【トライブレポート44】電子決済系新規事業、新サービス開発アイデアのヒント(フェリカー)

はじめに~トライブレポートとは

SEEDATAは今後増えていくであろう考え方や行動を示している先進的な消費者グループ=「トライブ」を独自のリサーチによって発見、定義し、調査した結果をレポートにまとめています。

トライブ・リサーチから得られた知見を通じて、推進される企業のイノベーション活動を「トライブ・ドリブン・イノベーション」または「トライブ・マーケティング」と総称し、コンサルティング、支援を行っています。

トライブレポートの詳細と読み方については、こちらの記事をご一読いただければ幸いです。

トライブレポートの読み方

電子決済サービスを活用するフェリカーとキャッシュレスの未来

昨今、Fintechの発達は目覚ましく、単なる現金決済を効率化、電子化するだけでなく、決済の仕様に合わせた付加価値が求められている段階にあるといえます。また、Bitcoinをはじめとした仮想通貨の普及も加速度的に進んでおり、ますます中央集権型であったかつての金融システムは分散型へと変容しつつあるといえるでしょう。

電子決済が発達している北欧においては、現金を持っていても決済に利用できずにいる”現金難民”なる階層がいるとされています。その一方で、中国においてはホームレスが投げ銭用のQRコードを持ち歩くなど、世界的に決済・金融システムの電子化が進行していることは間違いありません。

このように、世界的に電子決済が進む中、日本はいまだ現金決済でなければならない場面が多いのは事実ですが、金融システムの大きなトレンドの中、大きな変化や、新たなサービスが次々と生まれています。

2019年2月現在、日本でもLINEPayやPayPayといった電子決済サービスはある程度一般層まで浸透していますが、本レポートを調査したのは、ようやくiPhoneがSuicaに対応した頃です。

当時SEEDATAでは、どちらかというと海外の電子決済の事例に注目していました。これらのさまざまな事例から、将来的に総キャッシュレス社会が来ることは間違いないため、新たに登場した決済サービスを活用し、かつ独特な価値観を持っている人々をFelicar(フェリカー)と定義し、彼らの決済行動やお金に対する意識、さらに電子化が進む社会に対する意識を調べることで、現金がなくなった未来を探ったのが本レポートです。

まず、国内外の電子決済サービスをみていきましょう。

おサイフケータイ

NTTdocomo(株)がシステム開発をした国内最大級の電子決済サービスおよびこのサービスに対応したモバイルFeliCaチップおよび対応SIMを内蔵した携帯電話機、携帯端末の総称。「おサイフケータイ」で提供されるサービスは、Edyをはじめとした電子マネー、各種会員証、量販店のポイントカード、鉄道やバス・旅客機の乗車券(乗車カード)・航空券、クレジットカードとしての利用など多岐にわたる。近年ではiPhone、applewatchにFeliCaチップを搭載し、2016年10月から日本でApplePay、2016年12月からは日本国内でAndroid向けのAndroidPayが利用できるようになった。

iPhone suica

JR(東日本旅客鉄道株式会社)が提供するApplePayを利用した交通系ICチップとそれにより利用できるSuicaサービスの総称。ApplePayは2016年発売のiPhone7/iPhone7Plus/applewatch2にFeliCaチップを搭載し、2016年10月から日本でApplePayが利用できるようになった。

ID

NTTdocomo(株)が三井住友カードと提携して運営している電子マネーサービス。クレジットカードと同様にポストペイ(後払い式)で小銭いらずでお買い物が楽しめるのが特徴。2005年に登場し、通常クレジットカードが使えない自動販売機などでも利用できるため、使える幅が広く、普及率が高い。長年、おサイフケータイ機能として国内でのガラケーに多く搭載されていた。

FeliCa

ソニーが開発した非接触型ICカードの技術で、国内のほとんど全ての非接触型ICカード技術に取り入れられている。近年登場したApplePayやAndroidPayなどのスマートフォンを利用した非接触型電子決済サービスもこのFeliCaの技術を応用して作られている。

PayPal

「安全」で「かんたん」をキャッチコピーにしているオンライン決済サービス。ペイパルを通じてクレジットカードでの支払いと受付ができる。カード情報はペイパルが保護しているため、支払いの際お店側にカード情報は伝える必要がないというメリットがある。国内外1800万店舗以上で利用されていて支払いすることができるため、海外の取引にも便利で安心に買い物ができる。

Starbucks Rewards

スターバックスのみで使える携帯アプリ。チャージせずキャッシュカードを事前に登録することでスターバックスカードがなくてもアプリからから決済できる。また、ポイントを貯めることによって商品と交換できたり、飲み物チケットをギフトとしてメッセージを添えて電子プレゼントすることが可能。

paymo

現金を利用せず割り勘の決済ができるサービス。キャッチコピーは「割り勘を思い出に」というように友達とのつながりを重視したサービスになっている。フェイスブックから友達検索をして請求送金が可能だったり、個人別々に金額を指定して請求できるなどの特徴がある

kyash

個人やお店との送金や集金をキャッシュレスで行えるサービス。Kyashで受け取ったお金は、Kyashが発行するバーチャルVisaカードとして、オンラインでのお買い物、全国のコンビニやスーパーなどの店舗でも使える。Kyashカードの発行に審査や手数料・年会費は不要。

MoneyForward

スマホやパソコンで一括管理できる家計簿サービスの中でも、MoneyForwardは銀行間との取引ができる種類が豊富である点が特徴的。

クレジットカードをはじめとして、レシートを写真撮影して自動で読み取りしてくれる機能もついており、利便性が高い。現金だけではなく電子決済やポイントなどあらゆるものが溢れる現代において、それらを管理しておけるサービスとして家計簿をより身近なものにしてくれている。

中国「支付宝(アリペイ)」

支付宝(アリペイ)は「アリババグループ」が提供する中国最大規模のオンライン決済サービス。クレジットカードがさほど浸透していなかった中国では、セキュリティや商習慣の違いからデビットカードが使われている。そこで注目されているのが、チャージしたお金から支払いを行う支付宝(アリペイ)だ。

①手数料が無料

②日常生活で必要なサービス代金をすべて決済できる

③お財布携帯機能

④支付宝の初期設定では携帯番号が口座番号代わりとなり、友人への送金が可能

⑤割り勘支払いができる

⑥年率約4%の利息がもらえる

⑦銀行口座からすぐにチャージが可能

中国ではキャッシュレス社会が進んでいることを受けて、路面の屋台でもデジタル決済が利用されている。さらに路上のホームレスでさえも、QRコードを持ち歩いてお金を集めている。

スウェーデン「swish」

Swishは2012年、スウェーデン国内の大手銀行6社の合弁会社により開発されたアプリ。スマートフォンの普及により、カード決済に替わる新たな支払手段として95%の国民に利用されている。友人同士でお金の受け渡しをする時は、Swishを使用する。iPhoneアプリやAndroidアプリなどで利用可能で、銀行口座と連携しているので相手に直接送金が可能となる。

スウェーデンのキャッシュレス化率は既に95%を超え、キャッシュ非利用が主流とのことで、既に現金の入手や預け入れは困難。スウェーデンにある1600の銀行店舗のうち、900は現金を扱っておらず、地方部にはATMすらない。

しかし、とくに地方部の高齢者など、キャッシュレス化の波についていけない、ついていきたくないと現金生活を続ける人も多く存在する。そこで検討されている対策は、「事前に現金を予約し、近くの銀行店舗などで受け取れるようにする仕組み」だという。

今回ご紹介するフェリカーは、「現金決済ではなく、電子決済技術を用いたキャッシュレス決済をすることが自分の生活にとって価値がある」という価値観を持つトライブで、そのアプローチは以下の3通りです。

スピードフェリカー

Suicaなどの各種Felicaを高い頻度で利用し決済を高速化してる生活者

インベストフェリカー

投資機能がついた決済サービスを活用する生活者

シェアフェリカー

決済や資金の共有機能を持ったサービスを利用している生活者

スピードフェリカーはまさに現在の一般層ですが、調査当時は先進的でした。

スピードフェリカーの一人は、おもに交通機関にフェリカを活用し、それ以外は2000円以内程度の少額な決済に使用、逆に大きな金額は現金かクレジットカードを活用しているといいます。また、毎月給料日にはSuicaに現金で2万円チャージするため、1度に8000円ほどのものに使うのは違うと感じる、また、チャージの手間をとられるので高額金額を使いたくないといいます。

このようなフェリカーならではの決済上限感覚は今後しっかり調べていくべきでしょう。

そして、重要なポイントとして、彼ら彼女らは空いた時間にしっかり利用履歴を見ているため、むしろ無駄遣いはしないといいます。

IT化が進むと利用履歴が可視化され、余分なものを買わなくなるというのは以前フィンテッカー(リンク)でも出てきたトレンドです。サービスデザインする側は、無駄遣いをさせないという方向性もある一方、消費してもらうためには見せたくないという事業者もいるかもしれません。

さらに、カードもSuica、nanaco、Edyなどを使い分けしていましたが、この調査をした2016年当時は店舗によって使えるカードが決まっていたことが原因で、現在は多くのカードがどこでも利用できるため、今後使い分けは減っていくのではないかとSEEDATAは予想しています。

インベストフェリカーの男性は、貯金投資を目的とし、細かく、いつどのカードを使うとどのポイントが貯まる、何倍になるということを把握していました。

印象的な発言として「日本人は現金至上主義の感覚があるためキャッシュレス決済は増えないのではないか」とフェリカーであるトライブ自身が発言していましたが、今現在振り返るとこの予測は外れています。つまり、当時はトライブさえも流行ることはないだろうと感じていたという点がポイントです。これはトライブが3~5年後の未来の価値観を体現しているが、本人たちには自覚がなく、解釈者(インタープリター)が必要ということがわかる典型的な事例ともいえるでしょう。

また、もうひとりのインベストフェリカーの男性は、paypal、Yahoo!ウォレット、suica、LINEペイ、クレジットカード、デビットカード、waonなどを使用し、月10回も現金を使わないといいます。

シェアフェリカーの女性は店舗などでの電子決済はもちろん、個人間送金を活用していて、トライブ全体としてキャッシュレス決済の割合がいちばん多いという特徴がありました。日本人はお金のやりとりがそもそもタブー視されがちですが、アプリを活用することで円滑に割り勘や個人間送金をおこなうことができるといいます。ほかにも使った履歴をSNS上でシェアするなど、周囲を巻き込みながら広がっていくのがシェアフェリカーの特徴です。

アメリカでは夫婦間で個人間送金アプリのvenmo(ベンモ)を使う人も増えているといいます。venmoの支払い手段としては銀行口座、デビットカード、クレジットカードの中から選ぶことができますが、銀行口座とデビットカードからの場合は手数料が発生しないというメリットもあります。

当時のフェリカーのプロファイルリングは、2019年現在となってはほとんど一般化していますが、当時の分析の一部をご紹介します。

電子決済で浮いた時間で大きな心の余裕を生み出している

フェリカーで最も特徴的なのが、電子決済サービスを利用することで時間を節約できるということです。電子決済を利用することにより 生まれる時間は毎回は微々たるものですが、そうした時間の積み重ねは大きいものであると捉えていました。そうして生まれた付加的な時間は、家事や現金の引き出しなどの日々のしなければならないマイナスなタスクを打ち消してくれたり、「読書や勉強などの余暇時間を生み出してくれている」というイメージを与えてくれると感じているのです。

購買物を振り返ることに価値を感じている

電子決済に対して一般的にいわれているのは「現金を持っている感覚がないことで無駄遣いをするようになる」ということです。しかし、 フェリカーは明細や履歴をこまめにチェックすることで支出を管理し、本当に自分が欲しいものに多くのお金を落としていることがわかりました。

つまり、何が無駄であるか、そして何が必要なのかという選択肢を絞る作業をすることで、自身の必要と不要をクリアにしているのです。フェリカーの特徴は、家計簿をつけることで節約を促すという従来のネガティブな考えに対して、購入金額を可視化することで趣味 などに多くのお金を使うようになるというポジティブな兆しがあることです。

手持ちのお金ではなく銀行口座を含めて自分の財布と認識している

フェリカーは手持ちのお金ではない銀行残高も含めて 自分の財布だと認識しているという特徴もありした。

これまで、現金をおもに利用していた際は、財布に数万円を入れておき、普段の買い物は財布のお金を利用し、財布のお金とは別に、 銀行にもお金を入れておくのが一般的でした。ところが、フェリカーは現金を極力持たない上に、財布の中に入れていたとしてもなるべく買い物で利用しないようにしていたのです。

彼らは銀行口座のお金だけを利用している感覚を持ち、言うなれば、「手持ちではない」銀行残高も含めて、自分の財布と認識しているといえるでしょう。

ポイントは付加価値ではなく通貨として見ている

電子通貨を利用した時に、ポイントが付加されることがありますが、一般的にはポイントは特定のサービスに対してしか使うことができず、狭い範囲で特定の財と交換するためのおまけとして捉えられてきました。しかしフェリカーたちはポイントを「おまけ」ではなく、現在どれくらいの価値がポイントそのものにあるのか、再利用できるのか、投資できるのかといった風に、何か他の価値と交換するための第二の通貨として捉えています。

つまり、ポイントはフェリカーにとっては貨幣と同等に扱われているため、限定されたシチュエーションで利用可能なクーポンよりも多様な活用の仕方のあるポイントの方を好まれることが分かりました。

最近ではドコモポイントの投資も話題になりましたが、電子ポイントはもはや金券よりもさまざまなところで使えるものになってきているのです。

さらに、今後もう少し先の未来に一般化するとわれわれが予測しているのが、「現金は機能的価値より情緒的価値のほうが重視されるようになる」というトレンドです。

かつて、情報を伝える手段として手紙しかなかった時代は、それが当たり前だったためそこに情緒価値はありませんでした。しかし、そこに電子メールが登場し、手紙には儀礼、お礼、特別なときという情緒的要素が加わりました。

さらにSNSなどが登場すると、メールですら儀礼的な要素を持つようになり、もはや紙は儀式やハレといった非常に思いが込められたレベルまで情緒的な価値が高まってきていますが、おそらく現金もそうなっていくでしょう。

トライブのインタビューで「のし袋に入れている30000円のご祝儀は相当面倒くさいから30,000円以上の価値がある」という発言がありました。

今現在、多くの企業は「現金を利用してモノを買ってもらうということに、情緒的な価値はない」と思っていますが、今後は人々の情緒的な側面を刺激することにブランドのキャンペーンを使ったり、現金を払うという行為は価値のある行為だと再定義することで、さまざまな行動のデザインができ、現金が新たなジョブの解決手段になっていく可能性があるでしょう。

記事ではこれ以上はご紹介できませんが、ほかにもトライブレポートにはおもしろい機会領域が数多く掲載されているため、お問い合わせの際は、まずは気になるトライブレポート名と「〇〇ビジネスをやっています」ということをお伝えしていただければ、我々がトライブレポートをもとにビジネスアイデアをいくつかご提案し、コンサルティングさせていただきます。

あとは皆さんの会社がすでに持っているリソースと掛け合わせて、新規事業の場合はビジネスモデルを変える、または新商品・新サービスを生み出すなど、それぞれの課題に対応いたします。

たとえば、新商品を作りたいという会社の場合、SEEDATAが提携している会社とこのトライブが世の中に何万人いるかを調査し、その人たちにテストマーケティングしてみて伸ばしていくことも可能です。また、サービス開発の場合もプロトタイプを作ることができますし、ビジネスモデルの場合でも、ビジネスモデルに関する検証された知識を手に入れるPoB(Proof of Business)のプロセスに入ることも可能です。

SEEDATAへのお問合せはこちらから(コンタクトフォームに移動します)。

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宮井 弘之
Written by
宮井 弘之(Miyai Hiroyuki)
SEEDATA 代表