【IDL&SEEDATA対談④】すばやく1つ目のアクションを行う 「IDL Future SEEking Program」の目指すデザインとは

近年、イノベーションに対しての機運が高まっているものの、世の中の生活者が何を求めているのか、生活者に対して何を提供すればよいのかがわからないといった声を多く聞きます。

この連載では、株式会社インフォバーン内でデザインチームIDLを立ち上げた井登氏と、SEEDATA代表の宮井の対談から、『生活者が潜在的に求めているもの』を発見する際の考え方と、現在のデザインの手法が直面している問題点を探り、全4回に渡りお届けします。

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①消費者に新たな価値を提供するための両組織のアプローチとは

②持続的イノベーションに必要な「リフレーミング」の役割とは

③「未来の当たり前」を作るためにはプロダクトアウトでありユーザーインな「強い仮説」が必要

写真左:

井登 友⼀(以下:井登)。株式会社インフォバーン 取締役執⾏役員 京都⽀社⻑。⽇本プロジェクトマネジメント協会認定 プロジェクトマネジメントスペシャリスト。特定非営利法人認定人間中心設計推進機構(HCD-Net)理事

写真右:

宮井 弘之(以下:宮井)。株式会社SEEDATA 代表取締役。インテリジェンス・インキュベーション全体統括



POC(Proof of Concept)からPOB(Proof of Business)へ クラウドファンディングの重要性

-(前回のお話の続きから)最近プロジェクトをやっていると、慎重にやるほど「失敗してはいけない」という考えになってしまいます。失敗したら別のルートで未来に持って⾏こう、ということですか?

井登:僕らはエージェンシーサイド、コンサルサイドとして、今後企業と向き合っていかなければいけないテーマだとは思うのですが、失敗できない⽂化を変えるのは難しいですよね。でも最⼩限の失敗を許せたり、失敗するというバッファを設ける組織デザインにしたり、新しい事業、製品やサービスの開発を⾏うプロセスをクライアントと⼀緒にデザインしていかないとならない。プロジェクト単位でデザインだけを扱うには荷が重くなっていくと思います。

宮井:machi-ya のクラウドファンディングを御社が持っているとう意味は⼤きいなと思っています。クラウドファンディングもいわゆるプロトタイプの⼿段だとは思っていますが、井登さんから⾒て、どう捉えていますか?

井登:僕の管轄事業ではありませんが、弊社グループ会社のメディジーンが運営しているmachi-yaのようなクラウドファンディングの仕組みは今後イノベーションのPOC(Proof of Concept)に活用できる可能性を感じています。従来はリサーチやテストのような方法でしかエバリュエーションできなかった領域のPOC を実際に事業化⾃体の評価を通して測るという観点で、クラウドファンディングをPOC の⼀つのアプローチ、出⼝として使うという発想は⾯⽩いと思っています。

宮井:POC のみでなく、POB(Proof of Business)も重要になるのではないかなと思っています。POB も求める中で、本来はインフォバーンさんがメディアのコマース化としてやっていたところではあるけれど、井登さんチームと⼀緒にやっていくプロジェクトとしても意味が出てくるところなのかなと思います。

クラウドファンディングを使うことで、新しく作ったモノが本当にお⾦を⽣むことができるのか、最初の1 円や100 円、10000 円を⽣むというところのプルーフが、プロジェクトやプロトタイプの状態で作れるのではないかと思いました。

井登:クラウドファンディングという仕組み⾃体が⽇本に浸透してまだ数年だと思いますが、⽇本においてクラウドファンディングの市場に集まる⼈たちってイノベーティブですよね。普及理論で⾔うところのイノベーターに近かったり、新しいものが好きでそういったものへの投資に受容的であり、ある意味失敗してもいいと思っている⼈が多い。

程度の差はあれ、こういった⼈たちはまだ「トライブ」としても捉えられるので、何年かしてクラウドファンディングが、もっと⼀般化して浸透した時にどうなるかに興味はあります。

POC してくれるクラスタは特⾊が強く、メディア側⾯で感度の⾼い⼈が集まっているし、他のクラウドファンディングをやっているプラットフォーマーはガジェット寄りクラウドファンディングサイトや、社会貢献の強いクラウドファンディングもある。それが細分化していくと⾯⽩いだろうし、⼀般化していっても変化が⽣まれていく。未だ妄想・想像でしかないですが、⼀般化した時に、本来の意味でのPOBができるのではという可能性を感じています。

投⼊するアイデア⾃体の⽑⾊との相性の度合いは⼤きいかなという懸念はありますが、製品や事業アイデアの実証検証手段として、クラウドファンディングをオプションとして⾒ているのは重要な意味を持つと思います。

新規事業チームが手応えを得るためには、まずは思い切って1つ目のアクションを起こすことが重要である

-最後に、このプログラムやパッケージをどういう思いを持っている企業に使っていただきたいですか? そしてどういう状態に変わって欲しい、という考えはございますか?

井登:本⾳で⾔うと、確固たるビジョンやテーマを持っているスタートアップや新規事業チームは従来型のアプローチがまだ使えるんです。⼀⽅で、最近では企業の⼤⼩を問わず、企業内のミッションとして新規事業をやらなければならず、既存の事業の中でも、新しい領域などにおいて、新しいモノを作っていかなければいけない状況を迫られたチームは、まだ自分ごととして確固たるビジョンを持てていない場合があります。

失礼を承知で言うと、「会社から、なにか新規事業をやれ」というミッションを与えられて、「さて、どうしたものか?」と思いつつ新しい事業のアイデアを模索されているような方々、です。

例えば健康という領域で何かをするとか、領域は定まっているものの、どんな世界を作っていきたいかが明確になっていない場合があるんですよね。日本人をもっと健康にする、とかでは、抽象度が⾼すぎるし、まだビジョンにはなっていない。それによって何を起こすかがビジョンだと思うんですよ。そのようなビジョンを持っていない場合、強い仮説が必要になるんです。

どういった指針を仮説として⼀旦おくかというのを⾏う上で、今回のSEEDATAさんとのコラボレーションプログラム(IDL Future SEEking Program)は役に⽴つと思います。

正解があるかは保証できないです。むしろ、正解を⾒つけることが⼤前提というよりも、『何を⾃分たちで⾏なっていくか』を早く形にする。プロトタイプなどの、実際に⼿に取れる形にすることで、「これはいけそうだ」なのか「これはいけなさそうだ」なのか、実感として何かしらの⼿応えは早期に掴めるはずです。

ファーストリザルトを出すために「強い仮説」を作って、仮説の強度を強め、極端な利⽤体験やサービスを固め、形にして、実際に想定ユーザーに近いひとたちに使ってもらい評価してもらうと、「絶対に欲しい!」や「これは全然いらない」といったようばブレ幅の⼤きいレスポンスが得られる。それくらい極端になれないと始まらないんです。「なんとなく⾯⽩い」や、「あったら使うかも」くらいだと「なんとなく便利」で終わってしまう。あえてブレを作り、よかったのであればよくない点だけを改良すればいいし、悪い場合は「なんで受けなかったのか?」からもう⼀度リサーチができる。

会社からの「新しいものを作れ」という無茶振りに悩む方々と、短い期間で⼀回でも形にしたいですが、「こういったことをやってます」というのを会社でも提案して⾏き、評価を提⽰し、ダメな場合でも⼀旦評価をしてもらい、次のステップを回していく、というように進められれば良いと思っています。「とりあえずリサーチしようか」というお客さんもいれば、⾏動が起こせなくて困っている⽅もいらっしゃると思うので、何かしらのアクションを⽣むような成果が出せるという点でお勧めしたいですね。

宮井:「なにか新しいことをしなければいけないけれど、どうしたらいいかわからない」という点で悩んでいる⼈こそ、思い切って⾨⼾を叩いてもらえればなんとかしますよ。

井登:これまで話したように、我々は意図を持って極端な仮説や極端な未来洞察を扱っているわけですが、それを⼀つ媒介にして、例えば「健康とIT を掛け合わせることは決まったが、そこからどうしよう」と悩んでいる⼈の前に極端な洞察を置くと、考えるきっかけにもなったり、考えざるを得なくなるんです。むしろそれが無いと始まらないし、画期的なアイデアは出てこない。

たとえば今はまだ⽇本に存在していない画期的なアイデアがあれば「⽇本で数年内にこれを実現するとしたら何が必要か」という発想をし、「今⽋落していることは何か」「体現している⼈が⾝近にいるか」と距離を縮め、対象者を探しやすくするというのは、アイデアを実現し、検証をしていくためのやりやすい⽅法かなと思います。

また、ある程度フレームワーク化しているし、期間もあえて短くやっているので、ブートキャンプ的に研修として活⽤し、それぞれが経験したものを⾃分たちの新規事業のアイデア発想に持ち込むという肩慣らし的に使ってもらうことも可能です。

最低限の教育としても⼿順を経験できるので、失敗に対して慎重になる体質の企業が研修的に取り⼊れるのもお勧めですね。

インフォバーンさんとSEEDATA とクライアント企業さまで⼒を合わせることで、新しい意味を⽣活者に提供していきたいですね。ありがとうございました!



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SEEDATA(SEEDATA)