探索型エスノグラフィーと創造型エスノグラフィーの事例-SEEDATAエスノグラフィーセミナーレポート④

SEEDATAではこれまでも当HP内で、エスノグラフィーについての独自の記事を20回以上にわたり掲載してきましたが、2017年12月7日(木)、株式会社NTTテクノクロス様、株式会社マーシュ様と共同で、企業対象のエスノグラフィーのセミナーを開催しました。

SEEDATAアナリスト大川が登壇し、SEEDATA独自のジョブ理論について語った前回、エスノグラフィーからジョブを発見し、実際にアイデアを生み出す方法について語った前々回に続き、今回は、SEEDATAが実際に行ったエスノグラフィーの事例について語った様子をレポートします!

 

探索型エスノグラフィーの事例・訪日外国人の移動体験の向上

 

SEEDATAでは改善型と創造型のエスノグラフィーの2つを行っています。

改善型は既存の商品やサービスについてあらたな価値を探索するもので、観察範囲はある商品やその周辺の商品、サービスについて深く見ることで、その商品をいかに改良していけるかを導きます。

一方、創造型は新たな領域、既存にはない商品やサービスを探していくものです。ざっくりといろんな領域を見ていくことで、新たな市場を発見することができます。

セミナーでは、改善型と創造型、2つのエスノグラフィーの事例を紹介しました。

 

大川「SEEDATAでは訪日外国人の移動体験の向上ということで、訪日留学生の東京での移動を行動観察しました。コンテクストとして対象者は、タイ出身の27歳の男性、来日し大学院に通っています。1年間日本語学校に通っていますが、ペラペラとは話せず、とくに漢字は苦手なため、街の看板や案内などは、英語表記のものを探すのが常です。私たちは渋谷からバスで移動したときの彼の動きに注目しました。

まず、彼はバスに乗る際、運転手の横にあるお金を入れる機械を確認しながら、お金を払わず席に移動しようとして、運転手に引き留められました。乗車前にお金を払うということは分かったのですが、いくら払えばいいかわからず、また引き留められて焦っているので、とりあえず財布の中にある小銭をすべて入れる、という行動をとりました。

ここで我々がとく注目したは、その後、空席の多い車内の中で、彼は後部座席から3番目、進行方向左側に座った(雇用した)という点です」

 

 

この行動から、彼の抱えているジョブというのは、「〇〇を見ながら自分の進んでいる方向を確認しなければならない」(※詳細はお問合せください)であるとSEEDATAでは分析。

コンテクストとして、東京というの街は、山手線を中心に円環状に広がっており、また、NYなどのように碁盤の目のようにもなっていないので、今自分がどの位置にいるのか、位置感覚の掴みづらい街という背景が存在します。このコンテクストから「迷っていないことを確認しながら安心して移動したい」というインサイトが見つけられるといいます。

 

大川「このコンテクスト、ジョブ、インサイトから『位置感覚が掴みづらい東京で自分が現在どこにいるのか俯瞰しながら移動したい』という機会領域を導き出すことができます。これが提供すべき価値の根本なので、ここから自社の製品や技術を応用して、さまざまなソリューションが考えられるのではないでしょうか。

たとえば、〇〇から位置を割り出す、情報特定アプリというものが考えられます。Googleマップでもよいのでは?と思いがちですが、彼がもっとも必要としているのは、経路や地図ではありません。「今自分が正しい方向を向いて進んでいるということを把握しながら安心して移動したい」というのが彼が抱えているジョブなので、地図ではなく、方位磁針のようなもので、自分の位置や向いている方向が正しいかどうかを知ることが必要です。

単純に、もっとも近い〇〇が3つくらい表示されるようなものがあれば、「今はこっちに〇〇がある、じゃあ向かっている方向はこっちで合っている」と簡単に安心感が与えられる、そういった商品アイデアが生まれます」

 

改善型エスノグラフィーの事例・がん医療病棟における来院体験の価値向上

 

 続いて、2017年8月にSEEDATAがNTTテクノクロス様と共同で行った、ある病院のエスノグラフィーの事例を紹介。SEEDATAでは外来患者、もしくは待合室をフィールドに設定して行動観察を行いました。

 

大川「こちらの与件としては、外来患者の来院体験の向上です。患者の暇な時間の時間のつぶし方、院内で人の流れや、どこで滞留してうまくシステムが回っていないのかを知りたいというのが病院からの依頼でした。

さまざまなジョブや行動がみられたのですが、とくに注目した例をご紹介します。

ある付き添い人が、採血室の入り口で患者と別れ、採血室の前にある椅子に座って待つという行動がありました。なぜ彼は採血室の入り口で患者と別れて、一人でそこで座っていたのかということに私たちは注目しました。

似たような例で、別の付き添い人が、受付前のエスカレーターのガラスに寄り添って立っていました。彼は何をするでもなく、そこに30分ほど立っていて、その後、妻と思われる女性が現れ、そのまま二人で受付前の椅子に座りました。

ほかにも、地図の横や、何もない空間に立って待っている、というような行動が多く散見され、なぜ付き添い人たちは、最初から受付前の椅子を利用せず、ガラスにもたれて待っていたのか、という疑問が浮かびました。

採血室の入り口で別れた例の場合、なぜ採血室の前の椅子を選んだかというと、『患者が利用しなさそうな椅子を選んで、ほかの患者の邪魔にならないようにしなければならない』というジョブがあったからではないかと推測されます」

大川「この病院では、がん患者にはほとんど付き添い人がついてくるというコンテクストがあり、付き添い人は『患者のほうが大変な立場にあることは明白なので、彼らの邪魔になるような場所に座ることに罪悪感がある』というインサイトを持っていることがわかりました。

このとき同時に『患者の邪魔にならないように長時間診察を待っていなければならない』というジョブがあり、そこから導き出される機会領域として『患者のための椅子ではない、付き添い人が休むことのできる場所やソファ』というものがあげられます」

 

そもそも病院というのは、基本的に患者のために作られているので、付き添い人がどこで休むか、どこで時間を潰すかということはあまり考えられておらず、すべてが患者のためにチューニングされています。その中で2、3時間以上ずっと待っている付き添い人が、患者のことを考えて座ることができない状況にある、と大川は指摘します。

では、どのようなソリューションが考えられるのでしょうか。

 

大川「たとえば、患者の順番待ちのモニターが見えない場所に設置する、付き添い人のためのソファなどが考えられます。『モニターが見える場所は患者が待つ場所』と認識がされているということが別の行動観察からわかっていたので、モニターが見えない場所にあえてソファを設置することで、付き添い人が何の気兼ねもなく座れるスペースができるのではないかと思います」

 

ソファというのはひとつの例で、「付き添い人のための」という考え方やモノの見方は、エスノグラフィーをすることでさらに見えてくるでしょう。

 

共創のすすめとコンテクストを見ること

最後に、エスノグラフィーを行ううえで大切な点として、以下のように締めくくりました。

 

大川「エスノグラフィーは、アカデミックでもビジネスでも、チームで行うことが大切といわれいます。観察者がひとりで観察をし、その観察データを分析者に渡すというやり方では、分析者は実際に現場を見ていないため、ジョブが伝わりにくいという問題があります。そのため、分析者と観察者とを分けず、分析者が実際に自分の目で見る必要があります。

また、SEEDATAではコンテクストを見ることも重要と考えています。蓄積の問題でも触れましたが、たとえば飲料の例で考えても、夏の様子と冬の様子とではまったく違うという場合があります。つまり、定期的、長期的に行っていくことで、エスノグラフィーの本領をすることができるといえるでしょう」(次回に続きます)

 

次回は、SEEDATアナリストの宮下が登壇し、参加者のみなさんと行ったエスノグラフィー体験の様子をレポートします!

 

※セミナー内容の一部を伏せさていただいていますが、お問合せいただければ詳細はお伝えいたします。

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SEEDATAでは、独自のエスノグラフィー調査を行っています。ビジネスにエスノグラフィーを取り入れたいという方はinfo@seedata.jpまで、件名に『エスノグラフィーについて』、御社名、ご担当者名をご記名いただき、お気軽にお問合せください。

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