オープンイノベーション促進税制について②

2020年4月よりスタートする、スタートアップへの1億円以上の出資で、最大25%の減税措置が受けられる、オープンイノベーション促進税制。

「オープンイノベーション促進税制について①」ではその条件と世の中の反応について解説しましたが、今回は政府から具体的にどのような発表がされているのかをご紹介します。

オープンイノベーション促進税制について①
今回は2020年4月よりスタートする、スタートアップへの1億円以上の出資で、最大25%の減税措置が受けられる、オープンイノベーション促進税制について解説していきます。 スタートアップへの1億円以上の出資で大幅な減税 まずこちらの記事を御...

令和2年度税制改正大綱とは?

政府は持続的な経済成長実現のため、オープンイノベーション促進ならびに、投資、賃金アップを促すことを目的とし、2019年12月12日、税制度の抜本的見直し案を発表しました。それが令和2年度税制改正大綱です。

この中の法人課税に関する項目の中で以下のように解説されています。

○ オープンイノベーションに係る措置

・事業会社から一定のベンチャー企業に対する出資について、その 25%相当額の所

得控除ができる措置を創設する。その際、一定期間(5年)内に、出資した株式を

売却等した場合には、対応する部分の金額を益金に算入する仕組みとする。

○ 投資や賃上げを促す措置

・収益が拡大しているにもかかわらず賃上げにも投資にも消極的な大企業に対す

る研究開発税制などの租税特別措置の適用を停止する措置の設備投資要件につい

て、国内設備投資額が当期の減価償却費総額の3割超(現行:1割超)とする。 

 

(引用元:令和2年度税制改正の大綱の概要

https://www.mof.go.jp/tax_policy/tax_reform/outline/fy2020/02taikou_gaiyou.pdf

さらに、この令和2年度税制改正大綱の元となっているのが、令和元年6月21日に発表された成長戦略フォローアップです。

成長戦略フォローアップとは?

まず、基本的背景としてsociety5.0を理解しておく必要があります。

society5.0とは、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する、人間中心の社会(Society)

狩猟社会(Society 1.0)、農耕社会(Society 2.0)、工業社会(Society 3.0)、情報社会(Society 4.0)に続く、新たな社会を指すもので、第5期科学技術基本計画において我が国が目指すべき未来社会の姿として初めて提唱されました。

Society 5.0で実現する社会

これまでの情報社会(Society 4.0)では知識や情報が共有されず、分野横断的な連携が不十分であるという問題がありました。人が行う能力に限界があるため、あふれる情報から必要な情報を見つけて分析する作業が負担であったり、年齢や障害などによる労働や行動範囲に制約がありました。また、少子高齢化や地方の過疎化などの課題に対して様々な制約があり、十分に対応することが困難でした。

Society 5.0で実現する社会は、IoT(Internet of Things)で全ての人とモノがつながり、様々な知識や情報が共有され、今までにない新たな価値を生み出すことで、これらの課題や困難を克服します。また、人工知能(AI)により、必要な情報が必要な時に提供されるようになり、ロボットや自動走行車などの技術で、少子高齢化、地方の過疎化、貧富の格差などの課題が克服されます。社会の変革(イノベーション)を通じて、これまでの閉塞感を打破し、希望の持てる社会、世代を超えて互いに尊重し合あえる社会、一人一人が快適で活躍できる社会となります。

(引用元:内閣府科学技術政策 > Society 5.0)

Society 5.0 - 科学技術政策 - 内閣府
 IoT(Internet of Things)、ロボット、人工知能(AI)、ビ&...

 

このsociety5.0を実現すべく作られたのが成長戦略フォローアップなのです。

成長戦略フォローアップの中でも注目すべきなのが、8章のSociety5.0実現に向けた新たに講ずべき具体的施策としてあげられている、自律的なイノベーション・エコシステムの構築です。

Society 5.0 によるパラダイムチェンジが急速に進む中、世界と戦えるイノベーションを生み出していくためには、大企業やスタートアップといった「産」、そして「学」、「官」等の力を総動員し、オープン・イノベーションに取り組む必要がある。

我が国においては、大学改革が進む一方で産学官連携は小規模にとどまり、起業活動も他国と比べ

低調である。また、大企業は既存事業の効率的運営に適した経営・組織形態をとっており、「自前主義」に陥り、機動性を失いがちとの課題を抱えている。

こうした中、イノベーションの源泉としての大学・国立研究開発機関(国研)について、将来像を見据えた課題設定段階から産業界とともにイノベーション創出に取り組むようにしていくとともに、産業の新陳代謝、構造変革を促進し Society 5.0 の実装を駆動するスタートアップについて、特にグローバルに活躍するものの創出・育成に向け官民一体で政策を総動員していく。

また、会社本体から独立した「出島」形式での異質な組織形態・組織文化の導入や、新たなマネジメン

ト手法による新規事業を既存事業とともに推進する「両利きの経営」など、大企業による新たな経営への挑戦を加速する。

(引用元:成長戦略フォローアップhttps://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/fu2019.pdf

【SEEDATAコメント】

サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させた

この考え方は少し古く、融合という時代はすでに終わっていて、「フィジカル空間はサイバー空間の中に入っている」というマトリックス的な時代に突入しています。サイバーなのかフィジカルなのかということは脳機能科学的に本来区別はできません。

 

また、SEEDATA的に重要なのは、5章のサンドボックス制度の活用(p.109)です。

5.サンドボックス制度の活用

(1)KPI の主な進捗状況

《KPI》企業価値又は時価総額が 10 億ドル以上となる、未上場ベンチャー企業(ユニコーン)又は上場ベンチャー企業を 2023 年までに 20 社創出<再掲>

【SEEDATAコメント】

このKPIに関しては、この内容でよいのかという疑問があります。というのもユニコーンが創出できるタイミングや領域というのは限られていて、本当に活発にしたいのであれば、全員がユニコーンを目指すべきではありません。

1社の時価総額の規模が大きくなることをよしとするのではなく、「新しく生まれたスタートアップすべての事業価値を足していくら」という考え方のほうがよいでしょう。勝ってる人たちだけの金額を見ても仕方ないのです。

 

結局新規事業制度を真剣に検討していくと必ず規制にぶち当たります。それらをもっと分かりやすく、民間のスタートアップ経営者に伝えていかなければ新規事業は生まれません。税制と同じくらい規制緩和を限定的におこなう仕組みは重要なので、まだまだサンドボックス制度は進化させるべきだと考えます。

 

(2)新たに講ずべき具体的施策

AI・IoT・ビッグデータ・ブロックチェーンをはじめとする革新的な技術やビジネスモデルの実用化を早期に行い、革新的な商品・サービスを間断なく創出することで、生産性を飛躍的に向上させるため、生産性向上特別措置法に基づき、新技術等実証制度(いわゆる

「規制のサンドボックス制度」)を導入した。

これまでに、FinTechのみならず、IoT、ブロックチェーン等を医療、環境などの分野で活

用するものなど、6件の実証計画が主務大臣の認定を受けている。

引き続き同制度を活用し、革新的なアイデアについて、期間や参加者を限定し、参加者の同意を得ること等により、既存の規制の適用を受けることなく、「まずやってみる」ことを許容し、より多くの実証をより迅速に実施し、蓄積した経験やデータを活用し、速やかな社会実装の実現を図る。

このため、新技術等の社会実装に向けた政府横断・一元的体制を強化する。

 

・内閣官房は、内閣府と連携して設置した新技術等社会実装推進チーム(一元的窓口)において、申請に向けた事前相談や助言のみならず、関係省庁との総合調整を行い、「規制のサンドボックス制度」を活用する事業者を支援していく。認定事例の紹介等を通じて、国内

外への本制度の周知徹底に取り組む。

 

・関係府省庁等は、規制所管部局以外に設けた新技術等実証の推進部局を中心とした体制の下で、申請を迅速に審査するとともに、所管分野において「規制のサンドボックス制度」を積極的に活用していく。また、実証の実施に当たり特例措置を講ずることが必要かつ適

当なときは、事業者からの求めに応じ、迅速に特例措置を整備していく。加えて、実証の終了後は、新技術等に関する規制の在り方について検討を行い、その結果に基づいて、必要な規制の撤廃又は緩和のために法制上の措置その他の措置を講じていく。

 

(引用元:成長戦略フォローアップhttps://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/pdf/fu2019.pdf

経済産業関係 令和2年度(2020年度)税制改正のポイント

この成長戦略フォローアップの発表後、「経済産業関係 令和2年度(2020年度)税制改正について」の中でオープンイノベーション促進税制についても言及されています。

 

経済産業関係 令和2年度(2020年度)税制改正についてhttps://www.meti.go.jp/main/yosan/yosan_fy2020/pdf/zeiseikaisei.pdf

この発表の中でも重要なポイントについて、以下のように解説されています。

①オープンイノベーション促進税制の創設と現預金の活用

  • アベノミクスの成果により増加してきた現預金等を活用して、イノベーションの担い手となるスタートアップへの新たな資金の供給を促進し成⻑に繋げていくため、国内の事業会社やCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)から、創業10年未満・未上場のベンチャー企業に対する1億円以上の出資について、25%の所得控除を講ずる。その際、オープンイノベーションの取組が確保されるよう、出資者は出資先のベンチャー企業の株式を一定期間(5年間)保有することとする。
  • 併せて、収益が拡大しているにも関わらず賃上げ・投資に積極的でない大企業に対しキャッシュアウトを促すため、研究開発税制等の租税特別措置の適用が停止される要件のうち、設備投資要件を強化する(減価償却費の10%以下→30%以下)とともに、賃上げ・生産性向上のための税制について、設備投資要件を厳格化する(減価償却費の90%以上→95%以上)。

②グローバル化や働き方改革への進展への対応

(1)5G投資促進税制の創設

  • Society5.0の実現に向け、国際連携の下での信頼できるベンダーの育成を図りつつ、安全・安心な5G情報通信インフラの早期かつ集中的な整備を行うため、全国キャリアの高度な送受信装置等の前倒し整備について、15%の税額控除(又は30%の特別償却)を認めるとともに、地域(ローカル)の送受信装置等の設備投資について、15%の税額控除(又は30%の特別償却)を講ずる。

(2)連結納税制度の見直し及び株対価M&Aの本則化

  • 企業の事務負担軽減のため、グループ調整計算を維持しながら個別申告方式を導入するとともに、連結グループ加入時の時価評価課税の対象縮小等を行う。
  • 会社法改正を踏まえ、自社株式を対価としたM&Aにおける被買収会社株主の株式譲渡益への課税繰延措置の本則化については、来年度に向けて引き続き検討する。

(3)消費税の申告期限の延⻑特例の創設

  • 働き方改革を踏まえた企業の事務負担の軽減のため、法人税等と異なり申告期限の延⻑が認められていなかった消費税の申告期限を1ヶ月延⻑する特例を創設する。

(4)日本企業の状況を踏まえた国際的な課税の見直し

  • 国際課税ルールの見直しに当たっては、 国際的な議論の動向を踏まえつつ、海外企業とのイコールフッティングの確保と日本企業の国際競争力の向上に向けて、合理的かつ明瞭な制度となるようにする

③新陳代謝等を通じた中小企業の生産性向上

(1)中小企業向けオープンイノベーション促進税制の創設

  • 地域経済を牽引する中小企業による地域経済の活性化に向けた取組を後押しするため、中小企業による、創業10年未満

・未上場のベンチャー企業に対する1,000万円以上の出資について、25%の所得控除を講ずる。

(2)エンジェル税制の拡充を通じた創業直後の中小企業の更なる成⻑促進

  • 個人投資家の裾野拡大とリスクマネー供給の強化を図るため、個人のベンチャー投資を促進するエンジェル税制について、対象となるベンチャー企業の要件を緩和(設立後3年未満→5年未満)するとともに、クラウドファンディング事業者を認定対象へ追加する。

(3)少額資産の特例措置及び交際費課税の特例措置の延⻑

  • 中小企業が取得する30万円未満の少額設備投資について、年間300万円まで即時償却を可能とする特例措置を延⻑する。
  • 中小企業の交際費を年間800万円まで全額損金算入可能とする特例措置を延⻑する。

(4)再編・統合等に係る税負担の軽減措置の延⻑

  • 中小企業が事業の再編・統合等を行う際の登録免許税や不動産取得税を軽減する措置を延⻑する。

    【SEEDATAコメント】

    今後は事業承継との絡みで、スモールM&Aや、小さく事業承継された会社が若い経営者に変わってもう一度再成長を目指すから出資してほしいという案件が増えてくるため、2、30代くらいの人たちがうまく事業承継をできるようなサポートも必要です。

    そのためには、たとえば中小企業が1000万円を出資し、事業承継のために30代の人を行かせるなど、事業承継絡みでうまく使うことが重要です。スタートアップのエコシステムを増やすことも大事ですが、スタートアップだけでなく、中小企業同士の出資再生というようなことにも使えるようになったほうがいいでしょう。

    1000万で変化できる中小企業はまだまだたくさんあるため、中小企業に関してはもう少し見直しが必要です。

     

    宮井 弘之
    Written by
    宮井 弘之(Miyai Hiroyuki)
    SEEDATA 代表