サービスデザインを活用したミレニアル向けカスタマージャーニー攻略の3つのポイント

当連載ではこれまでもサービスデザインについて解説してきましたが、今回はとくにミレニアル世代に向けて、サービスのカスタマージャーニーマップを作る際のお作法を3つ、ご紹介します。

①ユーザーと周囲のステークホルダーとの関係性を考える

まずジャーニーマップを作る際は、「その商品やサービスを使うユーザーは一人ではない」ということを意識しなければいけません。

たとえば、香りのよい柔軟剤を購入し使用したユーザーがいれば、本人だけではなく周りの人たちもその恩恵を受け、「第2のユーザー」となります。他にも、車であれば、車を運転するユーザーだけではなく、その車に乗せてもらう人が「第2のユーザー」といえるでしょう。

このように、使い手一人だけでなく、周りの人々(ステークホルダー)を含めて体験を設計していくことが重要になります。

とくにミレニアル世代に特有といえる価値観のひとつに「エゴで終わらない」というものがあります。

もう少し分かりやすく説明すると、「自分だけが嬉しい商品よりも、持っていることで語りたくなるような商品を選んだり、誰かと喜びや感動をシェアできる商品が良い」という考え方です。

例として、SEEDATAのトライブのひとつである「エニカー」(リンク)を調査した際、彼らが車をシェアする理由は「自分の大好きな車に乗ってもらうことで、自分のこだわりや好きなポイントをシェアしたい」という価値観からでした。車は走行距離が増えるほど中古価格は目減りするにも関わらず、金銭的価値よりシェアできることへの価値が高くなっているということです。

単に「シェアリングエコノミーが流行っている」という話ではなく、ミレニアル世代には「自分の好きをシェアしたい」という価値観があるということを抑えておくべき必要があるかと思います。

そこでAnycaのジャーニーマップを考えるとすれば、単純に貸す、借りるという体験だけではなく、貸したあとにどれだけその車が楽しかったか意見交換をするという場を設計してあげることが重要なポイントになります。実際、Anycaは車を貸し出しているオーナー向けの交流イベントを定期開催し、車の貸し借りを通じて得られた、人との繋がり、体験をシェアする機会を提供しています。

②購買体験を点でとらえない

これまでの購買体験は「いつどこで買ったか」という購入のタイミングは明らかでした。しかし購入、即ちお金を支払うことは痛みを伴うため、ハードルがあります。

そこで、オンライン決済の台頭とともに、いかに購入のタイミングをぼやけさせ、お金を支払っている痛みを感じさせないかが、ジャーニーマップにおいて重要になってきます。

たとえば、上海にある「王府井図書館」という図書館は、図書館と本屋が一体化し、新しい形態の購買体験ができます。

まずは図書館として入り、好きな本を借ります。そして本を読んで、もし気に入った場合、返却しなければそのまま自動でオンライン決済、購入になります。また、返却期限を過ぎた場合も自動決済となります。

このサービスの優れている点は、「ユーザーは図書館として入店し、結果として本屋として利用している」という点です。

通常のレンタルサービスであれば返却期限を過ぎた場合、延滞金をとられ品物は返却するため後味が悪く、購買体験の満足度は低くなってしまいます。しかし、このサービスの場合、延滞金を支払うのではなく、自動決済という形で、しかも手元には品物が残ります。

また、自動的にオンライン決済が行われるため、購入をしたという直接的な意思決定はしておらず、お金を支払った感覚が薄いこともポイントです。

通常は商品を購入する際は購入するかどうかを店頭で決めた上で、品物を持ち帰らなければなりませんが、「使用してみてから所有=購入するかどうかを決められる」というのが、このサービスとこれまでの購買体験との大きな違いといえるでしょう。

日本でも最近は購入後、使用して気に入らなければ気軽に返品するという仕組みが一般的になってきていますが、その場合でもまずは一度支払いをし、返品と返金の手続きをしなければいけません。重要なのは、支払いの痛みをなくすため、購入のタイミングをぼやけさせるということなのです。自動決済と返品ではやっていることは同じでも、生活者としての感覚がかなり異なります。

とくに中国ではキャッシュレス化がかなり進んでおり、ほぼ現金を使わず自動決済が日常的に行われているため、尚更この仕組みがスムーズに受け入れられているという背景があります。日本も今後オンライン決済が進んでいくことは間違いないため、ミレニアル世代のような「なるべくムダなお金を使いたくない」「購入後に後悔したくない」という価値観を持った人には、このような購買体験が求められていくはずです。

③新しいオンラインとオフラインの融合

これまでは基本的に、オフラインのものをオンラインにするという流れがありました。しかし、今後のトレンドとして、オンラインのものをオフラインにどう導入するかが重要になっていきます。

たとえば、今でも家電量販店などのオフライン店舗で商品を購入する際、価格.comやAmazonといったオンラインの情報をもとに購入を決めている生活者は多いです。

これまでは生活者が自発的にオフラインでの買い物にオンラインの情報を取り入れていましたが、これからは店舗側がその行動を積極的にサポートしていく必要があります。

たとえば、Amazonが米国の百貨店の1区画に「Amazon4-stars」という、Amazonで星4以上のレビューがついた商品だけを売るポップアップストアをオープンさせました。

ここでは実際のAmazonのレビューも紹介されているため、消費者が自ら調べずとも、商品の星の数とレビューを確認しながら購入することができ、まさにオンラインとオフラインが融合した良い事例といえるでしょう。

ここにはさまざまなコンセプト棚が作られています。たとえば「もっともAmazonの欲しいものリストに入られている商品」という棚はギフトを選ぶ際に役立ちます。とくにギフトの場合、まだオンラインではなくオフラインで購入したいという需要が強く、その際に購入のサポートとなるようなオンライン情報の提供が必要になります。

このように、情報を比較しやすいというオンラインのメリットと、実際に手に取れるというオフラインのメリットのいいとこどりをした店舗が今後ますます求められ、増えていくでしょう。

ミレニアル世代というと、つい「デジタルマーケティングでどう売るか」ばかりを考えがちですが、実はミレニアル世代はオフラインでの接点をかなり重視しています。これは、①で解説したポイントにつながりますが、「オフラインで実際に比較し手間をかけたことが、相手のために想いを尽くせたという満足感につながる」という意識があるためです。デジタルで行える=ラクができるという価値がありますが、彼らはそれだけを求めているわけではありません。

すでにアメリカでは、ECを専門におこなっていた企業が、リアル店舗を持つ事例が増えてきており、商品に直接触れるというウインドウショッピングの価値はまだ健在なのです。

そのため、ミレニアル世代向けサービスや商品のジャーニーマップには、この「オフラインの接点をどこで持つか」「そのオフラインの接点をオンラインと融合し、どれだけ魅力的にするか」という視点が必要不可欠といえるでしょう。

ご興味を持たれた企業の担当者さまは、ぜひinfo@seedata.jpまで、御社名、ご担当部署、担当者名を記載の上、件名に「新サービス開発について」と記入のうえご連絡ください。

折り返し弊社のサービス開発担当がご連絡差し上げます。

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佐野拓海
Written by
佐野拓海(Sano Takumi)
アナリスト