【商品開発のプロセス➈】番外編~ニーズ発想ではなく義憤発想

今回は商品開発のアイデア発想の番外編としてSEEDATAで最近よく活用している義憤発想という発想方法をご紹介します。

これまでの商品開発のプロセスに関する記事はコチラ

まず、SEEDATAの中での大きな問題意識として「〇〇したい」というような生活者のニーズを元に分析するのは難しくなってきていると感じています。

社会が成熟し生活者の満足度はかなり高まっていくと、アンメットニーズといわれる、まだ発見されていない欲求の発見は難しくなります。生活者の満足度が高く、欲求が充足した時代になってきているからこそ、新たな欲望は生まれにくいともいえるでしょう。

この前提を踏まえ、SEEDATAが最近着目しているのが義憤発想です。

世の中の常識とされていること、その確立された常識に対して「もっとこうすべきではないか」「こういう考え方の方がいいのではないか」と生活者が感じているアンチテーゼ的な欲求に着目することにヒントがあるのではないかと考えています。そして、生活者が自らの考え方や哲学を持ち、社会の流れを鵜呑みにせず、自らの意思で積極的に行動しているシーンに着目しようと考えました。

SEEDATAでは、世の中で常識とされていることに対する生活者の憤りに近い感情を「義憤」と呼んでいます。義憤はもともと「動議に外れたことに対する憤り」という意味ですが、それをビジネスの分野に転用し「世の中で常識とされていることに対する憤り」と再定義しています。

我々はこれまでも先進的な生活者=トライブ(トライブレポートの読み方参照)に着目してきましたが、これまで作成してきたトライブデータを見返してみると、トライブには義憤がたくさんあることに気がつきました。何故ならトライブたちは一歩先の新しい価値観を持ち、行動をすでにしている人たちなので、当然世の中の常識に対する憤りを強く持っているのです。

義憤という考え方をトライブにも応用して、トライブを義憤の観点から読み解くことで、アイデアを考える際のヒントになるのではないかと考えています。

義憤発想自体は今に始まったことではなく、同じような考え方で商品開発のアイデアを生み出した事例は過去にもあります。

たとえば、2012年の記事では、ダイソンが利用者の怒りに着目した商品開発をしていることがわかります。(製品開発の原動力は「怒り」独自技術こそが競争を促す

ダイソンの創業者でありエンジニアでもあるジェームズ・ダイソン氏は「成熟した家電領域の中で革新的な製品を生み出すには、生活者の使っている商品や行動に対する怒りに着目することで新たな商品が生み出せるのではないか」と話しています。上記に話したように、今の時代性だからこそ、怒りや義憤に着目するアプローチにチャンスがあるのではないかと思います。

義憤発想は商品開発に限らず、新規事業アイデアを考える際にも非常に有効なアプローチです。新規事業や事業開発の成功の裏には、今ある世の中のものに対して「何故もっとこうならないのか」という強い憤りを持ち、そのモチベーションをもとに自分たちの事業を起こしている起業家が多く存在します。起業家のインタビュー記事を見ると、このような世の中への疑問を自らの発意として事業を生み出している例は多いでしょう。

義憤アプローチでどのような商品が生まれているのかを、今すでにある商品から逆算して考えてみると、いきなりステーキの例があげられます。

たとえば、いきなりステーキの登場以前のステーキは、高級品で、前菜がなくてはならなかったり、マナーを気にして食べなければいけなかったり、ディナーで食べるものだという常識がありました。

それに対し、いきなりステーキは「何故ステーキは高級品で食べる機会が少ないのか、もっと手軽にリーズナブルにステーキが食べられてもいいのではないか」という義憤から、今の立ち食いステーキというスタイルを確立させたとも考えられます。

いきなりステーキの成功をみれば、多くの生活者が同じ義憤を感じていたといえるのではないでしょうか。

この例から義憤アプローチの良さをあらためてひも解いてみると、今ある世の中の常識を一度疑うということが、このアプローチのもっとも重要なポイントです。今ある世の中の常識に対して強い問いを発するところから義憤発想は始まります。

今まで自分たちが目を向けていなかった常識にまずは目を向けてみて、そこに変革のメスをいれていくというところが義憤発想のユニークなポイントです。

義憤発想と「不満」のアプローチの違い

不満、不快さ、不便など世の中の「不」に着目し、それをもっとよくしていこうというアプローチは以前からありました。この「不」のアプローチと義憤アプローチはどう違うのかという質問をいたただくことがよくあります。

いきなりステーキの例を「不」で考えると「ステーキは高級品なので食べる機会が少ない」というのが不満です。「もっと手軽にリーズナブルにステーキが食べれてもいいのではないか」というように、文法として「〇〇ではない」で終わらず「もっとこうあればいい」まで考えることが義憤アプローチの特徴です。

つまり、「もっとこうあればいい」という生活者の強い願望を探すことが義憤アプローチのもうひとつの有効なポイントです。

義憤発想のために今SEEDATAが使っているフォーマットは、以下の2つです。

①何故〇〇ではないのか

②もっとこうあればいい

我々が分析のときに着目するのは①のほうです。②の「もっとこうあればいい」という部分は、生活者から出る場合と分析者が読み解かなければいけない場合があります。

勘違いしてはいけないのは、生活者の「もっとこうあればいい」をすべて叶えようということではなく、あくまでそれは着想のヒントと捉え、生活者の分析からもってくるのは①の「何故〇〇ではないのか」だけなのです。

②の「もっとこうあればいい」という部分は、社内のリソースや、世の中のトレンドを含めたうえで再度分析を行う必要があります。

義憤を発見するとき、「何故〇〇ではないのか」という生活者の強い問いかけに着目する必要がありますが、この背景には生活者の「問い」を発見することが重要です。義憤を発見するには、自分の哲学を持ったトライブに傾聴することが一つの発見方法です。

この強い問いかけは義憤から発見することもできますが、アートシンキングではクリエイティブクエスチョンと呼んだり、デザインシンキングでも同様のアプローチがあったり、この「問いを発見する」という部分にさまざまなな分野から注目が集まっています。

new SEEDATA流商品開発コンセプト開発(ゾウガメ)

当連載をまとめたホワイトペーパーができました。商品開発のプロセスを分かりやすく解説しています(全31ページ・1.86MB)

藤井陽平
Written by
藤井陽平(Fujii Yohei)
取締役