【トライブレポート紹介67】健康トレンドの変化にみる、ヘルスケア領域の商品開発・体験設計のヒント(インナービルダー)

SEEDATAは今後増えていくであろう考え方や行動を示している先進的な消費者グループ=「トライブ」を独自のリサーチによって発見、定義し、調査した結果をレポートにまとめています。トライブ・リサーチから得られた知見を通じて、推進される企業のイノベーション活動を「トライブ・ドリブン・イノベーション」または「トライブ・マーケティング」と総称し、コンサルティング支援を行っています。トライブレポートの詳細と読み方については、こちらの記事をご一読いただければ幸いです。

トライブレポートの読み方
SEEDATAは今後増えていくであろう考え方や行動を示している先進的な消費者グループ=「トライブ」を独自のリサーチによって発見、定義し、調査した結果をレポートにまとめています。トライブ・リサーチから得られた知見を通じて、推進される企業の...

健康トレンドの変化

人生100年時代と言われる世の中となり、定年後数十年もの間、病気にならず、自立して元気に暮らせる体が必要となりました。病気にならなければ「健康」と言われていた時代もありましたが、100年を生き抜くためには、もはや病気になってしまっては手遅れであり、「未病」と呼ばれる状態でさえも不健康と考える人びとも増加しています。そのため、若いうちから高い健康水準を維持しようとする生活者は、年々増加しています。
加えて、近年では「COVID-19」のような大きな社会的影響により、生活者が自分の「体」に対して向き合わなければならないシーンも以前よりも増加しています。

本レポートでは、特にそのような考えを強く持ち、独自の方法で免疫力・自己治癒力を高めようと試みている生活者をリサーチし、今後、ヘルスケア領域に求められる価値観を探っています。

「インナービルダー」は、「内側の強さを育てることで健康を維持していこう」と考える人びとです。
健康観の変化にはおもに以下の3つの大きな社会的インパクトにがあげられます。

①人生100年時代(健康寿命への注目)
平均寿命が延長する中、老後の生活が病気や寝たきりになってしまわないよう、健康寿命を伸ばすための取り組みに注目が集まっている

②3.11
レジリエンス(折れない心)への注目
大地震によって突然起きた困難の中、復興まで先行きの見えない不安や恐怖に対しどう向き合うのか、しなやかな精神が求められた

➂COVID-19
免疫力(折れない体)への注目
世界中に感染が広がる中、ワクチンや医療機関に頼ることができないウイルスから、自分の身をどう守るかが問われている

②のレジリエンスという言葉は「災害からの回復」という側面だけではなく、ビジネスや生活の中でも使われ、仕事の効率を上げたり、ストレスをコントロールすることを目的として、精神的なしなやかさを手に入れることが求められる中で、マインドフルネスやメディテーションなども一般化しています。
とくに現在、コロナの影響でレジリエンスの必要性が加速しています。ロックダウンや外出自粛でストレスがたまっている中でより自分の精神的な健康を守らなければいけない状態になり、マインドフルネスアプリや瞑想などに注目が集まっています。今後もメンタルヘルスの重要性は高まっていくでしょう。

今回はCOVID-19の影響で注目が集まる➂折れない体にスポットを当てています。
目に見えないウイルスが世界中に広がる中、多くの感染者や死亡者を出していますが、ウイルスに対抗できるようなワクチンが無く、生活者は「自分の体は自分自身で守らなければならない」と考えるようになっています。そこで「免疫」への関心が高まり、これに関連して特に納豆やヨーグルトなどの発酵食品の需要が増加しています。

このような社会背景から、現在とくに注目されているのが以下の3つの健康トレンドです。

①100年時代により“治未病 / 予防医療”への注目

病気になる前に自分の健康について知りたい、予防行動を取りたいという欲求が高まる。
遠隔で診療できたり、腸内検査や血液検査が自宅でできるなどいちばん一般的なのがウェアラブルデバイスで自分の健康を日頃から測定する、アプリなどを使用して遠隔で医療従事者からのアドバイスを得ることができるなど、ライトな健康診断の機会が増えている。

②3.11により精神的な健康への注目

ウェルネスやマインドフルネスなど精神的に健康であることが重要と考えられている。
健康を語るときに身体だけでなく精神的に健康であることが重要と考えられるようになった。

➂COVID-19により身体の内なる力への注目

マイクロバイオームやホリスティックケアなど、対処療法だけでなく予防医療をするために中医学や運動療法、栄養学など病院に行って受けることではなく、自分で家でできることやほかの分野を健康に応用していくことに注目が集まっている。

今回のレポートではこの内なる力に注目し、内なる力=「身体が自らを守り、癒せる力」と定義しています。

内なる力とは、たとえば、病気になった際や、ウイルスや怪我、ストレスや食品添加物のような大小さまざまな外部からの影響などのダメージ及んだ際に、「自然治癒力」が機能して、元の状態に戻そうとする能力を指します。
自然治癒力は自分の力で病やケガを癒し治す力のことですが、免疫も自然治癒力のひとつとして考えられています。

ホリスティックキュアとマイクロバイオーム

内なる力を高めるために注目されているのが、①ホリスティックキュアと②マイクロバイオームです。

①ホリスティックキュア

日本の医療は「西洋医学」に基づき対処療法が行われることが一般的である。しかし、予防医療への関心が高まったことから、病気になる前の小さな変化や、生活習慣に対するアプローチが重要であるという考え方に注目が集まっている。

ホリスティックキュアと一般的な医療との違いは、健康の主体が医者ではなく患者にうつっている点です。体調不良になれば病気を治すのは医者という考え方から、患者が自ら癒すことを目的にしているのがホリステックキュアの考え方です。
現代医学を否定して極端に医者に行かないわけではなく、多少病気になりそうになったとしてもある程度なら自分の力で戻れる状態にしておくことを目的とし、東洋医学と現代医学を両立して健康を維持することを目指しています。

②マイクロバイオーム

ヒトの腸内や肌には多くの「菌」が生息しており、ヒトはこれらの恩恵により健康的な体を維持できると考えられている。例えば、食べたものを分解してヒトに必要な栄養素に変化させたり、体内の情報伝達物質であるホルモンを作り出すなど、「菌」は複雑かつ多様な役割を担っている。「菌」に対する研究は発展途上であり、近年では、免疫作用やうつ病などの精神疾患に関与していることが解明された。「菌」がヒトに与える影響は大きく、今後の研究にも注目が集まっている。

腸内環境を整えるためには善玉菌の数と種類を増やすことが重要とされています。一般生活者の間ではヨーグルトなどに含まれる「乳酸菌」や「プロバイオティクス」などへのキーワード検索が増え、関心が高まっていることが分かります。

生活者変化行動仮説①味覚デトックス活動

近年、健康行動として注目されている「断食」や「ファスティング」には、体の内側から機能を修復し、免疫力向上にも効果があるのではないかと言われています。一般的にこれらの行動は、空腹の時間を作ることにより、体にとって余分な脂肪や素を排出したり、胃腸を休ませたりすることを目的としています。このような節制や我慢は一時的にはできますが、トライブたちは健康的な体を維持するためには、行動を習慣化させる必要があるというジョブを持っているため、節制や我慢でコントロールすることは自然ではないと考えています。
一方、今回の調査でトライブは健康的な行動を習慣化させるために、自分自身の感覚や欲求をまずコントロールする必要があると考えていることがわかりました。象徴的なのが味覚のデトックスです。
身体にとってよくない食品を食べたときに違和感を察知することができる正常な味覚を取り戻すことで、長期的に健康的な生活が続けられる状態を確保できると考えています。

インタビュー対象者のひとりは、ファスティングを行うことで、身体のデトックスという効果だけではなく、味覚がデトックスされるという感覚を得ていました。一時的に普段の食事から離れることにより、脳が勘違いして「美味しいものだ」と認識していた食べ物の味の記憶が薄れ、体に正直な味覚が取り戻せるのではないかと考えられます。

象徴的なのはトライブの「ファーストフードのフライドポテトはおいしいが中毒性がある」という発言で、彼女は添加物や糖分、炭水化物が多く入っている食品を繰り返し食べていくと「おいしい」「もっと欲しい」と脳がどんどん錯覚していき、実際身体が必要なわけではなくても脳がまた食べたいと思ってしまうと考えています。
ファスティングをおこない味覚がリセットされることで、これらの食品を食べた時に味に違和感を覚えるようになったり、そもそも食べたいと思わなくなるというメリットがあるといいます。これは感覚をコントロールして食生活を根本的に変えたいという欲求の現れといえるでしょう。
これまで断食やデトックスは身体に対するメリットに注目されていましたが、感覚がコントロールできることをメリットとして捉えているのはトライブならではといえます。

生活者変化行動仮説②ライトな自己治癒体験欲求の増加

トライブは内なる力を高めて自分で回復することを目指しているため、病気になったとき、痛み止めや風邪薬を飲むことで、自分の本当の回復具合や治癒力の働きが分からなくなるので、なるべく薬を飲みたくない、という価値観を持っています。
そこで、既存の薬のように、完全に熱を下げたり痛みを感じなくして症状をマスキングするのではなく、具合の悪さは軽減しつつ、自分の自己治癒力で治っていることが感じられる、自分の治癒力で回復しているプロセスが感じられるような体験が求められていくのではないでしょうか。
これも、①の味覚デトックス行動と同様に、自分の感覚を主体として、自分自身の健康を守ろうとする行動だと言えます。
健康の主体が医者ではなく患者になったということは、現れる症状によって対処をするのではなく、患者自身(生活者自身)の感覚を頼りにコントロールしたり、治したりするという体験が重視されるようになるということです。

ビジネスチャンス:味覚リセットする食事プログラムの提供

最後にこれらの生活者変化行動仮説から考えられるビジネスチャンスのひとつをご紹介します。
今回のリサーチでは、健康に悪影響を及ぼす食品を摂取した際に違和感を感じられるよう、常にヘルシーな食品に味覚を慣れさせるという特徴的な行動をしていることが分かりました。
トライブのこの行動から考えられる商品開発のヒントが、中毒性のある不健康な食事から一旦離れ、ヘルシーな食品のみを一定期間食べる続けることで、正常な味覚へとリセットされる食事プログラムなど、デトックスを味覚にまで広げます。
通常のデトックスによる一時的な健康ではなく、そもそも健康的な感覚や行動を手に入れることが、内側からの力を高めていくことにもつながっていくのです。

トライブレポート本編では、このほかにもさまざまなインサイトやビジネスチャンスを紹介しています。
トライブレポート本編の内容につきましては、info@seedata.jpまでお問い合わせください。

松本綾音
Written by
松本綾音(Matsumoto Ayane)
アナリスト