【ビジネスのためのサービスデザイン➆】サービスデザインはなぜ儲かるのか?

これまでサービスデザインの考え方、ツール、コンテクストの重要性について解説してきましたが、今サービスデザインがこれだけ注目されている背景には、サービスデザインの考え方を導入することで、ビジネスとしても儲かるという点があげられます。

そこで今回はなぜサービスデザインが儲かるのかについてお話しします。

サービスが目指しているのは1回きりの購入で終わらないこと

以前、サービスというものは簡単にいうと体験やストーリー、時間軸を伴うものであると解説しました(【ビジネスのためのサービスデザイン① 】製品のサービス化を実践していくためには?)。つまり、単に商品を購入することだけではなく、商品の購入前や購入後の体験全体を含めてデザインしていくことをサービスデザインと呼んでいます。

またサービスの要素のひとつに「複数のタッチポイント(顧客との接点)がある」ことがあげられます。つまり、商品を手に取ることだけでなく、口コミが流れてくることや購入後にキャンペーンに申し込むことなども含めて、全てタッチポイントと捉えます。

これらの体験、タッチポイントをすべて統合し、ひとつの世界観にまとめあげることがサービスデザインには求められています。

ではなぜサービスデザインが儲かるのでしょうか。

まずサービスが目指していることの一つは、1回きりの購入で終わらないということです。つまり、1回商品が購入されたら、どうやって2回目を購入してもらうかが重要であり、この継続して購入してもらう仕組み作りをサービスモデルと呼んでいます。

だからこそ、近年儲け方の方法として、サブスクリプションサービスがさまざまなところで登場しています。

そこで今回はサービスの儲け方のひとつ、サブスクリプションについてメインでお話ししようと思います。

サブスクリプションというと、単純に商品が定期的に送られてくる定期配送のことだと思っている方も多いかもしれません。しかし、それはサブスクリプションサービスの本質ではないのです。例えば、Amazonの定期便はサブスクリプションではありません。

サブスクリプションの本質は、続ければ続けるほどハマっていく、まさに飽きさせない仕組みが作られているということです。定期配送のように、同じ商品が毎月定期的に送られるというだけの場合、飽きてしまうとやめて他の商品に乗り換えられてしまう可能性があります。それを防ぐために、サブスクリプションサービスでは、使い続ければ使い続けるほどどんどんハマっていく仕組みが含まれています。

ここでネットフリックスを例に考えてみましょう。たしかに映像見放題はお得ですが、ハマる仕組み作りはそれだけではありません。ネットフリックスはその人が見ているコンテンツを綿密にデータ分析し、どんどんパーソナライズ化し、その人にとって最適なコンテンツを提供してくれるのです。

映像コンテンツは時間をかけて見なければならないからこそ、ユーザーが「おもしろくなかった」と後悔を感じてしまう回数を極力少なくしていく必要があります。「これを見ておけば間違いなく面白い」という映像がレコメンドされることで、ユーザーの後悔は少なくなり、サービスの体験価値が向上するのです。

また、ネットフリックスではユーザーがよく見られている映像の分析を行い、泣ける映画がよく見られていれば、ユーザーがどこでなぜ泣いているのかを分析し、その分析結果に基づいてオリジナルドラマを作るなど、ユーザーのニーズドリブンで製作を行っているという点もポイントです。定量的なデータ分析だけではなく、SEEDATAのようにデプスインタビューを行い、定性的なデータ分析を行って製作している場合もあるようです。

これまでの映画やドラマは、視聴者のニーズを参照はしつつも基本的には表現者の思いが重要でした。一方ネットフリックスは、ユーザーの生体データを取得したり、感情を分析することで、どのような物語展開で人は笑う、怖がる、泣くなど、データに基づいてコンテンツを作っているのです。

このようにユーザーが使い続ければ使い続けるほど便利になっていくというのがサブスクリプションの本質であり、ハマっていく仕組みがネットフリックスにはあるのです。

このハマる仕組みの作り方は、ネットフリックスのようなパーソナライズ型だけではありません。月額制ファッションレンタルサービスのエアクローゼットは、これまで送った服と同じ服が送られてこないという点がこだわりで、バラエティ戦略型で飽きない仕組みを作っています。とくにビジネスシーンの服は他人とかぶらないように、かつダサくないトレンドに乗った服を着たり、またはいつも同じ服を着てると言われないように気を遣う必要があります。しかし、エアクローゼットを使うことで、これまでのように自分でトレンドの服を調べてショップに行き購入するという手間を省きつつ、他人とかぶらない服がトレンドに合わせて定期的に届くという点に大きな価値が生まれています。

継続的に儲けることができる仕組みを商品のみで作ることができれば最強ですが、新しい商品がどんどん出てくる中、消費者のニーズも急速に移り変わっていきます。しかし、もしサービスの仕組みやコンセプト自体に共感してもらえれば、実際に送られてくる商品は何であれ、そのサービスは使い続けてもらうことができるのです。またサブスクリプションにすることで、企業側も定額で安定した収入が見込め、かつ新商品がヒットするかどうかなどに振り回される必要もなくります。

サブスクリプションのもうひとつのメリットとして、都度お金を支払うという行為はそれだけで痛みを伴いますが、年契約や自動引き落としになると購入している感覚が薄くなります。ユーザーにとってはメリットのみを享受しているような感覚になり、ますますそのサービスが生活になくてはならないものに変わっていくのです。

もちろんこのサブスクリプションサービスも、ユーザー数が増えない場合にどこかで収益が頭打ちになる時がやってくるため、一人当たりの単価を高めるためにプレミアムプランのようなものを作る必要があります。

例えば、最近YouTubeでもプレミアムプランが登場しました。成功するかどうかはさておき、戦略としては注目すべきものかと思います。

もともとYouTubeは無料で動画が見られる投稿サイトとしてスタートし、そのユーザーエクスペリエンスが多くの人から支持され、我々にとってなくてはならないサービスに成長しました。ユーザーには「YouTubeを手放したくない」という愛着が生まれたのです。そして、このタイミングで広告モデルに切り替えるという戦略をYouTubeはとりました。

なぜなら愛着が生まれた一方で、ユーザーは動画の最中に流れる広告を邪魔に感じるようになり、この潜在的な広告に対する不満が溜まってきたタイミングで広告が表示されないプレミアムプランを打ち出したということです。

注目すべきは、「広告を消したい」というユーザー側のニーズを戦略上作り出し、それに対応する形で広告が表示されないプレミアムプランを作ったということです。

YouTubeは広告収入モデルからサブスクリプションモデルへと、ビジネスモデルを少しずつ変化させています。

この戦略は広告主からすると決して気持ちのよいものではないかもしれませんが、無料ユーザーはまだまだいるので出稿し続けるという広告主も多くいるでしょう。

始まったばかりのこのプレミアムプラン戦略がどう転ぶかは分かりませんが、これまでの広告モデル+プレミアム会員で売り上げがさらに増えていくというモデルになるかもしれません。

アプリもかつては買い切りモデルでしたがAdobe社のillustratorが月額制になると、サブスクリプションの流れが一気に取り入れ始められました。もちろん、サブスクリプションの場合、売ったあともクオリティアップをし続ける必要があるという意味で運営上の大変さはありますが、ブランドさえ支持してくれればそこから乗り換えることは少なくなるため、儲け方として安定感があります。

このように、一回一回ヒット商品で稼ぐ必要がなく、ユーザーが企業やブランドとのタッチポイント、接点を持ち続けてくれることがサブスクリプションの最大のメリットといえるでしょう。

一回きりの購入だけではなく、前後の体験も含めたサービスをデザインしていく場合には、ぜひサブスクリプションモデルの活用を検討してみてください。しかしその時に注意しなければならないことは単純に同じ商品を定期的に送り続ける定期配送にならないよう、サブスクリプションならではのハマる仕掛けや仕組みを作ることが重要です。仕組みや仕掛け作りをする場合には、ぜひ我々へご相談ください。買い切りモデルをやめて、どのようにサブスクリプションモデルへと儲け方を移行させていくかは商材の特性によっても異なりますので、一緒に考えさせていただければと思います。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

SEEDATAでは、机上の空論に終わらない実行実現のためのサービスデザインの支援を行なっています。ビジネスにサービスデザインを取り入れたい方はinfo@seedata.jpまで、件名に『サービスデザインについて』、御社名、ご担当者名をご記名いただき、お気軽にお問合せください。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

new SEEDATAサービスデザインナレッジのご紹介(カラス)

当連載をまとめたホワイトペーパーができました!サービスデザインの考え方を分かりやすく解説しています(全35ページ・4.98KB)

【関連記事】

ロベルト・ベルガンティ『突破するデザイン』にみる、”意味のイノベーション”とは?①

佐野拓海
Written by
佐野拓海(Sano Takumi)
アナリスト