【特別編】商品開発・流通担当者向け今日から学べるホールフーズのブランディング

ホールフーズといえば、アメリカ合衆国に約400店舗も展開する大規模オーガニックグルメスーパーです。ご存知の方も多いと思いますが、観光スポットとしても人気が高く、大規模であるにも関わらず、その商品のほとんどがオーガニックであることが売りで、日本には例をみません。

ホールフーズに関しては、昨年Amazonに137億で買収され、高級食材がさらに安く手に入ると言われていましたが、一部ユーザーから「品質が落ちた」というような声が出ているというこのような記事を目にします。

アマゾンの買収で確かに安くなったけど…ホールフーズ見限るファンの不満

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今回は現地へ行く機会があったため、実際のホールフーズの様子と、そこから得られたブランドや店舗のブランディングに重要なヒントについて解説いたします。

まず、このような記事だけを見て、一部のコアなホールフーズファンが「品質が落ちた」と言っているからホールフーズはダメだと短絡的に批判をしないことが重要です。

日本でマーケティングをしている私が実際にホールフーズを見てきた感想として、ホールフーズには、商品開発や流通の仕事をするうえで重要なことがつまっている、学ぶべきことがたくさんあると感じました。

今回は商品開発や流通業を担当する方に向け、世界標準とも言える商品コンセプトの作り方、モノの売り方のTIPSを解説していきます。

いくつかポイントはありますが、まず店舗や商品のブランディングの際にもっとも重要なことをお伝えします。

まずはこちらの写真をご覧ください。

これらの写真を見て、何かお気づきのことはありますか?

実はこの中でいちばん重要なことはプライスカードに「organic(オーガニック)」と書いてあることです。ホールフーズの商品にはほぼすべての商品にオーガニックという非常に「普通」のことが書いてあります。実はこれは、店舗のブランディングや商品のブランディングをするうえでかなり重要なことで、ある種どうにでもとれるシンプルな価値ワードをひとつ据えることは、ブランディングの基本です。

これが細かすぎたり、意味の伝わりづらい言葉はダメなのです。つまり、オーガニックという言葉であればマスプロダクトを購入できるレベルの可処分所得を持つほとんどの消費者が理解できますが、オーガニックと一言でいってもさまざまで、その中身については言及していないのです。

そのくらい大きなビックワードをキーワードとし、店舗やブランドのコンセプトを細かくいう必要はありません。「ティーのオーガニックはこれ」「ナッツのオーガニックはこれ」と、各自の考える「オーガニック」概念を個別の商品や売場で体現していくということが大事です。アメリカは多民族国家なのでとくにそうですが、日本においても同様です。

たとえばディズニーのブランドコンセプトは「ハピネス」です。ハピネスの意味は幸福、満足、喜びなど色々あるので、ステイクホルダーはどうとでも受け取ることができます。

ブランドや店舗として、シンプルでずっと使い続ける言葉を決めるというのは、ブランディングの基本中の基本なのですが、これを理解していない人が意外と多く「そんな当たり前の言葉を使ってもしょうがない」とう意見もあります。

しかし、まずこの普通の言葉をひとつかかげるというのが大事で、ホールフーズであればオーガニックと書いてあること、この基本をまず守るということがブランディングするうえでは大切なのです。誰もが使っている当たり前の言葉に自社にしかない深い含意をもたせることができるか否かがブランディングの実務上の要諦です。

さらに、この写真の中でもうひとつ重要な点が「Honest(オネスト)」と書かれていることです。

私の観点からみるとこれはトレンドキーワードで、最近オーガニックのもうひとつの切り取り方としてきているのがオネストという概念で、誠実さ、透明性、正直、フェアなどを総称しています。つまりオネストという言葉には時代性が表現されているのです。

このように、シンプルな言葉でブランドの価値を表現し、それに対して時代性を感じさせるキーワードをつけることが、商品のブランディングや、店舗のブランディング、それを売り場でどう体現していくかにおいて重要なことです。

ただし、オーガニックと掲げるだけでブランドとして成立するわけではありません。それでは大きな話だけで終わってしまい、ブランドの顏つき、ディテールが分からないので、今度は個別の商品コンセプトを考えていく必要があります。

この個別の商品コンセプトを考えていく際に、現代社会で非常に重要なヒントが以下の写真に隠れています。

もうお分かりだと思いますが、写真のとおり、ひとつの商品に対してこれだけの種類が並んでいます。オーガニックならオーガニックと書いてある1種類でいいというわけではなく、個別の商品はいかに細かくコンセプトを作るかが重要なのです。

「サラダだけでこんなに細かく種類があっても、消費者は分かるのか?」と思う方もいるかもしれませんが、現代のマーケティングは、ブランドの概念は大きくてよいのですが、個々の商品は非常に細かく種類を用意することが求められています。ポイントは細かい違いのある商品をしきつめるということです。

このような売り場作りをすることによって、オーガニックやオネストという大きな価値やトレンドを感じながら、自分に合ったライフスタイルや価値を消費者が自分でデザインすることができるようになります。

これはトライブであるクラフトドリンカーの話と非常に似ていて、こういったメッシュの細かい弁別性を嗜むことが現代における贅沢なんです。「プレミアム」と一言でいっても、希少性のある素材を使う、上質な素材を使うなど色々あげられますが、重要なことはきめ細やかに違いのある商品を揃えることであり、それができればプレミアムブランドと考えてもらっていいでしょう。ただし、ふつうに細かくつくると弁別性の無い、本当に同じようなものになってしまいます。ここに細かい弁別性をデザインできるかどうかでブランドマネージャーの価値は決まります。

たとえばコールドブリューといっても、コールドブリューかノーマルブリューかで比較をしてはいけません。少し言い方を変えるだけで消費者に対する刺さり方が違うため、コールドブューの中で30案くらい考えて消費者テストをすべきなのです。その細かい差異を見ていくのが現代の商品コンセプト開発であり、現代の贅沢なのです。付加価値というのはそのようにしなければもう生まれないものなのです。

同じコールドブリューの商品でも、ちょっとした違いで売れ行きがまったく変わるということを、消費財の商品開発をする方は肝に銘じておきましょう。

薄利多売ならシンプルでもいいのですが、付加価値をつけたいのであれば、このようにすることで顧客は大きなブランド価値と贅沢を感じることができます。日本だと売り場面積の問題で難しい部分もありますが、こういった流れがいずれ訪れるでしょう。

最後に、店舗自体のブランディングに関わるアイデアをご紹介します。

これはホールフーズのショッピングバックの写真です。

たとえば、これまでのプラスチック製のストローに代わりパスタ製ストローなどができたように、プラスチックを使わないという流れが世界的にきていて、当然日本にもその流れはやってきます。

こういった背景があり、ビニール袋は基本有料です。そのため消費者はショップバックを持ち歩かなければならないのですが、このショッピングバックの提供の仕方にブランドデザインの実務家が唸るプロっぽさが表れています。

実はこのバックは店ごとにブランディングしているため、柄も店舗によって異なります。自分の住んでいる地域に愛着があれば、その地域名が入っているショッピングバッグを持つこともできるし、店舗ごとのバックを集めてもいいし、日本ではお土産としても人気です。

重要な点は、ここでも「同じコンセプトなのにたくさん商品がある」ということです。たくさんの選択肢や愛着のポイントを消費者に作ってあげること、なおかつショップバックはエコであるということも、ホールフーズの掲げるオーガニックやオネストと親和性があります。

これは店舗のブランディングの非常に優れた例といえるでしょう。

こういった形で店舗単位でブランディングをしていく、1種類のシンプルなものではなく、多様性を持たせることが現代の贅沢です。

また、もう1点、クラフト消費と関係してくるのですが、最近ではビーントゥーバーのチョコレートのように、原料から形になるまでを店舗で作ったものがそのまま買えるプロダクトが、日本でも人気を呼んでいます。ホールフーズではコンブチャ(欧米で人気のマンゴー味、ベリー味などの発酵飲料)をタップで買うことができます。

コンビニやスーパーなどでも目の前でドリップしたコーヒーの提供が当たり前になってきましたが、このように店舗やタップで作りたてや出したてを出す商品が増えていくのも、今後流通や商品開発担当者が理解しておくべきクラフト消費の流れのひとつです。

現地で作られている、タップで飲める、その場で食べられる、このような要素をきっちりつめていけば、プレミアムな商品、プレミアムなブランド、プレミアムな店舗はどのジャンルでも作ることが可能です。

ホールフーズというのはこれらの基本の部分が守られていて、店舗の細部にまでプロの仕事を感じることができました。

旅先でもこのような形でフィールドワークや店舗観察をすることで、得られるさまざまな気づきがあるといえるでしょう。

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宮井 弘之
Written by
宮井 弘之(Miyai Hiroyuki)
SEEDATA 代表