【商品開発のプロセス①】商品開発のアイデア作りの心得と4つのリスク(前編)

SEEDATAを創業して約3年ほど経ちますが、これまで消費財(飲料、食品、日用品など)から、電化製品に至るまでなどさまざまな分野の商品開発に携わり、多くの企業担当者が抱える商品開発の課題に一緒に取り組んできました。

これらの知見をもとに、今回から新たに、商品開発という仕事を取り巻く事柄について、SEEDATA流の商品開発のプロセスや事例を交えながらご紹介していきます。

第1回の今回は、商品開発を行う際に陥りがちな4つのリスクについて前後編でお届けします。

一般的な商品アイデア開発プロセス

商品開発では、研究所の技術を意識しながらシーズドリブンでアイデアを重点的に考える場合と、商品のブランドを意識する事業部の観点から、ニーズドリブンでアイデアを考える場合があります。研究所発の商品開発が技術シーズだけを意識しているかというと、そういうわけではなく、技術シーズと生活者ニーズの両輪を回しながらプロジェクトは進んでいきます。

今回は商品開発プロセスの中で陥りがちでありながら、よく見落とされてしまう4つのリスクがテーマです。なお、今回は前提として商品開発プロジェクトが始まる前に意識すべきお話になりますが、「プロジェクトが進行しているにも関わらずうまくいかない」という方もぜひチェックしてみてください。

まず、一般的な商品アイデア開発のプロセスには、以下の4つのプロセスがあります。

① 情報インプット

(商品アイデアを考えるための、生活者・技術に関する情報を収集し、たくさんの情報からアイデアの方向性や価値探索を実施し、情報を発散する)

② コンセプト作成

(発散した情報を収束し、商品のコンセプトに洗練する)

③ コンセプト検証

(作成したコンセプトにニーズがあるか検証する。多くの場合、定量調査を用いた検証が主流)

④ アウトプット

(コンセプト検証を経てブラッシュアップされたアイデアの概念を、実現可能性のあるモノに落として行きます)

アイデアを考える上で必要な情報を収集するのが①情報インプットで、情報収集の方法はいろんな手法があります。情報収集の方法はいろんなところでまとめられていますが、SEEDATAでは定性調査・デスクリサーチのいずれかで実施するパターンが王道です。

一般的には、情報収集の方法は定量調査の場合もあれば、定性調査で生活者のリサーチを行う場合、あるいは、今あるプロダクトやサービスを調べる場合、また、今までのヒット商品のリサーチや、デスクリサーチといった今世の中で起きていることを調べるというパターンもあります。

それらの情報を集約した後、インプットで出てきた方向性から、アイデアの方向性を収斂(しゅうれん)し、②コンセプト作成を行います。

作成した後は③コンセプト検証ですが、実際にニーズがあるかどうかを検証するために受容性調査を実施します。受容性調査は、大きく定量調査と定性調査の二種類があります。

定量調査は、商品のコンセプトをビジュアルボードにデザインしたり、魅力ポイントを整理して短文で伝えるなど、定量的に検証できるフォーマットにまとめて検証します。定性調査では、コンセプトに魅力を感じるユーザー、あるいはブラッシュアップのヒントを与えてくれるユーザーを規定し、そのユーザーにデプスインタビュー、あるいはFGIを実施し、アイデアを深掘りしていきます。

以上の流れが、一般的なプロセスですが、フェーズごとのポイントや進め方のヒントについては、別の機会に詳細にまとめますので、ここでは割愛します。

前編では、このプロセスの中で起こりがちな4つのリスクのうち、妄想のリスクと同質化のリスクについて解説していきます。

商品開発プロセスのリスク①妄想のリスク

まず、商品開発で失敗するパターンとして、コンセプトを作った段階で、コンセプトを検証する受容性調査をおろそかにするという場合が散見されます。

たとえば、10代から60代まで性年代を均等に割り付けた対象者に定量調査を実施し「商品の魅力度」を聴取した調査があるとして、全体の7割以上の魅力度のスコアが高い=良いアイデアと判断するパターンがあります。

たしかにこれでニーズは高いと読み解くこともできますがが、実は「コンセプトシートでは伝わりきらないことがある」という問題があります。通常、受容性調査をする際には、「商品の印象・世界観、誰のためにどんな機能がある、一言で表現するとなにができるか」を1枚に簡潔にまとめることがお決まりです。たとえ調査結果が高くても、1枚のコンセプトシートで商品の内容が正しく理解されていない場合、イラストのかっこよさで評価されている場合は注意が必要です。コンセプトシート1枚だけで、生活者に商品の詳細をきちんと検証できていない場合があるのです。SEEDATAではこのようなリスクを妄想リスクと呼んでいます。

SEEDATAでは妄想リスクをさけるために1枚のコンセプトシートとは別に、顧客体験の図=キーパス・シナリオをつけます。

キーパス・シナリオは、どんなきっかけで商品を購入し、商品を使用したときの気持ち、何が理由でリピートするかといった体験シナリオをコンパクトに明示したものです。

調査対象者はコンセプトシート1枚だけを見ただけでは、「まあ良さそう」と思ってなんとなく高い評価をつけてしまうのですが、キーパス・シナリオがあると具体的なシーンを見て、自分ごと化して理解することができるのです。

商品開発プロセスのリスク②同質化のリスク

インプット情報を収集するとき、マクロデータを中心に使用するケースがあります。人口動態やマクロトレンド(晩婚化・少子高齢化など)に関する情報を活用して進めます。マクロ情報をインプットに活用し、アイデア創出を進める場合、似たようなアイデアが量産される、既視感のあるアイデアが増えて、プロジェクトが行き詰まることがよく起こります。

私たちはこのような状況を同質化のリスクと呼んでいます。同質化のリスクが起こる背景には、「確実な情報であるが、新たな発見のないインプット」を使ってしまうことにあります。インプット情報を集める時は、着想のヒントになる情報を意識することが大事です。

SEEDATAでは、着想のヒントを得るために、「枠外情報」を大切にしています。枠外情報とは、その名の通り「外側にある情報」のことを指します。一見関係のなさそうな情報に着目することで、意外なヒントを発見することができます。サービス利用者などの「枠内情報」は、自社で既に情報を持ち知っているため、新たな発見を見出すことが難しい場合があります。

たとえば、ある食品の商品開発を進める場合、その食品の利用者(ターゲット)の情報を活用するのではなく、SEEDATAでは食の分野の枠外情報になるトライブを用意します。たとえば健康意識の高いトライブ=ドクターシューマーを活用します。ドクターシューマーは、サプリを1日何錠も飲んだり、完全栄養食を食べる、健康意識の高い生活者です。健康意識の高いドクターシューマーの観点から、栄養摂取のヒントを探るのです。

SEEDATAの提唱するトライブ・ドリブン・イノベーションについては当ブログでも何度も触れていますが、これは健康意識の高いトライブそのものをターゲットにするわけではなく、健康意識の高い生活者という世の中の少し先をいく行動から、着想のヒントを探るアプローチ方法なのです。

トライブはもともと考えているターゲットの外側にいるような人たちですが、外側の情報に目を向けることで新たなヒントを探るという手法で、これを私たちは枠外発想と呼んでいます。枠外に目を向けることで、今までと同質化しないようにするということを大事にしています。

ここまでの話を聞いて、枠外発想の進め方では、「元々規定したターゲットからズレた商品アイデアになるのではないか」と思った方がいらっしゃるかもしれません。たとえば「20代の有職女性向けの商品を作りたい」という時に、SEEDATAではドクターシューマーなど枠外情報を使いますが、「創出されるアイデアは本当に20代女性向けになるのか?」ということですね。

たしかに、ドクターシューマー、シニアウオリア、ワークライフバランス女子など、20代をターゲットにしないトライブかつ、違うカテゴリから考えますが、最終的に創出されるアイデアが20代の女性にニーズがあるかどうかは、アイデアを作った時点ではなく、最終的にその後受容性調査をやる段階で検証していけばよいのです。

アイデアを作る段階で既視感の情報を頼りにしてまうと、今までと同じようなものができてしまう、その状況を避けるためにあえて枠外情報に着目することで、これまでとは違う新たなアイデアを生み出すことができるのです。

私たちが何故このような方法をとっているかというと、そもそも現代の人々は多くのことにおいて現状に満足しているため、既存の不満や不便から考えること自体が難しいといわれているからです。

そこで、新しい便利を提供するとすれば何が提供できるかを、少し先の未来をいく生活者(=トライブ)からインプットしていく、そこに意味を感じているからこそ、枠外発想で同質化のリスクを避けているのです。(後編に続きます)

new SEEDATA流商品開発コンセプト開発(ゾウガメ)

当連載をまとめたホワイトペーパーができました。商品開発のプロセスを分かりやすく解説しています(全31ページ・1.86MB)

藤井陽平
Written by
藤井陽平(Fujii Yohei)
取締役