【トライブレポート45】未来の買い物行動にみる新規事業、新サービス開発アイデアのヒント(フューチャーショッパー)

はじめに~トライブレポートとは

SEEDATAは今後増えていくであろう考え方や行動を示している先進的な消費者グループ=「トライブ」を独自のリサーチによって発見、定義し、調査した結果をレポートにまとめています。

トライブ・リサーチから得られた知見を通じて、推進される企業のイノベーション活動を「トライブ・ドリブン・イノベーション」または「トライブ・マーケティング」と総称し、コンサルティング、支援を行っています。

トライブレポートの詳細と読み方については、こちらの記事をご一読いただければ幸いです。

トライブレポートの読み方

行動する手間よりも考える手間を省きたいという新たな価値観

amazonからお気に入りの商品をワンプッシュで購入できるDashButtonや、音声による買い物を可能にする音声認識デバイスのamazonechoの登場、そのほかにも各種サブスクリプション型サービスが登場し、この数年で私たちの購買体験は飛躍的に進歩を遂げています。

また、複数チャネルや課金システムといった環境変化に伴って、生活者の買い物行動・意識にも大きな変化が起きようとしています。

このレポートでは、サブスクリプション型のサービスを多用している人、DashButtonを頻繁に活用している人、返品機能を駆使して購入したもので気に入らないものがあれば返品している人、primenowを利用してオンラインで欲しいものをすぐに購入している人、そして、リアル店舗で商品を確認してオンラインで購入している人など、オンラインとオフラインを自由に行き来して買い物をする人びとを「FUTURE SHOPPER(フューチャーショッパー)」と定義し、調査しています。

リサーチを通して、先進的な買い物行動を把握することで、今後の買い物における意思決定プロセスがどう変化していくのかが見えてきました。

今回はクライアントとの買い物プロジェクトの調査のため、通常のSEEDATAのトライブのように共通の価値観でアプローチ違いではなく、より幅広い切り口になっていて、フューチャーショッパーの中にいくつかのトライブが入っているということを前提に読んでいただければと思います。

SEEDATAが最初に着目したのはAmazonDashButtonで、これまでの定期配送やサブスクリプションとは一線を画す動きだと社内でも話題になりました。

この背景には、Amazonなどの定期配送は便利な一方、ある程度決まった周期で配送されるため、手元に在庫があってもどんどん届いてしまい、配送を最適化するのが面倒くさいという消費者の不満があります。何も考えないで、品物がなくなる、もしくは切れかけたらボタンひとつで注文するというのは、単なるサブスクリプションよりも新しいのではないかと考えました。

AmazonDashButton

Amazonが取り扱う商品を、ワンプッシュで簡単に注文できるボタン。ボタンは500円で購入でき、現在100種類以上の商品が対象となっている。AmazonDashButtonの狙いは、お気に入りの商品の近くに設置することで、商品がなくなった時にすぐに買い足せるようにすること。対象商品は日用品。有料会員であるprime会員限定のデバイスとなっている。

AmazonEcho

Amazonが所有する人工知能であり、デジタルアシスタントである「Alexa」を利用できる家電デバイス。音声を認識して色々な操作を実行してくれる音声認識ユーザーインターフェースである。声で呼びかけ、家の中にある家電のオンオフや、録画設定などを指示できる。この機能の中に、「電池を注文して」などと呼びかければ、その音声を認識し、Amazonから発注するものがあり、日常生活の中でよりAmazonを利用した購買行動が増えることが想定される。

また、実店舗とECサイトの使い分けとしては、ショールーミングという購買行動の登場があげられます。従来の実店舗に加えて、ECサイトでも商品を購入できるようになり、これに加えてAmazonDashButtonなどのサービスが登場し、購買のオムニチャンネル化は進んでいます。生活者は各購買チャンネルのメリットをそれぞれ活かして使い分けているのです。

ショールーミングの事例で、SEEDATAがとくに注目しているのはb8ta(ベータ)です。

b8ta

スタートアップの製品を体験出来る店舗。スタートアップに関しての知識・知見のある専属スタッフが説明してくれる。オフラインだからこそ感じることができる、体験コンテンツを提供している。店舗内にはカメラが設置されており、どのブースにどんな年代・性別の人が立ち寄ったかデータを収集して、顧客のリアクションを知ることができる。マーケティングデータ・プラットフォームとして機能しているのが特徴的。

STYLENANDA

韓国発のファッションブランドSTYLENANDAが原宿に日本初の路面店をオープン。この店舗の特徴はフォトジェニックな内装で、商品はオンラインストアでも購入することができるが、Instagram用の写真を投稿すべく連日多くの女性が足を運んでいる。

また、調査の中で派生的に発見したのがバイ&リリースという行動です。

従来、一度購入・使用した商品を返品できず、返品はよほど質の悪い商品だけに限られていましたが、昨今、返品に関する新しい考え方として、ユニクロやZARAといった大手アパレル企業を筆頭に、一度購入して自宅にあるものとの組み合わせを考えてから返品できるサービスが展開されています。

ユニクロ

オンラインストアで購入した商品をユニクロの店舗で受け取れるようになり、受け取り時に試着して気に入らない場合やサイズが合わない場合は返品が可能になっている。

これまで店舗とオンラインでの購入は分かれており、顧客はどちらで購入するかを選択する必要があったが、このサービスにより、ネットで購入した商品を近くのユニクロ店舗で受け取ることができるようになったため、顧客の都合のいい購入方法が選択可能となった。

ネットで注文した商品を試着してサイズが合わないなどの不具合があった際にその場で返品も可能になっているため、ネットで気になったものがあった際に気軽に購入できる。

ZARA

ZARAのアプリでは返品が無料で、店舗に持っていく必要もなく、宅配業者が回収に来るため、返品の送料負担を軽減しているだけでなく、作業すらも軽減している。

プライム・ワードローブ

プライム会員に限定されている、ファッション関連のサービスで、興味を引いたものをなんでもオーダーし、届いたものの中で気に入ったもののみを購入することができる。

ワードローブボックスが届いて7日間のうちに試着し、合わなかったり、気に入らなかったものは、送られてきたボックスに入れて送り返すことになる。返却用のボックスには、近くのUPSが発行したプリペイドラベルがついていて、集荷してもらったり、あるいは営業所に持ち込むことが可能。

LOCOND

靴を中心に扱うファッション系ECサイトのLocondのサービスの特徴は返品に対する対応を徹底している点。もちろん返品は無料で受け付けており、サイズを自由に変えることができる。このサービスの狙いは、「自宅でゆっくりコーディネート」「友人・家族と一緒にチェック」「サイズをしっかり確認できる」といったものが挙げられる。

また、新しい購買行動としてサブスクリプションサービスについては当ブログで何度もご紹介していますが、さまざまなジャンルに広がっている国内の事例、海外の事例の一部をご紹介します。

エノテカ・ワインの頒布会

ENOTEKAが提供するワインのサブスクリプションサービス。月額4500円で気軽にワインを試すコースから、月額50000円の希少ワイン詰め合わせコースまである。ワインはプロのソムリエが選んで詰め合わせてくれる。

オイシックス

オイシックスは月額定額で有機野菜が配達されるサブスクリプションサービス。全国1000件の一流生産者と契約しており、季節に合わせて有機野菜を配送するサービスである。

Aircloset

月額性の女性向けの新感覚オンラインファッションレンタルサービス。「服を選ぶ時間がない」という女性の悩みを解消する。服のセレクトはプロのコーディネーターが行うのがサービスの強み。

BLOOMBOXブルームボックス

ビューティーアドバイザーがセレクトしたサンプルサイズのビューティープロダクトが毎月届く会員制のサービス。

トイサブ!

上質な知的玩具の定額制レンタルサービスで毎月1480円からコースがある。子供の月例に合わせた知育玩具を定期的に配送する新感覚の定額サービス。

CLASSPASS

ニューヨークで始まったフィットネス定額サービス。ユーザーは定額で登録されているスタジオに行き放題になる。ユーザーにとっては相性を見ながらスタジオを選べるというメリット、スタジオには欠員が出ても生徒が補填されやすくなるというメリットがある。

onemdical

ユーザーは年間プランとして月額149ドル支払うことでアプリを通じた医者とのチャット及び動画診療など遠隔医療を受けられる。必要な場合、onemdicalグループの医療施設をアプリうえで予約して診察できる。

MealPal

月額固定ランチサービス。固定額を支払うことで提携しているお店でランチをピックアップできる。通常のランチの半額ほどの価格でランチを受け取ることができる。

GiveOne

毎日少額(25セント、50セント、1ドル、2ドル)を関心ある分野に寄付できるサブスクリプションサービス。教育芸術、環境、貧困、平等、健康、暴力・いじめのカテゴリからひとつを選択しカード情報を登録すれば手間なく自動で社会貢献可能。

また、「誰かに選んでもらいたい」という生活者のニーズに応える推奨型のサービスも広がりを見せ、そのジャンルは服のコーディネート以外にも本などでも人気を博しています。

いわた書店1万円選書

選書の依頼者が自分のこれまでの人生や読んできた本をカルテに書いて送ると書店店長がそれに基づいてオススメの本を1万円選書して送ってくれるサービス。

本棚サービス

キングコング西野氏が提案する著名人の本棚プロジェクト。本棚というのは概念で、ある著名人の本棚を購入すると、毎月その著名人が選んだ1冊が届くという仕組み。現在、幻冬舎とともにサービス化を図っているもよう。

今回は通常のセグメントとは異なり、ひとつひとつがトライブとして可能性があります。

ミニマルショッパー

aircloset(ファッションのサブスクリプションサービス)などの日常使 いの商品をサブスクリプションで手に入れる生活者。洋服を選ぶなど、 日常生活の中で発生する無駄な選択の工数を無くしたいと考えている

ショールーマー

オフライン店舗で商品の仕様を確認して、オンラインで購入する人たち。 重い荷物を運ぶのがめんどくさい、あるいは購入後に後悔する機会を 無くしたいと考えている人。

OnePushショッパー

Amazon Dashを利用して、毎度買っている商品を手軽に補充した い人たち。低関与商材を気軽に配送することができるようにするこ とで、都度購入の手間を無くしている。

BaRショッパー (Buy and Return Shopper)

ECサイトでの購入のように本来試用できない商品を、一旦大量に購入し 一度試着や試用して、いらないと判断したものを返品する人たち。例え ば、ユニクロのECで大量に商品を購入し、試着して印象と違うものは全 て返品する。

これらのセグメントの中で今回のレポートはおもに、ミニマルショッパーとワンプッシュショッパーに焦点を当てて取り上げています。

フューチャーショッパーのプロファイルリングをする際、対局にあるのが以前ご紹介したカルチャーシーカーです。どちらも買い物行動に特徴がありますが、価値観はほぼ対局といえるでしょう。

フューチャーショッパーの分析でもっとも興味深いのは、ミニマルショッパーのような人の中には服にこだわりがあってエアクローゼットを使っているわけではない人がいるということです。

エアクローゼットのようなサービスや他人に購入の選択を委ねることで、批判によるダメージを軽減しているという考え方があります。

これまでのサブスクリプションでは、着ているもの、持っているもの、ライフスタイル、地位、価値観、考え方を示すことになりがちな嗜好性や記号性が強い商品に対して、「こだわりのある人が使っているもの」という風にサービス体験を設計してきました。

しかし、実際に意外な来訪者を分析すると、購入の選択をエアクローゼットという別の権威に委ねることで、「自分のセンスではない」と批判によるダメージの軽減を目指したり、専門的にいうと記号性を薄めているという見方ができることが分かりました。

これは消費者行動的にも非常におもしろい動きです。こういったところがまさに未来の買い物体験といえるでしょう。

また、以前からいわれていて完全にトレンドとしてきているのは、ワンプッシュショッパーもミニマルショッパーも、とにかく手間を省きたいと考えているということです。しかも、手間と一言でいっても、どちらかというと「行動する手間より考える手間を省きたい」と考えている点がこのトライブの新しさです。

だからこそ、毎月の定期配送は「本当にこの頻度でいいのか」と考えなければいけないから嫌で、Amazonダッシュボタンで欲しいときにとりあえず行動だけしておくことを選んでいるのです。

ダッシュボタンの作り手がそう考えて作ったかは別として、「考える手間が省ける」と消費者は受け取っているのです。

考える手間と行動する手間はまったく別物で、これまでは行動する手間を省くことが重視されてきましたが、実は情報量の多い現代では考える手間によって脳が疲労しているため、このコストを排除したいというインサイトがあります。

たとえば、前述の「商品の選択を他人にゆだねる」の象徴的な発言として、「似合っていないといわれたとしても借り物なのでそんなに傷つかない」という現代的なものがありました。

あえてサブスクリプションというものを利用することによって、他人からの批判ダメージを軽減するというのはさまざまな商品やサービスに活用できるでしょう。

「考える手間より行動する手間のほうがコストが安い」というインサイトは、日常生活に紐づけて考えると、主婦の方にアンケートをした場合「夕飯を作ることよりメニューを考える手間のほうが面倒くさい」という解答が出てくることからも分かります。

つまり、現代においては「行動する手間より考える手間のほうが非常に面倒くさい」と感じられていて、ダッシュボタンは、「考える手間を省くために使える」と消費者は考えて利用しているのです。

このように、サブスクリプションサービスやダッシュボタン、バイ&リリースなど、モノを買うという行動がどんどんサービス化していくと、自分で情報を吟味して選び取って買うという行動は少なくなっていくでしょう。

しかし、この動きが今後2、3年でさらに進んでいくと、次は必ず揺り戻しがやってきます。フューチャーショッパーの次にくる、さらなるフューチャーショッパーは、サブスクリプションサービスの断捨離や、委ねすぎて出費が多くなったサービスの選別など、アグリゲーションするサービスが登場するということです。

また、フェリカーの記事で、メールやSNSが発達して手紙が儀礼的な意味をもったのと同じように、電子決済が進むと現金にも儀礼的、ハレ的な意味が出てくると解説しましたが、これは未来の買い物にもいえることです。

今後は単なるショールームではなく、そこに行くこと自体にライフスタイル上の意味があったり、それ自体がイベントだったり、わざわざ店舗に行く手間に価値を付与するようなものが出てくるでしょう。

現在オムニラインではオンライン、オフラインどちらでも等分に買えるようになりましたが、オフラインにハレの要素が加わった、ひとつうえのプレミアムオムニラインという売り方が今後出てくることを予測しておきます。

記事ではこれ以上はご紹介できませんが、ほかにもトライブレポートにはおもしろい機会領域が数多く掲載されているため、お問い合わせの際は、まずは気になるトライブレポート名と「〇〇ビジネスをやっています」ということをお伝えしていただければ、我々がトライブレポートをもとにビジネスアイデアをいくつかご提案し、コンサルティングさせていただきます。

あとは皆さんの会社がすでに持っているリソースと掛け合わせて、新規事業の場合はビジネスモデルを変える、または新商品・新サービスを生み出すなど、それぞれの課題に対応いたします。

たとえば、新商品を作りたいという会社の場合、SEEDATAが提携している会社とこのトライブが世の中に何万人いるかを調査し、その人たちにテストマーケティングしてみて伸ばしていくことも可能です。また、サービス開発の場合もプロトタイプを作ることができますし、ビジネスモデルの場合でも、ビジネスモデルに関する検証された知識を手に入れるPoB(Proof of Business)のプロセスに入ることも可能です。

SEEDATAへのお問合せはこちらから(コンタクトフォームに移動します)。

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宮井 弘之
Written by
宮井 弘之(Miyai Hiroyuki)
SEEDATA 代表