【トライブレポート紹介④】ヘルスケア系新規事業のアイデアのヒント(ドクターシューマー)

はじめに~トライブレポートとは

SEEDATAは今後増えていくであろう考え方や行動を示している先進的な消費者グループ=「トライブ」を独自のリサーチによって発見、定義し、調査した結果をレポートにまとめています。

トライブ・リサーチから得られた知見を通じて、推進される企業のイノベーション活動を「トライブ・ドリブン・イノベーション」または「トライブ・マーケティング」と総称し、コンサルティング、支援を行っています。

トライブレポートの詳細と読み方については、こちらの記事をご一読いただければ幸いです。

トライブレポートの読み方

今後のヘルスケア事業のターゲットは健康意識の高い人+多忙な人

科学技術が発展し、健康・ヘルスケア業においても高度技術を利用したプロダクトが数多く誕生しています。人間が生きるために必要な栄養素を過不足なく備えた完全食や、DNA分析をして望ましい生活習慣や、気をつけるべき疾病などを把握するツールなどがその代表といえるでしょう。

近年、消費者の側にも、このようなプロダクトを仕組みのレベルから正しく理解し、健康を追求・増進しようとする、医者や博士顔負けの知識を持つ層が現れてきています。彼らのバックグラウンドは、そもそもそのような技術や理論に親和性の高い高学歴層から、美容への興味が高じた女性までさまざまですが、最先端の技術と自らの生活の双方に高い関心を持つ消費者は、次に何を好み、どのような製品・サービスであれば手に取るのか、ドクターシューマーの調査結果から探っていきます。

当記事では、この調査結果から得られた発見と、我々が分析して見出した機会領域の一部をご紹介していきます。健康・ヘルスケア業界の方はもちろん、あるゆる分野で汎用性の高いものになる内容になっています。

まず、前提として、企業で新商品開発や新規事業開発をする際に、必ず据えられる大きなテーマのひとつに健康ビジネスがあげられます。しかし、この健康カテゴリの中で、「人々が健康志向になっている」ということは周知の事実ですが、「どう健康になりたいのか」「健康になりたいのはどういう人たちなのか」という部分は意外とぼんやりしたままです。

そこで、健康で先進的な行動をとっている人たちを調べることで、さまざまな健康系ビジネス、健康系の新商品開発に役立つのではないかということで、調査をスタートしました。

トライブ名の付け方は、前回のフィンテッカーと似ていて、「まるで医者のように詳しい消費者」という意味で「ドクターシューマー」という名前をつけていますが、もう少し何を消費しているかを端的に表したほうがよかったと思っています。

ドクターシューマーを作成した当時はトライブリサーチの手法自体がまだ確立しきれておらず、括りが多すぎたのですが、その中でどんな興味深い消費行動があったのか一部をご紹介いたしますので、ご興味を持たれた方はぜひSEEDATAまでご連絡ください(お問合せ方法については記事の後半に記載しています)。

ドクターシューマーの行動を調査して発見した特徴的な行動は以下の図のとおりです。

事前リサーチでわかったのは、栄養摂取の仕方だけでなく、体内浄化=デトックスという文脈や、DNA検査や手にウェアラブルデバイスなどをつけて睡眠の状況を調べ、自分の体を管理するという意味で、先進的な行動をとっている人が存在するということです。彼らそれぞれがトライブですが、身体管理のほうは今後ご紹介するスポシューマー、体内浄化のほうはビューティーテックというトライブで詳しく解説いたします。

今回、我々がいちばん注目したのはこの「栄養摂取」という点です。

調査を進めていくと、サプリや完全栄養食品など、栄養摂取で先進的な行動をとっている人々が存在し、なかでも「完全栄養食品を摂取している人」にフォーカスしたのがドクターシューマーです。

ドクターシューマー以前に、我々が着目していた「ソイレント」というトレンドがあります。

ソイレントはいわゆる完全栄養食品の走りで、プロテインのようなものです。

味があまりおいしくないといわれていましたが、消費者たちによって「ソイレントをどう食べればおいしくなるのか」「ソイレントを何グラム入れる」というソイレントに関する緻密なレシピページのようなものがインターネット上にでき、コミュニティがとても盛り上がっていました。

我々はまず、このトレンドから、すごく健康意識が高い人が集まり、完全栄養食品のレシピを作ったり、それらを摂取したりする行動をとっているという仮説をたてました。

ソイレント同様に日本にローカライズされた栄養食品のひとつにコンプがあります。当時はまだ有名ではありませんでしたが、同じようにレシピ公開するなどして一部で盛り上がりを見せていました。そこでSEEDATAは、コンプさんと共同リサーチを行い、ドクターシューマーな人々を紹介してもらい調査した結果、日本でのドクターシューマーのセグメントを以下の3つに分類することができました。

※この当時は現在のようにトライブのセグメントの定義が定まっておらず、ここでは3つの目的で分けたユーザー像になっています。

まずは、健康オタクでもともと健康意識が高い人。次に、美容意識が高く、ダイエットなどの意識から使っている人。これは自分の理想とする美しさがあり、スムージーなどを使用している人です。

そして、いちばん意外でおもしろかったのが、単に忙しい人。この人たちは実は健康意識は低くて、「忙しいからとりあえずこれ飲んでればいいだろう」という考え方を持っていて、この価値観は後々「多忙族」というトライブに発展していきます。

以上の3つのタイプの人々にヒアリングした結果、ボクサーが減量に使っていたり、アスリートが使っていたり、単に忙しいから使っていたりという、想定外の興味深い使い方が見えてきました。

完全栄養食品を摂取する背景として、健康オタクという文脈はコンプの方も当然想定していましたし、ソイレントなどを見ていてもすぐ気が付くことができます。しかし、完全栄養食品を摂取する人の中に実は多忙な人たちがいたというのは、やはり実際にミクロで見ていかなければわからなかった点といえるでしょう。

「価値観は同じだがアプローチが違う」というのがトライブのセグメントの定義なので、本来はこの程度まで調べたうえで、美容系のドクターシューマーなのか、健康オタク系のドクターシューマーなのか分類し、アプローチがソイレントなのか、スムージーなのかという風にセグメントすべきでしたが、このレポートでは単に目的別に分類されています。

ここで、イノベーションの普及理論におけるデマンドサイド・イノベーションという考え方をドクターシューマーを例にご紹介します。

そもそも、サプライサイド(供給側、技術側)のイノベーションは「この食品だけをとれば必要な要素が足りている」というもので、健康意識が高い人をターゲットとして考えていました。

しかし、デマンドサイド(需要する側)は、適切に栄養をとるためではなく、「忙しさを緩和するためにこれだけを飲む」という使い方をしていたのです。つまりこれは消費者が自ら使い方を変えるというデマンドサイド・イノベーションの事例に当てはまります。

実際にサプライサイドがイノベーティブな商品やサービスを出すと、消費者が想定していなかった使い方をするというパターンはイノベーションではよくあることです。

スタートアップや起業家はもちろん、健康系の新規事業や新サービスを作る人は、このデマンドサイド・イノベーションという考え方をあらかじめイメージしておきましょう。

もちろん最初は素直に健康意識が高い人に向けて商品を作ることを考えればよいのですが、必ず意図していなかった使い方をする人が現れるので、そういう人を見つけたらその人向けにてきちんとプロモーションをすることが、広く普及させていく際のヒントになるのです。

この概念については元博報堂の鷲田一橋大学教授が論文にされています。

Washida, Y., Ueda, K., Kinoshita, Y., & Awata, K. (2006, July). Demand Side Innovation Hypothesis in the Complex Consumer Network. In Technology Management for the Global Future, 2006. PICMET 2006 (Vol. 4, pp. 1749-1756). IEEE.

以上の点からも、このドクターシューマーでもっとも注目すべきはやはり「忙しい人」といえるでしょう。健康や美容は誰もが思いつくことですが、忙しい人々に使用されていたという点は、コンプの方もすごく注目してくれた結果です。

このデマンドサイド・イノベーションの事例をほかにもご紹介すると、最近、カラオケボックスのサブスクリプションを利用して、ランチを食べる場所に使ったり、自習室として使ったりしている人が現れ始め話題になっています。今まで都度課金だったカラオケボックスをサブスクリプションにするというのは、ビジネスモデルを大幅にチェンジするという意味でサプライサイドのイノベーションですが、ここでもデマンドサイドが独自に違った使い方をするというイノベーションが起きているのです。

このときにサプライサイドがやるべきことは、実際に自習室として打ち出したり、ランチの時間だけは回数制限をしたりすることで収益を上げることです。イノーベーションにおいては、初期採用者の中に想定外の使い方をしている人が必ずいて、とくに健康系では顕著なので、健康系の新規ビジネスや新商品、新サービスを作っている人はこのことをしっかりと理解しておきましょう。

また、ドクターシューマーから出てきた価値観で一番の発見は、多忙族やアスリートは「1日3食食べない」という考え方をすることです。

彼らは多忙を極めるため、食事を食べる時間がもったいないと感じ、1日中ちょこちょことソイレントを飲んでいたのですが、そこには「つねに腹8分目でいたい」という今までまったく思いつかなかった需要がありました。

そこから我々は「満腹になりたくないけど空腹にもなりたくない、腹8分目のデザインツール」という完全栄養食がもたらす新しい意味を見出しました。この意識はもはや健康とはかけ離れていますが、腹8分目のデザインは今後のトレンドになっていくでしょう。

何故かというと、世の中には食べ物にそこまで興味がなかったり、忙しくてゆっくり食事をする時間を仕事にあてたいというニーズが確実にあり、これは多忙族の調査でも明らかになっています。

今後は「1日3回食事という時間を取らず、ソイレントのような完全栄養食品を1日中ちょこちょこ食べる」という人がもっと出てくるはずです。

健康系や食品系の企業は商品として「腹8分目」カテゴリの事業群を作るべきですし、流通ならそういうPBや棚を作ったり、サブスクリプションのビジネスモデルを作ればヒットするでしょう。たとえば、いちいち買いに行かずとも、定期購入でこれだけ食べていれば栄養面も大丈夫という商品が送られてきて、昼と朝の食事の時間をとらなくてよくなれば、忙しい人たちにとっては最高なわけです。

食事は1日1回、夕方くらいに同僚などと食べて、夜もお腹が空けばこれを少し食べる、そうすると1日3時間かけていた食事の時間が1時間で済むようになります。完全栄養食品は食事というより、口にすることで気分転換にもなる、どちらかといえば喫煙にも感覚的に近いといえるでしょう。

もちろん食事の時間を大切に考える人には受け入れられないと思いますが、今後は食事をとる時間の影響で生産性が下がると考える人と、二分化していくはずです。

以上が、ドクターシューマーから得られた一番大きな機会領域です。

記事ではこれ以上はご紹介できませんが、ほかにもトライブレポートにはおもしろい機会領域が数多く掲載されており、ヘルスケア系のビジネスであれば、このトライブレポートひとつで新規事業や新サービスに展開できるはずなので、ぜひSEEDATAへお問い合わせください。

お問い合わせの際は、まずは気になるトライブレポート名と「〇〇ビジネスをやっています」ということをお伝えしていただければ、我々がトライブレポートをもとにビジネスアイデアをいくつかご提案し、コンサルティングいたします。

あとは皆さんの会社がすでに持っているリソースと掛け合わせて、新商品を・新サービスを生み出したり、新規事業の場合はビジネスモデルから変えるなど、それぞれの課題に対応いたします。

たとえば、新商品を作りたいという会社の場合、SEEDATAが提携している会社とこのトライブが世の中に何万人いるかを調査し、その人たちにテストマーケティングしてみて伸ばしていくことも可能です。また、サービス開発の場合もプロトタイプを作ることができますし、ビジネスモデル創造の場合は、ビジネスモデルに関する検証された知識を手に入れるPoB(Proof of Business)のプロセスに入ることも可能です。

SEEDATAへのお問合せはこちらから(コンタクトフォームに移動します)。

【この記事の監修者】

宮井弘之。SEEDATA代表。

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あとは皆さんの会社がすでに持っているリソースと掛け合わせて、新規事業の場合はビジネスモデルを変える、または新商品・新サービスを生み出すなど、それぞれの課題に対応いたします。

たとえば、新商品を作りたいという会社の場合、SEEDATAが提携している会社とこのトライブが世の中に何万人いるかを調査し、その人たちにテストマーケティングしてみて伸ばしていくことも可能です。また、サービス開発の場合もプロトタイプを作ることができますし、ビジネスモデルの場合でも、ビジネスモデルに関する検証された知識を手に入れるPoB(Proof of Business)のプロセスに入ることも可能です。

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宮井 弘之
Written by
宮井 弘之(Miyai Hiroyuki)
SEEDATA 代表