【商品開発のプロセス③】情報インプット編①着想型リサーチと検証型リサーチ

前回は一般的な商品プロセスと商品開発プロジェクトの心得をご紹介しましたが、今回からは前回お話した商品開発プロセスを詳細に分けてひとつずつ解説していきます。

まず今回から情報インプット編のノウハウを3回に渡ってご紹介します。

今回は情報インプットの中でもインプット素材の考え方についてです。

商品開発の情報インプットには着想型リサーチを活用する

はじめに、SEEDATAではインプットの素材を着想型調査検証型調査という2つの素材に分けています。着想型と検証型は以下のように分類することが可能です。

着想型…新しい情報を探索するために考え方のヒントを得るためのリサーチ法

検証型…考えた内容が正しいかどうかを検証するためのリサーチ法

SEEDATAでは対象のリサーチが、検証型に向いているのか着想型に向いているのか、厳密に分けて考えています。というのも、検証型のリサーチのデータを活用して商品開発をしようとしても、なかなかアイデアが生まれず、この情報がどちらに向いているのかを最初に吟味しなければ、リサーチが上手くいかないということがよく起こるからです。

リサーチがどちらに位置付けられるかにより、調査のやり方も大きく変わります。

商品開発における情報インプットでは、着想型リサーチを活用するというのがSEEDATAのやり方です。

逆に検証型リサーチを使うのは、コンセプトの検証時です。検証型リサーチは、商品アイデアが生まれたときに、それがどのように世の中に受け入れられるかどうかを検証する際、テスト(受容性調査)をするときに活用します。

着想型リサーチの目的は以下の2点です。

・自分が「このアイデアはおもしろい」「このアイデアはいける」という確信を得ること

・「ここからアイデアが思いつきそう」という膨らみを得ること

調査という名前の特性上、最終的に出てくるものには確からしい情報が必要だという風に考えられることが一般的ですが、SEEDATAでは、着想型リサーチのポイントはこの情報が確からしいかどうかよりも、その後のアイデアを導くための新しい発見や気づきがあるかというのを重視しています。そのためには、分析的であることより、ひらめきや直感的であることが大事です。

マクロデータは既知の情報の焼き直しにしかならない

また、とりわけ重要なのは、どのような調査結果を活用するかです。SEEDATAでは着想の段階だと定量調査やマクロトレンドを活用しません。ここでいう定量調査とは、自社商品や他社商品に対するニーズ等を調べて分析した情報、マクロトレンド情報とは年代別の人口比率や共働き世帯の推移などの人口動態データを指します。

マクロトレンドを最初の情報インプットに活用する人は割りと多く、我々と一緒にプロジェクトを行っている人の中でも、着想にマクロとミクロを両方を活用するパターンがありますが、実際にマクロトレンドからアイデアを生み出している人はあまりいません。

マクロトレンドのデータ、たとえば人口動態データなどは厚生労働省のHPなどに出ているため、活用しやすいですが、実際そこまで重要ではないと考えます。

読者の方の中で、このような情報を生かして商品アイデア開発に着手する方もいらっしゃるかと思いますが、私たちはこのやり方は新たな着想は得難いと考えています。

マクロトレンドデータからは着想が得られない理由は、既知の情報の焼き直しであることが多いという点です。

知っていたことをデータで改めてみても、そこから新しい発見はありません。着想段階で大事なのは、「なるほど」「もしかしたらこうかもしれない」というような膝を打つような情報であることです。「たしかにこれはおもしろい」「これは使えるかもしれない」というような新しいアイデアを導けるような情報が大事なのです。

既知の情報をどれだけ集めてもムダな情報が多くなるだけで、逆に全体の情報が見えにくくなってしまうケースがあります。ここから発想をすることは難しく、新たな発見なくしてアイデアを考えることは難しいのです。

マクロトレンドや定量調査は、着想段階ではなく、検証段階に活用することをオススメします。

着想ではファクトよりファインディングスを重視する

着想段階に使うべきは、むしろマクロに対してミクロな情報、マスにはなっていないけれど新たな兆しのある情報です。

たとえば、新たにこういう生活者の行動が出てきているとか、今人気の商品は実はこういう理由で流行っているかもしれないとか、既存のヒット商品のリサーチや少し兆しが出てきているようなユニークな情報をあらためて分析します。

新たな兆しのある情報や既存のヒット商品の調査で大事なのは、ファクトだけをもってくるのではなく、そこから何が読み解けるのかという各自の解釈や、各自の読み取った重要なポイントをしっかり書くことです。自分なりの考えや分析までを含めたうえで、それが有効な情報になり得るのです。

SEEDATAではファクトに対してこれをファインディングスと呼んでいます。

たとえば、麻婆豆腐の素のような要領で、メインの具を入れて炒めるだけで完成するという具入り合わせ調味料という商品があります。これを事例として活用する時に、商品のニュースリリースだけ持って来るのではなく、これのどこが面白いと思ったかをきちんと分析して書く必要があります。

ここに、子持ちのお母さんのニーズとして、「冷凍食品をそのまま出すのは、家事を手抜きしたように感じてしまい、気持ちがはばかられる」というインサイトがあります。この商品を利用すると、包丁は使う必要はありませんが、炒める必要があります。

例えば、SEEDATAでは「包丁を使うことやレンジでチンをすることより、自分で炒めて、自分で味付けできることがお母さんの罪悪感を払拭するポイントになっているのではないか。自分で料理の味付けをアレンジできることで自分の料理という実感を持てるのではないか。」という仮説を立てます。

着想型リサーチでは、この仮説があっているかどうかはそれほど重要ではありません。「本当に炒めて、自分で味付けできることで罪悪感って払拭できるの?」と思ってしまうと、そこから先には進めません。

この発想がおもしろいと感じたら、直感を信じて新しいアイデアを考えていくことが大事で、論理的、分析的である必要はないのです。どちらかというと、「母親の罪悪感を払拭するための行動がある」という考え方の商品が出て来ているということの方が重要で、そういう考え方が見つかると、ほかの商品も考えやすくなります。

似たような話で「味のついていないフライドポテトに最後に味付けをすることで、自分が作ったと感じられる」という声から、母親の罪悪感を払拭するのは「炒める」、「揚げる」+「アレンジ」ができるということで、意外とそのひと手間があった方が母親にとって食卓に並べやすい商品になるという発見がありました。

この考えを応用して、たとえば「冷凍食品でもひと手間加えられるものの需要があるのではないか」とどんどんアイデアを広げていくことができます。

これはSEEDATAが活用している枠外発想の考え方に近いもので、枠内の調味料業界ではなく、「お母さんの罪悪感を払拭する」ということをキーワードにしたときに、まったく違う枠外の業界でも、この「フライパンで炒める/自分で味付けできるという考え方を転用できないか」「自分たちの会社でなにかできないか」といった情報の使い方ができます。

このように、着想段階ではミクロデータを活用し、既存の商品を調べる際は、どういうファインディングスが得られるかという、自分たちの商品アイデアに使える情報に加工し直すことが重要です。情報加工をしっかり行うことで、着想のインプットデータに活用することが可能になるのです。

商品開発のヒントになるデコンテとは?

私たちは世の中のヒット商品や少しユニークな商品の持つ生活者にとっての重要なインサイトや、商品開発に使えるヒントなどを分析した分析シートを作り、これをデコンテと呼んでいます。デコンテのストックは現在社内に200種類ほどあり、このデータを活用して自社内で商品アイデアを大量に生み出すことができます。

実際、先日社内のアイデアワークショップでも活用し、あまり商品開発をしたことのないメンバーもいましたが、8人で半日の間に50のアイデアを生み出すことができました。

このときのポイントは、関連する業界についての情報ではなく、あえてまったく異なる業界の情報ヒントを使うことで、新たなアイデアを生み出すということです。

何故なら、既存の業界に近ければ近いほど、参考にした情報と近い類似商品になってしまうため、その類似性をはがすためにあえて他業界の情報を活用しているのです。

着想型調査は確からしさではなく、ひらめきや気づきが大事という話をしましたが、確からしさを大事にしてしまうと、新しい気づきのある情報はなかなか見つかりません。SEEDATAではこの「確からしさ」と「新しい気づき」はどちらかを求めるとどちらかがなくなる天秤に近いようなものと捉えています。

確からしさばかり考えていては飛躍的なアイデアにすることはできないので、このとき確からしさはいったんオフにする必要があります。

逆に検証型リサーチは、新しい気づきより、情報の確からしさが大事になるため、SEEDATAでは確証を得る際に活用しています。

検証型リサーチは周囲を説得するためのツールであり、考えた内容が正しいか確認するためのものです。確証の段階では、情報が正しく、本当にニーズがあるということを周囲にロジックに伝えて説得する必要があり、論理的、分析的であることが求められるため、ここでは定量調査やマクロトレンドをつけます。

たとえば、「社会のトレンドや大きな流れでいうと、共働き世帯が増えていてこんなデータがある、このアイデアは共働き世帯からこれくらいのニーズを得ている、こういうシート想定をしています」という風に、社内で上申する場合に活用できます。

繰り返しになりますが、

・まずは情報インプットでは着想型を活用する

・検証するときに検証型を使う

このように使い分けることで、既存にはない商品開発のアイデアを生み出していくことができるのです。

また、たまに「着想型は突拍子のないアイデアばかりが出てしまうのでは?」という方がいますが、直感的であるということと非現実的であるということは違います。実現性の有無は調整していけばいいことで、超非現実的なアイデアということではないことを理解しておきましょう。

new SEEDATA流商品開発コンセプト開発(ゾウガメ)

当連載をまとめたホワイトペーパーができました。商品開発のプロセスを分かりやすく解説しています(全31ページ・1.86MB)

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藤井陽平
Written by
藤井陽平(Fujii Yohei)
取締役