【トイブレポート紹介64】オンデマンド美容商品・サービス開発のヒント(コスメミキサー)

SEEDATAは今後増えていくであろう考え方や行動を示している先進的な消費者グループ=「トライブ」を独自のリサーチによって発見、定義し、調査した結果をレポートにまとめています。トライブ・リサーチから得られた知見を通じて、推進される企業のイノベーション活動を「トライブ・ドリブン・イノベーション」または「トライブ・マーケティング」と総称し、コンサルティング支援を行っています。トライブレポートの詳細と読み方については、こちらの記事をご一読いただければ幸いです。

トライブレポートの読み方
SEEDATAは今後増えていくであろう考え方や行動を示している先進的な消費者グループ=「トライブ」を独自のリサーチによって発見、定義し、調査した結果をレポートにまとめています。トライブ・リサーチから得られた知見を通じて、推進される企業の...

本レポートは「オンデマンド美容」に関する示唆を得ることを目的とし、その日の自分の肌状態を見極め、それに適したスキンケア・メイクアップ・栄養摂取を行う生活者の調査をおこないました。

彼女たちは日々の肌変化を見極めるため、肌感度を高める方法と、変化に対処できる成分の選択方法に独自性を持っています。日々変化する自分の身体状態に適合した、オンデマンドな成分摂取にこだわる価値観の登場により、スキンケア用品・化粧品・サプリメントの選択基準も変化しつつあります。

コスメミキサーは化粧水や乳液、サプリ、メイクなどを常時数種類キープし、日々自分の肌の調子や外部環境に合わせて使う化粧水を変えている人たちです。彼女たちコスメミキサーを知るうえで理解しておくべき大きな背景をご紹介します。

美容価値観の変化

1.ロールモデルの細分化

美容に対する価値観の変化の理由のひとつにあげられるのが、思想や価値観を前面に押し出したロールモデルの登場です。

特徴的なインフルエンサーが自らの私生活やその背景にある価値観をTVやSNSで発信し、その行動を伴う一環した思想や発言に共感した若者からの支持を集め、20代を中心とした女性から支持を得ています。

たとえば、ゆうこすや田中みな実は、今まで人前で言えなかったことを積極的に発信し、自らの考え方を肯定できるような生き方を一貫しておこなったり、宇垣美里、kemioは、骨格や肌の色、身長といった自分の努力で変えることが難しいものに対して批判されることを嫌い、ありのままの自分を認め、自分らしくいることを強く肯定するような発言をおこなっています。

これらのロールモデルの外見をそのまま真似するのではなく、美容における思想や価値観を自分の生活に移植し、自分だけの美しさを追求する生活者が登場しています。自らのポテンシャルを認めた上で最大限努力しようとする生き方を自らの生活に取り入れることで、美しさを実現させるためのモチベーションを高めることにつなげている生活者もみられます。

このように、消費者の憧れるロールモデルが多様化していくことで、美の理想像もより細分化し、美容行動も細分化し始めています。

2.自分の素材に着目した美しさの追求

自分の生まれ持った骨格や肌の色、生活の中で変化する肌質を最大限よく見せたいというニーズから、パーソナルカラー診断や骨格診断、遺伝子診断など、自分の素材を理解するためのサービスや、よく見せるための化粧方法が提案され始めていることがあげられます。

これにより、「自分にあったメイクやスキンケアをするためには、まずは自分を知らなければいけない」と考える生活者は今後も増加していくでしょう。

3.外部からのストレスによってゆらぐ美

日々受ける職場でのストレス、空気中の汚染物質、紫外線やブルーライトなど、外部から受けるストレスも多様化しています。

外部から受けるダメージは最小限にとどめるため、飲むビタミンCやドクターズコスメなど、ストレスから身体を守るための対処を行う生活者が登場しています。

以上の背景を踏まえたうえで、コスメを使い分ける人びとを調査しています。

何故コスメをミキシングするのか

今回のトライブ調査から分かったプロファイルのひとつが、「「コスメミキサー」は、ミキシングを行うことで、日々の肌状態にあった成分を効率的かつ適正量摂取できると考えている」ということです。

 

コスメミキサーの特異的な行動の一つに、その日の肌状態にあったスキンケアを自らミキシングして摂取する行動があげられます。彼女たちは、成分を自由にカスタマイズすることで、日々受けるダメージ(空気汚染・ストレス・紫外線等)によって変化する肌のコンディションを効率よく回復させることができると捉えています。

加えて、余計な成分や必要容量以上の成分を摂取することは、肌が独自に持つ回復力を鈍らせると考えており、必要な成分を適正量摂取することにこだわりを見せています。

このように、その日に受けたダメージに対し、クリティカルな量と成分をとるためにミキシングしているのです。

 

また、ミキシングにおいては求められる成分も変化してきています。

調査では、コスメミキサーは日々の肌状況にあわせて化粧品を使い分けしたいので、一度にさまざまな成分が含まれたスキンケア商品ではなく、成分量ごとに化粧品を選ぶという行動がみられました。

これまでは化粧水、乳液、美容液などが一体となったオールインワン化粧水などでなるべく肌ケアの工数を減らすことが求められていましたが、コスメミキサーたちは「オールインワンでは自分の肌にどの成分が効果があったの分からない」と考えているためです。

彼女たちは、「この成分でこのダメージは解決できる、解決できない」と効果実験をおこなっていました。

このように、「日々自分の肌に必要な成分を必要なだけとるために単一成分をとる」というのがコスメミキサーの調査から得られたもっとも興味深い示唆といえるでしょう。

生活者変化行動仮説:成分数の比較から成分含有比較へ

 

これからの生活者は、日々変わる肌のコンディションに合わせオンデマンドに、単一成分特化型の製品でひとつの成分を十分に確保したいと考えるようになっていくのではないでしょうか。

この生活者変化行動仮説を象徴するのがトライブの「複数の栄養素を一気に取れるサプリメントは絶対に使いません。それは複数成分を1つに凝縮している分、自分に必用な成分量を確保できないと思っているからです」という発言です。この発言から「複数の栄養素がとれるサプリメントよりも、単一成分のサプリからそれぞれの栄養素とりたい」というインサイトが見えてきました。

 

トライブの価値観から分析できるもうひとつの重要な生活者変化行動仮説が、平準化美容行動です。

 

これまでのスキンケアでは、マイナスを0に戻す、または1を10にするなど、昨日より少しでも肌状態をよくすることが重要とされてきましたが、コスメミキサーたちは「いかに昨日と同じ肌質を保ち続けるか」を重要視しています。

それは肌荒れは起きてしまうものだから仕方がないものと捉えつつ、肌状態を一定に保つことで、前日と少しでも違う場合にすぐに察知でき、同じ状態に戻すよう対策をとることができると考えているのです。

 

さらに、これらの生活者変化行動仮説から考えられるビジネスチャンスが「肌の状態の一体化を実現する顧客体験」です。

 

生活者が日々足りなくなる成分をオンデマンドに必要な成分だけ摂取し、肌状態を一定に保ち続けるためにはどんな体験を設計する必要があるかを考えたとき、「ターゲットごとの美容感度を捉えたサービス設計をする」というオンデマンド美容行動実装の際の注意点が見えてきました。

 

上記の図にある通り、高関与、低関与、肌疾患層ではそれぞれの求めるものは異なるため、一括りに実装してもうまくいきません。

高関与層は美容行動を楽しんでいるため、全ての成分を教えられるのではなく選択の余地が残っている設計が重要です。

コスメミキサーのような人びとをターゲットするのであれば、自分で化粧品を選ぶ楽しさを残して設計することが重要になっていくでしょう。

逆に低関与層は余白が残さず、完全に商品選択を外部化する設計(=スキンケアの手間を完全に解消できる設計)、肌疾患のある方には美容行動が治癒行動とつながっているため、肌に悪影響がないことを信頼して選択できる設計が必要です。

ここからたとえば、普段のスキンケアにプラスワンすればいい成分を教えてくれるサービスアイデアが考えられます。自分の手持ちの化粧品を登録しておくことで、今日の肌の状態と照らし合わせ、今足りていない成分とどの化粧品を使えばいいかを教えてくれるような、化粧する楽しみを奪わないサービス設計が重要となっていくでしょう。

 

記事ではトライブレポートの一部をご紹介しましたが、レポート本編の内容につきましては、info@seedata.jpまでお問い合わせください。

平田諒
Written by
平田諒(hirata)