デザインシンキングとエスノグラフィー①

今回はSEEDATAのチーフアナリストであり、KMD(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科)の奥出直人教授のゼミでデザイン思考について学んだ岸田氏に、奥出教授の提唱するメンタルモデルを抽出する方法についてお伺いしました。

日本におけるデザイン思考の中でエスノグラフィーにいちばん踏み込んでいるかつ、ほかのデザイン思考でいわれているエスノグラフィーとは扱い方が違う、メンタルモデルを抽出する手法とはどのようなものなのでしょうか。

発見しないマインドが重要

一般的なデザイン思考、例をあげると紺野登先生の提唱するエスノグラフィーでは、「新しいもののヒントを発見する」ためにエスノグラィを取り入れています。エスノグラフィーで人の行動を見て、そこから発見を行うのが紺野先生の手法といえますが、一方で、奥出先生は「発見をしないマインドが大事」という考えを展開しています。

「発見をする」というマインドだと、調査対象者の行動のここが問題であるなど、上から目線になってしまいがちですが、奥出先生はエスノグラフィーで観察させてもらう相手を「師匠」と考えて、現場に入ることを大切にしているのです。

これはできるだけ観察対象者をうやまう気持ちを大切にすることで、現場で起こっているありのままを観察して、観察対象者から学ぶ、対象者がどういった文脈(コンテクスト)に立っているかを記述して、解釈することを目的としています。

メンタルモデルの抽出とは?

では、具体的に奥出先生がエスノグラフィーをどういった風に取り入れているかというと、たとえば医者であれば患者の行動を観察するノート、旅行者であればカメラ、ホームレスであれば家をつくる板切れ、といった風に、「あるものを使って何をするのか」という文脈を理解するために使っています。

人々が目的を達成するために使っている、あるいは自然と利用しているゴールまでのプロセスをメンタルモデルと呼びますが、人間が自然に使いやすいデザインのインタラクションを見つけるためには、エスノグラフィーからメンタルモデルを抽出することが重要なのです。

わかりやすい例をあげる、Amazonでカートという表現を使っていますが、これは、現実世界で買い物をしている人が、ほしいものをカートに入れてレジに行くという行動と、同じ行動が利用されています。

スーパーやコンビニなどで、欲しいと思った商品をカートにいれておくという行動のメンタルモデルがあるのですが、これをwebサイト上で可能にしたことで、欲しいものをストックしてレジに行くという購買体験がスムーズに設計されているのです。

カートというオブジェクトにほしいものを入れて、まとめて購入できるというメンタルモデルが反映されていない場合、たとえば一個一個に会計する手間が発生した場合、ユーザーは違和感を感じてしまう可能性があります。カートがあるおかげで、ふだんの自然な購買体験ができるのでストレスを感じることなく、オンライン購入が行えるのです。

このように、メンタルモデルとはインタラクションをデザインする上で非常に重要になります。この、メンタルモデルと、達成したいゴール(Amazonの例で言えば”オンライン上でモノを快適に購入する”など)が反映された人物像をペルソナと呼び、このペルソナを想像しながらデザインに落とし込む手法をアラン・クーパーとキム・グッドウィンが著書「Design for Digital Age」の中で”Goal Directed Design”という手法として紹介しており、奥出先生が多分に影響されていると考えられます。

エスノグラフィーからメンタルモデルを抽出するという手法は、日本におけるデザイン思考の中では奥出先生が第一人者であり、奥出先生の手法の大きな特徴とも言えます。

紺野先生はエスノグラフィーを行い、フィールドノートをとり、共通点を抽出し、抽象化を行ってコンセプトを出すという手法ですが、対して奥出先生の手法は、見てきた現場そのものから抽象化されてないメンタルモデルを抽出して、人の行動をインタラクションに落とし込んでいるのが大きな特徴です。

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