【トライブレポート紹介47】インバウンド系の新規事業開発や新サービス開発のヒント(ジャパンマニア)

はじめに~トライブレポートとは

SEEDATAは今後増えていくであろう考え方や行動を示している先進的な消費者グループ=「トライブ」を独自のリサーチによって発見、定義し、調査した結果をレポートにまとめています。

トライブ・リサーチから得られた知見を通じて、推進される企業のイノベーション活動を「トライブ・ドリブン・イノベーション」または「トライブ・マーケティング」と総称し、コンサルティング、支援を行っています。

トライブレポートの詳細と読み方については、こちらの記事をご一読いただければ幸いです。

トライブレポートの読み方

日本の伝統文化を継承する人、日本文化を海外に発信する人、日本に何度も旅行する人など、日本への関わり方は様々ですが、ジャパンマニアは、日本文化に魅了され、精通している在日・訪日外国人のトライブです。

円安政策により訪日旅行客が1000万人を超えた2013年以降、爆買いや地方都市など様々なインバウンドブームが起きました。これらのブームは2020年の東京オリンピックも追い風となり、ますます拡大していくと予想されています。こうしたブームの根底にある外国人が感じる日本の魅力は何か、その問いに答えるべく、ジャパンマニアへのインタビューを通じて、外国人視点から見た日本の価値や、未来の日本らしさを解き明かしたのが本レポートです。

そもそも2017~2018年にかけてインバウンド系の新規事業開発や新サービス開発をしたいという相談が多く寄せられるようになり、そのニーズに対応するために調査をスタートしました。しかし、2019年現在、インバウンド系の問い合わせはほとんどなくなり、インバウンド需要を東京オリンピックなどの一過性のブームとして捉えている企業が多いということが分かります。これはとてももったいないことで、オリンピック後もインバウンド需要は増え続けるため、取り組み続ける必要があります。

日本に滞在する外国人を訪日外国人と呼びますが、ジャパンマニアはそれを超えて移住までしている典型的なエクストリームユーザーたちです。

日本に何度も旅行するうちに、移住し、さらにエクストリームに日本の伝統文化を継承したり、日本文化を自ら海外に発信するところまで到達します。

彼らをインタビューをすると、「外国人の視点で見た日本」が明らかになるだけではなく、どのような過程で日本の価値や日本文化を深く受容していくのかがよく分かります。

JNTOの推計によると、2018年12月の訪日外客数は前年同月比4.4%増の263万2千人を記録し、12月として過去最高となりました。また、2018年の年計は前年比8.7%増の3,119万2千人となり、JNTOが統計を開始して以降過去最多を記録しています(参照URL:https://www.tourism.jp/tourism-database/stats/inbound/)

まず、メディアなどでも取り上げられる象徴的なジゃパンマニアをご紹介します。

スザーン・ロスさんー伝統工芸を引き継ぐ漆作家ー

イギリスにて美術とデザインを学んだ後、来日。ロンドン王立芸術院の展示「TheGreatExhibitionofJapan」にて日本の漆の魅力を発見し、日本に留学。1990年、輪島県立漆芸研修所の専修科に入学、さまざまな先生方から技術を学ぶ。牛小屋を改築して自身の住まいとし、自然環境に囲まれながら創作活動に没頭する環境も整えた。幼い頃から家の前に川が流れているような庭を理想としていたそうで、そういった自身の夢などが詰まった住まいとなっている。

ピーター・ウォーレンさんー世界を股にかける盆栽アーティストー

英国の大学を卒業したのち、日本庭園を紹介するツアーに参加したところ、すっかり盆栽の虜になった。この事がきっかけで盆栽家の道を歩む事となる。同じ年、英会話講師の仕事をやめ、本格的に盆栽家の小林國雄さんに弟子入りした。その後6年間にわたる修行を積み、30歳で英国に戻りロンドンに工房を構え、自分が日本で培ってきた腕を生かし作品制作や盆栽の指導を行った。また、世界各国でワークショップを行い、アマチュアに盆栽作りを教えている。

ブル・デービットさんー日本の伝統をアップデートする木版画職人ー

5歳までイギリスで過ごしカナダへ移住、大学から音楽の道を選んだ。大学卒業後28歳の頃カナダで浮世絵版画の展示を見たとき、日本の版画に魅了され、独学で浮世絵版画を作り始めた。日本人女性との結婚を機に、1986年に日本へ移住。10年間かけて制作された葛飾北斎の師匠の勝川春章の作品を復刻した『百人一首版画シリーズ』が話題になり、プロの木版画職人として国内外で支援されるようになった。現在では観光ツアーもくる展示ギャラリー、制作活動を弟子やスタッフと行うアトリエを都内に構えて、制作、発信の活動をしている。

クリス・グレンさんー日本人よりも日本人らしいラジオDJー

1968年オーストラリア生まれ。日本での生活を夢見て、92年に来日。93年からは名古屋へ住まいを移し、ZIP-FMをはじめ、東海エリアを中心にラジオDJ、タレント、ナレーター、バイリンガル司会、コラムニスト、コピーライターとして、20年間、第一線で活躍し続けている。ここ数年は、自身の強みと人脈を生かし、企業の多言語化のサポートや海外プロモーション、地域や行政へのインバウンド観光アドバイスの分野にも進出し、活動の幅を広げている。

ステファニー・コロインさんー銭湯アンバサダーー

南フランス出身。大学在学中に日本文学を専攻し、2008年に立教大学に交換留学で1年間来日。留学中に初めて銭湯と出会う。2012年に縁あって日本で仕事をするようになり、当初趣味として通っていた銭湯に没頭し、現在は仕事を辞めて銭湯ジャーナリスト・銭湯大使として活動し、日本中の銭湯をめぐりながら銭湯文化をブログやInstagramを通して発信し、銭湯のイベントを主催するなどしている。

クリストファー・ヒューズさんーイギリス生まれの日本酒伝道師ー

イギリス出身。蔵元の社長が語る酒の歴史や、その土地ならではの「米」と「水」で造られる日本酒の持つストーリーに興味を惹かれ、日本でPR担当として日本酒の魅力を世界に発信している。「日本酒と日本人、日本酒と外国人。日本酒を通して外国人と日本人を会わせたい。日本酒と外国人の架け橋になりたい」と語っている。

アレックス・カーさんー日本の古民家再生事業のパイオニアー

アメリカ合州国出身。東洋文化研究家のアレックス・カーさん。日本の美しさに感銘を受けて、日本各地に残る美しい風景と文化を守り伝える事業を推進。古民家を再生、活用する新しいもてなしの形をプロデュース。全国各地で、地域観光振興のコンサルティングをしている。日本に関する本も多く出しており、著書『美しき日本の残像』(新潮社刊)が外国人初の新潮学芸賞を受賞している。

ベンジャミン・ボアズさんージャパンカルチャーアンバサダーー

アメリカ合衆国出身。スーパーマリオやらんま1/2などの日本のゲーム、漫画をきっかけに日本の文化に興味を持ち、日本語や日本文化を学習。2007年フルブライト奨学金を得て京都大学大学院人文科学研究所にて「麻雀と社会」を研究。世界に日本文化を発信するクールジャパン・アンバサダー、中野区観光大使として活躍。国際コミュニケーション・コンサルタント、慶應義塾大学訪問研究員、翻訳家、作家、麻雀研究家などマルチに活動。「日本のことは、マンガとゲームで学びました」など日本についての書籍を出している。

カロリーナ・ステチェンスカさんー外国人初の女流プロ棋士ー

ステチェンスカさんは、ポーランドのワルシャワ生まれ。ポーランド語に翻訳された日本の漫画「NARUTO」を読んで将棋に興味を持ち、インターネット対局で腕を磨いた。東京の将棋会館で行われた第44期女流名人戦の予選準決勝で勝ち、外国人初の女流プロ棋士に昇格した。日本の伝統文化「将棋」も、外国人女流棋士が誕生するなど、グローバル化が進んでいる。日本の文化の担い手は日本人だけではなく、外国人にも広がっている。

ブライアン・ホワイトヘッドさんー世界が注目する藍染・織物職人ー

カナダ・バンクーバー出身。1988年来日。仏教絵、墨絵などを学んだ後、織物と出会う。養蚕家の元に7年間通い、古くから伝わる日本の伝統的手法による養蚕を体得。藍染めも栽培・乾燥・発酵から染めまでを行なっている。2005年頃から、国内外の若者に向け、日本の織物と藍染めの技術を伝えるワークショップを主宰。有名ブランドのデザイナーも訪れるなど、豊かな文化と本物の技術を伝える場として好評を得ている。

「JapaneseTextileWorkshop」という英文のブログで、日々の暮らしや日本の伝統織物について情報発信を続けている。

「訪日外国人向けAIコンシェルジュ」Bebot

「Bebot」は、スマートフォンを介して、外国人宿泊客へ周辺の道案内から宿泊施設のアメニティのリクエストなど、旅行中に発生する様々な質問やリクエストにリアルタイムで多言語対応するAIチャットボット。宿泊施設に普段寄せられる外国人宿泊客からの質問やリクエストに、コンピューターが自動で応えることが可能。宿泊施設はチェックイン時に「Bebot」へアクセスするためのコードを付与し、外国人宿泊客は自身のスマートフォンから普段ご利用のメッセージングツール(FacebookMessenger等)を使って、チェックアウト時までいつでもチャットで「Bebot」への相談が可能。

「荷物一時預かりシェアリングサービス」TATERUPhone

訪日観光客はTATERUPhoneを通してエクボクローク加盟の飲食店やショップに事前予約を取り、手荷物を一時的に預けることができる。大型(90リットル以上)のスーツケースの預け入れも可能で、預けた後は手ぶらで観光を楽しむことができる。サイト上でリアルタイムに空き状況を確認できるほか、預け先への最短ルートを地図で把握できるため、重い荷物を抱えてコインロッカーを探す手間なく、快適に手荷物の保管場所を確保することが可能になる。

「訪日外国人向け無料SIM情報サービス」TripFree

TripFreeは日本国内で利用しづらいインターネット環境の課題を解決するため、あらかじめ50MBの容量が使えるSIMカードを訪日外国人向けに配布し、サービスログイン後に繋がるTripFreeの情報ポータルを通じてレストランなどの国内観光情報を提供。SIMカードは通常のインターネット利用も可能で、50MBの無料領域を超えて使う場合は追加のチャージができる他、TripFreeサービス経由でレストランの代行予約サービスを利用すると使える容量が追加される仕組みになっている。この情報ポータルを通じて予約が成立した店舗から成果報酬を受け取るモデルである。

「日本在住の外国人や訪日外国人向け情報提供コンテンツサイト」Wasabi Now

『国内外の人々に「日本の今」を伝える』をコンセプトに、日本国内外のニュースや情報を、英字で多数掲載する報道機関(ウェブメディア)。ウェブサイトを訪れた方が知りたい情報に適切にたどり着けるよう、政治、経済、社会、文化、スポーツ、エンターテイメント、ライフスタイル、金融、技術など細かなテーマを設定し、沢山の写真とともに記事を掲載。また、同ウェブサイトを利用する方がコメント投稿機能などを利用して、日本について幅広く意見交換できる機会も提供している。

「訪日外国人向け日本食メニューサイト」myorde

myordeは日本語が話せない訪日外国人でも母国語へ翻訳されたメニュー情報(英語・中国語:簡体字/繁体字)からの注文を可能としている。また、店舗スタッフが外国人への接客をして、注文内容や料金支払いなどのトラブルが生じた時に、電話を通した通訳で問題解決が可能。myorderの契約店舗は、電話通訳サービスの利用件数に応じて課金される料金体系になっている。

「日本在住の外国人や訪日外国人向け情報提供コンテンツサイト」YummyJapan

YummyJapanは約50組の外国人YouTuberを有し、外国人向けに動画を発信。外国人向けに「食」を中心に日本の観光に役立つ情報を英語(日本語字幕付き)等で紹介している。Googleマップとの連動しており、動画内で紹介されている店舗や観光スポット、施設レビュー等位置情報のある動画はマップ上にピンを立てその場所を確認が可能である。

「訪日外国人向けのお得なきっぷ」JRTOKYOWidePass

JR東日本は2015年11月19日、訪日外国人旅行者向けのお得なきっぷ「JRTOKYOWidePass」を発売。JRTOKYOWidePassは、関東エリアの新幹線と特急列車の指定席が3日間乗降り自由になる現行のきっぷ「JRKantoAreaPass」をベースに、さらに対象エリアを拡大し、使いやすくリニューアルした切符である。外国のパスポートを所持している外国籍の利用者に限って販売されるきっぷで、価格は大人1万円、小児5,000円。

「旅行に関係する会話に特化した音声翻訳デバイス」ili

音声翻訳デバイス「ili」は、ネット接続の必要がなく、瞬時に旅行に関係する会話に特化して、日本語から英語又は中国語、もしくは英語又は中国語から日本語への音声翻訳に対応できるサービス。訪日外国人の乗客に対して、様々な状況に応じた案内を瞬時かつ的確に行うことが期待されている。東京メトロにて実証実験を実施。

「訪日外国人観光客と、国際交流したい人たちを繋げるガイドマッチングサービス」TOMODACHIGUIDE

特徴はガイドが一方的に観光名所を解説する通常のサービスと異なり、ガイドも友だち感覚でゲストと一緒に“体験”を共有する点にある。等身大の日本を知りたい観光客のニーズを捉え、高評価を得ている。同サイトの運営を行うHuber.代表の紀陸武史氏は「ありきたりの観光名所をめぐる画一的なツアーでは旅の醍醐味は味わえません。素晴らしい体験は世界遺産やスカイツリーだけではなく、その町に住む人たちとの出会いと、出会いから生まれる体験の中にあります」と話す。TOMODACHIGUIDEはスマホなどからエリアを選択し、好みの観光プランを選んで予約できる他、旅行前からガイドと相談してプランを一緒に決めたり、あるいは待ち合わせ場所と時間だけを決めて、内容は現地で決めることもできる。

ジャパンマニアは日本の価値にほれ込み、自分なりの視点で日本文化とふれあい続けることを生活の中心においているという価値観は共通で、そのアプローチにはいくつかの種類があります。

継承型マニア

日本文化に惚れ込み、日本に来てその道のプロに弟子入りをしたり、独学で知識を学び日本文化の継承を行う外国人。その道を極めようとする職人意識が高い点が特徴。

発信型マニア

外国人視点を踏まえながら、日本文化の良さを発信しているアンバサター型の外国人。情報発信やイベント活動を通じて日本と外国人を繋げるだけではなく、日本の魅力を外国人視点で日本人に伝えているのが特徴。

旅人型マニア

東京タワーや金閣などの定番な観光地を旅行して終わるのではなく、ニッチな観光地を愛好して旅行する訪日外国人。人気の観光地よりも自分が好きなスポットに対し て確固たる独自の視点を持っている点が特徴。

インタビューの中でピーター・ウォーレン氏は「日本のよいところは何か」という問いに対し「東京以外の人は相手の気持ちを考える」という発言がありました。これはとても本質を突いた回答で、ニューヨークもロンドンも東京も、基本的に都心部の価値観は世界中共通で、都市部から離れた地方にこそ、その国ごとの文化が根付いているということが、彼らの目を通すと分かります。

また、彼からすると「日本人は表と裏があり、本当に思っていることを読むのが難しい」と言いますが、その難しさを感じながらも、盆材の持つ美を分析的にではなく、単純に「何百年も生きている木が小さな鉢に入っていることがすごい」と語っています。

この発言から分かることは、生け花、盆栽といった日本文化の魅力を分析的に伝えようとするよりも、作品を画像として見せるような見せ方のほうが効果的ということです。

ほかの国の文化でも同様だと思いますが、インバウンド需要を捉えるためにはとても重要な視点といえるでしょう。

たとえば、ピーター氏の盆栽の話から、ビューティ系の商品アイデアのヒントを考えることがもできます。「ピーター氏の考える盆栽の理想の美は何ですか?」と尋ねたところ「無作の作」という答えがありました。つまり、これは「限りなく自然に見えるが実は人が作っている」ということで、こういうはっきりとした発言は日本人には難しいものです。外国人だからこそはっきりと分かる、こういった点がジャパンマニアの目を通して日本文化を見ることのひとつの良さといえるでしょう。

これを食に変換すると、「手間がかかっていなように見えるが、本当は手間がかかっているから真似しづらい」これが無作の作であり、日本らしさといえるのではないでしょうか。

もう1点、インタビューをおこなったジャパンマニアたちからは「日本文化に興味があるが日本全体には興味はない」という共通のインサイトを発見しました。

つまり、「日本が好き」という外国人は「日本全体や日本文化全体が好き」なのではなく、「興味のある個別の分野を通していくうちに、その後ろに広がる日本らしさに惹かれている」のです。このことから、日本の全体的な説明やざっくりとしたプレゼンテーションでは、日本の魅力を外国人に伝えることはできないということが分かります。

このことをしっかりと理解し、盆栽、生け花、版画という風に個別具体的なプレゼンテーションし、それらに触れた外国人の人たちが、その奥にある日本らしさに気づくという構造を意識したカスタマージャーニーやUXデザインをすれば、それぞれの日本文化を好きになってもらうことは可能でしょう。

記事ではこれ以上はご紹介できませんが、ほかにもトライブレポートにはおもしろい機会領域が数多く掲載されているため、お問い合わせの際は、まずは気になるトライブレポート名と「〇〇ビジネスをやっています」ということをお伝えしていただければ、我々がトライブレポートをもとにビジネスアイデアをいくつかご提案し、コンサルティングさせていただきます。

あとは皆さんの会社がすでに持っているリソースと掛け合わせて、新規事業の場合はビジネスモデルを変える、または新商品・新サービスを生み出すなど、それぞれの課題に対応いたします。

たとえば、新商品を作りたいという会社の場合、SEEDATAが提携している会社とこのトライブが世の中に何万人いるかを調査し、その人たちにテストマーケティングしてみて伸ばしていくことも可能です。また、サービス開発の場合もプロトタイプを作ることができますし、ビジネスモデルの場合でも、ビジネスモデルに関する検証された知識を手に入れるPoB(Proof of Business)のプロセスに入ることも可能です。

SEEDATAへのお問合せはこちらから(コンタクトフォームに移動します)。

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宮井 弘之
Written by
宮井 弘之(Miyai Hiroyuki)
SEEDATA 代表