【トライブレポート紹介49】シニア女性の美容系・健康系の新商品・新サービス開発のヒント(おてんばマダム)

はじめに~トライブレポートとは

SEEDATAは今後増えていくであろう考え方や行動を示している先進的な消費者グループ=「トライブ」を独自のリサーチによって発見、定義し、調査した結果をレポートにまとめています。

トライブ・リサーチから得られた知見を通じて、推進される企業のイノベーション活動を「トライブ・ドリブン・イノベーション」または「トライブ・マーケティング」と総称し、コンサルティング、支援を行っています。

トライブレポートの詳細と読み方については、こちらの記事をご一読いただければ幸いです。

トライブレポートの読み方

一般的に女性は年齢を重ねるにつれて若返りを目指すアンチエイジング行動をとりますが、60歳に差し掛かってなお、歳をとることに否定的でなく、むしろシニアならではの美しさや暮らし方、余暇の使い方を楽しみ、自然体な生き方を追求している人々が存在します。彼女たちはシニアになってもファッションへのこだわりを失わないばかりか、より大胆に服を着こなすようになるなど、加齢を魅力として捉えて、シニア女性としての美を在り方を模索しています。

シニアであることを肯定的に受け入れ、シニアだからこそ可能なライフスタイルを実現する彼女たち「おてんばマダム」に注目し調査したのが本レポートです。

そもそも、人は何歳までアンチエイジングし続けるものなのでしょうか。アンチエイジングとひと言でいっても20代、40代、60代のそれは異なりますが、人生100年時代に突入し、これまで割と着目されてこなかった60代以上の女性の美やエイジングに対しての価値観が、どう変わっていくのか見ておく必要があると考えました。

シニア向け商品を考える上で重要なポイントとして、50代を過ぎたあたりからエイジング・シフトというタイミングが訪れます。

多くの女性は50代くらいまでは老化に抗い若さを求めることが一般的です。もっといえば50代であれば40代くらいに見られたい、40代であれば30代、30代は20代くらいに見られたいという風に、実年齢マイナス10歳くらいを目指すという方が多く存在します。

ところが、われわれが調査した結果、その感覚が50歳から60代の中盤にがらっと変わる瞬間を誰しも経験するといいます。これをエイジングに対しての価値観がシフトする期間=エイジング・シフトと名付けました。

加齢による心身の老化を自覚することで、多くのシニアは一瞬であたかも10歳年をとったかのように感じ、加齢に向き合う価値観が「抗い」から「受け入れ」へと代わる瞬間があります。また、エイジング・シフトを経験したこれまでのシニアは、老いを受け入れるとともに、「美」や「身体機能」の向上は諦めてしまっていました。

つまり、一般的なこれまでのエイジング感からシフトして、「歳をとることを肯定して受け入れて歳相応に見えるようにすればいい」というのが肯定型エイジングフリーです。

一方、そもそも50代、60代といった年齢など関係ない、むしろ「老いは魅力である」と完全に逆の考え方に転換し、100歳になっても自律していることを目指して日々さまざまな活動に打ち込んでいるのが自律的エイジングフリーです。

この自律型エイジングフリーが今後増えていくというのがSEEDATAの見立てです。そして、この自律型エイジングフリーをバリバリ実現しているマダムの高齢者を、まだまだ青春を謳歌している人たちというニュアンスを込めて「おてんばマダム」と名付けました。

おてんばマダムを考えるうえではライフ・シフトという考え方を理解しておく必要があります。

2016年に発売されベストセラーとなった書籍『ライフ・シフト』は健康寿命が延伸し、人生が100年になる時代において、引退後に余暇を楽しむという人生は終わると宣言しています。

人生は教育・仕事・引退という3ステージから、マルチステージへと移行し、今まで老後と一括りに捉えられていた60歳以降の過ごし方にも変化が表れています。

たとえば予防医学研修者の石川芳樹氏は「人生を『0~25歳、25~50歳、50~75歳、75~100歳』という4つのパートに分けて考えると、50歳はまだ半分、多くの人が仕事でいちばん輝けるのは50~75歳ということになり、キャリアや人生設計もそれを念頭においてすべき」といいます。

長寿化で人生100年時代が当たり前になってくれば、50歳、60歳で「年を取った」といっていてもしょうがありませんし、人生100年時代の人生戦略としてエイジング・フリーという考え方が支持されるのも納得です。

また、50代には更年期などのさまざまな体の変化があり、一瞬悲観的になりますが、そこから抜け出る手段として、老いを魅力として考えていこうという大きな流れがあり、そのひとつがおてんばマダム化といえるでしょう。

おてんば化の現象としてはグレイヘア、シニアファッションの写真集の出版、シニアの東京ガールズコレクションが開かれるなど、老いをむしろ魅力として捉えようということの提案がさまざまな形で登場しています。

ここでシニア女性の美と健康意識の変化や趣味や活動の変化行動の一部をご紹介します。(トライブレポートからの抜粋です)

白髪を魅力と捉えるグレイヘアマダムたち

これまで白髪といえば老い、老化の象徴ととらえられ、とくに女性にとっては隠したいものであり、頻繁に白髪染めをしているという方が大半だった。しかし、グレイヘアの女性たちを載せた『パリマダムグレイヘアスタイル』(主婦の友社)には、さまざまな理由で白髪染めせず、ありのままを受け入れることを選んだ女性たちのいきいきとした姿がある。また、昨年アナウンサーの近藤サトさんがグレイヘアを披露し、話題と大きな共感を呼んだ。

注目を集めるシニアファッション

60歳前後のシニア女性の美、特にファッションに関する作品がここ数年で人気を博している。もともとはニューヨークでおばあちゃん子だった編集者が、シニア女性のストリートスナップを載せるブログを作り人気が出たため、アメリカで2012年に書籍化。その書籍が映画化された影響もあり、世界中で注目を集めた。

日本でも、2014年に日本人シニア女性に絞ったファッションストリートスナップ集である「Over60StreetSnapいくつになっても憧れの女性」が発売されると人気を博した。1年半後の2016年には待望の第二弾が出るに至っている。これ以外にも、パリ、ロンドンやミラノのシニアのスタイルを扱った書籍が国内でも多数出版されている。こうした書籍が人気を博していることを考えると、60歳前後の女性は自分たちシニアの美の在り方を探していると言えるだろう。価値観を持っておしゃれを楽しんでいるおてんばシニアの調査を通じて、シニア女性の美のあり方に関する兆しを得ることができるだろう。

ファッションショーを開くアクティブ・シニア

ファッションは自分の見た目や好みに合わせ、それぞれこだわりがある。たとえば、白髪が美しい青木良子さん(76)は、「鮮やかな色の服を着ること」。「白髪は、ダークな色を合わせると老けて見えてしまうけど、鮮やかな色を合わせると、白と調和してより明るくなります」「ブティックの洋服も、お手頃価格のものも着ます。年齢を重ね、自分の好みや体形に合うものがわかってきたので、高いものも安いものもうまく組み合わせています」とのこと。

増加する踊るシニアたち

踊るシニア女性、シニアダンサーズが増えているという。2016年の行われたスポーツ庁の調査によると、70代女性が行っている運動ランキングでダンスが5位にランクインしたという。伝統的な社交ダンス、フラダンスだけでなく、チアリーディングやヒップホップダンスなど若者顔負けのダンスに挑戦する人も多い。「社交ダンスをしていたら身支度をきちんとするようになった。高齢になって1人暮らしをしており一日中パジャマのような服装で過ごすこともあった。しかし、社交ダンスの練習の日だけは、組む相手が不快にならないように化粧して、おしゃれして出かけるようになった。それが日常生活の中での良い刺激になっている。」といった発言もある。

過酷なトライアスロンに挑むシニア

過酷なスポーツとして知られるトライアスロンにハマるシニアが増加している。日本トライアスロン連合によると、愛好者は2000年の約29万人から2015年は37万5千人に増加。年代別の詳細なデータはないが、2014年の世界トライアスロンシリーズ横浜大会の出場者のうち、約3割が50代以上。70代以上も10人以上いたという。過酷な練習に耐え、記録に挑み続けるといった目標を抱えているシニアだけではなく「勝てなくても完走できればいい。それだけでもすごい達成感がある」という、自分のペースで競技を楽しんでいるシニアもいる。ただ、いずれのシニアも競技をきっかけに日常に運動を多く取り入れるようになったという声からもわかるように、日々の練習や、レースを完走するためには日常生活の健康管理が必須となるはずだ。スポーツの中でもとりわけ体力が求められるトライアスロンに挑戦するシニア女性、アイアン・マミーを調査することで、老いつつある体をいかに手入れして記録に挑戦し続けようとしているのか、彼女らなりの健康観を明らかにできると考えられる。

SNSで発信するシニア

「カワイイ夫婦コーデを着こなしているのはbonさんとponさん(@bonpon511)。結婚37年目を迎える、60代の夫婦。Instagramに投稿したところ、世界中から「かわいすぎる」「オシャレ」「素敵なご夫婦」とコメントがたくさん寄せられ、憧れのカップルとなっている。

また、シニアYouTuberの成羽さんは「ユーチューブにハマり視聴しているうちに、あっ、これだ!と思った」という。何よりも嬉しいのはリスナーからのコメントで意外だったのは、視聴してくれる人は若い方がすごく多いということ。初めの頃は10代、20代の子がほとんどで、やっていくうちに、もう少し上の年代層まで広がっていったという。小学生、中学生ぐらいの子たちから「こんなおばあちゃんが居ればいいのに」「うちのおばあちゃんみたい」と言われたり、上の年代からは「亡くなった母みたい」などと言われるという。「自分がしゃべってる姿で元気づけられる、癒されると言っていただいたのがすごく嬉しかったですね」。

バックパック旅行をするシニア

久保木武子さんは60歳を超えてから海外一人旅を決意する。当時、英語も話せなかった彼女は、筆談でコミュニケーションを取るなどし、一人でも海外旅行へ行けることを実感したと述べる。78歳現在、80カ国以上を訪れており、アフリカ大陸も23カ国を制覇している。

また、バックパッカーであった筆者が、過去の経験を元にして、若い頃に感じ取れなかったひとり旅の良さを伝える『シニアひとり旅』なども出版されている。

学び続けるシニアたち

少子化が進み、大学経営は悪化を辿り、そこで目をつけられたのがシニアである。シニアの中には、一度はキャンパス生活を味わってみたい、もう一度大学で学びたい、現役時代の仕事の集大成をまとめあげたいという、勉学意欲旺盛なシニアが少なからず存在する。キャンパスが世代の違う学生同士の交流の場となることで、若者はシニア世代の経験や知恵を知り、シニアは新しい考え方や技術を知ることで刺激をもらうことができる。

実際に、立教大学では50歳以上のために、「学び直し」と「再チャレンジ」のサポートを目的とした講座が中心。人や地域や社会とネットワークを形成し、仕事や多様な社会参加の担い手として、セカンドステージに踏み出す人の育成を目的としている。また、明治大学大学院では、職業経験を新たな「実践知」の「創造」に結び付け、次世代に「伝承」しようとする、意欲あるシニア層の研究を支援することを目的としている。

世代や国籍が違う人と交流するシニア

異世代ホームシェアとは、住宅の空き部屋を学生が借り、その住宅の家主と一緒に共同生活を送る住まい方。異世代が共に暮らすことで、学生とシニアそれぞれが地域と結び付くきっかけとなり、街ぐるみでの見守りや生きがいを生み出す新しい共助の関係を目指す。シニア側のメリットとしては、孤立感の解消や生きがいづくり、夜間の不安の解消、健康寿命の増進が挙げられる。同様なサービスが日本だけでなく、オランダやフランスでも存在する。

また、高齢者の三大不安は、健康不安、経済不安、孤独不安であり、Airbnbのホストをすることは、この三大不安を解消し、高齢者の生活を豊かにすると考えられる。遊休資産を使うことで、年金以外の副収入が増え、経済的に余裕ができる。また、ホストとして海外からの観光客と交流することで、孤独の解消になり、健康増進にもつながる。加えて、時間に余裕のあるシニア層が来日する観光客に日本独自のおもてなしを提供することで、日本文化と日本人の美徳を伝えることができ、それを体験した観光客は、他の観光客にその感動を伝え、草の根で日本の好感度が広がるというメリットもある。

仕事への情熱が続くシニアたち

第四新卒とは、新卒、第二新卒、第三新卒(大学院博士卒者で未就労者の採用)に対して、社会人としての経験を十分積んだ後も仕事に対する情熱を失わず、次のキャリアにチャレンジしようとする人材を、性別・年齢を問わず採用していくこと。実際に、森下仁丹では第四新卒の採用が行われている。

また、東京都労働産業局が、主に50代60代の方を対象に「シニア起業支援事業」に取り組んでいる。サービス内容としては、①起業相談・事務サポートの実施②起業家交流会及びセミナー「アントレセミナー交流会」の開催③レンタルオフィス「アントレサロン」の運営などがある。

このように「何歳だからこうしなければならない」という考えがなくなり自律的エイジングフリーになると、人は20代と同じような行動を取るようになり、おてんばマダムをひと言で説明するのであれば「20代とまったく同じことをしているシニア」という言葉が当てはまります。

老いをむしろ魅力ととらえたり、50~75歳がいちばん輝けるという風に価値観がエイジング・シフトすると、今起きているトレンドは何も不思議ではありません。

これがおてんばマダムが生まれた背景になります。

自律的エイジングフリーという共通の価値観を持つおてんばマダムのセグメントは、以下の3つのアプローチがあります。

ビューティーアクティブ

いわゆるアンチエイジングではなく、ありのまま、自分らしい、グレイヘアなどでファッションや美を追求している生活者。

ライフアクティブ

加齢を受け入れ、自然なライフスタイルを追求する生活者。

ミータイムアクティブ

60歳前後になって趣味としてダンスを始め熱中する生活者。

おてんばマダムのプロファイリングはいくつかありますが、おてんばマダムにとっての美しさとは容姿ではなく、「老いを魅力に変えようという姿勢そのものが美しい」という価値観があります。

たとえば「女ひとりゆく。若きは美しい。老いたるはもっと美しい」というホイットニー・ヒューストンの歌詞が大好きです」というトライブの発言があります。

つまり、容姿やプロポーションを若く見せようということではなく、50歳をすぎても大胆な色使いの服を着たり、60歳を超えてモデルをやったり、いくつになっても人生を楽しんでいる様子が重要だから、今をいきいきと楽しんでいる姿みたいなものが共感を呼ぶのです。

だからこそ、白髪を黒く染めるのではなく、あえてファッションとして取り入れて楽しむその姿勢が美しいからグレイヘアは美しいと言われているのであって、グレイの色合いが美しいといった表層的な意味ではいという点に注意する必要があります。

もう1点、おてんばマダムは「(老人向けだから)簡単にできる」とか、「穏やかに過ごせる」といいった刺激のないものを逆に嫌がり、「老化はケアすることで防がれるのではなく、負荷をかけることで防がれる」と考えています。ここは一般的なシニア向けの商品開発やサービス開発担当者が勘違いしがちな点です。

ケアではなく、慣れない環境が老化を防ぐからむしろ刺激を与えなければいけないと考えているからそ、ヒップホップダンスやAirbnbに挑戦するといった行動が出てきているのです。

この「適度にストレスがかかるほうが老化に予防的」という認識はかなり広がってきています。

同様に「暇な時間があると老化が進む」と考えているため、忙しくしたいと思っているシニアも増加しています。あるトライブは「同い年の仕事をしていない友人は精神的に鍛えられていないから老化している」と発言しています。すべての高齢者が潜在的に熱狂や刺激といった対象を求めているといえるでしょう。

もうひとつ重要なプロファイリングとして、ビジネスを設計するのはシニアよりかなり若い人たちなので、目標を持ち、努力していくことで向上していくと考えがちですが、シニアは体力が衰えているため、大きく向上することは不可能です。そのため、昨日に比べて今日も維持できていることが分かったり、無理ぜす自分のペースで続けられるもののほうがリアルに嬉しいということが調査では分かりました。

刺激は欲しいのですが、強すぎる刺激は求めていない、このへんの機微が分からなければシニアに刺さるようなビジネスは作れないでしょう。

このことから分かる、シニアの消費者行動のサービスデザインで大切な点は、普通はダイエットなどの目標達成は、数字記録することで成長が実感できるようなデザインですが、シニアの場合、日々の小さな変化を伝えることを意識すべきです。

たとえば健康系アプリであれば、目標にどんどん向かっていくというUIではなく、「一昨日3落ちたが今日3戻った」というような小さな変化や、「維持できている」という見せ方で、波打ちながら浮き沈みする日々の変化を実感できると満足することができます。

シニア向け新規事業の事例についてはこちらの記事(リンク)

シニア向けビジネスはアイデアの段階でズレてしまうことも多いことと、エイジング・シフトにより感覚がかなり変わってきているため、頃合いが難しいのでPoC、PoBを丁寧に設計していく必要があります。

シニアビジネスをお考えの場合は、ぜひアイデア開発の段階からSEEDATAにご相談ください。

記事ではこれ以上はご紹介できませんが、ほかにもトライブレポートにはおもしろい機会領域が数多く掲載されているため、お問い合わせの際は、まずは気になるトライブレポート名と「〇〇ビジネスをやっています」ということをお伝えしていただければ、我々がトライブレポートをもとにビジネスアイデアをいくつかご提案し、コンサルティングさせていただきます。

あとは皆さんの会社がすでに持っているリソースと掛け合わせて、新規事業の場合はビジネスモデルを変える、または新商品・新サービスを生み出すなど、それぞれの課題に対応いたします。

たとえば、新商品を作りたいという会社の場合、SEEDATAが提携している会社とこのトライブが世の中に何万人いるかを調査し、その人たちにテストマーケティングしてみて伸ばしていくことも可能です。また、サービス開発の場合もプロトタイプを作ることができますし、ビジネスモデルの場合でも、ビジネスモデルに関する検証された知識を手に入れるPoB(Proof of Business)のプロセスに入ることも可能です。

SEEDATAへのお問合せはこちらから(コンタクトフォームに移動します)。

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宮井 弘之
Written by
宮井 弘之(Miyai Hiroyuki)
SEEDATA 代表