【トライブレポート紹介59】 CBDを活用した商品開発のヒント(CBDラバー)

SEEDATAは今後増えていくであろう考え方や行動を示している先進的な消費者グループ=「トライブ」を独自のリサーチによって発見、定義し、調査した結果をレポートにまとめています。トライブ・リサーチから得られた知見を通じて、推進される企業のイノベーション活動を「トライブ・ドリブン・イノベーション」または「トライブ・マーケティング」と総称し、コンサルティング支援を行っています。トライブレポートの詳細と読み方については、こちらの記事をご一読いただければ幸いです。

トライブレポートの読み方
SEEDATAは今後増えていくであろう考え方や行動を示している先進的な消費者グループ=「トライブ」を独自のリサーチによって発見、定義し、調査した結果をレポートにまとめています。トライブ・リサーチから得られた知見を通じて、推進される企業の...

 CBDは正式名カンナビジオールといい、大麻草成分のひとつです。大麻というと日本では「危険」で、摂取してはいけないと考えられがちですが、実はアメリカでは大麻に対する考え方はかなり変化し、法律も緩和されつつあります。さまざまな州で娯楽のためや、痛みを取り除くための医療用として用いられるなど、注目されています。今回は、現在とくにアメリカで注目されているCBDに注目し、 CBDを日常生活に取り入れ頻繁に活用している人びとをトライブ「 CBDラバー」と見立てて、彼らの調査を実施いたしました。

今回のレポートテーマは大きく以下の2点です。

 

①日本国内での商品開発へのヒント

アメリカの流れを受け、日本のメーカーもCBDを活用した商品開発に着目し始めていますが、いまだ日本国内では大麻=よくわからないものとして捉えられがちです。そこで、そもそもCBDとはどんなもので、アメリカの生活者はどのように享受しているのかを知ることで、日本でも安心してCBDビジネスを展開するためのヒントとなるでしょう。

 

②「未来の体調管理」の変化のヒントを読み解く

そもそもトライブリサーチは未来の変化を洞察するための手法であり、今回は未来の体調管理をテーマに据えて調査をしています。「 CBDがどう使われているか」という分析だけではなく、CBDを用いらない場合にまで拡大解釈し、未来にはどのような体調管理の変化を見通すことができるのかを分析しています。

 CBDとは

大麻とひとことでいってもさまざまな成分があり、大麻と聞いてよく連想されるのはCBDではなく「THC」という成分です。THCは、摂取するとアルコールと似たような精神作用が起き、俗にいう「ハイになる」や「キマる」という状態になります。THCを摂取するのは日本国内では違法ですが、アメリカの一部の州ではTHCを含んだガムや飲み物なども合法となり商品化され始めています。

一方、今回テーマとしているCBDは、アルコールのようにハイになる成分は入っていません。痛みの緩和、不安感の軽減など、ハイとは逆に、落ち着きを得られる効果があります。

 CBDはさまざまな病気や炎症にきくといわれており、デイリーユースだけではなく病院でも活用され、WHOも安全で副作用がないと名言しています。また、正しいプロセスで輸入すれば日本でも合法です。

 CBD拡大の背景

そもそも大麻は1930年代に規制され始めましたが、1990年代から医療用に用いられ始め、2010年以降、一部の州ではタバコなどと同等に嗜好目的として認められ始めています。

かつて金の採掘が始まった時代を「ゴールドラッシュ」と呼んでいましたが、現在大麻をさまざまな観点からビジネスとして扱う、大麻の価値を見直すという意味で「グリーンラッシュ」という動きがあります。

グリーンラッシュはTHCも含む大麻全体を指しますが、この流れの中でCBDという成分にも注目が集まり始めました。2018年からCBD入りの薬や飲料の製造販売が許可され、現在のCBDブームが起きています。

Frontier Financial Groupの調査によると、2022年にはアメリカ国内だけで24兆円ほどの市場規模になると予測され、今後も右肩上がりで成長していく市場といえるでしょう。

また、アメリカの18%の人は CBD関連のプロダクトを使ったことがあるという調査結果もあり、ユーザー分布を見ると18歳~44歳の10%が使用しています。このことから、仕事の不安や日常のストレスを感じやすいミレニアル世代が多く使っていることが分かります。

 

 ユーザーアンケートではCBDの使用目的として、

①精神的リラックス

②睡眠の質向上

➂身体の痛み改善

という三大効果を求めて使われていることが分かります。

現在、オイル、サプリ、ドリンク、グミやナッツといったお菓子、化粧品、筋肉痛をケアするクリーム、入浴剤など、摂取方法に応じてさまざまなプロダクトが販売されています。

 CBDラバーのセグメント

今回のレポートでインタビューをおこなったセグメントは以下のとおりです。

①不安感の解消

精神的効果を求める人

②身体の痛み緩和

頭痛、筋肉痛、歯痛など純粋な痛みの解消を求める人

➂集中力向上

仕事の文脈でリラックスして集中しようという新しいアプローチを目指す人

 

➂の集中力向上は、 CBDにはカフェインのような集中力向上効果はありませんが、不安感が解消されることで、自分のペースで安心して仕事に取り組めるという効果があるようです。

身体の痛みだけではなく、精神的にも作用するという点が一般的な薬との大きな違いといえるでしょう。アルコールでのほろ酔い状態に近いともいわれています。

生活者変化行動仮説「ムード・エンハンス行動」

今回はアメリカ在住のCBDラバー5名にインタビューをおこないましたが、とくに象徴的なのが「筋トレ、ファスティング、CBDはすべて同じゴールを目指しています」という発言です。

トライブは自分自身が気分がよいと感じる状態を可能な限り増やすことを目的として、毎日CBDの摂取プラス、筋トレとファスティングもおこなっていました。

ファスティングは1日18時間抜くという方法で、食事ができるのは1日6時間だけですが、ずっと空腹状態でいることで、体重が減るだけでなく、自身の脂肪からエネルギーを生み出せる体質に切り替わるといいます。この状態になると消化の負担がなくなり、体質が変わり、つねに頭が冴えわたるクリアな状態が続くといいます。

一般的にファスティングや筋トレは、ダイエットのため、健康のため、ボディメイクのためなどにおこないますが、彼らは「自分が気分がいいと感じる状態を長く保つ」ことを重視している点が重要です。

以上のことから、SEEDATAでは「体調管理のゴールが変わってきているのではないか」と解釈しました。

 

これまでの一般的な体調管理は「病気にならないこと」で、少し意識が高いビジネスパーソンになると、「病気にならないこと」の一段上の概念として「仕事の集中力を高めるための体調管理」をしていました。

一方、トライブたちは、病気にならないことや仕事の集中力アップはもちろん、もっと大事にしているのは「自分が気分がいい状態をずっと維持すること」であり、そのために筋トレやファスティング、CBDを取り入れてコンディション管理をしています。

筋トレではテストステロンが出て気分がよくなり、ファスティングでは食べないことでエナジャイズして気分が高まります。同様にCBDも、不安を感じず心地よくなることができるうえ、アルコールと違い健康を害することもありません。

気分のよい時間を1日中維持するためにさまざまな行動をおこなうことが、先進的な人びとの体調管理といえるでしょう。

 

さらに、以上の考察から考えられるのが、「ムード・エンハンス行動」という未来の生活者変化行動仮説です。

ムード・エンハンスとは、ムード(機嫌)をエンハンスメント(高める)するという意味です。

これまで自らの機嫌や気分は自分でコントロールするというより、環境に起因するものであり、自分で積極的に管理できる対象ではありませんでしたが、今後は自分の機嫌もコントロールする対象になっていくと考えられます。

体調管理のそもそもの目的が、病気や鬱などの予防ではなく、どうすれば機嫌よくいられるか、いかに自分の気分をよくするかにシフトし、そのために人は時間とお金を使うようになるのではないでしょうか。

 

また、これらの行動の結果、彼らにとっての「幸福感」の定義も変わっていく可能性があります。これまで考えられていた一般的な幸せとは、理想の相手と結婚し、家庭を持ち、家を買うなど、ある目標を達成してはじめて幸せになれるという考え方でした。

一方、ムード・エンハンス行動が広がっていけば、たとえ目標達成できなくても、今日1日機嫌よく過ごせたか、人生もトータルでみて上機嫌な時間が長ければ長いほど幸せという考え方が出てくる可能性があります。

 

消費の分野では、気分がよくなる本や飲料を購入するなど、これまで人びとが無意識でやってきたことも含まれます。ファスティングや筋トレの例同様、習慣にすることで自分が気分よくいられる時間を増やすことができる行動を取り入れる人が増加していくでしょう。

この考え方が広がれば、職場においても、ムードをエンハンスしてくれる人が価値のある人材となり、つねに不機嫌な人はムードを下げてしまうため、気分屋は能力として欠けていると捉えられかねません。今後は「自分のムードをいかに高めるか」が個人のスキルとして学んでいく対象になる可能性があります。

新人研修や組織でのスキル開発など、「ビジネスパーソンとしてどうあるべきか」という観点でも、自分の機嫌をマネジメントすることは重要になっていくはずです。

 

このほかにも、たとえばジムでボディメイクではなく、ムード・エンハンスという文脈でプログラム開発やコミュニケーションをおこなったり、ガムや飲料など仕事中に飲食するものも同様の考えで商品開発をおこなってもよいでしょう。

 CBDラバーのトライブレポート本編の内容につきましては、info@seedata.jpまでお問い合わせください。

林直也
Written by
林直也(Hayashi Naoya)
アナリスト