ジョブ理論をもちいたエスノグラフィーとは?-SEEDATAエスノグラフィーセミナーレポート②

SEEDATAではこれまでも当HP内で、エスノグラフィーについての独自の記事を20回以上にわたり掲載してきましたが、2017年12月7日(木)、株式会社NTTテクノクロス様、株式会社マーシュ様と共同で、企業対象のエスノグラフィーのセミナーを開催しました。

当社宮井が登壇した様子をお届けした前回に続き、今回はSEEDATAアナリスト大川が登壇し、エスノグラフィーをもちいて、具体的にどのようにしてイノベーションや事業開発、商品開発にいかすかについて語った様子をレポートします!

ジョブ(片付けなければならない仕事)とハイヤー(ジョブを解決するために使うもの)

前回、エスノグラフィーは目的の問題、分析の問題、蓄積の問題により、日本ではなかなか浸透しづらいという現状があるとご紹介しました。

SEEDATAでは、クリステンセンのジョブ理論をSEEDATA独自の解釈をしたうえでもちいることで、エスノグラフィーをより実務に使えるものにしていくことがミッションであると言います。では、SEEDATAで扱うジョブ理論とは具体的にどのようなものなのでしょうか。

大川「『ジョブ理論』によると、ジョブ(Job to be done)とは「顧客にとって片付けなければならない仕事」と定義しています。そのジョブを解決するために、顧客は商品であったり、モノ、サービスなどを雇用(ハイヤー)していると、クリステンセンは説明しています。

ここでキーワードとなるのは「ジョブ」と「ハイヤー」という概念であり、ジョブ=「片付けなければならない仕事」に対して、ハイヤー=「ジョブを解決するために使うもの」です。わかりやすいたとえとして、「顧客はドリルが欲しいのではなく、穴が欲しい」という考え方がありますが、ここでいうジョブとは「穴をあけなければならない」に対して、「ドリルを雇用する」のがハイヤーです」

大川「クリステンセンはジョブには、生活者はどういった状況にあるかという社会的側面、生活者がなしとげたい機能とはなにかという機能的側面、生活者が感じたい感情とはなにかという感情的側面の3つがあり、これらをあわせてジョブと呼んでいます。

ジョブ理論でよく使われるミルクシェイクを例に紹介すると、クリステンセンが、あるフードチェーンで、どうすればもっとミルクシェイクが購入されるか、店頭でミルクシェイクを雇用する人を観察しました。すると、女性や子どもが購入していくのかと思いきや、午前9時頃にひとりで車で来店して購入していく男性が多いことに気が付いたといいます。

ここで、「顧客はなぜミルクシェイクを雇用しなければならなかったのか」を考えるのですが、その結果、クリステンセンが発見したジョブは次のとおりです。

アメリカでは1~2時間かけて車で通勤する人がほとんどで、その通勤時間の間に昼食までの小腹を満たさなければならず、また、通勤中に目を覚まさなければならない、退屈な運転時間を紛らわせなければならない。さらに、時間がかかるので、一気に飲めてしまうものではなく、運転中でも持ちやすく、長い間飲み続けられるものがいいというジョブを発見しました。ただ、このジョブを聞いてもミルクシェイクに代わるどういうものを開発すればいいのか想像しづらいですよね(笑)。

運転中にちょっとした楽しみを感じたい」は感情的側面、対して「小腹を満たさなければならない」は機能的側面など、先ほど説明した社会的側面、機能的側面、感情的側面がひとつのジョブの中に混ざっていてるため、実践に使いにくくなっているのです」

ジョブは「モノと行動の関係」、インサイトは「モノと心の関係」

ここで、SESDATAにおけるジョブ理論をより使いやすい分析フレームに解釈しなおしたものを紹介しています。

大川「SESDATAでは「モノと行動の関係」、「モノの使用を左右する行動の理由」をジョブと呼んでいます。一方、「モノと心の関係」を「モノを通して生まれる心の動き」と整理したものをインサイトと呼んでいます。

このジョブとインサイトはコンテクストによって変わってくるため、生活者のおかれている状況、たとえば時代という社会的背景だったり、その人の暮らしている場所だったり、季節だったり、そういうコンテクストを見て、ジョブとインサイトの分析を試みています。

インサイトがわかると、生活者の価値観や心の動きがわかるので、生活者にどのように商品を届ければいいかが導きだせるのです。

効果的な例としては、広告コミュニケーションやブランディングですね、商品をどのように見せるかであったり、生活者にどう感じてほしいかを考えるときにはインサイトを知ることがすごく重要です。

一方で生活者の行動の裏にある、生活の中で解決しなければならない問題(ジョブ)を見ることで、どのような商品やサービスを開発すれば彼らの問題を解決できるかがわかるので、商品アイデアや事業アイデアの発想により適しているといえます」

大切なのはジョブとインサイトの双方を知ること

大川「ジョブとインサイトについて説明してきましたが、ジョブだけ知っても、どう届けていいかわからないし、インサイトだけ知っても、何を開発すればいいのかわからない。ジョブとインサイト両方をみることで、どう届けるかと、何かを開発すべきかがわかるのです。

アップルウォッチを例にとって考えてみましょう。たとえば『人より先進的なライフスタイルを送っていると思われたい』というインサイトがあったとします。このインサイトがわかることによって、アップルウォッチという商品をどのように消費者に届ければいいかがわかると思います。ただ、具体的な仕様であったり、どんな機能を持ち、どんな形をしているかはわからないのがインサイトです。

一方、たとえばここで「〇〇をせず〇〇したい(詳細はお問い合わせください)」というジョブが見いだせた場合、商品の具体的な仕様であったり、どのような生活者に求められているかがわかると思います」

大川「SEEDATAでは、エスノグラフィーを行ったあとにインタビューを行いますが、2、3時間かけて、深いところまで消費者の価値観を引き出せるので、インサイトを見るにはインタビューのほうが効果的と考えます。

また、エスノグラフィーでは、消費者の行動を見ることで、何を解決しなければならなかったのかがわかるので、ジョブをみることができます。もしくは実際に生活の現場に行くので、コンテクストが明確にみえてきます」

知りたいのはインサイトなのかジョブなのか、その両方なのか、目的にあった調査法を選択することが大切と締めくくりました。(次回に続きます)

次回は引き続き、大川が登壇し、エスノグラフィーからジョブ理論を見つけ出す方法、さらに、エスノグラフィーからアイデアを生み出す過程について語った様子をレポートします!

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SEEDATAでは、独自のエスノグラフィー調査を行っています。ビジネスにエスノグラフィーを取り入れたいという方はinfo@seedata.jpまで、件名に『エスノグラフィーについて』、御社名、ご担当者名をご記名いただき、お気軽にお問合せください。

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