【トライブレポート紹介56】コンテンツ製作系サービス・アイデア開発のヒント(共感ラバー)

SEEDATAは今後増えていくであろう考え方や行動を示している先進的な消費者グループ=「トライブ」を独自のリサーチによって発見、定義し、調査した結果をレポートにまとめています。

トライブ・リサーチから得られた知見を通じて、推進される企業のイノベーション活動を「トライブ・ドリブン・イノベーション」または「トライブ・マーケティング」と総称し、コンサルティング、支援を行っています。

トライブレポートの詳細と読み方については、こちらの記事をご一読いただければ幸いです。

パロディ動画の流行にみる共感

近年、YouTubeやInstagramのストーリー、Snapchatなど、動画におけるコンテンツのシェアが急激に増加しています。同時に、SNSの広がりにより、生活者それぞれがコンテンツの発信者となってきているということが大きな背景としてあげられます。

「共感ラバー」の調査のきっかけのひとつは、SNSで多く見受けられる、完全にオリジナルな行動ではない、誰かと同様のコンテンツ、同様の行動をしてシェアをし合う行動に着目したことです。

調査をスタートした頃は「恋ダンス」「恋するフォーチュンクッキー」「シェアハピ」「今日から俺は!」などのパロディ動画の流行をはじめ、ハロウィンなど、同じことをするということが現代のムーブメントになっていると感じました。

また、調査時(2017年)には話題になっていませんでしたが、最近では「TikTok」などでこの行動はまさに顕著に現れています。完全なるオリジナルコンテンツを作っている人はほぼおらず、ユーザーは他のユーザーたちと同じフォーマットをマネするという行動が人気を博しているのです。

もうひとつは「〇〇をやってみた」「〇〇のやり方」という動画の増加があげられます。これは、誰かが同じことをできるようにするための動画コンテンツです。

以上の2点から、「同じフォーマットや同じ行動を多くの人とおこないたいというニーズが出てきている」という点に着眼をおき、リサーチを始めました。

デスクリサーチでは、基本的にSNS発信における行動についてを調査しています。

たとえば、「インスタ映え」といわれるものも、完全に自分しか知らない店や知らないモノではなく、みんなが行っている流行の店に行く、流行のモノを撮るという行動をとっている特徴があげられます。

また、こういった行動の登場の背後には、当然ながら、YouTube、Instagram、Twitterといったコンテンツを投稿できるプラットフォームの発達がもちろん大きく関わっています。

コンテンツ消費という意味では、以前ご紹介したミックスチャネラー(リンク)やスノウガール(リンク)も近いジャンルといえるでしょう。

インタビューでは、これらの行動をすべてひっくるめて「共感」と捉えた上で、どのような共感があるのかを分析していきました。

今回の調査対象者のセグメントは以下の4つです。

世界観発信者

他者にどう思われるかはそこまで気にしない。自らの考えていることや世界観を発信している人。

宣伝発信者

自分がいいと思ったものや、体験してほしいモノを誰かに知ってもらう、誰かに行ってもらうことに重きを置いている人。

セルフブランディング

自分と同じ趣味と価値観を持っている人とつながったり、いいねや再生回数を重視している人。

同士投稿者

リアルな場が重要で、イベントに参加して自分と同じようなことに取り組む人のいる場に行き、その様子を発信する人。

まず、世界観発信者とセルフブランディングの方に共通していたのは、それぞれ、パロディ動画を積極的に作ってYouTubeに投稿していたのですが、InstagramとYouTubeに投稿するコンテンツには大きな違いがありました。

Instagramは自分自身を表すものが並ぶ場所なので、基本的には「いいね」が集まることを重視せず、こういう色味やノイズ感が好きで、「これが自分自身を構成するもの」と表現する場所として捉えていました。

一方YouTubeには、共感や、単純におもしろいと感じてもらえる動画を投稿していたのです。YouTubeに投稿していたのは、テレビ番組「もやもやさまぁ~ず」のパロディや、ヒット曲「恋ダンス」のパロディなど、パロディが中心ですが、動画の作りとしては、オフィシャルのフォーマットに沿って9割方は似せつつ、残り1割りでオリジナリティを出すという手法をとっていたことが大きな特徴です。

TikTokでも同様の現象が起きていますが、基本的には完全にオリジナリティのあるコンテンツを作る人はほとんど存在しませんので。現在の投稿コンテンツは、なんらかのベースのフォーマットがあり、1割にオリジナリティをつけているという行動が顕著に出てきているといえるでしょう。

また、宣伝投稿者的な部分もあるセルフブランディングのFさんの発言で特徴的だったのが「いいねをもらうことはもちろん嬉しいが、自分自身のInstagramを見て、誰かがその場所に行ってくれることをが嬉しい」というものです。

つまり、「いいね」ボタンを押すという行動が指先ひとつでおこなうことができる行動であるのに対し、「実際に行く」という行動は、いいねの数十倍の労力が必要です。にも関わらず行くということは、「いいね」以上に他者からの共感を得ていると感じられるのです。

彼女たちは、自身の投稿によって誰かの行動を変えたり、誰かの行動を起こすきっかけになることに大きな価値を感じていました。

これはおそらく現代の多くの生活者も同様で、「いいね」はもはやあまり価値はないと感じられている一方、実際に行ってみるという行動は、本当によいと感じてくれている証拠と捉えられ、自身のSNSの投稿で他人の行動を起こすきっかけを作ることが、生活者にとって価値のあることになりつつあるといえるでしょう。

トライブプロファイリングのひとつは、セルフブランディングの人たちに顕著に見られた「コピーをしていく中でも、サブの部分でオリジナリティを出していく」ということです。

オリジナリティをつけるためには、まずは最初の9割のコピーを作るという点がとても重要で、そのコピーを可能にするのが、テレビ番組やメーカーなどのオフィシャルからの「これらを使って自由に遊んでください」という素材提供です。

これまで、広報活動はパワープレーでの発信型(プッシュ型)がメインでしたが、素材の提供や自由にできる場を用意し、勝手に広まっていく(プル型)が受けいれられ、広がっていくといえるでしょう。

いくつかの企業は、この流れをすでに敏感に取り入れて、真似しやすい投稿を促すようなプロモーションをおこなっています。

ただし、気をつけなければいけないのは、「絶対こういう風に遊んでください」「絶対こういう投稿をしてください」と押し付けすぎるとユーザーは嫌がるという点です。

おもちゃを置いておき「ここにあるものを自由に使ってください」というくらいフリースタイルにしておくと、1割のオリジナリティを生み出しやすいのですが、9割以上こうしなければならないと決められていると、オリジナリティを生み出す余地が残されておらず、急にネガティブな反応を生み出すということが今回の調査から分かりました。

もうひとつ重要なプロファイリングは、宣伝発信者、世界観発信者の人たちに共通してみられた「周りの人の意志決定や認知に影響を与えられることに価値を感じる」ということです。

いかに行動として影響を及ぼせるかは、実際にどこかに行ってもらうことも然り、やり方を見て実際に誰かに何かを可能にさせることを含めて、影響を与えるということが彼らが重視しているポイントです。

この調査から得られた社会変化仮説は、「今後コンテンツはどんどんオープンソース化していくのではないか」というものです。

これまでコンテンツは著作権によって守られるべきものとして扱われていましたが、現在では「加工しやすいコンテンツのほうが受け入れられる」ということが明らかになっています。

実際コンテンツのオープンソース化はかなり進んでおり、2016年、建築界のノーベル賞といわれるプリツカー賞を受賞したアレハンドロ・アラヴェナは、自らのデザインを知的財産と捉え、誰もが無料でダウンロードできるようオープンソース化しています。

これにより、彼の住宅の設計図をベースに住宅を設計したり、改変して別の住宅にすることも可能になりました。

このように、テレビ番組や音楽のみならず、今後は服のデザインデータなどさまざまなものがオープンソース化していく流れは今後もますます続いていくはずです。

生活者にとって、「コンテンツを消費する」ということの意味は大きく変わってきています。これまでは、誰かの投稿を見て「いいね」をすることがコンテンツ消費でしたが、現在では実際に「聞く」「見る」「食べる」「どこかに行く」など、行動がともなうことを含めて、広い意味でコンテンツ消費と捉えているといえるでしょう。

Written by
岸田卓真(Kishida Takuma)
SEEDATAチーフアナリスト