Premium Mediocre)」というコンセプトが求められています。

⑧押し売りをしない

DNVBの初期のファンユーザーの共通点としては「マーケティングアレルギー」であるという点です。世の中に溢れる大々的な押し売り広告やセールなどに嫌悪感を感じている人々です。彼らの心を掴むためには、世の中の決まりきったコピーとは別の訴求をする必要があります。たとえば、あえてサプリに懐疑的な人たち=無消費層をターゲットにしたサプリメントのブランドRitualは、これまでのサプリの不透明性に対する義憤を哲学に掲げています。

【DNVBの事例⑥】DNVBは新市場を創り出す ~DNVBで新しいマーケットを作りだそう~
DNVBは新市場創造、つまり新しいマーケットを作りだすポテンシャルがあります。新しいマーケットというのは、これまでターゲットにしていなかったような生活者たちターゲットにしていくということです。 今回事例としてご紹介するDNVBブランド...

➈競争優位性ではなく、唯一無二性を訴求

「〇〇よりいい」という競争優位性があるというコミュニケーションではなく、「これができるブランドは自分たちしかいない」という唯一無二性のコミュニケーションを取ります。「他社より圧倒的に安い」などを言わない、競わないという姿勢も大切です。

➉Apple製品を愛している

DNVBの事業者側もそれを買うユーザーも、Apple製品のような洗練された世界観が好きという共通項があるといいます。Apple製品を生活に取り入れている人が、それ以外の日用品も洗練させたいと思って、DNVBを購入する人も多いです。

以上が成功しているDNVBに共通する10のレシピです。
SEEDATAでもこれまで多くのブランドの成功要因を独自に分析し、ご紹介してきましたが、記事では数多くの独創的なDNVBが登場し、プロセス化されていくことで、結果的にオリジナリティは薄れ、単一的なブランドばかりになってしまうことに警鐘を鳴らしています。だからこそ、SEEDATAではプロダクトやサービスに加えて、独自のブランド哲学が重要ということを啓蒙しています。プロダクトの機能のみで差別化することは難しいですが、ブランド哲学は千差万別です。人の数だけ、哲学があると私たちは考えています。さらに哲学は時代とともにアップデートされていくものです。ブレない哲学と同時に、生活者の変化に合わせて哲学をアップデートさせていく、可変ブランディングが必要だと私たちは考えています。

佐野拓海
Written by
佐野拓海(Sano Takumi)
アナリスト