【海外進出のポイント15】アジアトレンド通信vol.7インドネシアのトライブにみられるミレニアル世代の価値観の変化

今回ご紹介するのはインドネシアのミレニアル世代の旬な生活者です。

インドネシアはアジアの中では中国、インドに次いで人口が多く、現在も増加中ですが、決してフィリピンのように極端な若者が多いというわけではなく、今後日本と同じように少子高齢化になるといわれています。そのような状況下でも、日本とは違う形で表れているミレニアル世代の価値観の変化を、食、美容、ビジネスという3つの観点からご紹介します。

日本食×伝統食のカスタム食を好むDIYフーディーズ

ご存知の方も多いかもしれませんが、インドネシアでは日本食が絶大な人気を誇っています。

デパートのフードコートには日本食コーナーがあり、また現地のイオンでも日本のお弁当が大人気です。もちろん現地の人の口に合うように味付けがローカライズされていたりもしますが、アジア全体にみられる健康志向の高まりに伴い日本食を食べる人たちが増加しているのです。

その中でも日本食をインドネシアの伝統的な食と掛け算してアレンジするなど、独自のカスタム食スタイルを取り入れている人々をSEEDATAではDIYフーディーズと呼んでいます。

彼らは日本食をそのまま食べるのではなく、自国伝統料理風の味付けにアレンジして食べています。和食でも調味料は醤油ではなく現地の昔から親しんでいるものを使うなど、自分たちの舌に合うように工夫しているのです。

また、日本食との掛け算だけではなく、インドネシア料理をヘルシーにアレンジするというアプローチにも注目が集まっています。

たとえば、インドネシアには牛やヤギなどの肉をスパイスとともに煮込んだルンダンという角煮のような伝統料理がありますが、このルンダンの味付けはそのままに、肉の変わりに食材をキノコなどに変え、伝統料理の味を保ちながら食材はヘルシーにするという調理方法が取り入れられています。

アジアの伝統料理には味が濃いものが多く、慣れ親しんだ味を食べ続けると不健康になるという問題意識がミレニアル世代にはあります。そのため、味は変えず食材のみを健康なものに変えて、食生活全体をヘルシーにできないかという取り組みが人気を呼んでいるのです。

このようなトライブたちの価値観と行動があることを踏まえると、日本の料理を海外に輸出する場合、日本食という健康イメージは保ちつつ、彼らの舌に合うように味付けを変えていく必要があります。以前の記事でローカライズの際には新しい意味を付与する意味転換が必要と解説しましたが(アジア市場進出のヒントとなる現地の旬な生活者とは? アジア・トライブセミナーレポート)、この場合は中身(味付け)を変えずに意味転換をするのではなく、和食のヘルシーイメージは保ちつつ、中身も変えていかなければいけないという点がポイントです。

また、DIYフーディーズというトライブの名前の通り、彼らには「自分なりにアレンジしたい」というDIY欲求が強くあります。SEEDATAのトライブ・ちょい足し族(【トライブレポート紹介31】食事系サービス、新規事業開発アイデアのヒントちょい足し族)の調査結果にもあるように、今後は自分でアレンジできるような、伝統食と日本食のミックスデザインをすることも重要になってくるでしょう。特に日本は中国の中華麺を日本独自のラーメンにアレンジしたように、アレンジに関しては強みがあります。 

伝統的なヒジャブで自己表現をするファッションヒジャビスタ

続いて、インドネシアのミレニアル世代の美容意識の変化についてご紹介します。

インドネシアは国民の87%がムスリムの大ムスリム国家ですが、ムスリムというとみなさんイメージするのが女性のつけるヒジャブではないでしょうか。実際に現地ではヒジャブをつけて顔を覆うムスリムの方がかなり多く存在します。

このヒジャブを宗教的な意味からではなく、あくまでファッションとして着用している人たちをSD/SAではカジュアルヒジャビスタというトライブとして捉えています。

彼女たちはムスリムでありながらもファッションも自由に楽しみたいという価値観を持ち、これまで黒やグレーが基本だったヒジャブにパステルカラーや蛍光色を取り入れています。

ポイントは宗教という考え方はベースにありつつも、よりオープンに自由に捉え始めているという点です。

もちろんこれまで通り豚肉を食べないなどの戒律は守りながら、アメリカなどのファッショントレンドも取り入れ自己表現をしていきたいという価値観を持っているのがカジュアルヒジャビスタの特徴です。

実際、インドネシアに限らず、アジアは宗教や昔ながらの価値観、伝統の力が強い地域が多いため、そのことに対する一種の義憤を感じている若者たちが現れ始めています。

たとえば中国では、これまで結婚しない女性は、売れ残りという意味を持つ「剰女(シェンニュイ)」という言葉で表現されてきました。結婚こそが親が望む子の幸せであり、結婚しないことは親不孝とまでいわれていましたが、大手化粧品メーカーのSKⅡがこの剰女を主人公にし「結婚することだけが幸せではない、もっと多様なライフスタイルを認め合おう」という内容のCMを流したところ、多くの中国人女性から「感動した」という反響があったそうです。

このようにアジア全体としてミレニアル世代の中にも義憤という考え方が浸透し、インドネシアの女性の場合はヒジャブの色や柄でそれを表現しているといえるでしょう。

義憤を表現する手段として彼女たちが選んだのが、暴動やストライキのような実力行使ではなく、ファッションによる自己表現だったのです。この義憤からくる若者の自己表現を許容してくれるようなブランドや商品が今後求められていくはずです。

これはまさに新しい意味であり、単純に柄がかわいい、美しいといだけではなく、伝統的なヒジャブでより自分らしさを表現できるという意味に、若者たちの共感や賛同が集まるのではないでしょうか。

アジア全体で増加するソーシャルアントレプレナー

最後にご紹介するのは、トライブではありませんが、インドネシアをはじめアジア全体ではソーシャルアントレプレナーという社会起業家が増えているという特徴があげられます。

たとえば、中国の深センなどの都市ではtech系の起業家が数多く誕生していることは有名です。その中でもインドネシアは、まだ日本のような大手企業がなく、かつ政治的にも安定していないため、ボトムアップで自分たちが経済をどうにかしていかなければならないという精神が強いのが生活者全般の特徴です。

そこで生まれたサービスが、以前当連載でご紹介したバイクのデリバリーサービスであるゴジェック(リンク)です。日本では国営の電車やバスが発達していますが、インドネシアには国営のインフラが存在しないため、起業家自らがバイクを使ったデリバリーサービスを作りました。それが社会的なインフラとなり、人びとの生活に欠かせないものになっているのです。ゴジェックは今や人の移動だけではなく、食品、サービスにまで広がり、日本では見られないようなユニークなサービスの進化を遂げています。

インドネシアはある意味、背水の陣に追い込まれ、問題意識があるからこそ起業家が多く生まれているといえますが、これは起業家だけでなくアジアの若者全体に共通する自分の力で生きていく、道を切り開いていくという強い意識の表れです。

DIYフーディーズしかり、カジュアルヒジャビスタしかり、すべてに共通するのは、「作られたものを享受するのではなく自分たちで作っていきたい、DIYしていきたい」という欲求です。

ソーシャルアントレプレナーの増加はアジア全体にいえることですが、インドネシアはとくに顕著です。

大手通信会社がアクセラレータープログラムを積極的に行っていたり、首都ジャカルタにはコワーキングスペースが数多くあるなど、ベンチャーが活動しやすい環境が整っていることは大きな特徴といえるでしょう。



【SEEDATA ASIAにてリサーチをすることができるアジアの国や都市一覧】

東アジア地域:中国(北京、上海、杭州、深圳などの主な都市部)、台湾、香港、韓国

東南アジア地域:タイ(バンコク・チェンマイ)、インドネシア(ジャカルタ)、ミャンマー、カンボジア、ベトナム、シンガポール、マレーシア、フィリピンなど

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SEEDATAでは、独自に定義した先進的な消費者群(=トライブ)のリサーチを通じて、企業のイノベーション支援を行っています。

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【海外進出のポイント12】アジア最新トレンド通信vol.4ミャンマー編

佐野拓海
Written by
佐野拓海(Sano Takumi)
アナリスト