海外進出支援のポイント~中国の旬な消費者たち~

SEEDATAには、海外、特にアジア市場におけるイノベーション支援に特化したサービスであるSEEDATA ASIAが存在します。SEEDATA ASIAでは、今まで我々が日本国内で培った約50にもおよぶトライブリサーチ、およびそれに基づく未来洞察の知見を活かして、アジア市場への新商品開発や消費者調査、新規事業進出や現地での新商品開発を支援しています。

当連載では、我々が強みとする未来の行動や価値観を先取りした生活者に対する調査、トライブリサーチの手法がどのように海外進出ならびに海外市場でのビジネス推進に役立つかということを中心にお話をしていきます。

また、SEEDATA ASIAの取り組みに関しては、博報堂マーケティングエグゼクティブでも連載をしているので、興味のある方は、こちらも合わせてご覧になってください。

ASIAN TRIBES Vol.1:アジアの未来を先進的な生活者の価値観から捉える

海外進出のポイント①急成長するアジア経済と多様化する消費者の価値観

今回は現地での商品開発や事業開発のヒントを握る生活者、トライブをご紹介いたします。

中国ビジネスのヒントとなる独自の価値観を持つ消費者たち

このブログを読んでくださっている方はすでにトライブという概念はご存知かと思いますが、あらためて簡単に説明すると、SEEDATAでは3~5年後の未来の行動をすでに先取りし、それを日常生活の中で実現している人たちのことをトライブと定義しています。

トライブを調べると、彼らの行動の背景にある価値観から、それが広く一般社会に普及していったときに、多くの人々が将来こういった行動をするようになるのではないかという未来の生活者の行動仮説が導き出せます。こういった仮説をもとに、商品開発や新規事業開発を行うのがSEEDATAが日本国内で行っている基本的なトライブ·ドリブン·イノベーションのアプローチ方法です。海外進出をお考えの方は、以下の記事で、具体的な事例とともに活用方法が紹介されているので気になる方は、チェックしてみてください。

【トライブレポート紹介①】メディア系新規ビジネスアイデアのヒント(ミックスチャネラー)

基本的に、アジアでも同じようなアプローチで調査、支援をすることが可能です。ただし、経済成長による流行の移り変わりが日本よりも早いため、アジアでは3~5年後の未来ではなく、もう少し短い1~2年くらい先の未来、それくらいのスパンで彼らの行動に対する仮説を導出できるのではないかと考えています。我々は、日本のトライブを「先進的な生活者」と表現しますが、アジアのトライブたちは「旬な生活者」と表現して使い分けています

現在、アジアのトライブを50ほど作っており、博報堂マーケティングエグゼクティブに連載している記事でもアジアのトライブに関する情報を発信していますが、今回の記事では、我々が注目するトライブを数例ご紹介したいと思います。

①美容と健康のために空気の質にこだわる「エア・セレブ」

たとえば、中国の旬な生活者の一例として、我々がエア・セレブと名付けたトライブがいます。エアセレブとは「空気のセレブリティ」という意味で、取り入れる空気が健康、特に美容に強く影響すると考えて、その清潔さや取り入れ方に強くこだわるエクストリームな生活者のことを指します。

現に中国やインド、マレーシアなど、日本と比べて大気汚染が深刻なアジアの地域において、高価格帯の機能性マスクを購入する生活者が急速に増加しています。

また中国・韓国の化粧品会社の取り組みとしては、皮膚をスモッグや公害から守る「抗大気汚染(アンチポリューション)」スキンケア商品の開発が強化されており、大気汚染の悪影響は、健康はもちろん美容にまで及ぶという認識が生活者の中に徐々に広がっているようです。

大気汚染が原因で肌の状態を悪化させるリスクが、今まで以上にクローズアップされるようになると、空気の質が美容に大きく影響すると考え、その予防やケアに多くの時間とお金を投資するエア・セレブのような生活者が増加していくと考えられます。

こうしたエア・セレブが取るであろう行動をここでは3つ紹介したいと思います。

まずはこれは日本でも見られますが、空気清浄機や観葉植物を室内に置いて、取り入れる空気の質自体を改善しようとする行動。

次にアンチポリューション効果のある化粧品や高機能マスクを使うことで、口や肌から空気中の悪い成分の摂取を防ぐ行動。これは日本と比べ大気汚染が進む中国でより顕著な行動といえます。

最後に中国語で「洗肺」と呼ばれる、肺を洗浄するために空気のきれいな場所へ旅行することがあげられます。日本の地方に足を運ぶ訪日中国人観光客の目的には、そこで深呼吸をして肺の空気を入れ替えることだというのです。

一口に大気汚染に対する意識が強い生活者といっても、このように多様な行動を切り出すことができます。実際に調査をする際には、自宅に訪問をして室内の空気をどのように整備しているのか、どんな化粧品をどのように使っているのかなどの行動を観察しつつ、その背後にある彼らの価値観を深掘りしていきます。

アジアトライブの調査は、海外進出を考えるヘルスケアや美容化粧品、家電メーカーを始めとした様々な業界の企業にとって、有益な示唆を与えられると考えられます。そもそも大気汚染の状況が日本とは全く違うため、まさにアジアの生活者を調べたからこそ分かる発見を得られるのが、このエア・セレブといえるでしょう。

7月上旬に上海でエア・セレブを対象にしたリサーチする予定なので、そこで得られた分析結果はまたこの連載の中でご紹介いたします。

②資産ではなく信用を重視する中国都市部の生活者「クレジット・スコアラー」

次に、私たちがクレジット・スコアラーと呼んでいる中国のトライブをご紹介します。彼等は「資産」よりも「信頼」を蓄積することを重視し、そうして蓄積した信頼によって生計を立てようとする生活者です。

中国にはアリペイというキャッシュレスで様々なものを購買することのできるサービス(日本のLINEPayのようなサービス)があり、その中にセサミクレジット(胡麻信用)というサービスが組み込まれています。

セサミクレジットは、その人の学歴や公共料金の支払い状況、購買履歴、人脈などの個人情報をアリペイのアカウント上から抽出して、それに基づいて信用度を数値化します。大体650点くらいの信用度を各人がつけられるのですが、スコアが高いと日々の生活でさまざまな恩恵が受けられるという内容です。

たとえば、シェアサイクルを借りるときに通常ならデポジットを払わないといけませんが、信用があるとお金を払わないで借りられたり、あるいは、もう少し高い信用スコアを得ると、ビザの審査期間が短くなったり、飛行機に優先搭乗できたり、銀行からもお金が借りやすかったりと、セサミクレジット内で信用があることで、さまざまな審査を容易にパスできるというメリットがあるのです。

これまでは、多くの資産を持つほど豊かな経済活動を行うことができるというのが一般的でしたが、今後は、資産の代わりに多くの信用を持つことが重要になるかもしれません。ジェレミー・リフキンの著書『限界費用ゼロ社会』で語られているように、あらゆる消費活動がシェアによって成り替わり、サービスを使うために”貨幣で購入する”のでなく”信用で借りる”ということが多くなっていくでしょう。

こうしたシェアリングエコノミーが拡大し続けると、「資産を稼ぐための仕事」よりも「個人の信頼を蓄積するための活動」を重視するクレジット・スコアラーが持つ価値観は、今後広く普及していくと考えられます。

例をあげると、現地のフードデリバリーサービスで、メッセンジャーが家まで食事を運んだ際に、早く運んでくれた分のチップの受け取りを拒否し、その代わりに彼らは良いレビューをつけて欲しいと頼む人がいるといいます。まさに目先の金銭的利益よりも信用度を高めることを優先する分かりやすい例といえるでしょう。

彼らを調査することで、シェアリングサービスが当たり前になる未来、あるいは今ならクレジットカード等で管理されている個人の信用度合いが、もっと自分達の行動から導きだされるようになる未来の価値観を知ることができるはずです。

大気汚染が今後日本で急速に深刻化することはなさそうに思えますが、シェアリングサービスが日本で普及する未来は十分にありえます。そのときにこのクレジット・スコアラーの調査をすることは、日本よりも進んでいる価値観を持った中国の生活者からイノベーションのヒントを得て、国内でのサービス開発に活かすといった活用方法も考えられます。

イノベーションのヒントを持つアジアの旬な生活者たち

今回は主に中国を例にして語りましたが、他にも、インドネシアのバリ島やタイのチェンマイなどのリゾート地で自由な働き方を実践する人々や、伝統料理をアレンジして独自の健康法を取り入れるマレーシアやタイの生活者など、アジアの様々な地域・観点から現地の旬な生活者を捉えています。

美容や教育などで先進的な取り組みがなされる韓国、欧米に近いキャリアの考え方が実践されるシンガポールや香港、これからの発展が期待され多くの日系企業が注目を集めるカンボジアやベトナムなども網羅しています。

次週はこうしたアジアの旬な生活者をどのように発見しているのか?現地のトレンドをどのように集めているか?についてお話しします。

【SEEDATA ASIAにてリサーチをすることができるアジアの国や都市一覧】

東アジア地域:中国(北京、上海、杭州、深圳などの主な都市部)、台湾、香港、韓国

東南アジア地域:タイ(バンコク・チェンマイ)、インドネシア(ジャカルタ)、ミャンマー、カンボジア、ベトナム、シンガポール、マレーシア、フィリピンなど

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SEEDATAでは、独自に定義した先進的な消費者群(=トライブ)のリサーチを通じて、企業のイノベーション支援を行っています。

また、当記事に関するご質問、企業様からのアジアの共同リーサチの相談はinfo@seedata.jpまで、件名に『アジア共同リサーチについて』、御社名、ご担当者名をご記名いただき、お気軽にお問合せください。

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林直也
Written by
林直也(Hayashi Naoya)
アナリスト