【ビジネスのためのサービスデザイン⑥】サービスデザインにおけるコンテクストデザインとは?

これまで当連載では、サービスデザインのマインドセット、プロセス、ツールについてご紹介してきました。

前回、前々回とサービスデザイナーの武器となるツールであるカスタマージャーニーマップ、サービスブループリントついて解説してきましたが、今回はサービスデザインにおけるコンテクストデザインの重要性について解説します。

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コンテクストは時代とともに移り変わっていく

サービスデザインをするうえでは、コンテクスト=文脈や状況といわれるものが重要になってきます。

コンテクストの重要性を示す例として、ここに「汚い水」という商品があったとします。一見価値はなさそうですが、コンテクストを変えることで、この「汚い水」にも価値が出てくるのです。

たとえば、一般の人からすれば「汚い水」を飲んでもお腹を壊すだけですが、発展途上国への旅行を計画している先進国の人に向け、少しずつ飲んで免疫力を上げる「免疫水」という見せ方にすることで、価値があるものに変化する可能性があります。

このように、一見価値のなさそうなアイデアやモノでも、コンテクストさえ変えれば価値が変わる場合があり、世の中のプロダクトやサービスは、すべてこのコンテクストによって価値が決まるとっても過言ではありません。

モノ自体の性能を高めることより、まずは「どういった文脈で使われる商品やサービスなのかを考えてデザインしていく」という点がサービスデザインにおけるコンテクストデザインの重要なポイントです。

コンテクストは時代とともに移り変わっていきます。例えば、以前こちらの記事「ロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』にみる、”意味のイノベーション”とは?①」で解説したロウソクの例を再度ご紹介すると、昔、夜は真っ暗というコンテクストがあったので家の中を明るくするためにロウソクが必要でした。しかし、現在は電気が通り、夜でも家の中が暗いというコンテクストはありません。その代わり、生活は豊かになり、家がきれいになって、家具にこだわりを持つ生活者が増えてきました。そうなると、自分の家を見せたい、誰かを招待したいという欲求が出てきて、家の中でホームパーティーをするというコンテクストが出てきたのです。

みなさんご存知のとおり、現在のロウソクには、ホームパーティーの際に客人をもてなすことや、香りで癒しを与えることが求められています。時代の移り変わりとともにコンテクストは変わり、それによって商品の意味も変わってきている分かりやすい例といえるでしょう。

コンテクストをあらためて定義してみると、どんな人がその商品を使うのか、家の中なのか外なのか、それを使う人の知識やスキル、朝なのか昼なのか、習慣、文化……など、実にさまざまなものすべてを内包したものをコンテクストと呼んでいます。

その中でも、生活者の価値観や行動の移り変わりを調べているのがトライブなので、トライブを調べることは今後コンテクストがどう変化していくのかを調べることと近しいといえます。

つまりSEEDATAが保有するトライブデータは、ある意味コンテクストを集めたデータともいえるでしょう。

毎回トライブレポートの最後にはこのトライブの価値観から洞察できる社会変化仮説を入れています。これをもとにすると、社会がこう変化していく場合には商品に求められる意味もこのように変化していくだろうという商品の意味の未来洞察を行うことができます。

SEEDATAでは新しい商品やサービスを考える際、どんなトライブがどんなコンテクストで使うのかという点を掛け算しながら考えていきます。

現在ある180以上のトライブと400以上のセグメントを掛け算して、このトライブなら商品をこのように使うのではないか、商品に対してこんなイメージを持つのではないかと考えながら、新しい意味を探っていくのです。このトライブデータのベースがあるからこそ、多種多様なサービスや商品に対応できるのはもちろんのこと、新しい意味も発見することができるのです。

意味のイノベーションを起こすためにはコンテクストを入れ替えて、コンテクストドリブンで発想していくことがとても重要になってきます。

たとえば自動車は、もはやある程度形や必要な機能が決まってしまっていますが、自動車のコンテクストを考えることでもっとさまざまな可能性がみえてきます。

一例として、自動車は走行している時間は2割以下で8割以上は車庫にあるといわれています。普通車といえば走行中のコンテクストを想像しがちですが、車庫の中というコンテクストを考えることで、キャンピングカーのように仮眠をする場所としての車という新しい意味が生まれ、そのためにはベッドのように寝心地のよいシートが必要になってくるでしょう。

カーシェアもまさに車庫に眠っている時間が多いというコンテクストから、車庫にある時間を有効活用するために出て来たサービスです。

SEEDATAには自分の車を多数カーシェアしているカーオーナーを調べたエニカーというトライブがありますが、エニカーから得られたインサイトとして興味深いのは「車が好きであればあるほど、大好きな車が眠っているのがもったいない。愛車は多少ぶつけられるリスクをとってでも人に貸して走らせたい」というものです。

大事にとっておくのではなく、人に貸して「この車いいね」という感想をもらいたい、自分がこだわりをもってカスタマイズしている車を人に体験してもらい褒めてほしいという欲求が出てきたからこそ、このサービスは生まれたのです。

また、中国ではECサイトから家具を購入した人が、自宅をショールーム化し、購入を検討している人が自由に見に来られるように開放しているという事例があります。

これまでは家具はIKEAにあるようなショールームでしか実際に使われている様子を見ることができませんでしたが、ショールームでは使用感がないことや、広すぎて実際の部屋に置き換えにくいというデメリットがありました。

実際に人の自宅でどう使われているかを見て、よいと思ったらECサイトで購入することで、家具を見せた人はアフィリエイトのようにお金をもらうことができるという仕組みになっています。

これは現在のサービスデザインにおける非常に重要な点で、消費者と生産者の境目が曖昧になりもはや消費者が売り手に近づいているという現象です。

この事例と似たような現象として、日本に来る外国人観光客がスーパーなどでライブ配信を行い、欲しい商品買って帰り、手数料で儲けるという、消費者がバイヤーとなるような行動も登場しています。

越境コマースと呼ばれる分野ですが、これをC2Cでやっているという点がポイントです。

つまり、今までは消費者がすでにある商品に対して行えるのは口コミだけでしたが、モノを直接売るような存在になってきているということです。

これは商品を買うときのコンテクストが変わってきているからにほかなりません。今はもはや口コミは信用できないという背景があり、そうなると商品を買うときに求められるのは消費者自らのリアルや、原体験とひもづいているかどうかです。そのような基準で商品を選ぶ生活者が増えてきているといえるでしょう。

越境ライブコマースのように、提供者側、購入者側、どちらにとってもWINWINな仕組みをどう作るかを、サービスデザインにおいてはとくに重要視しています。

コンテクストデザインのポイントとしては、前述した「汚い水」のような新しい意味を作り、それがどのコンテクストに当てはまるかという場合と、既にあるコンテクストからこういうものが求められるのではないかと意味を出す場合があります。

たとえば、カメラひとつとっても、サーフィンの時のカメラはゴープロがいいけれど、公園で趣味の花の写真を撮るなら一丸レフがいいという風にコンテクストによって意味も変わってきます。さらにターゲットがシニアであれば、コンテクストはまた変化し、シニアでも使えるようならくらくフォンのようなカメラが必要になってきます。

その点、スマホのカメラ機能はありとらゆるコンテクストを狙おうとしています。咄嗟のときに使いやすいのはもちろんのこと、スナップチャットのカメラだと友だちとの思い出を共有するためではなく、自撮りを撮って遊ぶ、暇つぶしのために使われています。

このコンテクストにはこの意味、またはこの意味にはこのコンテクストとちょうどフィットする組み合わせを考えることがサービスデザイナーの役割で、この両方を探索していくことが重要です。

サービス開発にありがちな失敗は、機能、性能を無闇に高めようとすることだと述べましたが、あらためて、機能性能だけでなく、そこに付与される意味とコンテクストによって価値が決まるということをご理解いただけたのではないでしょうか。

まず、どういうコンテクストによって使われるものなのかというユースケースを考えたうえで、こんな意味が必要だから、こんな機能性能が必要という順番で考えることが重要です。

車もシェアリングというコンテクストで考えると、カーシェア用の車にはどんな意味が必要か、シェアをするということはいろんな人が使うから汚れやすくなる、他人が使ったあとは汚いと思う人もいるといった可能性などを考えると、掃除しやすいという意味や、清潔に見せるかのためのシートなど、意味が変わってきます。

現代や未来のコンテクストにあった意味を探索していくことが、我々サービスデザイナーの役割です。

コンテクストや意味を見つけるコツは、生活者リサーチを行い、さまざまな生活者と話して生活者の生活空間から文脈をみるしかありません。

新しいことを考えることが難しい時代だからこそ、さまざまなコンテクストを想定することで新たな愛されるサービスを生み出すことができるのです。その際に、さまざまなコンテクストの掛け算ができ、意味の探索できるSEEDATAのトライブデータベースをぜひお役立てください。

次回は何故サービスデザインは儲かるのか、儲け方にまつわるお話です。

製品を売るだけでは売り上げが頭打ちしている、新市場を創造したいという企業のご担当者さまはinfo@seedata.jpまで、件名に『サービスデザインについて』、御社名、ご担当者名をご記名いただき、お気軽にお問合せください。



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【この記事の監修者】

佐野拓海。SEEDATAアナリスト。

株式会社SEEDATA(博報堂DYグループ)設立とともにプランナー兼アナリストとして参画。

主に生活者リサーチ、商品開発、新規事業開発、サービスデザインなどの業務に従事。

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