オープンイノベーション促進税制の減税効果について

前回、前々回と令和2年4月よりスタートするオープンイノベーション促進税制について解説してきましたが、今回はこのオープンイノベーション促進税制を活用した場合、具体的にどの程度お得になるのかを分かりやすく解説していきます。

オープンイノベーション促進税制について①
今回は2020年4月よりスタートする、スタートアップへの1億円以上の出資で、最大25%の減税措置が受けられる、オープンイノベーション促進税制について解説していきます。 スタートアップへの1億円以上の出資で大幅な減税 まずこちらの記事を御...

法人税の算出方法

まず、基礎的な話ですが法人税を算出する方法をおさらいしておきましょう。

法人ではなく個人の場合、一般的に以下のように所得税を算出します。

収入-経費=課税所得

課税所得×税率※=所得税

課税所得-所得税=〇〇

 

収入に対して経費を引いたものを課税所得と呼び、この課税所得に対し税率をかけて税金(この場合所得税)が算出されます。

 

【例】

収入100万円、経費40万円の場合の所得税

 

100-40=60

60×税率=所得税

 

法人税の求め方も上記とほぼ同様で、

売上ー経費=税引前当期純利益

税引前当期純利益×税率=法人税等

税引前当期純利益-法人税等=当期純利益

当期純利益を算出するために税金を引く必要がありますが、所得税は累進課税であるのに対し、法人税は基本的に一律です。

(※2000万円以下であれば個人(所得税)のほうが税率は低くなりますが、それを超える所得税率が33%に上がるため、法人税のほうが税率は低くなります)

 

この法人税等を安くすることが今回のテーマです。

(※基本的に、税引前当期純利益×税率=法人税等と考えていただいて問題ありませんが、実際は少し異なります。

たとえば、交際費などは使えば使うほど経費が増え、当期純利益を減らすことができますが、こういった経費の水増しを防ぐために、税金を算出するうえで交際費は一定の割合以上(※)は含めないなどの制約があります)

 

平成26年3月31日以前に開始する事業年度の資本金が1億円を超える法人が支出する交際費等の額はすべて税金を算出する上での数値(損金)に含めない。

平成26年4月1日以後に開始する事業年度の資本金が1億円を超える法人が支出する交際費等の額は50%に相当する金額を超える部分の金額を損金に含めます。

(参考資料:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5265.htm)

オープンイノベーション促進税制のシュミレーション

では、実際オープンイノベーション促進税制を活用した場合、どれくらいお得になるのでしょう。

法人税等には

 

①法人税

②本人住民税

③法人事業税

 

の3つが含まれます。

大企業の場合、法人税、法人住民税、法人事業税をあわせて約29.74%の税率になります。

(ここでの大企業の定義は、資本金が1億円以上の企業を指します)

 

よく、「日本の法人税率は高い」と言われますが実際はむしろ減少しています。しかし、リーマンショックや大震災などの予期せぬの出来事が起こる可能性から、ここ10年ほど内部留保(会社にためておく資産)は増加傾向にあります。

その内部留保の活用を促すために、オープンイノベーション促進税制が制定されたのです。

 

では、ここで某飲食業を例にとって考えてみましょう。

【税引前当期純利益が50億円の場合】

 

50億×30.62%=約15億3100万円(法人税等)

50億ー約15億3100万円=34億6900万円(当期純利益)

 

つまり35億が当期純利益です。

この企業がオープンイノベーション促進税制を利用し、たとえば1億円出資した場合、株式取得額は1億円です。

今回は10億出資した想定で計算してみます。

 

10億×0.25=2億5000万円

この2億5000万円が税引前当期純利益から引かれます。

 

50億ー2億5000万=47億5000万(税引前当期純利益)

47億5000万×30.62%=14億5445万円(法人税等)

47億5000万ー14億5445万円(法人税等)=32億9555万円(当期純利益)

 

つまり、10億円出資すれば約9000万近く法人税等を下げることが可能になるのです。

 

これまで出資をした場合、BS(貸借対照表)の現金が減っても、PL(損益計算書)には影響がありませんでした。

しかし、オープンイノベーション促進税制により、今後は出資をすればするほど、税金が下がっていくというわけです。

 

実際の税法上はもう少し細かな点がありますが、今回はざっくりとオープンイノベーション促進税制のメリットが理解していただけたのではないでしょうか。

最後に、今回の記事はあくまでシミュレーションであり、オープンイノベーション税制を推奨するものではありません。また実際の投資にあたっては各社の顧問税理士等専門家の助言のもと各自の責任において検討をしてください。

 

宮井 弘之
Written by
宮井 弘之(Miyai Hiroyuki)
SEEDATA 代表