2020.10.23 | DNVB

ブランドビジョン・パーパス・フィロソフィーの違い

ブランドの権威、デイヴィッド・アーカー・アーカー氏は著書「ブランド論」の中で、ブランド開発では「ブランドビジョンを掲げることが大切」だと述べています。ブランドビジョン、ブランドパーパス、ブランドフィロソフィーは同じ用語として語られることもありますが、SEEDATAではそれぞれを明確に分けて考えています。

ブランドパーパス、ブランドビジョンの違い

ブランドビジョンとは、「ブランドはこうあるべき・こうありたい」というブランドの意志を表します。

「世界一の〇〇なブランドを目指す」

このような高い理想を持つことが、生活者から共感を呼ぶ強いブランドとされていました。しかし、時代は変わり、実際にSEEDATAがさまざまなトライブの調査をする中で、これまでのようなブランドビジョンだけでは生活者から共感を呼びにくくなっていると感じています。

そこで、ブランドビジョン=ビジョンの意思だけではなく、そのブランドがどんな社会課題を解決するのか、どのようなより良い社会を作るのか、まで考える必要があるという意味で、「ブランドパーパス」という用語が登場しました。

ブランドパーパスとは、「ブランドは最終的に何を目指し、何を実現したいのか」というブランドの意思と、社会課題の解決を表します。

もっと簡単に言うならば、

 

ビジョン→ブランドの理想像

パーパス→社会の理想像

 

とも言い換えられます。

ビジョンを掲げることは重要ですが、変わりゆく社会の課題やニーズに合っていなければ、独りよがりな理想となってしまう可能性もあります。そうならないために、社会をより良くしていくために求められるブランドの社会的存在意義と、ブランドとしての理想の接点をみつけ、言語化したものがブランドパーパスです。

 

ブランドパーパスは、CSV(Creating Shared Value)という概念で語られることもあります。ブランドはビジネスの一環であるため、「世界一の売り上げを目指す」ということをブランドビジョンに掲げ、、経済価値を追求しても問題はありません。しかし、経済価値を追求し続けると、社会としては悪い方向に進む恐れがあります。今まで社会貢献活動はCSR(Corporate Social Responsibility)として、売り上げの一部を寄付に当てるなどして、取り組んできました。これまでビジネス活動と、社会貢献活動は分断されていました。しかし、企業の利益、経済価値だけではなく、社会価値も同時に追求して両立させようという取り組みが、CSVという考え方です。CSVは取り組みに関する用語ですが、これをブランディングに取り入れたのがブランドパーパスという用語なのです。

 

例えば、大手メーカーのネスレはCSVに力を入れている代表的な企業です。ネスレはビジネスをおこなう中で、薄利多売だったコーヒー農家がきちんと儲けられるような仕組みを作ったり、リサイクル可能なカプセルを作って環境破壊を防いだり、コーヒーだけではなく、抹茶といった健康的で栄養のある食材を低価格で提供するなど、BOP(base of the economic pyramid)ビジネスにも取り組んでいます。BOPビジネスとは、世界に40億人以上いるといわれている貧困層(BOP層)のための商品、サービス、ビジネスを提供し、生活水準の向上という社会課題の解決と、企業の利益を両立を目指す持続的なビジネスのことを言います。

海外でも支持されているDNVBは、当然のようにブランドパーパスを備えており、日本におけるブランド開発でも、ブランドパーパスを掲げることが主流になりつつあります。もはや、ブランドパーパスのないものはDNVBとはいえません。

ブランドフィロソフィーとブランドパーパスの違い

DNVBにはブランドビジョン、ブランドパーパスだけでなく、ブランドフィロソフィーが必要です。

ブランドパーパスは、マクロな社会を見たときの貧困、栄養、資源、環境などの課題に取り組むことですが、加えてよりミクロな視点、生活者の義憤を解決するブランドフィロソフィー(哲学)を持っていることがDNVBの特徴です。

例えば、サステイナブルやエシカルといった社会課題解決を謳ったブランドパーパスは、一部の意識の高い人びとからは共感を呼びますが、そうでない人たちからは共感を呼びにくくなります。一方で、生活者にとってより身近な義憤をしっかりと叶えたブランドフィロソフィーを発信すれば、生活者からの共感を呼ぶことが可能です。

 

たとえば、アメリカのコスメブランドのGlossierは、厚化粧が一般的だったアメリカにおいて、「肌に負担をかけてまで厚化粧しなければいけないのはおかしい。メイクによる美しさより、肌そのものの美しさを重視しよう」という哲学を打ち出しました。

社会課題はどこか遠い世界の話に感じてしまいがちですが、ひとりひとりの肌についての話、義憤であれば、より身近に共感してもらうことが可能です。

 

DNVBにはブランドパーパス、ブランドビジョン、ブランドフィロソフィーの3つがそれぞれ必要ですが、順番としてはまずブランドフィロソフィーを作るべきで、ブランドビジョンとブランドパーパスは後から考えていきます。

 

①まず、創業者がいち生活者として感じている義憤を起点としてブランドフィロソフィーを作る

②そのフィロソフィーを持つことで、どんな社会課題解決につながるかというブランドパーパスを作る

➂結果、こんな理想の社会にしていきたいというブランドビジョンを作る

 

以上の順番で考えることで、フィロソフィーに紐づいたパーパスとビジョンができ、より一貫性のあるブランドとなるのです。

 

ビジョン→ブランドの理想像

パーパス→社会の理想像

フィロソフィー→生活者の理想像

SEEDATAでは、この3つの概念を分けることが重要だと考え、定義しています。

佐野拓海
Written by
佐野拓海(Sano Takumi)
アナリスト